突然不死身という最強の能力に目覚めちゃいました

カナブン

部活見学

玲達の入学式からはや1週間が経とうとしていた。

「ねえ神谷くんこの後時間ある?もし良かったらなんだけどこの後一緒に美術部に見学行かない?」

HRが終わり玲が帰りの支度をしていると凛が声をかけて来た。今までも何度か誘われていたがタイミングが悪く全て断っていた。

今日はこれといって用事があるわけでもないし付き合ってもいいか

「うん、いいよ」

「そうだよねやっぱ用事あるよね・・・え?!いいの?ちょっと待ってて直ぐ支度するから」

凛は駄目元で聴いてきた様で予想外の返答に一瞬間を空けてから一気に表情が明るくなり、急いで荷物をまとめ出した。

「お待たせ、じゃあ行こっか」

荷物をまとめ終わり再び凛が声を掛けてくる。

「ああ、行くか」

返事をしつつ玲は教室を見渡す。いつもなら仁が絡んでくるはずだが今日は既に仁の姿は無かった。

「どうしたの?」

「いや、何でもない行くか」

玲と凛は教室を出て美術部へ向け歩き出した。もう新学期の雰囲気もだいぶ抜け先週の騒ぎが嘘の様に生徒達は普段の落ち着きを取り戻していた。

「なあ、美術部ってどんな部なの」

別に美術部の活動がわからない訳ではなく部の雰囲気というかそういった方面の質問だ。もちろんそれを理解できない凛ではない。

「ん〜なんかゆるい感じの部活だよ、人数少ないし自由参加みたいだったし、でもなんか楽しそうだった」

「そっか・・・」

自由参加か、なら別に入ってもいいかな。とりあえず第1条件はクリアって感じか

「ねぇ神谷くんは今新しい作品描いたりしてる?」

「ああ描いてるけどまだ下書きだから完成までは後一ヶ月くらいかかるかな」

「へー意外と時間かけて描いてるんだねてっきり1・2週間くらいかと思ってた」

「別に時間かけてる訳じゃないんだよね。家事やらなきゃいけないから1日に描ける時間が限られてるだけで多分描いてる時間は普通だと思うよ」

玲の意外な回答に凛はぽけ〜としている。

「え?!・・・家事?神谷くん家事やってんのそれって手伝?」

「えっと俺小さい時に両親亡くしてるからさ家のことは基本的に全部やってんだよ」

別に隠すことでもなので話はするがやはり話が暗くなってしまう。玲は少し言いづらそうに頬を軽く掻きながら話した。

「なんかごめんね」

案の定会話は暗くなってしまった。申し訳無さそうにしている凛にフォローを入れ少しでも会話を明るくしようと玲は口を動かす。

「ごめんとか別にいいよ。親父達が死んだのはもうだいぶ昔だし俺にとっては親がいない今の生活の方がしっくり来てんだよ。だから別に親のこと言われても特に思うことがある訳でもないし本当気にしなくていいから。それより雨水さんは家事とかやらないの?」

「え?!べ、別にできない訳じゃないから。ただやってないだけ」

このセリフは典型的な家事のできない奴のセリフだな。このまま独り立ちしたらインスタント食品ばかりのダメな人になるかも・・・ここはひとつ助言でもしてやるか。

「でも少しくらいはやっといた方がいいと思うよ、一人暮らし始めたら慣れてないと結構しんどいと思うしさ」

「うん、そうだよねやっぱやんなきゃダメだよね。でもいざやろうって思うとめんどくさくなっちゃって・・・」

あっ、ダメだこの人もう手遅れな気がして来た。

「そっか〜、まぁ頑張って」

もうなんて声をかければ良いのかわからなくなった玲はとりあえずエールを送流ことにした。

「ねぇ、何そのこの人もうダメだって感じの目、そんな目で見ないでよ〜」

わっ!スゲェな視線だけで俺の考えわかるとか物凄い観察眼してんな

「ははは、仕方ないだろ実際もうダメかもしれないんだし」

「何それ酷くない!でもそれならそれでウチにだって考えくらいあるんだから。優しくて、家事ができて、経済力があってイケメンの彼氏作って全部やってもらうの」

なにこの子、ドヤ顔でとんだアホな発言しちゃってるよ。だいたいそんな良い条件の彼氏なんてそうそうできないだろ、そもそもそんな人に出会える確率だってかなり低いだろうに。そう言えば身内にも似たような奴が1人、いや2人いたな。

「・・・・・」

玲はもはや呆れて物も言えない。

「ねえ、何でなにも言ってくれないの、なんか言ってよ、ねえってば」

「・・・・・夢があるって良いことだよな」

「・・・・・」

玲は何とか褒める言葉を絞り出す。
その言葉に凛は自分が言った言葉を思い返し一気に恥ずかしくなったのか顔を真っ赤にし俯いてしまった。

そんな恥ずかしいなら初めから言うなよ、なんかこっちまで恥ずかしくなってくるから。

「じょ、冗談だからね」

凛が顔を赤くしたまま小さい声で呟いた。

いや確実に冗談ではなかったよな。でもこのままの空気は嫌だしここはその言葉に乗った方が良さそうだな。

「何だ冗談か、てっきり本気で言ってんのかと思ったよ」

「もしかして信じた?冗談に決まってんじゃん」

おいおい、それはないんじゃないかこっちがわざわざ乗ってやったてのに・・・少し調子に乗りすぎたな。そっちがその気ならこちにだって考えがある

玲の内心など知らない凛はまるで勝ち誇った様にニコニコとしている。

「そんなことで誤魔化せると思った?本当は本気で言ってたんだろ、あんな顔真っ赤にしてバレないと思った?(笑)」

玲の言葉に凛の表情は一転して再び顔を真っ赤にして黙ってしまう。その表示に満足した玲は先ほど凛が言った言葉をそのまま返した。

「まっ、冗談だけどね、もしかして信じた?冗談に決まってんじゃん」

「・・・・・ひどいよ〜」

凛の顔がより一層赤くなる。

「ごめん、ごめん、ついやり返したくなっちゃって」

玲は笑いを何とかこらえながら凛に謝る。しかしそんな謝り方をしても側から見れば茶化しているとしか捉えられない。凛はプイッ!と顔をそらしてしまった。

いや〜、機嫌損ねちゃったかな?でもそれは理不尽じゃないですかね、先にやったのそっちなんですけどね

「あの〜雨水さん?怒ってます?」

「別に、怒ってないよ。それよりさ美術部もう着くよ」

どうやら本当に雨水は怒っていない様で恥ずかしい がっていただけだったらしい、普段どうりの凛だ。
しかし「もう着く」と言われたが今2人が居るのは生徒会室の前であって美術部ではない。

「雨水さんここ生徒会室だけど・・・」

「うん、そうだよ。美術部の部室はそこなの」

凛は生徒会室の隣の部屋に指をさす。そこにはしっかりと美術部と書かれたプレートがぶら下げてあった。

「こんなとこにあったのか、前来た時は全然気付かなかった」

「それは仕方ないよ、あの看板着いたのつい最近だもん。それより早く入ろうよ」

凛は躊躇することなくその扉を開ける。

「こんにちは〜、お疲れ様で〜す」

「あっ!凛ちゃんまた来たの、も〜早く入部届け出しちゃいなよ」

既に何度も来て居るのか凛が入って直ぐに部員らしき1人の女性が駆け寄って来た。

「また来ちゃいました、それより天野先輩入部届け書いて来ました」

凛は鞄から一枚のプリントを出し天野先輩とやらに見せつけた。

「お!これで凛ちゃんも美術部の一員だ!今年は入部者意外と多いですね部長」

「ああ、そうだな入学式そうそう2人も新入部員が増えるとは思わなかったな」

天野の視線の先で部長らしき痩せ型の男が作業中の手を止め玲達に顔を向けた。

2人?じゃあ凛以外にも入部者が居るのか。

「・・・・・」

「・・・・・」

玲は部長の横にいる見知った顔と目が合った。

そういうことか、仁の奴教室にいないと思ったらここに来てたのか。でも意外だな美術部に入ったなんて。そもそも何であいつ美術学科何だろう?

「ふんっ!待っていたぞ我が主人よ貴様がここに来るのはわかっていた」

そう言う仁の腕にはノミとセットウが握られている。どうやら彫刻を彫っているらしい。仁の前には削られ歪な形になった木が2つ置かれている。片方は多分あの部長の物らしく2つの彫刻は彫り方が明らかに違かった。

「おう、それは凄いな。それよりお前いつの間に美術部入ってたんだよ」

「そんなの入学式の日に決まっているだろそもそも俺はこの組織に入るためにこの学校を選んだんだからな」

「なあ雨水その人は?」

2人の話を聴いていた部長が話の合間を見計らって玲について尋ねて来た。

「同じクラスの神谷くんです。」

「「!!」」

その名前に部長と天野が同時に反応する。

「君があの神谷 玲くんか・・・是非この部に入ってくれないかな、とても自分勝手でおこがましいんだけど君と一緒に作品を作りたいんだ」

「え!君が神谷くん・・・部長私は嫌ですよ彼の入部なんて!入学そうそう問題を起こした人ですよ!しかも2回も!それに性格凄く悪いって噂もあるんですから!」

しかし2人の反応は全く別のものでその正反対の意見により言い争いになってしまった。

「はぁ、天野お前は噂なんかに流されやがって、全くくだらないな」

「そうですね!でもそんな噂がたつってことは彼にだってそれなりの原因があるんですよ、実際彼は大勢の前で同じ新入生を殴ってるんですよ!信じるなって方が無理ですよ」

冷静に話す部長に対して天野は少し声を荒立て熱くなっている。

「ああそうだな、でも知ってるか、彼が生徒を殴ったてのは先に相手から手を出したらしいぞ。それも彼はカツアゲされている人を助けて巻き込まれただけらしいしな」 

「何ですからしいって、部長こそ噂に流されてるんじゃないですか!」

「いや俺のは乃明から聴いた話だから噂じゃなくて真実だよ。だいたいそんな性格悪かったら黒牙や雨水とも仲良くなれてないはずだろ」

「・・・・・」

部長の言葉に天野はぐうの音も出ず黙り込んでしまった。

「まぁ俺の話が信じられないんなら今ここで本人達に本当のこと聴いてみればいいさ。何やともあれ俺は彼に美術部に入ってもらうつもりだからな」

いやなんか俺美術部入るの前提で話進んでるみたいだけど、俺見学しに来ただけで入るなんて一言も言ってないんだけど・・・。


「突然不死身という最強の能力に目覚めちゃいました」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「学園」の人気作品

コメント

コメントを書く