ボクの完璧美少女な弟子は変態すぎて手に負えません(笑)
約束は破ってはいけないですよね(約)
栞の爆弾発言のせいで室内が騒然とし、様々なあらぬ憶測が飛び交う最中、ボクは空気に耐えきれず教室から飛び出した。
「どうしたの、晴人? そんなに慌ててさ」
そんなボクを追いかけて来たのは、爆弾を投下した本人である北の偉い人……ではなく、心底不思議な表情を浮かべる栞だった。
「どうしたって、お前。何を意味のわからないこと言ってるんだよ!? 今からでも間に合うから誤解を解いて来てくれ!」
「あー、なんだ。そういうこと? 晴人、それで怒ってたんだ」
「わかったなら早く言って来てくれよ。じゃないとボクはクラスメイトと担任に血祭りにあげられちゃうから……」
「うんうん、わかってるって。晴人は栞の婿養子になりたいから名字は椎名のままでいいんだよね?」
「んんなわけあるかぁー!?」
ボクが息をゼエゼエと切らしながら間違いを指摘するも、栞は本気でなんのことだかわからないみたいで首をかしげるばかりだった。
ボクとの栞との関係を誤認されたままではダメだと思い、どうにかわかってもらおうとするすべを考えて、頭を抱えて四苦八苦していると、
「ハル君? こんなところで何してるの?」
「ぅえっ!? み、瑞希さん。いやー、奇遇ですね」
「うん、そうだね。それより、もう次の授業始まっちゃうよ。こんな隅っこで女の子と二人でなにをコソコソしてたの?」
「いや、ね。この子転入生なんですけど。校舎の中を少し案内してあげようかと思いまして。はい」
「なるほど、そうだったんだ」
とっさに考えついたにしては良い言い訳ができて内心ホッとしていると、そこに喋る爆弾こと栞が話に混ざってくる。
「あのー。えっと、お二人はどんな関係なんですか?」
制服のリボンを見て瑞希さんが上級生だとわかった栞は、ボクも聞きたかったことをズバっと軽く問いかけた。
「うーんと、そうだね。知識を共有し合える友達とか、かな」
瑞希さんはそれとなく空気を読んで、言葉を選びながら答える。
友達ということは、最初の師弟関係よりも前進しているだろうかなどと考え込んでいると、何かを言いたそうにうずうずしている栞が前話と同じ過ちを繰り広げようとする。
「へぇー、そうなんですか! でも、栞と晴人との関係性の方が、むぐっ」
「はーい、椎名さーん。ちょっーと、お話をしようかぁ!?」
笑顔で前話と同じようなことを宣言しそうな栞の口を手で覆い、瑞希さんから距離を取るために猫を掴むかのごとくシャツのタグ部分を掴んで移動する。
「…………」
「栞。ボクが言いたいこと、わかってるよね?」
「……別に強引なのは構わないけど、人目は避けたいかな」
と言って、上目遣いでボクを見つめながら服をそろりと脱いでいく。
「だいたい察しはついたけど、しないからね。栞が思ってるようなこと」
「なーんだ。つまんないの」
ボクをからかいたかっただけなのか、脱いだ服を再び羽織る栞。
ほんと、ボクがその気になったらどうするんだ。まったく、けしからんですね。
「それよりも、ボクと栞との関係性はあまりおおっ広げにしないでくれ」
「あ、それでさっきから怒ってたの?」
「そうだよ! とりあえず今回、瑞希さんには栞はボクが指示を出した言葉をそのまま口に出してくれればいいから。絶対変なこと口走らないでくれよ! ただでさえ勘違いの激しい人なんだから」
「うんうん。わかったわかった!」
同じ言葉を二回綴りでいうあたり、本当にわかっているのか問いただしたくなる衝動に駆られるが、あまりここで時間をかけてしまうと怪しまれてしまうので、さっさと瑞希さんの元へ戻る。
「何を話してたの?」
「いや、別に大したことない話ですよ。校舎の構造とかについてとか」
引きつった顔で下手くそな嘘をつくが、瑞希さんはそこをつついてくる様子はなく、後ろにいる栞に話しかける。
「ふーん、そうなんだ。それでさっき聞きそびれちゃったんだけど、二人は前からお知り合いだったの?」
「はい! それはもう古い仲で……」
早速勝手にペラペラと喋り出す栞の背中の贅肉をつまんで黙らせてから、小声で指示を出す。
「(栞! ボクの言ったこと忘れてないよな? ここはとりあえず同じ保育園でよく遊んでましたって言っておいてくれ!」
「古い仲で、晴人とは同保で、よく二人で一緒に遊んでました!」
「昔からオナホで遊んでたの!? しかも二人で!? それって、つまりそういうことよね……」
「同中になりたかったんだけど、家庭の事情でダメでした! でも、高校に上がってやっと晴人に会えたんです!」
「そりゃあ、家の子がオナ厨になるのは反対するよね普通は」
「あの、瑞希さん? 多分、違いますよ。おなほは同じ保育園って意味で、おなちゅうも同じ中学を勝手にこいつが略してるだけですからね」
「そ、そうだよね。うん、わかってたんだよ。私、わかってたのにちょっと過剰に反応しちゃったかもしれないかな。うん」
早口でそう言って、顔を赤くしながらさっきの勘違いを帳消しにしようとする瑞希さん。控えめに言って激かわゆすですね。
隣にいる栞は、本気でボクたちが何の話をしているのかわかっていない様子で、キョトンとしている。
「(はぁ、栞がまた変なことを言うからややこしくなっちゃったよ)」
そう小声で呟くと、癇に障ったのか頬を膨らませて怒ってくる。
「もぅっ! 口に出させて来たのは晴人の方じゃんか!? 栞は嫌だったのに……」
「さっきの間に無理やり口に!? ハル君。私、そういうのはいけないと思うな?」
瑞希さんや周りにいた生徒たちから白い目を向けられ、言い訳を述べようにもちょうどそこでチャイムがなってしまう。
それから少しの間、周りから避けられました。
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