世界がゲーム仕様になりました

矢崎未峻

上手くいかないことばかり

 威勢良く出発したは良いが次の目的地が決まってない。

「ここからだと、私の家が近いよ」

「じゃあ、加耶の家に向かおう。・・・って、場所知らねぇ」

 加耶のナイスアシストで目的地は決まったが、場所が分からないという次の問題が発生。

「え?幼馴染なんだから知ってるんじゃないの?」

「幼馴染だけど加耶の家に行ったこと無いんだよ」

「正確には、引っ越し後の私の家に来たことがない。だけどね」

 まあ、そういう事だ。
 加耶は3年ほど前に家が火事になって引っ越したのだ。
 それから会う頻度も少なくなって新しい家には行ってないままだ。

「とりあえず進まないか?時間も限られてるんだしさ」

「そうね、じゃあ私に付いてきてね」

 てな訳で改めて出発!
 ・・・。
 ・・・。
 ・・・ん?
 んんんんん?
 先行してんの、雅人じゃね?場所知ってんの?

「なあ、雅人。加耶の家知ってるのか?」

「ん?まあな。何度か行った事あるし」

「1人でか?」

「?当たり前だろ」

「1人で、何度か・・・」ボソッ

 おっと?白亜がボソっと気になる発言を。

「じゃあ案内と先頭頼むわ」

「おう」

 会話を終わらせて雅人が前を向いた所で、白亜の耳元で

「白亜、近々雅人が加耶に告白するらしいからあまりいじらないようにな」

 と、一応拗れることが無いように注意を促しておく。

「わあっ!そうなんだ!分かった、気をつける!」

 器用に小さい声で叫びながら了承を得たのでまあ良しとしよう。
 それにしても、モンスターと出会わないな。
 白亜の家を出発してからすでに20分ほど歩いているのに一度も遭遇していない。
 う〜ん、流石におかしいよなぁ。

「そういえば、モンスターに出会わないね」

「そうだな。危険が無くて良いことなんだけど、収入が減るからなぁ」

「複雑な心境ってやつ?」

「いや、別に複雑では無いかな。収入より安全のほうが大事だし」

「・・・」

「なんだよ?」

「ううん、何もないよ♪」

 心なしか嬉しそうに見えるんだが・・・。
 まあ、気にしてもしょうがないから気にしないけど。


「おい、悠。あれ!」

 雅人がちょっと慌てた様子で前方を指差していた。
 その方向に顔を向けると、どこかのパーティがゴブリンと戦っていた。
 それだけなら普通なんだが、どうやら殺られかけてるみたいだ。
 それも当然と言えば当然だ。

 遠くから見てもバランスの取れたパーティを組んでいるゴブリン五体に対し、ヒーラーのいない女のみの4人パーティ。
 ぱっと見の構成も前衛1人に後衛3人とすこぶるバランスが悪い。加えて唯一の前衛がかなりの負傷具合ときた。

 助けるにしてもここからだと距離があって間に合うかどうか怪しい。
 それに、間に合ったところで俺たちがあのゴブリン供を倒せる保証もない。
 助けるなんて、そんなリスク負えないな。
 そもそも、助ける気も毛頭ない、んだけど

「早く助けに行かなきゃ!」

 という訳だ。
 1人で走り出したので止める暇もない。
 止めるけどね。

「白亜!ストップ!」

 追いついて引き止めることに成功した。
 が、お怒りだ。

「距離があり過ぎるんだよ。普通に走っても間に合わない。助けるための策があるから聞け」

「うん!分かった!」

 素直かよ。従順かよ。犬みたいで可愛いなおい。
 おっと、脱線しかけた。

「雅人と加耶も聞いて。まず加耶。ここからだと魔法は射程外だよな?」

「うん、私の技量じゃ届かない」

「なら長距離の牽制攻撃は俺がやる。魔導銃なら射程内だ。次、雅人。どれくらいであそこまで辿り着ける?」

「1分くれ」

「長い。40秒だ」

「・・・なんとかやってみる」

「よし、とりあえずすぐに牽制攻撃するから走れ」

「了解!」ダッ!バンッ!!

「白亜は前衛の子の治療。加耶は射程内に入ったら雅人の援護。2人は俺が走り出してから2秒後に追いかけてくること」

「「了解」」

「じゃ、行ってくるわ」ダッ!

 2秒後にちらっと後ろを確認して、ちゃんと指示に従ってくれた事を確認する。
 再び前を向いた頃、雅人がタンク役を始めた。
 俺の撃った魔力弾は運良く大剣を持ったゴブリンの腕に当たったらしく、攻撃の威力が落ちているみたいだ。
 それでも徐々に押されているのでとっとと追いつかなければならない。
 そんな訳で、魔力操作による擬似強化を行い、速度を一気に上げる。
 あ、ヤベ。速度上げすぎた。

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