ボクの完璧美少女な弟子は変態すぎて手に負えません(笑)
お久しぶりです(久)
枯れていた街路樹が徐々に緑々しくなってきた、今日この頃。ボクはというと、そんなことなど気にも留めずにいつも通りに通学路を歩いていた。
短かった春休みも明け、今日が始業式で、明日からまた面倒臭い勉強漬けの日々が始まると思うと、心の底からため息がこみ上げてくる。
「よっす!なんか久しぶりな気がするなハル!」
「おぉ、桐島か。俺もなんだかこういうの随分久しぶりな気がするよ」
こういうのが本当に半年ぶりくらいな気がするが、そんなことどうでもいいだろう。
「てかお前、さっきから何浮かない顔してんだよ」
「ん?いやな、今日提出の春休みの課題が全く終わっていないんだよ」
「バッカだなー、お前。俺なんかあんなの休みの前に終わらせてたぜ」
「ほんと、かったるいなぁ……」
と、なんの気ない会話をしながら学校の正門をくぐる。
すると、ボクのことを待ってましたとばかりに、ある人が飛びかかってくる。
「晴人くーん。おひさー!」
「うわっとっと。ちょっとシズネ!?急になんだよ」
「いやー、久しぶりの登場だったからね。ついつい」
「ったく、しょうがないなぁ……」
と言いつつも、急に抱きつかれてまんざらでもない表情を浮かべうボク。
そんな中、中庭に貼ってあるクラス分けの表を見ながら桐島が声をかける。
「おい、ハル。俺らまたハゲ平が担任だってよ」
「えぇ……。またかぁ」
ボクに何かと因縁をふっかけてくる大人気のない先生のことを思い出し怪訝な表情を浮かべていると、後ろから怨念のこもったような低い声をかけながら誰かが肩を掴んだ。
「九重。お前、この前は白河と不純異性交遊との噂があったが、もう乗り換えているとはな。いい度胸じゃないか」
恐る恐る振り向くと、平先生が額に青筋をくっきりと浮かべながら不気味な笑顔で待ち構えていた。
「いや、これは違くて。な、なあシズネ?」
「ふぇ? 晴人くんこの前のお風呂場に乱入してきたの忘れたの?」
「おい、それは今言うことじゃないだろう!?」
「ふーむふむ、なかなか興味深い話じゃないか。放課後、そのことについて指導室でゆっくりと語り合おうじゃないか」
表面上は笑顔の先生の声は、ドスが効いていて内心を抑えきれていない。
一緒に登校してきた桐島は我関せず、といった様子で校舎の中に入り、この状況の元凶であるシズネは本当に悪気がなかったのか相変わらずニコニコと佇んでいる。
その後、指導室でこっぴどく説教をくらい、おまけに一人でトイレ掃除を延々やらされましたとさ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
時は過ぎ、夕日が暮れ始めほとんどの生徒が下校してしまった校舎内でボクは一人、怒気を孕み愚痴をこぼす。
「くっそー、ハゲ平のせいでもうこんな時間になっちゃったじゃないか」
床を流すデッキブラシを用具入れに押し込み、カバンを肩にかけて校舎を出る。
こうやって反発せずにちゃんと掃除をしてしまうあたり性根小ささが滲み出ているが、そんなことどうでもいいことだろう。
上履きから靴を履き替え、さっさと帰ろうと歩いていると、正門の前に人影が見えた。
夕日に照らされた髪は品があり隠れた顔が見えずとも、一目でその子が誰だかを理解させる。
「瑞希さん。どうしたんですか?」
さっきまでの疲れはどこへやら、にこやかな笑みを浮かべながら話しかける。
「あっ、ハル君。今日は委員会で遅くなって、たまたま会った桐崎君に聞いたらハル君も残ってるらしいから待っていようかと思って」
「そうだったんですか。じゃ、じゃあ行きましょうか」
桐島もたまにはいいことをするじゃないかと、心の中で賛辞を讃えながら帰路へ歩み出す。
「委員会では何のことについて話していたんですか?」
「んー、文化祭についてのことがほとんどだったかな」
「あー、もうすぐですもんね」
ボクらの通っている高校は、新学期が始まってすぐに文化祭があり、大体の人はそこで交友関係を築いていくらしい。
いや、ボクはあんまり知らないけどね。
「ハル君は今まで何してたの?」
「い、いやー、当番のトイレ掃除を熱心にしすぎて、今の今までかかっちゃいましたよ。ははは」
今朝、平先生に大目玉を食らったことは伏せ、適当に取り繕う。
「そうなんだ。桐崎君はキツーい説教を食らってるからかもしれないって言ってたけど」
「い、いやいや、そんなの違いますとも。はい」
前言撤回。今度桐島に会ったら問答無用で一発しばく。
そう心に決めたところで、ボクの家が見えはじめる。学校から家が近いのは利点しかないと思っていたのだが、今日ほどもっと遠かったらいいのにと思ったことはないだろう。
「それじゃあ、また明日ねっ」
そう言ってこちらに手を振ってくる彼女に、ボクは、
「あのっ、よかったら……。うち、来ます?」
少し大きな声を出して呼び止め、伏し目がちになりながら家へ誘う。
「いや、あの。へ、変な意味じゃなくて。今日は中に誰もいませんけど、ただゆっくりしてもらえればなと……」
「あ、うん。それじゃあ、お邪魔しようかな」
一気に捲し立てたのが功を称したのか、瑞希さんは家に上がってくれることになった。
家の中に二人きり。これはまさか……!?
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