世界がゲーム仕様になりました

矢崎未峻

勧誘

 ようやくチュートリアルが終わったので集合場所に戻ってみたら、もう2人とも終わってたみたいで俺が最後になってしまった。

「悪い、待たせた」

「いや、そんなに待ってねえよ。それよりやけに遅くないか?」

「それがさ、魔導銃のチュートリアルの場所がなかなか見つからなくて見つけるのに時間が・・・」

「ふ~ん。まあなんでもいいや。次どうする話だったっけ?」

 ちゃんと聞けよ。いつものことだからいいけどさ。
 次はいよいよ外に

「ヒーラーの確保でしょ?」

 そうでした。面倒なイベントが残ってました。
 誰だよ言い出したの!あ、俺か。
 誰誘うのか決まってたっけ?ああ、そういえば

「加耶、心当たりあるって言ってたよな?とりあえずその心当たりのとこ行こうか。案内よろしく」

「はいはい」

 加耶が歩き出したので俺と雅人はそれについていく。
 階段までたどり着いたところで雅人が

「心当たりって、誰のことなんだ?」

 と、ものすごく今更過ぎる質問を投げかけた。
 
「白亜 結衣って子。知ってるでしょ?」

「あ~、あの子ね。あの子ならもうパーティ決まってんじゃねえか?」

「私の予想だと、取り合いになっててまだ決まってないと思う」

「・・・まさかとは思うが、その争いに突っ込んでいくのか?」

「・・・イエス」

 ちなみにこの会話に俺は一切関わっていない。というより、話に全くついていけてない。若干人間不信の俺が他人の名前なんて知ってるわけがないだろう?つまりはそういうことだ。
 てなわけで俺はこのタイミングで質問をする。

「白亜 結衣って誰?」

「・・・お前、マジで言ってる?それともジョーク?」

「大真面目に決まってるだろ」

「学年1、2を争うって男子の間では言われてる女の子よ。女の私から見てもその評価は正しいと思うくらい可愛いわ」

「へえ、加耶が言うんなら相当なんだろうな。全く興味ないけど。で、なんでそんな明らかに競争率高そうな子を?」

「興味ないって男としてどうなのよ・・・。結衣を誘う理由は、あの子の性格ならサポート系のスキル構成なのは間違いない。そもそも回復魔法持ちなのは席が隣だったこともあって教えてもらったし」

「なるほど、そりゃ間違いない」

 それに、わざわざ教えるってことは加耶とその子はそれなりに仲がいいのだろう。パーティに入ったとき馴染めないなんて心配はしなくても良さそうだ。
 おそらくそれも見越しての選択なんだろうな。さすがだな。

「はい、到着」

 気のせいだろうか?中から”俺たちとパーティ組もう”というまともな勧誘から”私たちと行ってくれるよね!”なんていう脅迫まがいの勧誘まで聞こえてくるんですが?

「良かった、まだ決まってないみたい」

 ってことは

「あの勧誘の嵐に混ざるの?」

「気は乗らないけどね。・・・さ、行くよ!」

 加耶さん男前すぎ。勢いよくドア開けて突っ込んでいったよ。
 そういえば、雅人は?さっきから見当たらないんだけど・・・ってまさか

「・・・居た。マジかよ、いつの間に行ったんだ?」

 向かう途中で気付いた加耶も立ち止まって呆然としてしまっている。相変わらず、予想外の出来事には弱いらしい。
 のんびり歩き出した俺がすぐそばに来ても復帰しないので昔のテレビのように軽く叩いて復帰させる。
 そのままアイコンタクトで雅人のところまで行くことを伝え、足を止めずに真っ直ぐ目的の場所まで歩いた。
 そして一瞬で帰りたくなった。
 状況がカオスです。繰り返します。カオスです。

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