チート・ご都合主義いらないけどハーレムいります

平涼

第四十九話 ライドの思い

 俺は、目の前の俺を殺そうとした人物にどうしても困惑を隠しきれない。

 「どうしてかって?お前は分からないのか?」

 ライドさんは、そう言うが、分かるわけがない。

 何で、こんな事をするのかも。

 「すいません。分かりません。けどやめませんか?今なら僕も黙っているので」

 俺は、どうにか説得したい。

 なんせ、俺をパーティーに誘ってくれた優しい人だ。

 「今更そんな事が出来るわけないだろ!」

 ライドさんは、覚悟を決めているのかもしれない。

 けど、なんでこんな事をしたのか分からない。

 「どうして裏切ったりしたんですか?」

 「魔王に、金を与えると言われた。使い魔を通してだがな。一億ほど」

 まさか、魔王が、勝てないと分かっていたのに、戦争を起こしたのは、冒険者が裏切ると分かっていたからか。

 「お前には分からいよな。お前ほど実力のある奴が、一億で何でって思うかもしれないがな。俺からしたら、それで人生楽して生きていけるんだよ」

 確かに、俺には分からない。

 正直、俺はお金に困ったことがない。

 だが、なら何で、俺に言わないのだろうか。

 俺は、いつでもあげると言っていたはずだ。

 「俺は言いましたよね?俺は大金があるからいつでもあげるって」

 「もらえるわけないだろ!好きな人から!」

 .......ん?

 今のは、俺の耳が悪かったんだな。

 俺も等々、難聴系主人公と同じ特性を得たらしい。

 すると、ライドさんは自嘲気味に笑った。

 「そりゃあそうだよな。気持ち悪いよな。だがこれが俺だ。俺はお前の事が、ずっと好きだったんだ」

 どうやら、俺はまだ難聴系主人公の特性は無かったらしい。

 ライドさんは、どうやら俺の事が好きなゲイだったらしい。

 「この際だから言ってやるよ。お前の変なあだ名も全部俺が付けた」

 どうやら俺のあだ名、ハーレム気取り野郎は、ライドさんが名付け親だったらしい。

 まあ。一旦ライドさんが俺の事を好きなのは置いておこう。

 「なら、なんで俺を狙ったんですか?」

 「お前が、魔王に狙われているのは知っていた。だけどお前が戦争に参加しなかったら、別に狙うつもりはなかった。だけどお前は戦争に参加して、魔王の足止めをするっていうじゃねえか。そんな事は無理に決まっている。だから、魔王にお前を殺されるぐらいなら、俺が殺す、そう決めた」

 .....狂ってる。

 ライドさんは、戦闘狂で狂っているのではない。

 多分、極度に色んなことで追い詰められて、狂ってしまったんだ。

 だから、俺の事を殺すなんて言葉を出している。

 要するに、ライドさんを止めないと、駄目だということだ。

 「タマ、急いで後衛に戻って、冒険者が裏切りを起こしているって、校長に伝えてくれ」

 「分かったニャー」

 タマは、そう言って、上空へと上がった。

 「させるわけないだろ!ファイアーボール」

 ライドさんが、そう唱えたので、俺は水の中級魔法で、相殺する。

 だが、今俺はもうライドを敵とみなした。

 俺の家族に手を出した。

 それだけは、絶対に許されない。

 俺は、剣を構え、ライドさんに突撃する。

 「うおおおおりゃ」

 ライドさんは、そう言って、俺の攻撃を跳ね返した。

 流石は、Aクラス冒険者だ。

 だけど、流石に、今は負ける気がしない。

 だが、生半可な攻撃をしたら、逆にやられる可能性もある。

 だから、俺は風魔法を一瞬体に纏い、身体を加速させ、ライドさんの背後に回り込み、足を斬りつけた。

 「ああああああ!」

 ライドさんは、叫び転げた。

 だが、そんなに深く斬ってはいない。

 これからの戦闘が出来ないぐらいだ。

 「ライドさん。あなたには感謝してます。けど俺の家族を傷つけた事は許しません。罪をきちんと償ってください」

 俺は、そう言い残し、そこからまた最前線へと向かった。

 だが、そこには圧倒的有利だった、状況は変わっていた。

 なんせ、裏切りがあり、周りの冒険者とも戦わなければならない。

 それに、今までいなかった筈のドラゴンが三匹、この状況で、暴れ回っている。

 だけど、ここで立ち止まっている訳にはいかない。

 俺は、ドラゴンの一匹に狙いをつける。

 「フレイムランス」

 俺は、そう唱え、巨大フレイムランスをドラゴンに放った。

 そのフレイムランスは、ドラゴンの体を貫通させ、絶命させた。

 「ナイスだ!」

 そのアランの言葉から、更にアドルフ王国の有利が戻りつつあった。

 俺は、その現場を他の人に任せ、俺、親父、母さん、アランは先を急いだ。

 ここまでは俺の理想通りだ。

 ここから、俺と親父、アランで前衛を務め、母さんに後衛から支援してもらうつもりだ。

 この戦いは、決闘ではない。

 戦争だ。それに俺は一人で来いとは言われてない。

 俺の目の前に来いと言われたのだ。

 そして、俺はライドさんを誘惑した元凶、そして、魔法祭をぶち壊してくれた張本人、魔王の元へと向かった。

 「ようやく来たか。待ちくたびれたぞ」

 魔王は、ドラゴンを連れて、待っていた。

 「一人じゃないけどな」

 「まあいいさ。だがその剣聖の息子は邪魔だな。いけ」

 魔王はそう言うと、ドラゴンがアランに襲い掛かった。

 「レイ!こいつを倒したら、すぐにそっちに行く」

 アランは、そう言い、ドラゴンと少し離れた場所に行き、戦闘を始めた。

 「ここには、部下は配置してないのか?」

 俺はずっと気になっている事を聞いた。

 「ああ。お前と戦うのに邪魔だろう」

 魔王は、そう言って、大剣を構えた。

 なので、俺と親父も構え、母さんは少し下がって、支援に入ってもらう。

 「さあ!始めようぜ!レイロードーー!」

 魔王の合図で、俺達の家族と魔王の戦いが始まった。


 ~とある村~

 「村長、どちらに行かれるんですか?」

 そこには、剣を持った、村長の姿がある。

 「ちょっとばかし、手助けにいってくる」

 村人は、止める事をしなかった。

 「今やっている戦争ですね。早めに帰ってきてくださいね」

 村人は、村長が負けるとは、思っていない。

 「ああ。なるべく早めに帰るようにする」

 そこには、おじさん口調を辞めた、村長オリドの姿があった。

 そうして、オリドは、一人で戦場へと向かうのだった。

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