「お前ごときが魔王に勝てると思うな」とガチ勢に勇者パーティを追放されたので、王都で気ままに暮らしたい
117 俺の屍を越えてゆけ
魔王城、地下。
無数の人体が螺旋を描き壁に張り付く――すなわちオリジンの本体、その中央にキリルは立っていた。
コアにより自我を剥奪され、渦巻く顔を押し付けられた彼女は、虚空に手をかざし封印を解くために魔力の放出を続けている。
そこには彼女以外、誰もいない。
聞こえてくるのは、顔の渦から響く『ぶじゅっ』という血が溢れ出す音だけだ。
指輪に操られ、リターンで魔王城へと移動し、オリジンコアを使われてしまったキリル。
彼女はそれからずっと、休むことなく延々と封印解除の作業を続けている。
最初の頃こそ順調に進んでいたが、完全なる解放が近づくにつれて、徐々に時間がかかるようになってきた。
王都を潰すために強引に力を行使したことも、その原因の一つだろう。
しかし、あれは必要な手順だった。
いや、というより――オリジンにとってあれは“詰めの一手”であるはずだったのだ。
あとはフラムを捕らえ、接続して終わり。
それで世界は平和になるはずだったのに。
だが、事はそう簡単には進まなかった。
ジーン・インテージという、いつの間にか入り込んでいた害虫のせいで。
もっとも、オリジン側の優位はまだ揺らいでいない。
フラムを接続できなかったのは残念だが、彼にとっては“完全なる平和”さえ実現できればどちらでもいいことだ。
そして――魔王城の窓から空を眺めるマリアにとっても、それは同じことである。
ライナスは死んだ。
ならばもはや未練は無い。
人も魔族も、ありとあらゆる生物は滅びてしまえばいい。
心の底から――
『ねーさま!』
脳裏にちらつく、セーラの笑顔。
ああ、断ち切ったつもりだったのに。
彼女ぐらいなら、そう甘く考えていたのが間違いだったのか。
「……人が人である限り、未練は消えないものなのかもしれませんね」
たとえセーラを殺したとしても、次はまた別の未練が湧いてくる。
最後は自分の命に執着して、『死にたくない』と喚くようになるのかも知れない。
「わたくしは結局、どこまでも半端なまま。きっとそれは、普通に生きていても同じことだったのかもしれません」
生まれ持った性分というものだ。
高い魔力と、一見して優しく見える穏やかな顔つき。
それに騙されて、人々は彼女のことを“聖女”と呼んだが――自分にそれほどの才能が無いことを、彼女は知っている。
笑顔の裏には影がある。
太陽のように無条件に他人を照らすことはできない。
むしろ自分なんかより、セーラの方が。
彼女がやけに眩しく見えるのは、そのせいだろうか。
「わたくしは何者にもなれなかった」
否、問題はそこにあるのではない。
結局マリアは、どうなりたかったのか。
どこに行きたかったのか。
「わたくしは……」
瞳を閉じると、両親の顔が浮かんでくる。
セーラと違い、故郷が滅びたときのことを、彼女ははっきりと覚えている。
いつまでも続くと思っていた日常が、ある日、突然に途切れて消え、全てが奪われてしまった。
マリアの心は未だ、あの場所に置き去りにされている。
「……別に、聖女になどなりたくはなかったのです」
ただ、あの村で幸せに暮らせていたのなら。
聖女でもなく、オリジンとも関わりを持たず、権力も名誉も金も必要ない。
平穏な、ごく普通な暮らしが続いていけば、それで。
要するに、フラムやキリルと同じ――根本的に、マリアは“英雄”や“聖女”に向いた人間ではないのだ。
人々が少女の許容量を越える願望や欲望を押し付けた結果生まれた、歪み。
正常ではない存在。
だからこそ、世界を乱す。
フラムは正に、キリルは境界で、そしてマリアは負へと――各々の向きは違えど、生まれた理由は一緒だ。
きっと進んだ方向が違ったのも、運とか偶然とか運命とか、そういう、翻弄されるしかない大いなる力が作用したから。
あの日、フラムがミルキットや魂喰いと出会っていなかったら。
キリルがフラムと再会できていなかったら。
もっと前にマリアとライナスが出会えていたら。
彼女たちの歩んだ道は、また違う形を描いていたのかもしれない。
もう終着点のすぐそばまでやってきた以上、悔いたところでどうにもならないのだが――振り返ればそこには足跡があり、だからこそ悔しくもなる。
迷う二本の道に比べて、フラムの進む道はなんと真っ直ぐなことか。
必ずしも一直線とは言えないが、横道にそれそうになれば、誰かが手を引いて引き戻してくれる。
「こんな場所に来たことも……望んだわけでは」
わかっている。
それは現状を引き起こした一因であるマリアに許される言葉ではない。
それでも、一人の今は、嘆くことぐらい許して欲しかった。
不平不満を口にせず生きていけるほど、彼女は強い人間ではなかったから。
灰色の空はマリアを祝福しない。
長いこと太陽を見ていない気がする。
星ですら醜い自分のことを拒んでいるのか、と心の中で自嘲する。
「空など見上げて、そのようなことをしても、逃げ道などどこにもありませんよ」
いつの間にか部屋の入口に立っていたディーザが、そう言った。
振り向くマリア。
そこには、正体を明かす前と変わらない――そう、罪悪感も愉悦もなく、一切変わらない彼の姿があった。
「今更そのようなことは」
「そうですかなあ、どうにも私はあなたを信用できないのです」
「ここまで来たというのにですか?」
「土壇場で絆され、裏切るのではないか、と」
ディーザの言葉に、マリアはくすりと微笑む。
「わたくしが仇討ちをするのではないかと、恐れているのですか? 驚きました、あなたがそのような人並みの感覚を持ち合わせているだなんて」
「そのような意味では――」
「ふふふ、そういうことにしておきましょう。ご安心ください、どのみち、わたくしをそうさせる彼はもう死にました。この手で、殺したのです」
感触も、匂いも、姿も――全てが鮮明に焼き付いている。
ライナスの死に様を、マリアは地獄に墜ちても忘れることはないだろう。
だが一方のディーザは、納得していない様子だ。
それもそのはず。
自らの手のひらを見ながら物思いに耽る、そのまともな人間らしい感覚こそが、信用できない理由なのだから。
「それに、たとえあなたがわたくしの仇だったとしても、どうせ滅びるなら同じこと」
「……なら、良いのですが」
これ以上言っても無駄だろう、とディーザはそれ以上の言葉を放棄した。
彼とマリアは、所詮は利害が一致しただけの他人だ。
互いの理解など必要ないのである。
「ところで、なぜわたくしの部屋まで来たのですか? 今までは一度たりとも、そのようなことは無かったはずです」
「フラム・アプリコット率いる勇敢なる英雄たちが、魔王城に近づいてきておるようですからな。念のために様子を見に来たのです」
「あら、もう来たのですね。まだ封印の解除までは時間が残されているというのに……奇襲のつもりなのでしょうか」
ジーンなら、オリジンが完全に復活する時期ぐらい把握しているはずだ。
時間をギリギリまで使って戦力をかき集めた方が、勝利の確率は高まるはずなのだが。
「敵は何人ですか?」
「フラム・アプリコット、ジーン・インテージ、セーラ・アンビレン、エターナ・リンバウ、そしてネイガス、ツァイオン――計六人ですな」
「おや、たったそれだけですか。本気でわたくしたちに勝てると思っているのでしょうか」
「さあ? 私には読めませんな。罠を仕掛けてくるのか、はたまた起死回生の策があるのか。もっとも、なにをしようともキリルを使えば……」
彼女はまさに切り札だ。
封印がさらに遅れることにはなるが、フラムたちさえ消してしまえば、もはや人類や魔族の対抗策はなくなる。
いざというときは、出し惜しみせずキリルを前線に出す――ディーザはすでにそう決めていた。
だが同時に、おそらくその必要は無いだろうとも考えている。
いかなる手段を用いようとも、自分たちの力を超えることは出来ないのだから、と。
「さて、そろそろ迎え撃つ準備をしなければなりませんな。ガディオの運用はいかがなさるおつもりかな」
「城の前に置きますわ、あとは勝手にフラムさんとやりあってくれるでしょうから」
「セーラ・アンビレンは、おそらくネイガスと行動を共にするはず。始末は任せても?」
「構いません。あなたの方こそ――前から思っていたのですが、子供の頃から面倒を見てきたシートゥムさんやツァイオンさんを手にかけて、躊躇いはありませんの?」
「無い、とは言い切れませんなあ」
ディーザは少しうつむき加減に、悲しげな表情で言葉を発する。
「苦しそうに、痛そうに、我が子同然の彼らが泣き喚きながら死するその様を見ていると、まるで私自身が犠牲者であるかのように、胸が痛むのです」
胸元の布を握りしめながら、彼は大げさに言った。
その感情に嘘はない。
彼は間違いなく、子供同然に育ててきた魔族たちの死を嘆いている。
「しかしそれは必要な犠牲。オリジン様の願いを叶えるためには、仕方のないことでしょう」
だからこそ、である。
ディーザは根本的に、感覚が他人と違う。
己の感情よりも、異常なほど冷静に価値観を優先するがゆえに、平気で他者を巻き込み、人生を蹂躙し、家族すら殺してみせる。
かつて、生まれたばかりの彼が捨てられたのは、全く異なる理由だったのかもしれない。
しかし、それはおそらく、この世界を守るために必要な行動だったのだと――彼を間近で見てきたマリアは思う。
かと言って、ディーザを拾った先々代の魔王を責めることはできない。
吐き気がするほど純粋な悪は、彼一人である。
「それでは私はこれで。健闘を祈ります」
「そちらこそ」
マリアの部屋を去るディーザ。
遠ざかっていく足音が完全に聞こえなくなると、彼女はため息をついて、再び空を見た。
「……セーラなんて、来なければいいのに」
別に他の人間や魔族を殺すことに躊躇いはない。
今更、そんなことで迷うほど綺麗な心はしていない。
だけど、セーラだけは、少し嫌だと思った。
でもたぶん、殺せる。
ネイガスとセーラの二人だけなら、きっと簡単にひねりつぶせる。
それぐらい、今のマリアは人間離れしている。
だからこそ、来ないで欲しい。
どうせ六人じゃ、勝てるわけないのに。
運よくマリアやガディオを突破できたとしても、何人かは死ぬし、キリルには勝てない。
「無駄なんです、全部。だから……」
世界が終わるそのときまで、好きな人と二人でゆっくり過ごせばいい。
少しでも長い時間、幸せに過ごせばいい。
自分にはもう叶わない夢だから――と願うのだった。
セーラがセーラであるがゆえに、叶わぬ望みだと知りながらも。
◇◇◇
フラムが放った一撃は、確かに道を切り開いた。
しかし突破するより前に、キマイラの群れが再び彼女たちに迫る。
戦いを前にできるだけ消耗は避けたかったが、ここで脱落者を出してしまえば元も子もない。
再びエターナとジーンの魔法がフラムの刃を包み込み、巨大な剣を作り出す。
今度はリートゥスの腕が支えとなり、フラムの負担は軽減された。
もっとも――
「殺しましょう、皆殺しにしましょう、切り潰してすり潰して潰し潰して塵にして殺してしまいましょう! オリジンと、ディーザと、それに関わる全ての存在を!」
当のリートゥスは、決戦の直前になって気分が高ぶり、まともに言葉が通じない状態だが。
最近は怨霊らしい一面をあまり見ていなかったのでフラムは少し驚いたが、我慢してきたものがここに来て爆発しているのかもしれない。
「返して、返してッ、返してぇっ! 私の大事なものを、奪われた全てのものを! 返して、返して、返して返して返してええぇぇぇええ!」
刃が地面と衝突し、その衝撃波だけで巨大な爆弾が炸裂したほどの破壊力が生じる。
直接、剣に触れたキマイラはもちろんのこと、周囲にいた個体も粉々になって砕け散った。
もはや人狼型や獅子型や飛竜型など関係ない。
十把一絡げに、平等に、圧倒的な暴力が再びセレイドへの道をこじ開ける。
必死で敵も塞ごうとするが、もう間に合わない。
それぞれが全速力で駆け抜け、キマイラに追いつかれる前に街に到着した。
殿を務めるフラムがちらりと振り返ると、後方からはなおも大量の敵が追いかけてきていた。
これでは足を止めることはできない。
速度の差、そして目指す方角の違いから、徐々に散り散りになっていく一行。
予定通りではあるのだが、しかし――ここから先、生きて戻ってこれる保証は無い。
この中に、もう二度と会えない誰かがいるような気がして、フラムはひどく寂しい気分になった。
それでも止まらない。
止まれない。
魔王城の目前まで迫る頃には、フラム以外の姿はどこにも無かった。
各々の因縁を果たすため、別の入口からの侵入を試みているのだろう。
馬鹿正直に真正面から入ろうとするのは彼女だけだ。
だが、彼女にもそうしなければならない理由があった。
魔王城の前に広がる、どこか王都を思わせる広場。
かつては魔族たちの憩いの場として使われていたであろうその場所に、男は立っていた。
身長2メートルに迫るほどの巨体。
シンボリックな黒く分厚い鎧と、対照的に、かつての姿を知る者ほど違和感を覚える赤い大剣。
それを自らの目の前の地面に突き立て、柄を両手で握るのは――ガディオ・ラスカットの成れの果てだ。
彼は、まるでフラムがここに来るのを予知していたかのように、静かに待ち受けていた。
ザッ、ザッ、ザッ、と足音を殺すこともなく、フラムは彼に近づいていく。
かつての仲間であり、同時に師でもあったガディオ。
だが今は、顔面を醜く渦巻かせた、コアに操られる意思無き人形だ。
殺さねばならない。
いかなる未練があろうとも、その感情を彼に向けることは無駄である。
意思に呼応するように、フラムが身につけた呪いの装備――『神を憎悪するレザーブーツ』、『醜き執着のレッグガーター』、『苦痛と絶叫のレザーベルト』、そして『虚栄心のカーミンネックレス』が全身に力を満たす。
ザッ、とその右足が前に出ると、『慟哭のシェイドレガース』が両足に現れた。
左足が前に出ると、『笑う殺戮者のダマスカスガントレット』が両腕に装着される。
さらに一歩、ガディオに近づくと、『鬼哭啾々のアビスメイル』が体を包む。
風に吹かれ、黒き鎧と共に呼び出された赤いマントが、冷たい風に吹かれてたなびく。
最後に、互いの間合いギリギリまで接近すると、ずるりと『対神呪装・神喰らい』を異空間より引き抜いた。
全身に呪われた装備を身に纏い、鋭い目つきでガディオを見据える。
そこに、仲間に見捨てられ、グールに怯えていたか弱い少女の姿は無い。
対峙する二人。
ガディオに動きは無いが、フラムは彼から発される殺気を全身にピリピリと感じていた。
剣技とは体に染み付くものだ。
その肉体に魂は宿らずとも、経験と記憶はそこに残っている。
さらにオリジンコアによって肉体は強化されており、生前以上に手強い相手とも言えるだろう。
それが、フラムは気に食わなかった。
勇敢なる魂が積み上げてきたものを利用し、身勝手に作り変えた挙げ句に、生きてきた頃の彼を超えるなどと――あまりに冒涜が過ぎる、と。
怒りに呼応するように、さらに体に力が満ちる。
満ちた力は――
--------------------
フラム・アプリコット
属性:反転
筋力:48694
魔力:49420
体力:50628
敏捷:47530
感覚:50265
--------------------
スキャンでその全てを見ることはできないものの、彼女から発せられる気迫を感じるだけで、すさまじさを体感することは出来るはずだ。
並の冒険者ならば、体をすくませながら怯えるに違いない。
しかし、ガディオはそれを感じながらも微動だにしなかった。
フラムが瞳に魔力を集中させ、小声で「スキャン」と唱えると、文字と数字がずらりと表示される。
--------------------
ガディ膂オ・ラスカオ縺
属イ性:土チ
筋力:62196
魔ラ:11518
?縺?≠:60221
敏捷:23189
感シ?:18402
--------------------
彼がフラムの殺気に動じないのも当然のことだった。
二人は同等の力を持っているのだから。
個々の数値に優劣はあれど、技術で逆転できる程度だ。
どちらが強いかを証明するためには、もはや力と力をぶつかり合わせるしかない。
フラムは神喰らいを上段に構える。
一方でガディオは剣を地面から引き抜くと、腰を低く落とし、刃を後ろに向け、相手からその切っ先が見えなくなるように構える。
ドッ、ドッ、ドッ、と緊張にフラムの心臓が脈打つ。
周囲が静かなせいか、余計に鼓動がうるさく聞こえた。
集中の邪魔だ。
フラムはノイズを除去、心を無にして神経を研ぎ澄ます。
どちらから仕掛けるか、二手、三手――いや、もっと先まで想像しながら、相手の手札を読み、無数に分岐する戦略の中から一つの答えを選び出す。
ガディオの方から仕掛けてくる様子はない。
フラムが攻めるのを待っているのだ。
「ふうぅぅぅ……」
息を吐き出し、体力を削り、プラーナを生成。
生まれた力は両腕を伝い剣に満ちる。
振り下ろせば、気剣斬の完成だ。
あるいは突き出せば気穿槍として放たれる。
初手を、どう攻めるか。
後手に回れば、少なからず状況は不利になる。
だというのにあえて攻撃を待つガディオは、奇妙と言えば奇妙だ。
フラムが騎士剣術を使うのを待っている?
それとも、そう思わせるためのブラフなのか。
あえて虐殺規則で行くのも――いや、今のフラムが使っても、精度と威力ではどうしても騎士剣術に劣る。
たとえそれが牽制だとしても、出し惜しみは命取りだ。
ならばやはり、絡め手ではなく、素直に全力でぶつかるしかない。
「っ……はあぁぁぁああああッ!」
目視が不可能なほどの速さで振り下ろされる剣。
放たれたのは――三日月形の刃、気剣斬だ。
剣速に比例して、それはフラムが神喰らいを振り下ろすのとほぼ同時にガディオに襲いかかる。
そのとき、彼の足がカツンと地面を叩いた。
すると長方形に切り取られた土が地面からせり出し、盾となる。
土属性魔法――確かに今のガディオは、以前に比べてかなり魔力が高くなっている。
しかしこの程度では、フラムの気剣斬を止めることは出来ないはず。
ゴガンッ!
案の定、放たれた刃は土の壁を貫通し、その向こうにいるガディオに襲いかかった。
命中、したのだろうか。
(いや、違う)
フラムは直感する。
あれは防ぐための魔法ではない、目くらましだ。
ガディオは壁の向こうで、なんらかの方法でフラムの気剣斬を止めた。
ゆえに、衝突の音は壁を破壊した時の一度だけ。
接近しての追撃は危険だ。
すると次の瞬間、壁の向こうから放たれた無数のプラーナの刃が、瓦礫を巻き込みながら押し寄せる。
予測していたフラムはすぐに飛び避けるも、ガディオもまたそれを読んでいる。
赤い剣は、ゴォッ! と空を裂きながら突き出され、渦巻くプラーナの矢が射出された。
「浮き上がれっ!」
気剣旋槍を、フラムは重力反転でふわりと浮かび避ける。
すると、耳元からリートゥスが語りかけてきた。
「……私の力は必要ですか?」
フラムとガディオの関係は、彼女も知っている。
だから聞いたのだろう。
先ほどまで狂ったように言葉を発していた怨霊と同一人物とは思えないほど冷静なのは、一周回って落ち着いたからだろうか。
「今は私だけでやらせてください」
フラムはそう返事をした。
ガディオは敵だ、いかなる手段を使っても倒さなければならない。
だが一方で、それを己の力だけで乗り越えたいとも思っていた。
ここで躓いているようでは、キリルに勝てるはずがない、とも。
「わかりました。ですが、私の目的はディーザを殺すこと――」
「わかっています、必ずあいつのところにはたどり着いてみせますから」
「それならよいのです」
ニタァ、と笑ってリートゥスは姿を消した。
そうこうしているうちに、ガディオが脚部にプラーナを込め、まるでロケットのように接近してくる。
「づうっ!?」
空中で黒の刃と紅の刃がぶつかり合う。
風圧で近くにあった民家の窓が尽く割れた。
パワーで押し負けたフラムは、壁に激突する。
さらにそれだけでは止まらず、いくつもの建物を貫通しながら吹き飛ばされた。
背中が地面にぶつかると、両腕で跳ね上がり、宙返りをして両足で着地。
前方より、次の攻撃が迫る。
すかさず大剣を構えるフラムは、腕の中を細い蟲が這いずるような違和感を覚えた。
(ガディオさんのプラーナ!?)
衝突したときに流し込まれたようだ。
死毒のように全身に回ろうとするそれを自らのプラーナで押し止めるも、その間もガディオは近づいてくる。
振り上げられた剣を横に飛び込んで回避。
放たれた気剣嵐がゴガアァッ! とセレイドの町並みを削り取る。
さらに彼はフラムの目の前から消え、背後に回り、剣を振りかぶる。
彼女が振り返ってガードしようとした瞬間、パァンッ! とフラムの腕が内側から爆ぜた。
「ぐうウゥゥぅっ!」
神喰らいと黒いガントレットがこぼれ落ち、地面にぶつかる前に粒子になって消える。
プラーナを植物の根のように相手に送り込み、体内で炸裂させる騎士剣術――気脈砕《プラーナパルサー》である。
両手がなければガードも不可能。
エンチャントの効果は持続しているため、神喰らいの再生はすぐさまフラムの両腕を元の形に戻そうとするが、ガディオの攻撃の方が早い。
すると彼女は、彼の胴体に向けて蹴りを放ち、そして――
「吹っ飛べぇっ!」
膝から先を、反転の力で射出した。
骨が砕け肉が千切れる痛みに顔をしかめながらも、ガディオはその衝撃で攻撃の手を止め、フラム自身も反動で後退する。
彼女は地面を転がりながら、手足を再生。
勢いを利用して立ち上がり、神喰らいを手に地面を蹴ってガディオに立ち向かう。
同じく彼も、フラムに向かって一直線に突進してきた。
「はああぁぁあああああっ!」
ガギンッ――ゴオォオオオオッ!
ぶつかり合う剣と剣。
巻き起こった風が、周囲の民家を吹き飛ばす。
鍔迫り合いをする二人の髪は逆立ち、あらわになった顔が至近距離でにらみ合う。
この近さで見る肉の渦が、なんと醜いことか――その冒涜的な醜悪さに、フラムは憤りを感じずにはいられなかった。
「ガディオさんは、全力で、真っ直ぐ生きてきたのに……その生き方を、身勝手な欲望で汚すなああぁぁぁぁッ!」
確かにフラムは、筋力で今のガディオに劣る。
だが心無き人形に、気合で負けるはずがなかった。
彼の赤い剣が、徐々に押されていく。
ぶじゅっ。
だがそこで、肉の渦が蠢く。
するとガディオの力が急激に増し、フラムの体を吹き飛ばした。
「くっ……!?」
体勢を崩すフラムとの距離を一気に詰め、彼は斬撃を放つ。
劣る速度を莫大なプラーナで補い、その全てを両腕に流し込み――繰り出される怒涛の連撃、気剣連斬。
ズドドドドドドッ!
まるで分身したかのように、刃が多方向からフラムに叩きつけられる。
目視はできる、だがこの体勢では肉体の対応が追いつかない。
ゆえに今のフラムには、頭を心臓を守ることしかできなかった。
守りきれない腕や腹、脚部は瞬時に細切れにされてしまう。
だが代わりに、大量の血を手に入れた。
「づああぁぁぁッ!」
辛うじて剣を振れる右腕から繰り出される、虐殺規則・絡新婦《アラーネア》。
命中すれば、血の網がガディオの全身を拘束するだろう。
すると彼はそれを嫌がったのか、飛び退きながら剣を振るって攻撃をかき消す。
フラムの肉体の再生は瞬時に完了する。
彼女は両腕でしっかりと神喰らいを握ると、気穿槍の細く鋭い一撃がガディオに射出された。
すると彼はそれを剣の腹で受け止める。
とはいえ、まともに受ければいくらガードしたとしても体勢は揺らぐ。
そこに追撃を仕掛けるつもりだったフラムは――しかし、想像していたのと全く異なる結果に戸惑うしかなかった。
「プラーナが、消えた!?」
そう、フラムの放った気穿槍は、まるで吸い込まれるように消えてしまったのだ。
そしてガディオは無言で剣を振り上げ、そして地面に叩きつける。
気剣嵐かとも思ったが、叩きつけるような嵐は起きない。
少し遅れて、フラムは足元からぞくりと寒気を感じた。
咄嗟に飛び退く。
すると先ほどまで立っていた場所を、地面から突き出した刃が貫いた。
「見たことのない技――」
騎士剣術・気剣標。
ガディオから一通りは見せてもらったと思っていたが、騎士剣術の底はまだまだ見えない。
つまりそれは、彼の手の内が読めないということでもある。
どこから攻撃が来るかわからない、油断してはならない――そう自分に言い聞かせるフラム。
そんな彼女の真下から、再び気剣標が貫いた。
「二本目ッ!?」
プラーナの生成量からして、それはありえないと思っていた。
この距離では避けきれない。
せいぜい、体を捻って心臓と頭部の破壊を防ぐのに精一杯だ。
プラーナの刃が、フラムの太ももを断つ。
「ぅ、あ……!」
彼女は苦悶する。
だが、完全なる両断には至らず、足は皮一枚で繋がっていた。
この状態ならば再生まではほんの一瞬だ。
それをガディオも知っている。
彼は一気にフラムに接近し、近づきながら騎士剣術による攻撃を試みる。
だが、それを許す彼女ではない。
大量に流れ出て、空中を舞う血液。
その一部を剣を振りながら付着させ、プラーナに載せて射出する。
虐殺剣術・血刃斬である。
ガディオが構える前に放たれたそれを、彼は受け止めるために攻撃の手を止めざるを得なかった。
その隙に再生は完了、今度はフラムが攻勢に出る。
気想刃《プラーナエッジ》により、神喰らいの黒い刃をプラーナでコーティング。
「食らえぇッ!」
ただでさえ巨大な剣は十メートル級にまで肥大化して、ガディオの頭上から襲いかかる。
パリィンッ!
彼はそれを横に避け、攻撃が命中することは無かったが、一帯に砕け散った刃がばらまかれた。
そこに、気剣嵐。
破片を巻き込みながら、轟風がガディオを襲う。
鋭く尖ったそれは鎧の隙間から入り込み、彼の肉体に傷を刻んだ。
確かに呪いによって傷は癒えない。
腐敗し、確実に体力を奪えている。
だがこの程度では足りない、もっと致命的な一撃を与えなければ。
そう考え、ひるむガディオに肉薄するフラム。
すると彼はザリッ、と切っ先で地面をこすり、大剣を振り上げる。
(気剣斬? いや、違う!)
ゴオォッ!
途端に、フラムの視界が炎で埋め尽くされた。
「そんなことも出来るの!?」
地面と擦れたときに生じた火花、そこにプラーナを注ぎ込むことで大きく炎上させたのである。
無茶だ、そんなことができるはずない――反射的に否定するフラムだったが、無茶ができてしまうのが騎士剣術。
虐殺規則と組み合わせて虐殺剣術を使うことも、死にかけの人間に生命エネルギーを与えることすら可能なのだ、炎を燃え上がらせることぐらいはできそうではある。
あるのだが――人というのは、本能的に火を恐れるもの。
(駄目、体が勝手に反応する……!)
理性では理解していても、目の前に広がる大きな炎を前に体がひるむ。
するとガディオはその場で剣を振り、刃をその場に対空させた。
繊月閃かと思ったが、そうではないようだ。
ヂリヂリという音と共に、刃はその場で高速回転している。
周囲の風がうねり、炎はもちろんのこと、その向こうにいるフラムの体をも引き寄せる。
それは彼自身のプラーナ制御力と、オリジンの力が組み合わされることで実現した現象。
無防備な状態のフラムはその風の流れに抗えず、炎の中に吸い込まれていった。
「ぎ、ああぁぁああああッ!」
炎に包まれるフラムの体。
プラーナによって活性化した炎の温度は高く、肌は焼けただれ、息を吸い込んでしまったばかりに体内まで焼き尽くす。
しかし真の驚異は、その先にある、フラムを引き寄せる“回転する刃”そのものである。
このまま進めば、鎧もろとも胴体を両断されてしまうかもしれない。
彼女は神喰らいの先端を滞空する刃と接触させると、
「リ……ヴァー、サル……ッ!」
反転の魔力を流し込み、回転を逆流させた。
すると引き寄せる力は消える。
だが炎は未だ燃え盛り、フラムの体は火傷と再生を繰り返していた。
今まで味わったことのない苦痛と、ほぼ失われた視界の中、前方から何かが風を裂きながら近づく音が聞こえる。
ガディオの大剣だ。
感覚だけでその一撃を受け止めるフラム。
ガギィンッ!
辛うじて防ぐことは出来たが、彼女の体は吹っ飛び、地面に何度もぶつかりながら転がる。
(またあれが来る!)
プラーナの“脈”を相手に流し込み、内側から爆発させる気脈砕だ。
今あれを使わずにいつ使うというのか。
すぐにプラーナを生成して、体内に侵入したガディオのプラーナを押し止めなければならない。
だが――不思議なことに、両腕にその感覚は無かった。
(使わなかった……? チャンスだったのに?)
心の中で首を傾げるフラム。
ひとまず立ち上がろうとするが――その瞬間、ぐらりと景色が歪んで崩れ落ちた。
「あ……れ……?」
キイイィィィィィイン――そんな耳鳴りが、意識を塗りつぶすように鳴り響く。
肉体のダメージはとっくに再生されているはずなのに、なぜか平衡感覚だけが復活しない。
まるでネクロマンシーの研究所で、スージィとやりあったときのような状態だ。
再び立ち上がろうと試みるが、腕を支えにして膝をつくので精一杯だった。
気鳴閃、それがガディオの使った技の名である。
フラムと彼の剣がぶつかりあった瞬間に鳴り響いたその音を増幅させ、三半規管を麻痺させたのだ。
さらに音は継続してフラムの中で反響し、再生を許さない。
「な……んで……」
しかし、直接相手に傷を負わせる技ではない。
どちらにしろフラムにトドメを刺すには至らなかっただろうが、それでも気脈砕の方が有効だったはず。
無論、ガディオは今のまともに動けない彼女を前に、攻撃の手を緩めるつもりは無いようだが――
(少しずつ動くようになってきた。すぐに飛び込んで来れば腕ぐらいは持っていけたはずなのに、なんで離れた場所で構えてるの?)
次の動きが読めない。
そういった意味では、今の見たことのない技ばかりを繰り出してくるガディオは厄介だ。
しかし、この状況ならば、巨大な岩の刃を叩きつける――岩刃轟気災を使った方が効果は大きいだろう。
それでも彼は、高く剣を構え、魔法を用いる様子はない。
そうできない理由があるのか。
あるいは、そうしない理由があるのか。
(いや……するとかしないの話じゃない。だって、今のガディオさんはもう――オリジンの操り人形なんだから)
余計な思考は捨て、回避に専念する。
少し動くようになったとはいえ、まだ自由がきくとは言えない。
意識を、敵の攻撃を見切ることに集中させなければ。
(――来る!)
フラムの目が見開かれる。
そしてガディオは剣を振り下ろし――次の瞬間、まばゆい閃光が視界を埋め尽くし、バヂィッという音が鳴り響いた。
またもや失われた正解。
彼女はがむしゃらに、とにかく彼から離れることを優先し、背後に飛んだ。
「ぐううぅぅっ!」
それでも完全に避けきれない。
と言うより――どこからどこまでが範囲なのか、把握できない。
フラムの鎧や手足がその光に触れると、体は痺れ自由が効かなくなる。
さらに強い“熱さ”を感じ、炎に燃やされたときと似た苦痛が脳に流れ込んでくる。
(これは、雷……!?)
空気との摩擦により生じた静電気を、プラーナにより増幅し、相手に放つ――雷気槍。
炎を生み出した炎気幕と仕組みはよく似ている。
これまで、ガディオは一度もその類の技を使ったことはなかった。
なぜならば、効率が悪いからだ。
炎や雷に干渉しようとすれば、高い技術が必要になるのはもちろんのこと、プラーナの消耗量も大きくなる。
それだけ大量の体力を浪費すれば――今の人外と化したガディオでなければ、すぐに息切れを起こしてしまうだろう。
(やっぱり、おかしい……)
同じ騎士剣術の使い手として、その技の燃費が悪いことはすぐにわかった。
殺さなければならない相手を前に、なぜガディオは、そのような行動を繰り返すのか。
フラムを前に進ませないための時間稼ぎ?
いいや、それなら自身が消耗する前に潰してしまうのが一番だろう。
それに、二度目は彼女に通じない。
こうして手の内を見せれば見せるほどに、フラムは適応していく。
今はやられてばかりでも、必ず形勢は逆転できる――その自信が彼女にはあった。
だからこそ、早く殺さねばならないのだ。
それがわからぬガディオでは、オリジンではあるまい。
フラムは自由のきかぬ体で受け身を取り、手を付きながらもどうにか両足で着地する。
今の彼女にとって、一時的な傷は消耗のうちに入らない。
さらに騎士剣術も反転の魔法もあまり使っていないため、未だ余力は有り余っていた。
痺れもじきに取れるだろう。
ならば今のうちに接近し、圧倒的な力で押しつぶすのが、おそらく最善の選択なのだ。
しかしやはり、ガディオはそうしない。
また離れた場所に立ち、次の新たな技を放つため、大剣を構えている。
――まるで、フラムにそれを見せようとしているかのように。
「ガディオさん、まさか……」
考えないようにしていた。
無駄だと思っていたから。
信じないようにしていた。
裏切られると思っていたから。
けれど、彼の気高さは――フラムの想像を遥かに超えていた。
『あの……ガディオさん』
『なんだ?』
確かに、そういうことは今までもあった。
最初はインクとの戦いのとき。
彼女の吐き出した目玉が襲いかかってくる中、一つだけフラムを救おうとした個体がいたはずだ。
おそらくあれは、インクの意思が作用した結果だろう。
他者を想う気持ち。
オリジンは究極的な孤独を望むがゆえに、それを理解できない。
理解できないものは、操ることはできない。
『今度、時間ができたら、今までよりももっとすごい技を教えてもらえませんか?』
人の記憶はどこに宿るのか。
脳か、血か、臓器か、はたまた魂か。
誰にもわからない。
あるいは、一つの場所に全てが収められているわけではないのかもしれない。
経験も、記憶も、体に染み付いて。
強い想いが残っていればいるほどに、たとえ魂が失われたとしても、その肉体はただの物質ではなくなる。
残された誇りは、穢れた欲望では染めきれない。
『ああ、約束しよう。戻ったら必ず稽古をつけてやろう』
そんな、約束をした。
果たされないと思っていた。
(だって、ガディオさんは死ぬつもりなんだって、私はわかっていたから)
わかった上で、約束を押し付けた。
ティアの元に逝きたがっている彼を、引き止めるような真似だ。
とんだわがままで、でも、死んでほしくないと思ったから。
いつまでも、憧れとして、導いてくれる人として、みんなの――自分の先を、歩いてほしいと思っていたから。
(ああ、私なんかの、無責任な言葉を……そうまでして……!)
こみ上げてくる感情に、涙が溢れそうになった。
でも、泣かなかった。
だってこれは殺し合いだから。
オリジンに操られる中、彼が辛うじて通すことのできた、“意思の残滓”。
それに応える方法は、涙でもなければ、感謝の言葉でもない。
完膚なきまでの、勝利だ。
「ふうぅ……」
仕切り直し。
息を吐き出し、気合を入れ直す。
ガディオは、肩にかつぐように剣を構えている。
また、新たな技を見せてくれるのだろう。
「ガディオさん、私はあなたのことを必ず――乗り越えてみせます。それが、私に出来る精一杯の恩返しだから!」
その声に反応したのだろうか、ぶじゅると肉の渦が脈打ち、血が溢れ出す。
同時にガディオの体が前傾し、地面を蹴った。
そして剣を担いだまま、石畳を砕きながら駆ける。
「おおぉぉおおおおおおッ!」
フラムも神喰らいを握り、迫るガディオへと自ら突っ込んでいくのだった。
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