「お前ごときが魔王に勝てると思うな」とガチ勢に勇者パーティを追放されたので、王都で気ままに暮らしたい

kiki

133 仮想生命のレゾンデートル

 




 フラムとミルキットは、ジーンの後ろを歩いていた。
 彼は自分の住まいに二人を案内するのだという。
 バートは彼に指示され、誰かを呼びに事務局まで戻っていった。

「ここだ」

 棺の部屋から廊下に戻り、少し歩いた場所にその扉はあった。
 その向こうにあったのは、かつてジーンが王城で使っていた部屋と似た空間。
 どうやら“住処”というのは何の比喩でもなく、文字通りこの施設の中で暮らしているということのようだ。

「お茶を煎れるから、適当な場所に腰掛けて待っててくれ」

 その気遣いが余計に気持ち悪かった。
 とはいえ、それはフラムの中に以前のジーンのイメージが色濃く残っているからで――

「……」

 かと思われたが、ミルキットも眉をひそめていたので、別にフラムに限った話ではないようだ。
 元々、主に危害を加えたジーンのことを、ミルキットは良く思っていなかった。
 たとえ今は性格が変わって、善人になっていたとしても、その嫌悪感が薄れることはないのだろう。

 二人はソファに隣り合って座る。
 少し待っていると、ティーカップとお茶菓子がテーブルに並べられた。

「砂糖は使うかい?」
「いや、いい」
「そうか」

 やっぱり気持ち悪い。
 だがジーンもフラムにそう思われている自覚があるようで、

「違和感の塊で申し訳ないな」

 そう言って口元に悲しげな笑みを浮かべながら、向かいの椅子に座った。

「それで……えっと……何を話すために、私をここに呼んだの?」
「聞きたいことがいくらでもあるんじゃないかと思ってね」
「まあ、聞きたいと言えばそうだけど……あんたに興味持ってる自分が嫌っていうか」
「ははっ、ずいぶんな嫌われようだ。当然のことではあるが」
「その感じだと、ジーンの記憶は持ってるってこと?」
「ああ――そろそろシアが到着する頃だ、彼女がいた方がそのあたりの説明はしやすい」

 ジーンはフラムの背後にある扉に目を向けた。
 耳を澄ますと、遠くに二人分の足音が聞こえる。

「もう来たの? というか、誰を呼んでたの?」
「シアだ」
「あの方は今、王城に住んでるはずですから……」

 呼べば五分か十分で到着する、ということらしい。
 扉が開く。
 現れたのはバートと――ワンピースを纏った、黒髪のお嬢様。
 バートは彼女を部屋に入れると、軽く頭を下げて去っていった。

「シアさん、なの?」

 確認しないとわからないほどの変わりようだった。

「お、お久しぶりです、フラムさん。その節はどうも、お世話になりました」
「あ、どうも」

 丁寧な挨拶につられて、頭を下げるフラム。
 元々、カムヤグイサマの巫女として実質監禁されていた彼女は、身だしなみというものと無縁だった。
 髪は伸びっぱなしだし、化粧もしなければ、肌のお手入れなんてもってのほか。
 つまり、素材はよかったが、それを活かせていなかった、ということだろう。

 シアはジーンの隣に腰掛ける。
 美男美女で絵になる構図だが、彼女は何やら彼の方をちらりと見ては、びくびくしている。
 シアの人見知りは治っていないようだが――それとは別に、あまりジーンのことを信用していない様子だった。

「フラム、彼女――シア・マニーデュムの能力は知っているな?」
「うん、希少属性の“夢想”だったよね。ざっくり言うと、想像を具現化させる、だったっけ」
「簡素化しすぎだが間違ってはいない」

 ジーンはシアを横目で見ながら、説明を始める。

「まずシアの魔法を発動させるための前提条件は、彼女に物事を信じ込ませることだ。カムヤグイサマは実在する、そう心の底から信じていたからこそ、あれは具現化した」
「そして一度発動したら、同じようにカムヤグイサマを信じる人たちから魔力を吸い込む、だよね」
「ああ、それが最も特徴的な部分だな。その状態になれば、もはやシアがカムヤグイサマを信じなくなっても関係はない。周囲から取り込んだ魔力だけで、魔力を与えた人間が期待した通りに、そいつは動く」

 だからカムヤグイサマは、『あれは神の化身だ』という村人の勘違いで、ヒューグと一体化したのである。

「今のジーンも、その状態って認識で合ってる?」
「その通りだ」
「わ、私は、カムヤグイサマがフラムさんに倒されて、ファースの村から王都に送ってもらう途中、ジーンさんに呼び出されました」
「覚えてる。なんか一晩中、テントの中で語り合ってたよね」

 てっきりフラムは、シアの夢想の能力にジーンの知的好奇心が刺激されたのだろう――と思っていたが、実際は違ったわけだ。

「あのとき私は、ジーンさんに、“蘇生魔法”の存在を聞かされました。じ、自分は、オリジンとの戦いで命を落とすことが決まっている。だから、すでに王都に、死後、自分が蘇るような術式が仕掛けてある、と」
「それを、シアさんは信じたんですね」
「実際、王都にそれらしい水晶や、術式も用意してあって……だから、つい」

 “つい”という言い方からして、シアにとってそれは不本意な結果だったのだろう。
 まあ確かに、騙されたとあればいい気分はしない。

「それと、蘇生したあとに、みなが混乱しないように、オリジンとの戦いが終わったら、蘇生術式のことをみんなに言いふらしてほしいとも……頼まれました」

 それは、仮にシアが“自分が騙された”ことに気づいても、生まれたジーンの幻影が消えないようにするための処置。
 うつむきながら語る彼女とは対照的に、ジーンは満足気にうなずき、相槌を打つ。

「その後、戦いが終わって数日後に、僕が死んだという情報だけが王都に流れた。その話がシアの耳に届いた瞬間に、夢想の魔法が発動したというわけだ。我ながら付け焼き刃にしては上出来なオペレーションだった」

 自画自賛の下りは、以前のジーンを思わせる。
 英雄となっても、身勝手さが完全に消えたわけではない、ということだろうか。

「実は、最初の頃は以前のジーンさんとさほど変わらなかったんです」

 ミルキットが言った。

「そうなの? いや、あー……そっか、その時点で蘇生魔法の存在を信じ込んでるのは、以前のジーンを知ってる人ばっかりだから」
「たぶんそうだろうって、エターナさんが言ってました。でも、すぐにそれがシアさんの魔法で作られた存在だと気づいて……」
「前のジーンを知ってる人間からの魔力供給は途絶えた。でもその代わり、新聞で見たり、噂で聞いた程度にしかジーンを知らない人の影響が増えたから、今の状態になった、と」

 こくん、と頷くシア。
 だから文字通り、今の彼は“英雄”ジーンだ。
 例えば、棺の間の扉に描かれたオリジンとの戦いに多くの脚色があったように。
 王国に伝わるオリジンとの戦いにおいて、キリルとマリアも死力を尽くして敵と戦った――と記されてしまったように。
 人々に伝えられる歴史は、事実とは異なる。
 今のジーンは、それが具現化した、実に歪な存在だった。

「僕自身、今の自分がジーン・インテージとは別物だということは理解している。その性格の変化も、身をもって経験してきた」
「自分で自分が本物じゃないってわかってるのに、消えたりしないんだ」
「僕の存在を担保しているのは、あくまで他者の想像だからな」

 ジーンは寂しげに言った。
 だから、どんなに努力しても、どんな経験をしても、ジーンは変わらない。
 彼の変化は、人々がジーンに抱くイメージの変化に他ならないのだから。
 それに関しては、さすがのフラムも同情的にならざるをえなかった。
 命は愚か、心の取捨選択すら自分に権利が無いのは、さぞ息苦しかろうに、と。

「だが、ジーン・インテージという偉大な男は、それぐらい理解していた。それでも我が叡智がこの世に残ることを望み、そして果たしたのさ」

 死ぬ前の彼はある意味で、この世を誰よりも憂いていた。

 自分という天才がいなければ、きっと技術の進歩は止まるだろう。
 自分という存在が消えてしまえば、近いうちに人類は超えられない壁にぶち当たるだろう。
 自分という頭脳が存在しなければ、必ず世界はまた道を違えるだろう――

 無論、そんなことはない。
 全てはジーンの自惚れに過ぎず、彼がいなければいないで、それなりの未来は訪れていたはずだ。
 だが、それを本気で信じ込むのがあの男だ。

「ほんっとそういうとこ嫌い……」

 偉大だろうが何だろうが、フラムには到底受け入れがたい思考回路であった。

「僕が貴様に好かれたいと思うのか? ――と、以前の僕なら言っただろうな」
「だろうね」

 フラムはジーンをにらみつける。
 やっぱりいけ好かないやつだ。

「さて、話を戻そう。シアの魔法についてだが、彼女自身が信じ込むこと以外に、もうひとつ発動条件がある。わかるか?」

 首を振るフラム。
 考えるのもめんどくさかった。

「確かに天才である僕でなければ導き出すのは難しい――」
「そういうのいいから教えてよ」
「冷たいな」
「当然でしょ」
「ははっ、それもそうだ。さて、その条件というのは、“想像の対象がこの世に存在しないこと”だ」
「存在しない?」

 フラムはもちろん、ミルキットもきょとんとしている。
 どうやら彼女も、ここまで突っ込んでシアの能力について聞いたことはなかったようである。

「か、カムヤグイサマは、実在しません」

 シアが言った。

「まあ確かに……信仰は存在しても、神様が実在するなんて話は聞いたことないもんね」

 オリジンを除いて、ということになるが。
 信じている人に言うと怒られそうな話だが、実際に神様と会って話した人なんて存在しない。

「それと同じように、“僕が蘇生魔法を仕掛けた”という事実も存在しない」
「あ……だから」

 フラムの中で、点と点が線で繋がった。
 なぜ彼が墓に住むなどという珍奇な行動に出たのか、その理由もおぼろげながらに理解する。

「つまり、僕がここに存在するということは、ジーン・インテージという人間が確実に、この世に存在しなくなったことの証明だ」
「ここに住んでるのも、もしかして自分のことを“ジーンの墓”と思ってるからとか、そういう理由?」
「よくわかったな」
「私としてはわかりたくなかった」

 世界で一番通じ合いたくない相手だ。
 その欠片でも理解できてしまったことは、フラムの人生の汚点である。

「僕は墓標なのさ。世界で最高の頭脳を持ち、人々に貢献し、世界を豊かにする生ける墓標だ!」

 それを――ジーンは、誇らしげに言いきった。

 人としてのジーンは死んだ。
 そして新たに生まれたジーンは、以前とは別物ではあるが、抱く大志は同一。
 その遺志に誇りを持って、ひたすらに自分を愛し存在し続ける。
 ある意味で、以前以上に自分勝手で――その生き方は羨ましくもあり、フラムにとっては見ているだけで疲労感を覚えるほど厄介なものでもあった。

 ここまで聞いた話が全て事実ならば、おそらくジーンに寿命はない。
 仮に年を取らないことに違和感を覚える人間が出てきたとしても、『魔法で老化しない』とでも言っておけば人々は納得するだろう。
 老化を防ぐ魔法は存在しない、だから夢想により彼は老いなくなる。
 人類が滅びるまで、あるいは彼の死を全ての人が認識するまで、その叡智は消えること無くこの世に残り続けるのだ。

「ここまでの話は理解できたけど、あとひとつだけ聞いてもいい?」
「一つと言わずいくらでも聞いてくれていいのだが」
「これ以上は私の限界だから」

 病み上がりのフラムにジーンは重すぎる。

「記憶について。ジーンが生き返った経緯はわかったけど、なんでぽっと生えてきたあんたに、以前の記憶があるの?」

 人としてのジーンと、今のジーンは繋がっていない。
 あくまでシアの能力で生まれただけの、人々の想像によって構築された虚像に過ぎないはずなのだ。
 だがなぜか、フラムを奴隷として売り払ったときはもちろんのこと、他の記憶もしっかり残っているようである。

「それに関しては、僕にも正確なことはわからない」
「“わからない”なんて言葉を使うなんて珍しい」
「神の領域だ。いつか踏み入れるつもりではあるが、今はまだな」
「何が神の領域なの?」

 シアの能力が、そんなけったいなものと繋がっているというのか。
 フラムは怪訝な表情を見せた。

「アカシックレコード、生命の書、天空の記憶などと呼ばれたものの存在だ」
「なんなの、それ」
「この世で起きた、あるいは起きる予定の全ての出来事が記された何か――そういう概念だ」
「そこから、記憶が引き出されてるって言いたいの?」
「そうとしか思えない」

 急に胡散臭い話になってきた。
 軽く息を吐いたフラムの表情に、精神的な疲労が若干にじむ。
 微かな変化だったため、気づいたのはミルキットぐらいのもので、隣に座る彼女はテーブルの下で手を握った。
 すぐさまフラムも反応し、二人は指を絡める。

「僕の部屋で盛らないでくれないか」
「手をつないだだけで盛るとかどんだけピュアなのよ」
「頭脳のリソースは全て知識欲に割かれているからな」
「否定しないんだ……」

 相変わらず異性とは縁のない生活を送っているようだ。
 以前より民衆からの人気は出て、言い寄る女性も増えているはずだというのに。
 もっとも、現在の彼に性欲に類似する感情があるかは定かではないが。

「ファースの村にあった、地下遺跡。あの場所でカムヤグイサマに追われたエターナ、インク、ミルキットの三人は、奇妙な幻覚を見せられたと言っていた」
「幻覚というよりは違う場所に飛ばされた感じで……私たちの知る町とは、全くことなる世界が広がっていました」
「実は魔導列車や通信端末は、そこで見た景色からインスピレーションを受けたエターナが発案したものでね」
「似たような道具がある、技術が進歩した世界だった、ってこと?」

 ミルキットが頷く。

「じゃあ、そのアカシックレコードから未来の情報を引き出して、カムヤグイサマが見せた……?」
「違う、未来ではない。それは過去だ。おそらくオリジンに滅ぼされる以前に、カムヤグイサマが信仰されていた頃の景色なのだろう」
「過去……」

 フラムは目を閉じ、空想する。

「後にあの遺跡を詳しく調べてみると、カムヤグイサマは当時、この世界に存在した大規模通信網の中で都市伝説として語られていたようだ。しかも、祟り神としてな」

 ジーンが何やら語っているが、耳に入ってこない。
 それほどまでに、フラムの意識は妄想に没入していた。

 オリジンに滅ぼされる以前の世界。
 人々が平和に暮らす毎日。
 そこに突然降り注ぐ、恐怖の雨。
 当たり前だと思っていた日常が崩れていく瞬間。
 一緒にいるはずだった人が――

 ザッ、ザザッ。

 溶けて――

 ザザッ、ザザザッ。

 ケロイドみたいに、赤くドロドロと――

 ザザッ、ザ……。

 熱い、痛い、苦しい、水が欲しいよ、って――

 ザアァァァァァァァ……。

 抱きしめられなかった、あの日の、後悔、光景、憧憬――

「ぐ……ぁ……っ」
「ご主人様っ!?」

 急にフラムを強烈な頭痛が襲った。
 まるで、ぽっかりと開いた穴に、形の違う、尖った立方体をはめ込んだような、強引な、苦痛。

「希少属性は、一種のバグのようなものだ。世界にとっての想定外、星の意志にとってのジョーカーとも呼べる」

 ジーンはフラムに起きた症状を理解しているかのように、淡々と語る。
 シアはその横でおろおろとしていた。

「夢想だってそうだ、アカシックレコードにアクセスできるなど、馬鹿げているじゃないか。あれは本来、人が触れて良い領域じゃない」
「づ……うぅ……」
「触れて良い領域じゃない、触れて良い領域じゃないんだ、僕はそれを知っているし、知っているから警告するしかない」
「は……ぁ……ミル、キ……ソレ……イ……ゆ、うぁ……!」

 音が遠い。
 視界が、別のチャンネルを――この世界、否、違う時代を、見ようとしている。

「魔力100万超え……か。やろうと思えば時を戻すことも、命を呼び戻すことも、あるいは世界の理を垣間見ることも可能だろう。しかもまだ繋がり・・・が残っているらしい。なるほど、これが運命というやつか。確かにただ者ではない、普通ではない、可能性は考えておくべきだった。謝罪しよう。記憶に関する話はここまでだ。そして今後もしないと誓っておかなければな」

 ジーンは一人で納得して、何やらぶつぶつと言葉を発していた。
 だが今のフラムにもミルキットにも、それを聞き取る余裕はない。

「ご主人様っ、大丈夫ですか? ご主人様っ!」

 ミルキットの胸に抱きしめられ、フラムの症状は次第に落ち着いていく。
 彼女は――何かを見た。
 それが何なのかはわからないが、灰色の砂嵐の中で、ミルキットの笑顔と、それが熱に溶かされ赤黒くどろどろになっていくのを見たような気がした。
 いつの記憶か。
 まだ、毒が彼女の顔を蝕んでいた頃のものだろうか。

「ごめん……大丈夫。ありがとう、ミルキット」
「本当の、本当に大丈夫ですか? もしかしたらまだ後遺症が残って……!」
「それは無いから安心するんだな。あの治療は、後遺症が残るようなやり方ではなかったはずだ」

 どうやら、フラムの体の治療にも、ジーンは絡んでいるようだ。
 いい機会なので、と彼女はそのことについても尋ねることにした。
 どうせ――さっきの頭痛に関しては、意味深なことを言うばかりで答えてくれる気がしなかったから。
 あるいは、ジーン自身も理解せずに発した言葉なのかもしれない。
 彼とて、世界の記憶にアクセスしたうちの一人であるがゆえに。

「セーラちゃんは私を治療してくれたって言ってたけど、私に回復魔法は効かないはずだよね」
「いや、それは正確ではない。回復魔法はちゃんと効いているさ、効果が反転するだけで、おそらく今のフラムに対する最も有効的な攻撃手段だ」

 無条件で傷を癒やす――すなわちそれはフラムにとって、理屈を無視して無条件でダメージを与えることに他ならない。

「じゃあ、どうやって私の体を治したの?」
「一度壊して、再生させたんだ」
「どういう……こと?」

 恐る恐る聞き返すフラム。

「肉体は、“正常な状態”というものを記憶している。それを元に、呪いの装備による再生能力が働いているわけだが――あいにく、臓器や脳の“消耗”までは回復されない。というよりは、消耗した状態を、肉体が正常な状態として記憶してしまうらしい。確かにそうしなければ、不老不死が成立してしまうからな。ゆえに、騎士剣術で心臓と脳を消耗していたお前は、命を落としかけていた」

 そこまでは、フラムも理解している。
 あれがなければ勝てなかったとはいえ、今になって思えば、相当な無茶をしたものだ。
 ミルキットとの生活を前に力尽きるなんて、死んでも死にきれない。

「そこで、まずは僕やエターナ、魔族たちが協力して、それを書き換えたわけだ」
「神喰らいによる再生が、私の心臓と脳を正しい形に戻すように修正した……?」
「その通り。そして最後に、セーラが魔法で肉体を破壊し、再生能力を発動させた」

 フラムの頬が引きつる。
 自分の体がとんでもないことになっていたのはもちろんだが、それ以上にセーラにそんなことをさせてしまった罪悪感がのしかかってきた。
 たとえ最終的に癒やすためとはいえ――彼女とて、人を傷つけるために回復魔法など使いたくなかっただろうに。

「ここまで言っておいて何だが……」

 ジーンは顎に手を当て、言った。

「ひょっとするとセーラがお前にそれを話さなかったのは、彼女なりの優しさだったのかもしれないな」
「今さらそんなこと言っても遅いっつうの!」

 うがー! と声を荒らげるフラム。
 すっかり先ほどの頭痛は回復したようだ。
 それでもミルキットは心配そうに彼女を見ていたが、主に微笑みかけられながら頭を撫でられると、ネガティブな考えはすぐに吹き飛ぶのだった。





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