突然不死身という最強の能力に目覚めちゃいました

カナブン

2人目の師匠 2

凱旋公園横にある駐車場に車を停め玲は公園に向かい歩いていた。その後を何故か用の無いはずの銀も付いてくる。

「別にここまで付いてくる事ないんですよこっからなら自力で家まで帰れますから」

「違うっスよ、別に神谷さんにお伴してるわけじゃないっスから、ただ俺も強くなりたいんで弟子入りにと思いまして・・・・。
それよりいいんスか?今日予定あったんじゃ無いんスか?」

その一言で元々予定していたはずの予定を思い出し急ぎスマホの電源を入れた。
その瞬間まるで壊れたよにスマホが鳴り出した。

ポロンッ!ポロンッ!ポロンッ!ポロポロポロポロポロポロポポポポポポポポポロン!!!

スマホの画面が未読メッセージで埋め尽くされたそしてその頭には378と数字が出ていた。

「うっわ、怖!」

「どうしたんスかいきなり?」

思わず漏らした声に銀が尋ねてきた。
それに対し玲は自分のスマホを銀に突き出した。

「いや、あんたらんところのお嬢さんからえらく通知が来てたもんで・・・・」


凛「   」

凛「   」

凛「   」

          ・  

          ・

          ・

凛「おーい」

凛「大丈夫?」

凛「電話下さい」


一通り目を通した銀は満面の笑みを浮かべ肩を叩いてきた。

「ベタ惚れじゃないっスか、神谷さんが次期若頭か〜それならこれからの組も安泰っスね」

「いや、そうじゃなくてねこれ多分かなり怒ってると思うんですけど・・・・」

銀の表情は一変し額に汗を浮かべた。

「・・・・マジっスか?」

「マジっス、ちょっと電話して見て下さいよ、それ使って貰っていいんで」


「すみませんじゃあお借りします」

銀は玲のスマホを借り恐る恐る電話を掛けてみる。

「プルルッ  もしもし神谷くん!」

電話を掛けて直ぐ、ワンコールが終わる前に電話が繋がった。しかし思っていたよりも明るい声に安堵し銀は口を開いた。

「お嬢お疲れ様です銀です、神谷さんのことでお詫びを入れたくて電話したんですが・・・・」

銀が喋り出した途端電話の向こうから声がしなくなった。話しているうちに銀も不安になり段々と声が小さくなり最後には声が出なくなってしまった。
すると再び電話の向こうから声が聞こえてくる。

「・・・・おい銀兄、何でテメェが神谷くんの携帯から掛けてくんだよ!!!
大体何なんだよ急に来て連れて行きやがってよぉ、コッチにも予定ってもんがあんだよ!「詫び入れる」つってたな指詰める覚悟出来てんだろうな!!!」

その声はさっきまでとはまるで別人のように荒だった声だが確かに凛のものだった。
銀は慌ててスマホから耳を離し、声が聞こえないようまだ騒がしいスマホに手を当て助けを求めてきた。

「神谷さんやばいっスよ、お嬢かなり怒ってますよ」

「そうみたいですね、でも俺に振られても何も出来ないですよ」

こっちを見つめて来る銀に苦笑いで返した。

「お願いしますよ、神谷さんから一言言って貰えば何とかなるっスから」

銀は必死に頭を下げて来るが それでも電話を受け取る気にはなれない。何故なら今回の件に関しては玲自身少し感に触る部分があったからだ。

「そこは自分の力で何とかして下さい俺は関係ないんで」

「そんな〜あんまりっスよ神谷さん」

玲に断られしょげこむ銀に電話の向こうから追い討ちをかけるように声が聞こえてくる。

「おい!聴いてんのかよ!いっちょ前にガン無視決めてんじゃねぇよ!!!」

「聴いてます、聴いてますから一旦落ち着いてくださいよ、こっちにもそれなりの理由があるんスよ、後日しっかりと説明はするんで今は押さえて貰えませんか」

「分かった今日のところは押さえてやるよ、でもな話はしっかり聴かせてもらうからな逃げんじゃねぇぞ!」

凛は銀の提案に対してそう応えると電話を切ってしまった。

「・・・・・神谷さんありがとうございました」

スマホを返す銀の顔は貸した時に比べだいぶやつれているような気がした。
玲は差し出されたスマホを受け取ると無言のまま凛にメッセージを送った。


玲「ゴメンやっぱ今日そっち行けないや」

玲「黒牙達にも伝えといて」

玲「ホントゴメンね」

凛「了解」

凛「それより大丈夫だった?」

玲「大丈夫、別に何かされたとか無いから」

玲「あと俺この後も用事あるからこれで」

凛「じゃあケースの中身は学校で渡すから」

玲「了解」

玲「じゃあまた月曜学校で」

凛「うん、また学校で」


玲はスマホの画面を閉じると安堵の息を吐いた。

「いゃー流石組のお嬢ですね、びっくりしましたよまさかあんなおっかないとは思いませんでしたよ」

笑いながら話す玲に、もう怒られ慣れているのか銀もさっきまでとは打って変わって冗談混じりに笑いながら応える。

「そうなんスよ、お嬢怒ると本当怖いんスよ、でも知ってます?これにもちゃんと理由があるんスよ、神谷さんお嬢の能力しってます?」

「えーっと確かトレースでしたよね」

「そうっス、その能力が原因なんスよ。
能力ってのは使おうとしなくても無意識のうちに本来とは違う形で発動していることがあるんスよ。ウチのお嬢はそのせいで無意識のうちに若頭、つまりお嬢の親父さんをトレースしちまったんスよ。
しかもそれがお嬢が怒る時になると自然と出てくるんスよね」

「そういうことか、じゃあアンタからすれば雨水に怒られてるっていうよりもその親父さんに怒られてるって感覚なんですね」

「そうなんスよ、ホントたち悪いんスよ聴いてる内に若頭に怒られてるような感覚になってついぺこぺこしちまうんスよねー、でもまぁ若頭の人格が出て来るってことはお嬢がそれだけ怒ってるって証拠なんで頭下げるのは当たり前なんすけどね」

銀は頭を掻きながら話している内に雨水が本当に怒っていることを再確認し、後のことを考えたのかその笑顔が段々と引きつった苦笑いへと変わっていった。

そうこう話している内に2人は目的地である凱旋公園へと到着した。
広い敷地の中には川が流れ多くの植物が植えられている。遊具や運動場などは特にない自然公園だ。
公園内にはほどほどに人はいるがそのほとんどは小学生位の子供か50〜60歳位のホームレスだ。

「噂には聴いてたっスけどホームレスだらけっすね、でもよくこんなトコでガキ達も遊んでるっスね、普通こんなトコ親が行かせないと思うんスけどね」

銀が何気なく発した言葉に玲は答えた。

「そりゃあそうですよ普通の親ならこんなトコには連れて来ないですよ、ここに居る子供のほとんどはここで暮らしてるんですから」

そう言い玲は正面に建つ一つの建物に目を向けた。つられて銀も目を向けるとそこには教会が建っていた。
公園の中にある小さな教会だ。だがどうもおかしい、この小さな教会と公園内に居る子供達ではどう考えても釣り合いが悪い、子供達の数に比べて明らかに教会が小さ過ぎる、これでは全員が立って入ってやっとの大きさだ。
疑問を抱く銀に対して知ってか知らぬか玲が説明を始めた。

「あの教会は地下に部屋があるんですよ、子供らは普段そっちで暮らしているんですよそれより俺の師匠でしたよね?もう少し奥なんで付いてきてください」

玲は教会の横を通り抜け、より木々の多い方へと向かい歩き出した。
それに続き銀も何があるかもわからずに奥へ奥へと進んでいく。

「なんスカこれ!」

木々多いエリアを抜けるとそこには異様な光景が広がっていた。
ひらけた一帯にはボロボロの小さな小屋がいくつも建ててある。いわゆるホームレスハウスだ。
だが銀が驚いたのはそんな事ではない。確かにこの数のホームレスハウスが1箇所に集まっているのは珍しいがそんなのは何度か見たことがある。
銀が驚いたのはそこに暮らしているホームレス達が集り組手をしていることだった。
それもそこら辺の道場やクラブとは比べ物にならない程の高レベルなものだった。
呆気に取られている銀をよそに玲はその中へと歩いていく。するとホームレスの中の2人組は組手をやめ玲の元へと集まって来る。

「やぁ、久しぶりだな玲ちゃん、見ない内にこんなに立派になって」

「そりゃあそうだよ茂さん、前に会ったのなんてもう3年も前なんだよ、若いもんてのは少し目を離せば大きくなるんだから」

茂野しげのさんと池田いけださんだ。

「3年!もうそんな経ってたか、いや〜ホームレスやってると時間感覚無くなってダメだなw」

1人笑っている茂さんは無視して池が尋ねてきた。

「玲ちゃん、恵比寿さんにはもう会ったかい?」

「いやまだ会って無いんですよ恵比寿えっちゃん探しに来たんですけど中々見つからなくて」

「そうかいそうかい、なら早く会いに行ってやるといい恵比寿さんも玲ちゃんに会いたがってだからね」

そう言うと池さんは振り返り仲間達に恵比寿の居場所を聴いてくれた。

「おーい誰か恵比寿さんどこ行ったか知らねえか?」

すると奥のテントから老人が出て来た。

恵比寿えっさんなら門の方へ行ったよ、なんでも子供達に稽古を付けるんだと」

「ありがとげんさん、池さんあと茂さんも、また来るから」

玲は軽く手を振り銀を連れその場を後にした。








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