異世界は神様とともに
第一章 005 「蛇車と二度目の“無”」
「こんにちは。ミー姉とミル姉の弟、タルボです。本日はよろしくお願いします」
城へ向かうタルボの護衛のためにホープたちはタルボと合流した。
思っていたよりも幼く真面目そうなタルボの自己紹介を聞き、しっかりものなのには違いないとホープは感心を示す。
「よろしくな、タルボ。全力で護衛させてもらうぜ」
実力ではどの程度かわからないが、運動が得意であったホープは自信満々であった。
「じゃあ、向かうわよ。少年、蛇車に乗る準備をしなさい」
ミルバは自身に満ち溢れているホープに声をかけた。
“蛇車”と言うものがどんなものかはわからなかったが、素直にミルバについて行った。
「な、なんだ、この変な乗り物……」
目の前にあったのは、馬車のような形をした車に蛇をくっつけた物であった。文字通りの蛇車であったのだ。
「ホープは初めてだったね。私も初めて見たときは乗る気が失せたよ」
唖然とするホープにミーニスは苦笑しながら言う。
そんな事お構いなしのミルバがタルボを連れてさっさと蛇車の中に入っていった。それに気付いたミーニスもホープの手を取って蛇車の中に入る。
中に入ったホープは思わぬ光景に目を見開き、口を半開きにさせる。
「なんで、こんなに中が広いんだ……?」
蛇車を外から見ていた時は、人が4人入るのがやっとくらいの大きさだったのだが、中は一般的な家と同じくらいの大きさであった。
二階もあるようだし、キッチンやお風呂場まであった。
「バックパックと同じ原理なの。魔法で中を広くしているんだよ」
ミーニスが蛇車の中を走り回るホープに説明する。
「すげー!魔法ってすげーな!」
この世界の人が見ても、ふーんで終わるようなことであったが、魔法が存在しない世界に住んでいたホープからしてみれば、とても感動する光景だったのだ。
お城に着くまで3日はかかるらしく、この日はこれで各々の部屋で寝ることにした。
部屋に入ったホープはバックパックを置き、ベットに寝そべった。
これからはいろいろなことが起きる。それは今日みたいな楽しい事だけではなくて、現実では考えられないような試練を乗り越えなければならないことだってある。それを踏まえて、この世界でどのように生きていくかを考えなければならない。
ホープがそんな事を考えていると、首にかけていたネックレスが光った。
(ずいぶんと思い悩んでいるようだな)
カルトがまた、テレパシーを通じて話しかけてきたのだ。
(そりゃあ、そうだろ。前置きなしにこの世界につれてこられてるんだからさ)
(まぁ、そういうなよ。かなり楽しんでるではないか。それはそうと、今日はお前の武器について話そうと思ってな)
(不知火の事か?こいつ、すごい強い武器らしいな)
(強いも何も、名前のついてる武器なんてそうそうないんだぞ。サーダル武器ってのもそうそうないものなんだからな)
(そんな強い武器を、俺が持っているのか)
(お前なら、うまく使えこなせるだろう。不知火がお前を選んだ時点で、ものすごい力を持ってるってことなんだよ)
(俺って、そんなに強かったのか。それはチートとかではなく、俺としての実力って事か?)
(そうだ。そもそも、儂は個人の力を底上げする能力などもっとらん。そうだ。一度、“無”に戻ってきてくれないか?お前の能力値に興味がある)
(別にいいけど、あそこって戻れるんだな……)
(じゃあ、そこでじっとしとけよ。“無”にいる間、こっちの世界では死体のようになるからな)
カルトがそういった直後、ホープが寝ていたベットの上に魔法陣が浮かび上がり、光り始めた。
光は段々強くなり、ついには見えない程になってしまった。
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