英雄様の非日常《エクストラオーディナリー》 旧)異世界から帰ってきた英雄

大橋 祐

第9話 少女のヒーローはいつだって

ーードラゴン

多くの人はファンタジーでお目にかかるだろうが、愛月は違った。

彼女の目の前には群れたドラゴン達がいた。

「あっ あっあれは邪龍イビルドラゴンです ︎」

「えっともしかして」

「はい もう諦めましょう 絶対に勝てません」

「まだわからないよ!」

そしてドラゴン達が愛月達の方へ向かって行く。

切断風ウィンドカッター

その呪文と共に風の刃がドラゴン達に向かい、その体に

ーー刺さらなかった。

「「えっ」」

「 GUUUUUU」

咆哮と同時に鋭い爪が降ってくる。

ザァッバグズッ!

地面が抉れた。

「うぇ?」

愛月の口が塞がらない。


「これはヤバイですね」

「ヤバイじゃないよ!死ぬよ!」

「私はもう諦めてます」

(私達を守る風出てきて)

防御風ディフェンスウィンド

愛月達の周りの風の動きが変わり上昇気流になる。

ブンッ!

ドラゴンの爪が風によって弾かれた。

「よしっ」

「すごいですよ ︎」


だが、
ドラゴンがそんな出来立ての魔法では諦めず。
またしても爪を振り下ろす。

ブンッ!
ブンッ!
ブンッ!

簡単に弾かれてしまう。
今度は空に舞い上がり、翼で風を起こした。

ブゥン!

ほかのドラゴンもそれを真似し、

ブュゥゥゥゥゥゥッ ︎

風の盾が霧散した。

「あっ」

この時愛月は、なんとも言えない倦怠感を感じていた。
言わずともわかるそれは言わば魔力枯渇。

慣れない魔法を使い、維持したその魔力量は、限界に近い。

「愛月様 ︎」

「うっ」

さらにドラゴンが攻撃準備をする。

「愛月様っ!」

そしてドラゴンの口から炎が吹き出る。

龍の炎息ドラゴン・ブレス

ドラゴンの攻撃の中で最も威力の高い攻撃が二人を襲う。

「助けて…お……兄…ちゃん」

愛月の口から漏れた言葉は、現実には無理なこと。
異世界であるこの世界に彼女の兄はいない。

愛月は分かっていた。
ただ、このまま兄と関係が戻らないのは純粋に嫌だったのだ。
愛月の英雄ヒーローは、いつだって兄だった。
友人と喧嘩した時も
失敗した時も
怒られた時も

虐められた時も

ずっと愛月を見て側にいて励まし助けてくれた兄が。

いつだって一緒にいてくれた兄が。

ずっと笑いあっていた兄が。

いなくなった兄を信じて待っていたら帰ってきた時、少女は喜んだ。うれしかったから。

だがそんな思い出はもう消えてしまう。

愛月の意識は、ゆっくりと深い深淵に向かって行く。

「たすけて」


「ああ 後はお兄ちゃんに任せとけ」

愛月の落ちかけた意識の中で声が聞こえた・・・


はい遅くなりました。
最後一人称ですね。
難しいです。

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