ボクの完璧美少女な弟子は変態すぎて手に負えません(笑)

花水木

いきなりお家に二人はハードルが高くないですか?(難) 後戯


 急な雨で白河さんに家まで傘に入れて送ってもらい、兄さんの活躍?もあって家に上がってもらっていた。

「二人ともちょっと濡れてるじゃん。早くシャワーでも浴びてきな」

 小さい折り畳み傘だったので、肩が少し濡れてしまっていた。

「ボクは後でいいんで先どうぞ」

「あ、うん。ありがと」

 着替えとタオルを渡してお風呂場まで案内してからリビングに戻ると、兄さんがドアの前で待ち構えていて、ボクの首に手を回して軽く締めてくる。

「で?で?で?どうやってあんなべっぴんさんをゲットしたんだ?こんのプレイボーイめ」

「だからそんな関係じゃないんだってば」

「なんだ?恋愛のA,B,CのCはまだだとしてもAも終わってねえのか?」

「初めて会ったのもつい最近だし……」

「つまんねーな。真の男なら出会ってすぐに寝技にもちこめよ」

「ボクはそんな変態になんかならないから」

「あっそ。でもまー、頑張れよ」

「まあ、うん」

 そんなやりとりをしていると、白河さんが白く綺麗な美肌に水を滴らせ、それを拭きながらリビングに戻って来た。



「お風呂ありがとうございました」

「おう、自分の家みたいにくつろいでっていいからなー」

「はい、ありがとうございます」

 その後、ボクもさっとシャワーを浴びて、リビングに戻った。

 べっ、別に白河さんが入った後だからって風呂場の床や排水溝を舐めまわしたりしてないからな、せいぜい残り香を吸収するために深呼吸をしまくったくらいだ。
 まあそのせいで危うく過呼吸になりかけたが、いい匂いが嗅げたのでよしとしよう。

 リビングでは、兄さんと白河さんが笑いながら何かの本を読んでいた。
 何を読んでるんだろうと覗き込むと、それはボクの幼少期のアルバムだった。

 安心して視線を下に落とすと、机の上にはこの世に決して存在していてはいけないボクの黒歴史の刻まれた暗黒のノートが置いてある。
 ボクは慌ててノートを取り、背中の後ろに隠した。

「ちょっ、これの中身見ちゃいました?」

「ううん、まだ見てないけど」

「あー、それは晴人が中学ん時のやつで、こいつ自分のことを変な名前で、むぐっ」

 ボクの消し去りたい忌々しい過去を公言しようとした、兄さんのヘリウムガスなのかってくらい軽い口を強引に塞いだ。

「な、なんでもないですよー」

 頬に冷や汗を滴らせるボクを白河さんは首を傾げて不思議そうに見てきた。



「あー、そういえば用事があったの忘れてたわ」

 適当な世間話をして四時を少し回った頃に、兄さんが突然そんなことを言い出した。

「えっ、兄さん今日は一日中暇だって言ってなかったっけ?」

「ちょっと野暮用ができてな。多分三時間くらいはこの家誰も帰ってこないと思うから」

 三時間といえば、ホテルのご休憩の時間くらいである。

 そして兄さんはボクの首根っこを掴み近くに引き寄せ、白河さんから見えないようにしてポケットから何かを取り出す。

「晴人これは俺様からの餞別だ」

 そう言って握られた手から落ちてきたのは、黒く四角い小さな袋に入った輪っかのゴムだった。

「避妊はちゃんとしとけよ」

「そんなことしないってば!」

「あー、あと晴人の部屋の勉強机の引き出しの二重底に隠してあるあの本はあんま参考にしない方がいいぞ」

「確かにあれはちょっと過激すぎだしね……って、なんで兄さんがそんなこと知ってるのさ?」

「甘いんだよお前は。プリンアラモードよりも甘々だ。そんな古典的な隠し場所は世の男子なら誰でも見当がつくぞ」

「だからってそんなの見なかったことにしといてよ……」

「ま、お膳立てはしてやった。後は自分でなんとかしろよ」

「だーかーら、そんなことをしようとして来てもらったわけじゃないって」

 その後、兄さんが家から出ていくのを見送り、二人で談笑しながらまたボクのアルバムを見ていると、


 グゥウウウウーーー


 二人しかいない部屋でお腹の音が鳴り響く。
 ボクではない……とすると、

「…………」

 隣で白河さんが恥ずかしそうにお腹を押さえてうつむいていた。
 ボクがスルーすべきか悩んでいると、

「きょ、今日はいい天気だねー」

 目線の先にある窓の外では、さっきより強くなった雨がガラス戸を横殴りにしている。

「そ、そうですね」

 スルーして欲しいんだと気づき適当に相槌を打っていると、再び聞こえてしまう。


 キュルルルル〜〜〜


「ち、違うの。今日はちょっとお昼が少なめだったからで……」

 このまま隠し通せばいいものの、白河さんは自分から音の発信源を自白してしまった。

 そういえば父さんが仕事帰りに買ってきた弁当があったと思い出し、食べるどうかをとりあえず聞いてみた。

「しらk……瑞希さんは駅弁とかって好きですか?」

「えっ、い、いきなり駅弁?」

「いきなりっていうか、すみませんそれしか無くて」

「う、うん。わかった」

 ボクがキッチンから駅弁を持って来てリビングに戻ると、白河さんは椅子に座りながら細い足と手を上げて待っていた。

「えっと、何をしてるか聞いてもいいですか?」

「そっ、それはハル君が駅弁をするって言ったから……私は最初は正常位の方がいいと思ったんだけどハル君がそんなに駅弁をしたいっていうなら……」

「……もちろん違いますよ、ボクは駅弁食べますかって聞いたんですけど」

 白河さんは手足を下げて、唇を尖らせながら小声で抗議してきた。

「……今回はハル君の言い方にも原因があったと思う」

「まあよくよく考えればそうですね。すみません」

 笑いながら謝り、持ってきた駅弁をふるまって上げた後、駅まで送ってあげた。



 白河さんを駅まで送り、家についてすぐに妹の彩奈が部活から帰ってきた。

 彩奈は顔は幼く背も低くて小学生といってもまだ通用しそうな容姿なのだが、一箇所アンバランスに胸だけが急成長していてカバンを斜めに担ぐと、それは見事なパイスラッシュが完成する。

 ボクは小さいころから彩奈のことを構ってきてやったので、小学生の時まではボクにべったりだった。
 中学に上がるとそれもなくなり安心していたのだが、なぜかボクの身の回りの身辺調査をし出したりと、全く行動が読めない。

 彩奈は玄関を開けて早々に、目を光らせながら呟いた。

「彩奈の知らない女の匂いがする……」

 なんだか白河さんが来たってことを言ったらめんどくさそうなので、ボクは適当に話をはぐらかす。

「おかえり彩奈。風呂入れといたから早く入ってきな」

「うん、ありがとーハル兄」

 そういえば明日は白河さんにお弁当を作ってきてもらえるんだと思い出し、廊下を歩く彩奈にそのことを伝えた。

「あっそうだ、明日はお弁当ボクの分いらないから」

「えっ、なんで?嫌いなものでも入ってた?」

「いや、そんなんじゃないよ」

「じゃ、じゃあなんで?」

 本当のことを言ってもいいのだがそんなことを言うと、「もうハル兄にお弁当なんか一生作ってあげない」と言われるのが目に浮かんだので、ボクはごまかすことに決めた。

「……たっ、たまには学食も食べてみたいなーと思ってて」

「ふーん。わかった」

 彩奈はボクのことを目を細めて訝しんだ後、再び歩みを進めた。



 ボクがため息をついていたその時、脱衣所では彩奈が女物の見たことない髪留めを見つけ驚愕した後、薄気味の悪い笑みを浮かべていた。
 近々修羅場の予感……。

 

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