英雄様の非日常《エクストラオーディナリー》 旧)異世界から帰ってきた英雄

大橋 祐

第32話 嫉妬

「蒼月? お父さんや太陽君に挨拶しないの?」

 朝の5時。
 あの後、家族に何も言わずに玖珂の部屋に泊まり家族と顔を合わせてはいない。
 そんな蒼月が朝早く出かけるのを母親は見逃さなかった。

「別に話すことなんて何もない……」

「どうしたのよ。貴方が帰って来なくてみんな・・・心配したんだから」

 その言葉で蒼月の帰って来てからの感情が溜め込んだものが溢れ出た。

「なんでだよ………」

「え」

「なんで心配出来るんだよ! 見ず知らずの! 他人の心配がどうやって出来るんだよ!」

「ちょっと、蒼月!」

 実際には蒼月の精神はそこまで成長していなかった。
 ただ異世界という非日常的な不安要素を取り入れたことで蒼月の精神は一般的な大人の精神と明確なズレ・・が生じていた。

「また、一人になるのか?」

 母親の声を無視して街に戻った蒼月はゆっくりと異世界から帰ってきた時のブランコに座った。

「今更、高校生みたいな反抗期かよ。笑っちゃうよな」

 その目は虚空を見つめ、過去を見ているようだった。

「でも実際、アイツらは俺が居なくてもやって行けた」

 自分とは状況が違う。
 異世界転移は一人・・で不安になるが、失踪は支え・・があるのだ。

 だからこそ、戻れない。
 自分がわりの支えに嫉妬している。

「愛月もそろそろ大人にならなきゃだし」

 覚悟は出来た。
 もう迷いはしない。

 

 その日、陣野蒼月は行方不明となった。


 というわけでお膳立て終了。
 陣野君が消えちゃう編です。
 補足するとまあ、子供の嫉妬です。
 自分は一人ぼっちだったのに!
 家族は新しい家族を迎え楽しんでいた。
 そんな感じです。はい。
 イムちゃんは蒼月の支えですね!
 後書きが長くなりましたが彼らの夏はここからが本番です。
 ではまた次回!

コメント

  • 伊予二名

    ふと思ったけど、戸籍はどうなって居るんだろう。蒼月くん実は天宮姓なのかな?戸籍上。親権は母親にあるだろうから。

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  • 伊予二名

    いやまぁ実際のところ純度100%の「他人」ですしねぇ? 主人公にとってはそのへん歩いてる通行人と差は無いよね彼等。嫉妬云々以前に。

    0
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