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矢崎未峻

長くなりそうな夜

 空気が重い。
 そういやこれ雅人も知らないんだっけ。どうりで助け舟が出ないわけだ。

「黒鉄君は、バカだね」

「「知ってる」」「おい!」

 第一声がそれかよ!?

「だってそうじゃん。妹さんが恨んでるわけ無い。黒鉄君が何をして来たのか、全部目の前で見てるんだから」

「見てるからこそ恨んでるかもしれないだろ?」

「だから黒鉄君はバカなんだよ」

「訳わかんねーよ。何でそうなる」

「深読みし過ぎって事。遺書に嘘書いてどうするの?普通しないよ?」

「り、良心が優って書けなかったとか」

「じゃあ恨んでないじゃん」

 確かに。もし書いてても、それは恨んでるんじゃなくて怒ってるだけだ。

「ほら、バカだった」

「ああ、バカみたいだな。・・・は、はは」

 真面目に話してたはずなのに、自分のマヌケさが本当にバカらしくて笑えて来た。
 それは皆にも伝染して、重苦しかった空気が一変した。
 やっぱり、うちのパーティは笑ってないとな。

「さて、そろそろ寝るか」

「あー、それなんだが」

「?何だよ?」

「布団が2人分しかない」

「・・・・・マジで?」

「おう。1人分使えない状態になってた。で、いける?」

「確か、2人分あったはずだけど・・・」

「使えるか分かんねぇもんな」

「最後に掃除しに行ったのは3日前だから大丈夫だと思うけど」

「オレの家の例があるから」

「行って確認するしかないな」

 てな訳で父さんの家に出発!
 到着。

「やっぱ近いな」

「向かいの家だからな」

 早速端末から取り出した鍵で玄関を開ける。
 ぱっと見ではこの家も被害とかなさそうだ。

「ちょっと見てくる」

 まずたまに使ってる布団。大丈夫。
 次に使わずに置いてある布団。・・・うん、まあ多分、大丈夫。
 誰がこっちで寝るか知らねぇけど、そいつにはたまに使ってる布団使って貰おう。

「お、戻ってきたな。どうだった?」

「大丈夫そうだ。で、誰がこっちで誰があっち?」

「当然悠はこっちだろ?」

「まあ、それはな。てことは雅人はあっちか」

「そりゃあな。・・・ど、どうする?」

「私が雅人の家。結衣は悠の家ね」

「「え?それでいいの?」」

「私は当然大丈夫よ!」

「まあお前はな。白亜さんは?」

「あ、私も大丈夫。それでいいよ」

 じゃあそれでいいか。という事で明日の集合時間だけ決めて雅人と加耶を見送った。
 そのまま使ってもらう部屋まで白亜を案内して、一度リビングへ。
 この家はガスも電気も水道も止めてないから基本なんでも出来る。
 まあ何が言いたいかと言うと、いい時間になってるし風呂にでも入ろうかと。

「風呂、入るだろ?準備してくるから」

「あ、うん。ありがと」

 風呂の準備をして戻って来たら、何故か気まずい雰囲気になっていた。
 だがしかし、そんな雰囲気で俺が空気を読むはずがなく

「雅人のやつ、今日中に告んねぇかな〜」

 何となく思ったことを口にしていた。

「してたら面白いけどね」

「振られる事もまずあり得ないから弄り倒せるしな」

「そだね。加耶ちゃんも四谷君のこと好きみたいだし」

 おっと、流石にそっちもご存知ですか。
 まあ見てれば分かるか。
 とはいえそんなに長いこと一緒に居るわけでも無ければそんな雰囲気になる時間なんてほんの僅かだったはずなんだけど。
 素直に聞くか。

「そういえば、いつからその辺のことに気付いてたんだ?」

「えっとね、加耶ちゃんと仲良くなってすぐだから・・・去年の秋かな」

「割と最初から知ってるんだな。確か、加耶が雅人のこと好きだって自覚したのその時期だから」

「え?・・・遅くない?」

「幼馴染だから意識しなかったんだろうな」

「黒鉄君は意識しなかったの?」

「そんな余裕無かったし、そういうの分からないから」

「あ、ごめん」

「いいよ、気にしなくて」

 また気まずい雰囲気になってしまった。
 いや、うん。あの流れになったらしょうがないよね。
 タイミングが良いのか悪いのか、風呂が沸いたらしい。

「風呂、先行って良いよ」

「え、いや、家主なんだから黒鉄君か先に」

「・・・わかった。じゃあ悪いけど先に入ってくるわ」

 寝るまでまだ先が長そうだ。

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