英雄様の非日常《エクストラオーディナリー》 旧)異世界から帰ってきた英雄

大橋 祐

第40話 遭遇

 澄んだ青空の真下。
 富士山の隣を横切る新幹線。

 そう、蒼月達は今まさに修学旅行の真っ最中であった!

「八切って、ほいさ、また上がりー!」

「ハル早い! また大富豪じゃん」

「よっと、ほい俺も上がり」

「お兄ちゃんも早い!」

 大富豪をやっていた愛月の友人の千晴と蒼月が先に上がる。

「もー、また私たち二人じゃん」

 悔しそうにする愛月と真剣にトランプを触る藤原 聖斗ふじわら せいと

「よし、はい。最後の一枚」

「あっ…………」

 隣に座っていた蒼月の手が愛月の肩に置かれた。

「次はお前が大貧民だな」

 煽る瞳で嘲笑う兄に思いっきり蹴る愛月。

「イッタ」

 ガクンと新幹線が揺れ、徐々に速度を落としていく。

「なんだこれ?」

『只今、送電トラブルの為、一時的に運行を停止致しました。申し訳ございませんがしばらくお待ちください』

 アナウンスがあったことで不安が解消されたのか新幹線内の生徒たちは今まで通り自由な時間を過ごしていた。

「まあ、問題ないだろう。それより続きやろうぜ」

「ええー、おに……蒼月くんやハルばっか勝つからつまんない。だよね? 聖斗くん?」

「そうだね。ところでさ突然で申し訳ないんだけど京都で行きたい神社があるんだけど良いかな?」

 申し訳なさそうに手を合わせて聖斗は懇願する。

「遠いのか?」

「まあ、それなりに……でもどうしても行きたくて」

「へぇ、まあ、二日目の自由時間の枠だいぶ余ってるし良いんじゃねぇか? 大学見てゆっくり過ごすってのもアレだし」

「良いねサンセー! エルちゃんも良いよね?」

「私は別に構わないけど。どこ行くの?」

 満場一致で四人の班員から許可をもらいガッツポーズをしている聖斗に愛月は尋ねた。

「ああ、そこは……うおっ」

 聖斗の発言の途中に新幹線が大きく揺れた。

 そして煙が何処からか湧いてくる。

「なんだこれ? (イム! どうなってんだ!)」

(微かに魔力を感じますが……。ホテルで感じた妖しげな気あの時と雰囲気は一緒ですね)

(やっぱ、霊力か……。魔力とは使い勝手が違うから防ぎかたもごり押しになっちまう。どうする?)

 蒼月は周りの人間たちの息遣いが変わるのを読み取った。

「寝たか……。大丈夫だ。出てこいイム」
 
 蒼月が呼びかけるとネクタイが不自然にうねり、首元から外れ奇妙に溶けた後肉体が形成された。

「どうですかごしゅじんさま。今回はかわいいろりっ子ばーじょんです!」

「遊ぶな」

 ふざけて小さな子供の姿になったイムの額に軽いチョップをくらわした。

「……。あれ? 聖斗は?」

 風で煙を払うと今までとなりにいたはずの少年が姿を消していた。

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