異世界の領主も楽じゃない〜うちのメイドは毒舌だけど最強です〜

長人ケッショウ

はじめてのセンソウ

そびえ立つ薄汚れた白いコロッセオで俺たちを最初に出迎えたのは
綺麗なスーツ姿の執事でも、気品良いメイドでも無い
狂った様に興奮する観客の熱気だった
一歩踏み込むだけで気持ち悪い熱気が俺の周りを包み込んでいき、三十秒も経たずして額から汗が滴る

「大丈夫ですか?」

手にハンカチを持ち涼しい顔で尋ねてくる
……お前保冷剤かよ

「あぁ、多分……な」

「これを」

「ありがとう……」

渡されたハンカチで顔を拭いてさっぱりしたところで疑問をぶつける

「で、これは何?」

「領土戦争を観ようと集まって来た野次馬達ですね」

リルはお得意の冷ややかな視線を興奮した観客に向ける

「じゃあ、今領土戦争をやってるって事か?」

「はい、恐らくですが……」

「おっまちしておりまっしたーーー!!!」

唐突にかけられた甲高い声に思わず背筋が伸びた

「ちわちわ!どもども、お久しぶりですございまーす!ハル・カンザキ領主様とその使用人様」

「お、おお!久しぶり……えーと……」

元気よく目の前に現れた声の主
ショートボブで綺麗なピンク色の髪
レースクイーンの様な格好
……胸がないので水着にしか見えない
小学生位の背丈で、整った目鼻立ちの女の子はしどろもどろになっている俺を見て、クスリと笑う

「どーしたんですか?」

「いや、そのな……えーと」

ギャルの様な口調で話しながら俺の周りをくるくる回る
自分ではどうにもできないのでリルに助けを求めようとリルを見るとお馴染みの視線でこちらを見ていた
何で蔑んでんの!いや、俺何もしてねぇからな!
てか、助けて!

目で必死に訴えかけると
やれやれとため息混じりに首を振り

「その辺にしなさい、アリア」

「はーーーい!」

名前を呼ばれると大きく手を挙げ返事をする
……やっと解放された
ほっと一息つく

「ハル様、彼女はコロッセオガイドのアリアです」

「アリちゃんだよー!」

「アリア、前から言っているでしょう。これでもハル様は領主様だから、礼儀を尽くせと」

「うん、いや、お前もな」

リルが何食わぬ顔でこちらを見てくる
腹立つわー、本当腹立つわー
リルへの怒りを心の底に沈め、こほんと咳払いを一つ

「じゃあ、アリアコロッセオの案内を頼む」

「いー!」

いや、お前はドクロの覆面した下っ端かよ……





アリアに案内され、VIP席と書かれた場所にたどり着いた
案内中もあざとうるさいアリアの相手で疲れ果てた
なのに、こいつ全然元気!何お前、元気百パーセントなの!
VIP席にはタキシードや、宮廷衣装みたいな服を着た人たちが王座の様な椅子に座りワインを嗜みながら闘いを眺めていた

うぉぉーという雄叫び、鳴り響く金属音、敵に向けた手から発射される魔法、それを見て歓声をあげる狂乱した観客たち

視界に入る景色に圧倒され開いた口が塞がらない

「これが……領土戦争……」

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