異世界の領主も楽じゃない〜うちのメイドは毒舌だけど最強です〜

長人ケッショウ

戦う理由があるなら


鈍い痛みが未だ右手を這っている
見るも無残な右腕を左腕で覆う

「出るとは言ったもののどうしたことやら……」

考えるにもなかなか頭が回らない
まぁ、元からそんな回らないんだけど……

冗談はさておき、痛みに負けかけている脳を回転させる

まずは状況整理からだ
今俺はティンディッヒの幻術の中だ
…………多分だけど
魔力は普通に使える
……ただ
治癒魔法無駄に使ったせいか体の奥底からくる重苦しい脱力感
魔力切れしそうだ

「……ほんっと無理ゲーだな」

不意に不敵な笑みが溢れる
あぁ、上等だやってやろうじゃねか!
幻術、現実どんと来いや!

「この幻術の打開策なんて俺には分かんねぇ!
でも、やるだけやって諦めてやるよ!」

大きく手を前に突き出し体内のありったけの魔力を左手に貯める
煌々と光る左手
最初にティンディッヒ以下クソ野郎にぶっ放した魔法程の魔力は集まった
でも、この狂った世界を壊すには足りない
だから……

「……まだだ、もっともっとぉおお!」

俺の気持ちの昂りにに木霊する様に更に魔力が膨れ上がる
何となく目の前のティンディッヒが笑った気がした、あのうざ苦しい顔で

「テメェは俺のデビュー戦の踏み台になる程度の男だろうがぁぁ!
これでもくらっとけ!!!」

ありったけの魔力を放出
「リライト・ルークス」

放たれた魔力は透明な壁にぶつかり競り合う
阻まれた魔法はその不可解な壁を押し破ろうとする
威力が足りなかったのか徐々に光が弱くなっていく
今になって努力不足を恨むことになるとはな……

「くっ!」

頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼むから
あんな奴に、今負けるわけにはいかない
リルやシオンの思いを無駄にする訳にはいかない
だから!今だけは!今日だけは!
負けたく無い!負ける訳にはいかない!

左腕を力強く更に前に突き出す

「いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

ガラスが割れる様な音が広がる
世界が一転したように静まりかえった世界に喧騒が生じる
眼前には驚きで口が開いたティンディッヒ
あたりを見渡すとリルとシオンが身を乗りだりしてこちらを見ていた
どうやら幻術を破れたようだ

「そ、そっそんな馬鹿な!俺の幻術をお前みたいな、出来損ないに破られるなんて……」

わなわなと手で顔を覆い隠す
驚きを隠せずその場に崩れ落ちるティンディッヒ

ゆっくりと近づき右手を構える

「はぁ、はぁ、お前の……負けだ……ティンディッヒ」

「そ、そんな……馬鹿な……俺が……何か、なにかの間違い……に決まってる」

「……だから言っただろ駄犬でも隙さえあれば喉元にかみつくってな」

「ーっく!くそ………………降参だ……」

「勝負あり!勝者はハル・カンザキ様です!」

俺のデビュー戦は全勝に終わった







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