ボクの完璧美少女な弟子は変態すぎて手に負えません(笑)
彼女には悲しい過去があったそうです(泣)
目を覚ますと、色んな薬品の匂いがする学校の保健室の白いベットの上にいた。
そうだった、放課後にボクは白河さんのファンクラブにリンチされてそれで……。
「ハル君?」
ボクのことを心配そうに、か細い声で呼びかけられた。
「あ、すみません。なんか迷惑かけちゃったみたいで」
ボクは今にも泣き出してしまいそうな白河さんを元気付けるために頭を掻きながら笑い混じりに言ったが、彼女の表情が変わることはなかった。
「ごめん、ごめんね。こんなことになったのも私のせい、だよね……」
涙の理由は僕の怪我だけでなく、自分自身のことを責めているのだとわかり、ボクは必死に答える。
「いやっ、そんなことないですって」
そんな反論も白河さんの心には響いておらず、青アザだらけのボクのお腹を優しくさすってくれながら言った。
「あるよ、あるんだよ絶対に。だってハル君は私と関わらなかったら、こんなに傷つかなくて済んだんだよ?」
頭の中で数時間前のボクが言ったセリフが脳内にフラッシュバックしてきて言葉を返せなかった。
「ハル君。ううん、九重君。あなたと私の間には何もなかった。この一週間のことは忘れて、これからは赤の他人になってください」
その声は少し震えていた。
「それじゃあ。バイバイ九重君」
白河さんはボクに顔を見せないよにしながら部屋から小走りで出て行った。
そんな後ろ姿にかける言葉が見つからずに、ボクはうなだれていた。
「なんだか知んねーけど……修羅場か?」
兄さんのいつものボケに突っ込む余裕などあるはずもなく、ボクは魂を抜かれたかのようにボーっとしていた。
そんなボクの様子を見て、兄さんも察したのか真剣な表情で聞いてくる。
「ま、まさかっ……できちゃったのか?」
「んなわけあるか!」
「んまー、そんな冗談はさておき……何があったんだ?優しい優しい兄ちゃんに話してみろって」
兄さんは子供の頃と同じように、豪快に笑いながらボクの頭の上に手を置いて荒々しく撫でる。
その後、髪の毛がボサボサになりながらも今日の出来事を話した。
兄さんはそれを目を瞑り黙って聞き、ボクが話し終わるとゆっくりと口を開いた。
「で、晴人。お前はこれからどうしたいんだ?」
「えっ?」
「なんだ?このままあの子とは何もなかったかのように過ごしていくのか?」
「で、でも……」
「まあ、それは晴人自身が考えることだから俺様は知らないけどよ」
それから兄さんは一言も発さずに、ボクを車で家に送ってくれた。
次の日、下駄箱の蓋を開くと昨日よりも手紙の量が減っていた。
おそらくほとんどがファンクラブのメンバーからの果たし状だったのだろう。
複雑な気持ちになりながらも上靴を履き廊下に目を向けると、白河さんと神咲さんが談笑しながら歩いていた。
そして白河さんと自然に目が合う。
「……」
「あっ、一年坊主君だ。ん?瑞希どうしたん?」
「あの、瑞希さん少し話を……あっ、ちょっと」
ボクが白河さん達に近づいて昨日の話の続きをしようと話しかけると、
「行こう、和乃ちゃん」
「ん?あー、はいはい。そんな引っ張らんでもついていくって」
白河さんはまるでボクを見なかったかのように、神咲さんの手を引きまた歩き出してしまう。
その背中を見ながら、ボクはその場に立ち尽くしていた。
お昼休みになり、ボクは誰もいない屋上で一人寂しく昼食を食べている。
そしてご飯をすべて食べ終わった後も、ボクはその場にとどまっていた。
ガチャリ
来るはずがないと心の中では思っていても、他の何処かで何かしら期待していたのだろう、目線はすぐに扉の方に吸い寄せられる。
「よー、少年元気かー?」
扉を開け屋上に来たのは白河さん……ではなく神咲さんだった。
神咲さんは目に見えて落胆しているボクを見て大笑いした後、
「ま、そんな落ち込まんと、うちもただ君をいびりにきただけやないんやでー」
側まで近づいて来て、ボクの肩に手を置き慰めてきた。
「じゃあ、何しにきたんですか?」
「聞いたよ。昨日瑞希のファンクラブの人にコテンパンにやられたんやって?」
「まあ、はい」
「まっ、今朝の瑞希の反応からして、もう関わらないでーとか言われたんやろ?」
「そ、そうです」
すると、校内に予鈴が鳴り響いた。
「君がこのまま瑞希と関わらないっていうならうちは別に何も言わんけど、昨日みたいに仲良くしたいっていうなら放課後校門の前で待っとき」
そう言い残して、神咲さんは屋上から去っていった。
放課後校門前で待っていると、ボクの目の前に黒い高級車のリムジンが止まり、その窓が下がり神咲さんが中から手招きしてくる。
「はよ、乗りなよ」
「へっ?あ、はい」
数十分間走っていると、私有地に入っていった。
「おかえりなさいませ。お嬢様。お客様」
車から降りて早々に執事のような老人に礼儀正しく頭を下げられ、ボクが開いた口がふさがらなくなり愕然としていると、中から今度はメイドが現れて中を案内してくれた。
それからシャンデリアのあるだだっ広いリビングでアルバムを見ていた。
「瑞希とうちは小学校からの幼馴染やねんけど、どや?幼少期もめちゃくちゃ可愛いやろ?」
見せられたアルバムの中には、幼い白河さんと神咲さんと少し痩せている美人が並んで微笑んでいた。
「はい、すごく」
「本題に入るけど、瑞希のお母さんは五年前に病気で亡くなったんや、うちも何回かあったことがあるねんけど、それはもうほんまめっちゃ優しくてええ人やったで……」
その写真を見ながら、悲しく呟くように続けた。
「元々持病を持っていたらしいねんけど、瑞希が小学校から帰った時には倒れとったんやって……だからな、瑞希は昨日の君みたいに自分の知らん間に知ってる人が傷つくのとかが怖いねん」
そう言われて思い出した、意識が遠のく瞬間にかけられた言葉「ーーーハル君っ。死なないでっ」あれは大袈裟なんかじゃなく本当にボクが死ぬんじゃないかと思っていたのか。
「で、君がどうやってまた瑞希と仲良くするかやねんけど……一応作戦は考えてあんねんけど君にはきついかもないけどやるかい?」
珍しく真剣な表情で問いかけて来た質問に、ボクは顔を強張らせながらも即答する。
「はい、やらしてください」
「なんかその言葉だけ聞くと、やらしい意味に聞こえてくるね」
そんなボクの決意の言葉を台無しにしながら作戦会議は始まった。
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