チート・ご都合主義いらないけどハーレムいります

平涼

第七十四話 アネットの過去

 俺はそれから事情を聴いた。それはこんな内容だった。

 アネットは魔物に襲われたとき、命からがらに逃げたようだ。

 逃げきれたアネットはもう一度元の場所に戻るとそこには盗賊がいた。そこでアネットは盗賊が話している内容から計画的だと分かった。

 だが、どうしようもないアネットはどうするか迷った。

 だが、そこで更に不運は続いた。次に偶々通りかかった盗賊に目を付けられた。

 アネットは必死に逃げた。そこで容姿を変身魔法で変えて逃げようと思ったらしい。人族はすぐにばれる可能性もある為、思いっ切って獣人に容姿を変えたらしい。

 だが、その姿で逃げたのはいいが、次は奴隷商人の奴らに目を付けられた。獣人は奴隷としてよく取引されているのをアネットはすっかり忘れていた。

 アネットはその奴隷商人からも逃げたその時俺の親父達に会ったらしい。だが自分は獣人の姿で助けてもらえないと思ったが俺の親父達は助けてくれた。

 もう駄目だと思っていた所を助けてくれた親父達に感謝をしお礼をしたかった所丁度親父達が森に入っていく事を知ったらしい。

 これは自分の娘の所にもいけると思ったアネットは親父達の所でメイドとして働くことに決め、影からリリアを見守っていたということだった。

 この世界は写真が無いため、盗賊も乗っているのがアネットだと思ったんだろうな。だから殺されたのは本当はアネットじゃなくて別人だったということだ。

 それに、これで何でリリアの所に行かなかったのかが分かった。盗賊達の話を聞いていたからだ。それに俺が小さい頃アネットの掃除を手伝おうとして、渋られたのは俺に万が一変身魔法を見破れないようにする為だったのかもしれない。

 「このことは親父達は知っていたのか?」

 「いえ。知らないです。言おうとは思ってたんですが中々言えなくて」

 言おうとしていたなら俺は何も言わなくていいだろう。

 「それで、なんでタマは知っているんだ?」

 「アネットが来た日の夜に言われたニャ。私の変身魔法の事は黙ってて欲しいって」

 なるほどな。それでタマも知っていたわけか。

 「これからが本題だ。リリアに会わなくてもいいのか?」

 それはアネットも言われると思ったのだろう。俯きながら言った。

 「私にそんな資格はないです。見守っていたにも関わらず、何にも出来なかったから」

 そう言った時だ。リビングに誰かが入ってきた。

 「あれ?誰この人?」

 俺に用事があったのか知らないが、丁度タイミングよくリリアが来た。

 だがここで俺が告げてもいいのだろうか。そう思っているとアネットが先に言った。

 「私はレイロード君の知り合いでちょっと用事があったので寄ったんです。丁度今から帰る所で」

 そう言って、立ち去ろうとした。

 どうする。このまま行かせてもいいのか。多分この機会を逃たらもう言う日は無いだろう。アネットはそれでもいいと思っているのかもしれない。だけど何も知らないリリアがそれでいいのだろうか。

 .......決めた。俺はアネットに嫌われても正直に言うべきだ。これで何かあるなら俺が何とかフォローする。

 「リリア。この」

 「リリア。この人はあなたのお母さんニャ」

 俺が言おうとした時にそれを遮ってタマが言った。

 「......え?」

 「おい。今俺が言おうと」

 それを手でタマが遮る。

 リリアは戸惑っている。

 タマはそれから立ち止まっているアネットの元に向かい、

 「アネット。もう隠すのは止めるニャ。アネットが良くてもリリアが可哀そうニャ。折角生きているんだからきちんと話すべきニャ」

 タマはアネットにそう優しく語る。

 いや。マジで誰だよお前。いつも飯を食えば機嫌が取れるタマは何処かにいったらしい。

 俺がタマとアネットを見ているとリリアに服を引っ張られる。

 「ねえ。タマどうしちゃったの?私のお母さんはとっくの昔に死んだのに頭でも打ったの?」

 タマが優しく語りかけている姿はどうやら頭を打たれるものと思われているらしい。.......気の毒に。だから俺はタマの代わりに言った。

 「リリアが死んだと思っていたお母さんは別人なんだ。本当はアネットとして生きていたんだ」

 リリアは俺が言った事でようやく真剣な目つきになってアネットを見る。

 「確かに髪の色は一緒だけど、確かアネットって今日いた人よね?獣人じゃなかったけ?」

 「変身魔法が使えたんだ。だから獣人として生きていたんだ」

 未だアネットはタマと話しているがその内容はよく聞こえなかった。

 それから話が終わったのかこちらに来た。

 「リリア。怒らないで聞いてあげて欲しいニャ」

 そう言って、アネットは今までの事情をリリアに包み隠さず話した。

 リリアはそれを真剣に聞いていた。

 「なるほどね。そういうことだったの」

 「怒らないの?ずっとほったらかしだったのに」

 アネットは恐る恐る聞いた。

 「怒らないわよ。だってしょうがないじゃない。それに今までの事があったおかげで先生や色んな人と出会うことも出来たんだし」

 俺は今リリアが本当に成長したなと思ってしまった。前までのリリアなら許さず、殴っていてもおかしくないだろう。

 「.......ほんとのほんとに怒ってないの?まだあなたのお母さんでいいの?」

 「だから怒ってないってば」

 そう言うと、今まで我慢していたのだろう。アネットはリリアを抱きしめ泣いていた。

 「.....今までごめんなさい....。ほんとにごめんね」

 「暑苦しい」

 リリアはそう言いながらも満更でもなさそうだ。

 俺とタマはその場からこっそりいなくなろうとした。

 「ちょっと待ってよ先生。これから話が」

 リリアがアネットに抱きつかれながら俺に言うので立ち止まった。

 「リリア!今から何をするつもりなの!まだ早いわよ!」

 アネットは何か察したのか泣き止みリリアに吠える。

 「今から先生に用事があるんだから離してよ」

 リリアが心底めんどくさそうに言う。

 「リリアが反抗期よ!タマちゃんどうしたらいいの!?」

 アネットも元気になったらしい。

 だがこれは違う意味で逃げないと俺がとばっちりを食らいそうな気がする。

 俺はその場をタマに任せ自分の部屋に戻った。

 何かあれを見てたら、無性に親父達に会いたくなったな。

 ......俺があそこを逃げたのは多分それもあったんだろうな。

  やめよう。これは考えないようにした方がいい。

 それよりもこれからどうするかだな。龍人の死体が消えたのを探すべきだろうか。

 あれが何故か引っかかるんだよな。まあ校長にちゃんと俺のお願いを聞いてくれたのか確認するのが必要だろうけど、龍人の方もな.....。

 俺が今後の方針を決めかねていると、ドアがノックされた。

 大体予想はつく。

 「先生。入るね」

 やっぱりリリアか。

 リリアは入って来てドアを閉めた後ベットに座った。何だか気まずいので、話題を出した。

 「そういえば女子会はどうだった?他の人達とも仲良くやれそうか?」

 「出来ると思うわ。マリーとはライバルになりそうな気がしたわ」

 どういう女子会をしたらライバルになるんだろうか。聞きたいが多分教えてくれない気がする。

 すると、リリアが俺をベットに押し倒した。

 毎回思うんだが逆じゃね?

 「おい。リリア、落ち着け。俺はまだ心の準備が」

 「もう駄目よ。私が何年待ったと思ってるのよ」

 「落ち着けよ。俺が心の準備が出来るまで三十秒だ。それまで待ってくれ」

 俺は深呼吸して覚悟を決めようとしたら、リリアが近づいて来て、

 「レイ。私もう無理」

 すいません。俺も無理。

 リリアに名前を呼ばれると何故か俺の緊張は何処かにいってしまった。

 明日の方針を決めるつもりだったが、日本にはこういう言葉がある。

 明日の事は明日決めればいい。

 俺はそれに従って、リリアと楽しい夜を過ごした。

    第四章    青年編終了

    第五章    最終章開始

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