変わってゆく僕

みどり。

第四話 人の辛さと信頼

家での夫婦喧嘩は、日々エスカレートしていくばかり。それでも我慢した。
何も言い出せなかった。言う勇気がなかった。
最初は口喧嘩だったのに、暴力が増えてった。お母さんがお父さんに叩いたり、蹴ったりする事が多かった。
見ているだけで、声をきいているだけで、恐かった。やめてほしかった。
お父さんは私よりも辛いはずだった。毎日怒鳴られて、殴られて。
お母さんも、私よりも辛いはずだった。お父さんに無意識に傷つくことを言われて、それを一人でため込んで。
二人共、辛いはずだった。分かってあげられなかった。
その時は、分からなかった。だから、喧嘩が始まるとすぐに大声で泣いちゃって。
お母さんをもっと怒らせた。お父さんをもっと傷つけた。
それを、自分自身で分かっていなかった。喧嘩が恐くてたまらなかった。
早く、前みたいに、楽な日常に戻ってほしかった。それだけでよかった。
いつも必死に耳を塞いでいたから、宿題ができなかった。毎日担任の先生に怒られた。
それでも理由は、言えなかった。言うのが恐かった。
いじめっ子の女の子の舞ちゃんがある日突然優しくなってから、舞ちゃんの事を心のどこかで許していた。信じていた。
ある時夫婦喧嘩の事を話した。今までのこと、全部話した。
慰めてくれるって、思ってた。もう酷い事されないって、言われないって、思い込んでた。
もう友達なんだって、一人の友人として仲良くしていいんだって。
だから、話した。でも、違った。
彼女は言った。
「だからどうしたの?嘘やめたら?そういう所が大っ嫌いなんだよね。死ねば?嘘つき」

「エッセイ」の人気作品

コメント

コメントを書く