異世界の領主も楽じゃない〜うちのメイドは毒舌だけど最強です〜

長人ケッショウ

避けれない現実

机に肘をついて頭を抱える

「死ぬか奴隷になるか……か」

アニメみたいなハーレムや最強ヒーローになったり
幸せな異世界ライフを夢見ていたのに
現実の異世界は戦争……

「どうぞ」

コッというコップの音
目の前に一杯の水が置かれる
コップを口に近づけ一気に飲み干す
喉を通る水が渇きを潤す
背後の窓から風が強く吹きテーブルのロウソクの火が消える

「イグニス」

リルが人差し指をロウソクに向け唱えた
突然ロウソクに火がついた

「え、今のって……」
「イグニスですが?」
「違うよ!ポッて火がついたじゃんか!」
「何を言ってるのですか、燃えてください」
「嫌だよ!……もしかして今のって、魔法……」
「はい、魔法です」

“魔法”その言葉がリルの口から出た瞬間
心の奥底から興奮と歓喜が湧き上がって来た

「……それってさ、俺も使えるのか?」
「はい、もちろんですとも」
「教えてくれ!!」

両手を顔の前で合わせて頼む
リルの顔を見ると冷たい視線を送っている
小さくため息をついて一言

「……からかうのもいい加減にしてください、その下りはもう飽きました」

「……え、いや、大真面目なんだけど……」

リルはゴミを見るかのような目で見てくる

「ハル様いたずらにも限度があります」
「……」
「これはいたずらが過ぎています」
「……いや、いたずらじゃないんだけど……」

リルが大きく振りかぶった両手をテーブルに叩きつけこちらを睨みつける

「……」

「……」

沈黙が二人を襲い、時計の音が響く

「……リル。俺は……その……嘘ついてる訳ではないんだ。何か気に触ったなら謝るから」

話しかけてもなおリルは静かにこちらを睨み続ける
リルの視線は蛙を睨む蛇のように鋭く目を背けたくなるでも、ここで目を背けてたらだめだと自分に言い聞かせてなけなしの勇気を振りしっぼって話を続ける

「理解……出来ないなら……それで良い。……ただ、嘘ではないこれだけは信じてくれ……頼む」

椅子から立ち上がり、少しでも誠意が伝わるように深く深く頭を下げる
リルはどんな顔をしているだろうと考えると頭を上げるのが怖くなる

「……頭を上げて下さいハル様」
「……」
「主人であるあなたがそこまでおっしゃっるのなら……私は信じます」
「本当か……」
「ええ、もちろんです。だってあなたは私の主人なのですから、従者が主人を信じないで主従関係は成り立ちませんから」
「ありがとう……本っ当にありがとう……」

心地よい風でリルの髪を軽やかになびく


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