異世界は神様とともに
第一章 007 「別れ」
「ホープ。起きて。もう朝だよ」
ミーニスがいつまでも起きてこないホープを心配して起こしに来た。
「あぁ、ごめん。おはよう」
ホープは2階から1階に降りて、椅子に腰を掛けた。
「待っててね。今からご飯作るから」
キッチンにミーニスが立ち、ご飯の支度をしている。ミーニスの料理はあり得ないくらいうまいのだ。
椅子に腰掛けるホープにミルバが近づいてきた
「少年。話があるわ。こっちに来て」
「お、おう」
呼ばれたホープはミルバに連れられて、2階のミルバの部屋に行く。なんの話をするのだろう。
怒られるのかなとホープは少しビビっていた。
「話ってなんだ?」
「なぜ私達に嘘をつくの?」
「え?嘘って、何が?」
「とぼけても無駄よ。あなたが誰かと話していたのは聞いていたのよ。昨夜、部屋で誰かと話していたかと思ったら、急に動かなくなって。その後は何しても起きなかったわ」
「………………」
図星をつかれたホープは戸惑う。だが、言い訳など思いつかず、黙り込むしかできなかった。
「誰と話していたの?部屋には誰もいなかったはずだけど。」
「そ、それは……」
どうすればいいのだろうと無意識のうちに助けを求めるようにうつむく。
そこには無の神、カルトの加護がネックレスとしてぶら下がっている。
「まぁいいわ。だいたい検討はついているもの」
ミルバはホープに背を向けて1歩前に踏み出す。そして今度は、ゆっくり振り向きホープを見つめる。その瞳はどこか悲しげで、儚く、だが怒りや憎しみも含まれていたように感じた。
「無の神、カルトでしょ?」
ここでうなずいてしまったら、きっとミルバは軽蔑するだろう。ミルバだけではない。ミーニスやタルボもそうだ。もうここにはいさせてくれないかもしれない。
嘘をつくべきなのだろうか。ここでうそをつけば疑われる事はないだろう。だがそれでいいのだろうか。
ホープは考えを巡らせる。手に力が入り、拳を握りしめた。
「俺は、カルトと話していた。一回ではだけじゃない。何度も……」
ミルバは目を見開く。
「どうして……?」
その声はミルバのものではなかった。部屋のドアが開き、ミーニスが顔を出す。
「今の話、本当なの?ホープ、記憶をなくしてたから、カルトの事は知らないって言ってたよ。嘘だったの?」
「………………」
「どうしてなの?何の話をしてたの?」
黙り込むホープにミーニスは問いかける。ミーニスの瞳は、軽蔑も憎しみも怒りの色も見えない。ただ、悲しみに染まっていた。
「言えない。まだ、言えない……」
「っ!?」
ホープの言葉にミーニスは大きく反応した。目が潤んでいる。今にも泣きそうな目をしてホープを見つめるミーニスの瞳には今度こそ明確な怒りが見えた。
ミーニスが何か言おうとしたが、それに気付いたミルバが先に言葉を発していた。
「悪いが少年。お前はもうここにはいられない。出ていってくれ…………」
荷物を整えてホープは蛇車から降りる。見送りはタルボだけだ。
「すみません。ホープさん。ミーニスは大事な人を無の神の使者に殺されたんだ。父も無の神の使者との戦争で戦士している。加護を持ってるホープさんの面倒を見てるのもビックリするような事だったんだよ」
「そう、だったのか……」
「では、行かなければならないので…………」
タルボは蛇車に乗り、お辞儀をしてドアを閉めた。
蛇車はゆっくりと進んでいって、見えなくなった。
「どうすれば、良かったんだよ…………」
一人残されたホープは小さくそう呟いた。
「ちくしょう!」
こみ上げる怒りに耐え切れず、叫びをあげる。
その怒りはミーニスへでもミルバへでも、ましてやタルボへでもない。
守ることだけ考えて、強くなることだけしか頭になかった、自分自身への怒りだった。
「俺は、最低だ…………」
ミーニスがいつまでも起きてこないホープを心配して起こしに来た。
「あぁ、ごめん。おはよう」
ホープは2階から1階に降りて、椅子に腰を掛けた。
「待っててね。今からご飯作るから」
キッチンにミーニスが立ち、ご飯の支度をしている。ミーニスの料理はあり得ないくらいうまいのだ。
椅子に腰掛けるホープにミルバが近づいてきた
「少年。話があるわ。こっちに来て」
「お、おう」
呼ばれたホープはミルバに連れられて、2階のミルバの部屋に行く。なんの話をするのだろう。
怒られるのかなとホープは少しビビっていた。
「話ってなんだ?」
「なぜ私達に嘘をつくの?」
「え?嘘って、何が?」
「とぼけても無駄よ。あなたが誰かと話していたのは聞いていたのよ。昨夜、部屋で誰かと話していたかと思ったら、急に動かなくなって。その後は何しても起きなかったわ」
「………………」
図星をつかれたホープは戸惑う。だが、言い訳など思いつかず、黙り込むしかできなかった。
「誰と話していたの?部屋には誰もいなかったはずだけど。」
「そ、それは……」
どうすればいいのだろうと無意識のうちに助けを求めるようにうつむく。
そこには無の神、カルトの加護がネックレスとしてぶら下がっている。
「まぁいいわ。だいたい検討はついているもの」
ミルバはホープに背を向けて1歩前に踏み出す。そして今度は、ゆっくり振り向きホープを見つめる。その瞳はどこか悲しげで、儚く、だが怒りや憎しみも含まれていたように感じた。
「無の神、カルトでしょ?」
ここでうなずいてしまったら、きっとミルバは軽蔑するだろう。ミルバだけではない。ミーニスやタルボもそうだ。もうここにはいさせてくれないかもしれない。
嘘をつくべきなのだろうか。ここでうそをつけば疑われる事はないだろう。だがそれでいいのだろうか。
ホープは考えを巡らせる。手に力が入り、拳を握りしめた。
「俺は、カルトと話していた。一回ではだけじゃない。何度も……」
ミルバは目を見開く。
「どうして……?」
その声はミルバのものではなかった。部屋のドアが開き、ミーニスが顔を出す。
「今の話、本当なの?ホープ、記憶をなくしてたから、カルトの事は知らないって言ってたよ。嘘だったの?」
「………………」
「どうしてなの?何の話をしてたの?」
黙り込むホープにミーニスは問いかける。ミーニスの瞳は、軽蔑も憎しみも怒りの色も見えない。ただ、悲しみに染まっていた。
「言えない。まだ、言えない……」
「っ!?」
ホープの言葉にミーニスは大きく反応した。目が潤んでいる。今にも泣きそうな目をしてホープを見つめるミーニスの瞳には今度こそ明確な怒りが見えた。
ミーニスが何か言おうとしたが、それに気付いたミルバが先に言葉を発していた。
「悪いが少年。お前はもうここにはいられない。出ていってくれ…………」
荷物を整えてホープは蛇車から降りる。見送りはタルボだけだ。
「すみません。ホープさん。ミーニスは大事な人を無の神の使者に殺されたんだ。父も無の神の使者との戦争で戦士している。加護を持ってるホープさんの面倒を見てるのもビックリするような事だったんだよ」
「そう、だったのか……」
「では、行かなければならないので…………」
タルボは蛇車に乗り、お辞儀をしてドアを閉めた。
蛇車はゆっくりと進んでいって、見えなくなった。
「どうすれば、良かったんだよ…………」
一人残されたホープは小さくそう呟いた。
「ちくしょう!」
こみ上げる怒りに耐え切れず、叫びをあげる。
その怒りはミーニスへでもミルバへでも、ましてやタルボへでもない。
守ることだけ考えて、強くなることだけしか頭になかった、自分自身への怒りだった。
「俺は、最低だ…………」
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