突然不死身という最強の能力に目覚めちゃいました

カナブン

絶対的能力

場内にいた一般客が姿を消したことによりお互いの大体の戦力が見えて来る。
人数的には九条組の方が多い。しかし伊月組には最近問題を起こし指名手配されているS以上の能力保持者が3人もいる。それに残りの面子にも公になっていないだけで同等格の能力者がいるはずだ。
そう考えると相手側の方が圧倒的に上手だ。だがそれは玲を戦力に入れなければの話だ。

「警官に育てられた身からすると指名手配犯はみすみす見逃せないかな」

玲は小さく呟いた。

「テメェらやけに物騒な連中連れてんじゃねぇか」
 
「ああ、彼らかうちの新入りだよ。まぁ君達も知っていると思うが中々いい戦力でね」

龍一の言葉に相手の指揮官らしき男が嘲笑する。その表情はまるで勝利を確信しているかのようだった。
対する龍一は相手の戦力に少し焦っている。

「行けお前達」

男の言葉と同時に3人の姿が豹変する。

1人目は体が黒く染まり捻れた角、翼が生え悪魔へと、2人目は両腕、両足が巨大化し顔も狼のようになっていく。3人目はもはや人間の原型など留めず巨大な狗型の生物へと姿を変えた。その体は炎を纏い、前足の付け根からは翼が生え、尾先は幾つかに分かれている。

「天狗か、こりゃあSSクラスだな」

玲はその化け物をまじまじと眺めしっかりと目に焼き付けた。

「うん、いいもん見れた、じゃあ俺も混ざろうかな」

三体の化け物が一斉に会長人間飛びかかる。

「クソッ!オヤジ逃げてくれこんな奴ら流石に手に負えねぇ」

「いっちょ前に儂に指図するんじゃねえよ息子達を守るのは親の役目だ」

龍一の言葉を聴かず会長は構えた。

「アヒヒヒヒ!九条組ってのはままごとでもしてる連中だったのか?笑いが止まんねぇーな」

完全な勝利を確信した指揮官の男は会長を挑発し大笑いしている。

「さあ、死ね九条大和」

三体の化け物が同時に会長に拳を放った。

「「オヤジーーー!!!!」」

三体を前に動けなかった組員達が一斉に叫ぶ。
その時誰もいないはずの観客席か1人の男が飛び出し三体に向かい一発の拳を放った。

バゴーンッ!!

その強烈な一撃に三体は一斉に吹き飛ぶ。流石に重量のある天狗はそこまで吹き飛ばなかったが残りの2体は数十メートル離れた先の石垣に打ち付けられた。
辺り一帯に驚愕が走る。
しかしその中龍一はその一瞬を逃さなかった。

「あれ?視界がぐるぐる回って・・・・」

指揮官の男の首が切り落とされ地面に転がる。

「オヤジを愚弄した罰だ死ね」

龍一が転がる頭に刀を突き刺した。
2人の攻撃により九条組に一気に勢いが付き、伊月組に攻撃を開始する。

「お主は見学すると言っておらんかったのう。手出さんでも良かっただがのう」

「いやーおれもそのつもりで残ったんですけどね、ちょっと事情が変わりまして」

「死ぬなよ、儂はお前の作品をもっと見たいからのう」

会長は余裕そうに笑みを見せた。

「会長こそ死なないで下さいよ、あんま友達が悲しむの見たくないんで」

「随分と生意気な奴だな、こんな状況じゃなかったらお主から潰してるところだ」

「やめて下さいよ、俺は自分を評価してくれる人は殺したくないですから。じゃああの化け物達は俺がもらってきますよ」

そう言い残し玲は会長の元を離れていった。

「化け物はお主の方だと思うんじゃかな」


*     *     *     *


「待たせたな怪物ども感謝しろテメェらは殺さないでおいてやるよ牢に打ち込まなきゃなんねぇからな」

玲の再登場に三体は構えを取った。
流石Sランクといったところだ、あの一撃を受けても三体共まだピンピンしている。

「やれるもんならやってみろSランクの恐ろしさみせてやるよ」

悪魔型と狼男が玲に向かい攻撃を開始する。

「Sランクね」

玲はその攻撃を避けようともせずまともに食らった。

「ブハッッ!!」

しかし玲は微動だにせず何故か狼男が吹き飛んでいく。顔面は大きく凹み腹にも巨大な拳の跡が付いている。

「テメェ能力者か一体何しやがった!」

訳のわからない状態に悪魔型が恐怖し玲に怒鳴りつける。

「別に俺は立ってただけだけど。あんたらが勝手に自滅しただけだろw」

玲は相手を嘲笑う。

「お前らどいてろ!」

天狗型の声に残りの2体は後退する。2体が玲からある程度離れた時突如玲の体が燃え始めた。

「グァーッ!!アチー!アチーよー!体が燃える!!」

しかし何故か炎の中からさけび声は聴こえず離れているはずの狼男が悲鳴をあげる。
そして炎の中から玲の声が聞こえ来た。

「オメェらいいこと教えてやるよ絶対的力の前ではそれ以下の能力は皆平等なんだぜ」

その瞬間指名手配犯達は圧倒的な恐怖と言うものを理解した。
体が言うことを聞かない、変身していたはずの肉体が元に戻っていく、そして奴に殺される映像が頭に浮かんで来る。
「やばい逃げなきゃ」段々と近づいて来る恐怖の塊から距離を取りたいが足が石になった様に動かない。「殺される、殺される、殺される、殺される、殺される、殺される」恐怖が大きくなっていく。そしてついに奴が目の前まで来た。「あ!もうダメだ・・・」その瞬間意識が無くなった。

「・・・・くだらねぇ」

そう呟き玲は片手で3人を引きずり歩き出す。


*     *     *     *


九条組と伊月組の抗争はまだ続いていた。それぞれの能力が飛交い、激しく剣をまじえている。そこに1人異常なまでの殺気を放つ青年が3人の男を引きずりながら歩いて来る。
彼の登場に各組員達は次々と武器を落とし、尻餅をつく。
青年はその中を真っ直ぐ歩き九条 大和の前で歩みを止めた。

「会長さっきも言いましたけどこの人達は俺がもらっていきますね」

「驚いたな、まさかこの短時間でそいつらを倒したのか・・・。お主の一体何者だ」

流石組長だ。他の奴らとは違い殺気ぐらいじゃ動じない。

「何いってるんですか会長、今日挨拶したじゃないですか神谷 玲ですよ。本当年は取りたくないですね」

玲は冗談めかしに会長に言葉を返した。 

「フンッ!相変わらず生意気な奴だな」

ウ〜〜ッ!ウ〜〜ッ!ウ〜〜ッ!

警察のサイレンの音が近づいて来る。それを合図に玲は会長との話を切り上げた。

「では、迎えが来たので」


*      *     *     *


公園入り口前ではパトカーと共に人員輸送車が集り抗争に突撃しようと準備をしていた。

「構えろ誰か来たぞ!」

1人の警察の言葉に全員が戦闘態勢に入る。

え?なんで俺悪役みたいになってんの?

玲は指名手配犯を引き渡そうと歩いて来たらいきなり標的にされてしまい困惑してしまう。

「貴様何者だ!人質を解放しろ」

え〜!人質?イヤイヤ此奴ら指名手配犯だからこれじゃあまじで俺悪者みたいじゃん。

「いや、あの通報した神谷なんですけど・・・」

玲の言葉に心当たりがあったのか警察達はざわつき出す。

「隊長確かに署に連絡して来たの者は神谷と名乗っていました。どうします?」

「どうするも何もない!奴の言葉を信じるな、奴はこの事件の犯人の一員だ!その証拠に、見ろ!奴の腕を3人も人質を連れているじゃないか!」

仲間と話し終え隊長は再び玲に語りかけてくる。

「そんな嘘が通じるか!今すぐ人質を解放し大人しく捕まれ!!」

うっわ!マジか、話し通じねぇもう本当やだめんどくさい!

玲は言われた通り指名手配犯達を警察に向かい投げた。
警察は彼らを受け止め顔を見て驚愕した。

「隊長!此奴ら確かに指名手配犯3人と同じ顔をしています。やはり彼は本当のことを言っているのではないかと」

警察の言葉に玲はようやく一安心できると思った。だが隊長はそんなに甘くはなかった。

「騙されるな奴は能力者だ他人の顔を入れ替えたんだ近づかれると手に負えないぞ!奴を近づけるな!」

自分の間違えを一向に認めようとしない隊長に打つ手なく玲は困り果ててしまう。その時突如隊長が吹き飛び車に叩き付けられた。

「うちの玲に何やってんのよ!」

そして聞き覚えのある声が聞こえて来た。

「鈴音!!」

玲は思わずその声の主の名前を呼んだ。
鈴音をこんなにも頼もしく感じたことはない。

「あんたら分かってんでしょうね、間違えじゃ済まされないわよ。このことはうちの署長に報告するから」

鈴音の言葉に警察達はいっきに青ざめていく。そしてボロボロになった隊長が泣きそうな勢いで鈴音に頭を下げ始めた。

「すみませんでした!!この通りです反省してますから、どうか、どうか黒金署長だけには言わないでください。お願いします、どうかどうかそれだけは〜〜」

え?なんでこの人達1区の人間なのに4区の署長怖がってんの?それと鈴音のこともなんで知ってんの?

玲にはいまいち理解出来なかったが、どうやら黒金は相当な権力者だったらしい。
そんな怯える警察達の必死の謝罪など通用しない。鈴音は容赦無く言い放った。

「は?何言ってんのそんなちょっと頭下げて「ごめんなさい〜」なんて言ったくらいで許すわけないじゃん。あんたら自分の子供に銃向けられて「ごめん」で許せるわけ?私には無理だなぁ。玲、行こうこんな奴ら構ってるだけ時間の無駄だもん」

鈴音は玲の腕を掴み駅の方へと連れて行った。
その時後ろから「もう駄目だ」「終わった」などと悲痛の声が聞こえてきた。




















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