チート・ご都合主義いらないけどハーレムいります

平涼

第五十二話 マリーの過去

 今度は、マリーか。

 放っておいて欲しい。

 「あんた、まだご飯食べてないの?」

 「食べても吐くからな」

 俺は、短くそう答える。

 マリーはそれから、俺のベットの横に座った。

 「少し昔話をしてもいい?」

 俺はどうせ暇だし頷いた。

 それから、話されたのは、マリーのこれまでどれだけ大変だったかという話だった。

 マリーは、家族仲良く過ごしていたらしい。

 だが、七歳の時事件が起きた。

 マリーが一人、おつかいをしている時、奴隷商人の連中に捕まってしまったらしい。

 そこからは、これまでの生活とは全く次元が違う生活だったそうだ。

 食事は最低限死なない程度にしか与えられなく、泣けば殴られ、蹴られ、黙るまで永遠にやられていた。

 親とは、離れ離れ、ずっとこのままこんな生活が送られるんだろうといつしか希望を捨てたらしい。

 「けど、そこで救ってくれた人がいた」

 マリーは、俺を見て言った。

 俺の事だろうな。

 「そこから私の人生は変わった。優しい人にも巡り合えて、学校に入れた。そして、目標にしていたあなたに会うことも出来た。そこから、私はこれまでで一番楽しい時間を過ごすことが出来た。またあの時間には戻れないの?」

 俺は、何も答えられない。

 本心では分かっているんだ。

 このままじゃ駄目だって。

 だけど、俺は立ち直る事が出来ない。

 答えられない俺の姿を見て、マリーは俺の頬をぶん殴った。

 「なにするんだ!」

 俺は、女の子相手に怒鳴ってしまう。

 「いつまでそのままでいるつもりなのよ!そんなんであんたの為に死んだお母さんとお父さんに申し訳ないと思わないの!?」

 マリーは、俺を悲しい人を見るような眼で見る。

 「お前に何が分かるんだ!俺のせいで死んだんだよ!その気持ちがお前に分かるわけないだろ!」

 マリーは、泣きそうな表情で叫んだ。

 「分かるわけないでしょ!私はお父さんにもお母さんにも会えないんだから!あんたなんて幸せ者よ!お父さんにも会えて、お母さんにも会えて!私は、どうやって家族に会うのかも分からないのにあんただけ不幸みたいな顔すんな!皆色んな事がありながらも頑張ってるのよ!あんただけがつらいわけじゃないのよ!」

 俺は、そのマリーの言葉に何も言い返す術を持っていない。

 だって、今の話を聞けば、俺が幸せ者だって事が分かってしまったから。

 「なら.....これから俺はどうしたらいいんだよ」

 俺は自分が情けない。

 こんな事を好きな人に聞くなんて。

 だけど、聞かなければこれから、どうしたらいいのか分からない。

 「それは自分で考えるしかない」

 やはりそうだよな。

 「だけど、それを見つけてこそ私の好きで目標にしているレイロードよ」

 マリーは顔を赤くしながら言った。

 ......ん?

 俺は、難聴系ではない。

 今さりげなく好きという言葉が聞こえたのは聞き間違いではない筈だ。

 「今の好きと言ったのは、どういう......」

 「それぐらい察しなさい」

 無茶を言うが、顔が赤いのでまる分かりだ。

 だから、俺も覚悟を決めた。

 だけど、これを言うのは今じゃない。

 「マリー。ごめん。返事は後でもいいか?やる事が出来た」

 マリーが頷いてくれたので、俺は部屋を出ようとした。

 ドアを開けると、色んな人がいた。

 「何やってんの?」

 そこには、シア、アラン、校長、アネット、ココとロロもいる。

 「あんた達いつから!?」

 マリーが顔を真っ赤にして叫ぶ。

 皆苦笑いだ。

 「お兄ちゃん。あの時はお兄ちゃんを責めるように言ってごめん」

 ロロが俺に謝ってきた。

 違う。謝るべきは俺の方だ。

 「俺の方こそ、ごめん。俺がお父さん達を守れなくて。皆も今まで迷惑かけてごめん。ちょっと行く所があるからリビングで待っていてくれ」

 俺は、これまで動かしてなかったせいで思うように動かない足を精一杯使い、向かったのは、庭にあるお父さん達の墓だ。

 ずっと現実を受け止めなくて、来れなかった場所だが、もう大丈夫だ。

 俺は、墓の前で手を合わせる。

 ごめん。親父。母さん。

 だけど俺もう決めたよ。

 これから誰も大切な人を失わないように頑張って最強になるよ。

 だから、天国で俺の事見守っててくれ。

 あんた達が助けた男は絶対に最強になってみせるから。

 俺がそう言うと、親父が期待してるぞって言っている気がした。

 母は、無茶はしたら駄目よ。そう言っている気がした。

 俺はそれから墓を後にして家に戻った。

 これから俺はあらためて最強になると、墓に誓った。

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