世界がゲーム仕様になりました
勧誘4
こんな状況になった経緯を聞いたところ、最初は順番に勧誘していったそうだ。もちろんパーティごとに。
そして彼女がどこにするか考えるから待ってくれと言ったので待ち時間になったそうだ。
それで待ってる間にそれぞれが絶対自分のパーティに入ってくれると主張し始め、ケンカに発展した。
かなり大まかに言うとそんな感じらしい。
はぁ、やはりあのブタどもはバカの集まりだったか。
この子は考え込んでる時に唐突に始まったもんだから抜け出すタイミングを逃したそうだ。いや、正確には逃げ出す暇がなかったのか。
まあ何にせよ可哀想な話だ。
知りたかったことが聞けたので満足した俺はケンカを止めるのもバカらしいので再び本を取り出して椅子に座った。
だがしかし、気が抜けた途端無視できないものが襲ってきた。
痛い。全身が。顔面が特に痛い。
考えてみれば当たり前だよな。あれだけ殴られたんだから。
これじゃ本なんて読んでられない。集中できるかよ。
本を閉じて顔を上げたら、目の前に心配そうな顔をしたあの子の顔があった。
何が起きているのか分からず、超至近距離で数秒フリーズして、彼女が勢いよく顔を離す。
俺はと言うと、今もまだ呆然として固まっている。
まてまてまて、今のは何だ!?何が起こった?いつの間にあんな短時間の間にあんなに接近してきた!?
落ち着け、とりあえず落ち着け。
こんな時は状況を把握する所から始めるんだ。まず、あの子の様子だ。
慌ててるな。ものすごく慌ててる。顔赤くしてわたわたしてる。
あれ見たら頭ん中ぐちゃぐちゃになってるのがバカらしくなってくる。
彼女が慌ててるのを見て落ち着きを取り戻した俺は、彼女が落ち着くまでに少し思いついた考えをまとめておくことにする。
思いついたことと言っても、ただ話す内容を思いついただけなんだが、この話が長くなりそうだ。
というわけで少しでもまとめておこうと思ったわけだ。
あ、膝抱えて丸くなった。・・・いや、何で!?
あ、立った。まだ顔は赤いけど色々飲み込めたんだろうな〜。なんかそんな顔してこっち向いた。
「あ、えーっと、その、このケガの事なんだけど・・・大丈夫だからな。そりゃ結構殴られたから痛いけどさ、大したことないから」
「で、でも・・・」
「ぐたぐた言い合うのは嫌だから何も言うな。めんどくさい。それより、ちょっと話したいことあったから話しをしよう」
「・・・分かった」
うわぁ、全然納得してない。
まあ、知ったこっちゃない。反論してこないのが悪い。そう言うことにしておこう。
「まず聞いときたいんだけど、雅人と加耶からどんな勧誘受けた?」
「えっと、雅人って?」
「あぁ、名前じゃ分かんないのか。四谷だよ、四谷 雅人」
「あ、四谷君か。あの2人が出てくるってことは、あなたが悠って人?」
「あー、そこからか。そりゃそうだ、順序間違えてたな。ごめん。・・・改めて、橘 華耶と四谷 雅人の仲間の黒鉄 悠。そんで、どんな勧誘受けた?あ、そっちの自己紹介は良いよ。名前は2人から聞いたから」
「あ、えっと、じゃあどんな勧誘だったかだよね。私が2人から受けた勧誘は、なんか他のパーティの人たちと違ってたかな」
「どんな違いだった?」
「他のパーティは私に入って欲しいというか、言い方悪くなっちゃうけど、『絶対うちのパーティがいいからこっちに来い』って下心とか剥き出しの勧誘だった。けど2人の勧誘は、勧誘って感じがしなかったの。なんて言うか、雑談の延長線上で『よければ選択肢に入れてみて』って感じ。私の感覚で話したんだけど、伝わるかな?」
「ありがとう。何となく分かった。2人は多分、俺に全部委ねたんだと思う。言い方変えると、決定権を俺に渡したんだ」
「どうして?」
「まず、俺とあいつらの求めるヒーラーは違う。あいつらが求めてるのは"良いヒーラー"で、俺の求めてるのは"死んでも惜しくないヒーラー"だ。意味わかんないだろ?」
「うん。何言ってるか分かるけど、わかんない」
「それでいい。今から俺の話しを聞いたら、怒っていいから。・・・俺がヒーラーをパーティに入れたい理由は、生存率を上げたいから。当たり前だと思うかもしれない。でも、他の奴らとは全然違う。生存率を上げたいのは雅人と華耶の2人だけ。俺とパーティに入ったヒーラーの命は2人が生きてればどうでもいい。ほら、全然違うだろ?俺はさ、2人以外どうでもいいんだ。2人が笑って楽しく生きられるなら、どんな世界でも構わない」
いつの間には俺は下を向いていた。彼女が怒るのが怖いわけではない。
ただ、思った以上に必死だった自分に驚いているだけだ。
ただ、思った以上に素直に言葉が出てきて驚いているだけだ。
ただ、自分の決定に、そしてその理由に、心底驚いているだけだ。
「俺の求めるヒーラーは、捨て駒だ。いざという時肉壁にでも犠牲にでもして2人を生かすための捨て駒にできる。そんなヒーラーを求めてるんだ。極端な話、回復魔法が使えればモンスターでも構わない。俺たちのパーティは強いと思う。2人がチートだからな。俺は凡人だけどな。うちに入るメリットもいっぱいある。けど、俺というデメリットが大きすぎる。メリットなんてあってないようなものだ」
この話が終わったら、ここから立ち去ろう。こんな事話した後で、入ってくれるわけがない。
当たり前だ。常に俺に殺されるかもしれないリスクのあるところに入りたいわけがない。
とっとと終わらせよう。もういいだろう。
「だから、俺たちのパーティは、君を勧誘しない」
そして彼女がどこにするか考えるから待ってくれと言ったので待ち時間になったそうだ。
それで待ってる間にそれぞれが絶対自分のパーティに入ってくれると主張し始め、ケンカに発展した。
かなり大まかに言うとそんな感じらしい。
はぁ、やはりあのブタどもはバカの集まりだったか。
この子は考え込んでる時に唐突に始まったもんだから抜け出すタイミングを逃したそうだ。いや、正確には逃げ出す暇がなかったのか。
まあ何にせよ可哀想な話だ。
知りたかったことが聞けたので満足した俺はケンカを止めるのもバカらしいので再び本を取り出して椅子に座った。
だがしかし、気が抜けた途端無視できないものが襲ってきた。
痛い。全身が。顔面が特に痛い。
考えてみれば当たり前だよな。あれだけ殴られたんだから。
これじゃ本なんて読んでられない。集中できるかよ。
本を閉じて顔を上げたら、目の前に心配そうな顔をしたあの子の顔があった。
何が起きているのか分からず、超至近距離で数秒フリーズして、彼女が勢いよく顔を離す。
俺はと言うと、今もまだ呆然として固まっている。
まてまてまて、今のは何だ!?何が起こった?いつの間にあんな短時間の間にあんなに接近してきた!?
落ち着け、とりあえず落ち着け。
こんな時は状況を把握する所から始めるんだ。まず、あの子の様子だ。
慌ててるな。ものすごく慌ててる。顔赤くしてわたわたしてる。
あれ見たら頭ん中ぐちゃぐちゃになってるのがバカらしくなってくる。
彼女が慌ててるのを見て落ち着きを取り戻した俺は、彼女が落ち着くまでに少し思いついた考えをまとめておくことにする。
思いついたことと言っても、ただ話す内容を思いついただけなんだが、この話が長くなりそうだ。
というわけで少しでもまとめておこうと思ったわけだ。
あ、膝抱えて丸くなった。・・・いや、何で!?
あ、立った。まだ顔は赤いけど色々飲み込めたんだろうな〜。なんかそんな顔してこっち向いた。
「あ、えーっと、その、このケガの事なんだけど・・・大丈夫だからな。そりゃ結構殴られたから痛いけどさ、大したことないから」
「で、でも・・・」
「ぐたぐた言い合うのは嫌だから何も言うな。めんどくさい。それより、ちょっと話したいことあったから話しをしよう」
「・・・分かった」
うわぁ、全然納得してない。
まあ、知ったこっちゃない。反論してこないのが悪い。そう言うことにしておこう。
「まず聞いときたいんだけど、雅人と加耶からどんな勧誘受けた?」
「えっと、雅人って?」
「あぁ、名前じゃ分かんないのか。四谷だよ、四谷 雅人」
「あ、四谷君か。あの2人が出てくるってことは、あなたが悠って人?」
「あー、そこからか。そりゃそうだ、順序間違えてたな。ごめん。・・・改めて、橘 華耶と四谷 雅人の仲間の黒鉄 悠。そんで、どんな勧誘受けた?あ、そっちの自己紹介は良いよ。名前は2人から聞いたから」
「あ、えっと、じゃあどんな勧誘だったかだよね。私が2人から受けた勧誘は、なんか他のパーティの人たちと違ってたかな」
「どんな違いだった?」
「他のパーティは私に入って欲しいというか、言い方悪くなっちゃうけど、『絶対うちのパーティがいいからこっちに来い』って下心とか剥き出しの勧誘だった。けど2人の勧誘は、勧誘って感じがしなかったの。なんて言うか、雑談の延長線上で『よければ選択肢に入れてみて』って感じ。私の感覚で話したんだけど、伝わるかな?」
「ありがとう。何となく分かった。2人は多分、俺に全部委ねたんだと思う。言い方変えると、決定権を俺に渡したんだ」
「どうして?」
「まず、俺とあいつらの求めるヒーラーは違う。あいつらが求めてるのは"良いヒーラー"で、俺の求めてるのは"死んでも惜しくないヒーラー"だ。意味わかんないだろ?」
「うん。何言ってるか分かるけど、わかんない」
「それでいい。今から俺の話しを聞いたら、怒っていいから。・・・俺がヒーラーをパーティに入れたい理由は、生存率を上げたいから。当たり前だと思うかもしれない。でも、他の奴らとは全然違う。生存率を上げたいのは雅人と華耶の2人だけ。俺とパーティに入ったヒーラーの命は2人が生きてればどうでもいい。ほら、全然違うだろ?俺はさ、2人以外どうでもいいんだ。2人が笑って楽しく生きられるなら、どんな世界でも構わない」
いつの間には俺は下を向いていた。彼女が怒るのが怖いわけではない。
ただ、思った以上に必死だった自分に驚いているだけだ。
ただ、思った以上に素直に言葉が出てきて驚いているだけだ。
ただ、自分の決定に、そしてその理由に、心底驚いているだけだ。
「俺の求めるヒーラーは、捨て駒だ。いざという時肉壁にでも犠牲にでもして2人を生かすための捨て駒にできる。そんなヒーラーを求めてるんだ。極端な話、回復魔法が使えればモンスターでも構わない。俺たちのパーティは強いと思う。2人がチートだからな。俺は凡人だけどな。うちに入るメリットもいっぱいある。けど、俺というデメリットが大きすぎる。メリットなんてあってないようなものだ」
この話が終わったら、ここから立ち去ろう。こんな事話した後で、入ってくれるわけがない。
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