チート・ご都合主義いらないけどハーレムいります

平涼

第三十六話 再開

 俺達はドラゴンを退治した後ギルドへ報告しに行った。

 ギルドの受付の人にドラゴンを出た事を報告し冒険者カードを見せると、急いでギルドの奥の方に行った。

 それから数分経つと、四十代ぐらいのおじさんと受付の人が戻ってきた。

 「私はこのギルドのマスターだ。今回の出来事を詳しく聞いてもいいかね?」

 俺達はそう言われたので今回の出来事について話す。

 「......そうか。君達のおかげでこの国に被害も出なかった。ありがとう」

 ギルドマスターの人はそう言い頭を下げたと思ったら何やら重そうな袋を取り出した。

 「それはそうと、これが今回の報酬だ」

 マスターの人はそう言うがこれもの凄い重そうな気がするんだけど。

 「これどのぐらい入ってるんですか?」

 俺は気になって聞いた。

 「金貨百枚だ」

 「「金貨百枚! ?」」

 俺達はあまりの大金に驚いてしまう。

 だってこれ日本円で百万だぞ。

 千円でも一万でもなくて百万って、

 「どうしてこんなにも?」

 ライドさんは俺達が気になっていた事を代表して聴いた。

 「今回ドラゴンを倒した事や、王国にも被害も出なかった事も考慮したらこれが妥当だろう」

 ギルマスのじいさんはそう言う。

 そういう事なら俺達は遠慮なく貰った。

 こういう時、小説等の主人公ならば貰わないだろうが俺はそんな事はしない。

 あちらもこういう報酬を与えないと示しがつかないし、何より、感謝しているからこそくれるのだ。

 これが女性からも貰えるのであれば、あなたの笑顔で十分ですとか言ってもいいが多分ドン引きされるだけだし、ギルマスのおじいさんの笑顔はいらない。

 それからライドさん達と一緒にギルドにある椅子に座った。

 ライドさんはドガーさん、ザックさんの方を見て頷き合っている。

 なにこの俺の要らない感半端じゃない。仲間に入れて!

 「今回の報酬は、レイのもんだ」

 .......え?

 ライドさんはそう言って袋を渡してきた。

 いきなり変なこと言いだすから呆けてしまった。

 「いや。僕達はパーティなんだから分け合いましょう」

 俺にこんな大金はいらない。今ある分で十分なのだ。

 それにギルマスのじいさんの時は貰ってもよかったが今回の報酬はパーティでだ。それを俺個人でもらうわけにはいかない。

 「今回俺達は何もしていない。お前が倒してくれたおかげだ。これは皆同じ気持ちだ」

 俺はドガーさん、ザックさんの方を見ると、頷いている。

 「分かりました。だけどお金が必要になったら言ってくださいね。こんなにもお金必要ないですから」

 俺は一応言っておく。

 この人達が困っていたら助けてあげたい。

 「そん時は頼むよ」

 ライドさんは笑いながら言ってきた。

 「そういえば明日はクエストを休みにするが話があるから明日ここに来れるか?」

 ライドさんは俺に確認した。

 「はい。大丈夫ですよ」

 俺はそう言い疲れたのですぐに宿に戻った。

 流石にドラゴンの戦闘は緊張感もあったし、何よりフレイムランスにもの凄い魔力を奪われて倦怠感が半端じゃない。

 宿に向かいだらだらと歩いてようやく宿が見えると思ったら、そこにはタマがいた。

 ......あ。

 俺はすっかり忘れていた。

 クエストが終わったら一緒に観光すると言っていたのだ。

 恐る恐るタマに近づくと凄く不機嫌だった。

 「悪い。今日トラブルがあって」

 俺は一応弁明する。だってドラゴンの戦闘があったら観光なんて忘れてしまうじゃないか!

 「別に気にしてないニャー」

 タマは口ではそう言いながら顔はどう見ても不機嫌だ。

 俺はタマの機嫌を直すため夜のご飯を豪勢にするとすぐに機嫌は直った。

 ......猫神と言われている奴が、ご飯で機嫌を直すとは、どうなんだろうか。

 それとタマが機嫌が悪いときはご飯を豪勢にすればいい事が判明した一日だった。

 ~翌日~

 俺はタマと共にギルドへ向かった。

 ギルドの前まで来た所で誰かがいることに気付いた。

 俺はそこにいる人物に見覚えがある気がした。

 金髪の髪だが、アランではない。

 「......お父さん?」

 俺の口から何故かそんな言葉が出てきた。

 やばい。間違ったら恥ずかしすぎる。しかも今無意識だったし!

 金髪の男は俺の言葉に、こちらを振り向いた。

 「......レイか?」

 その人物は、やはり俺の親父ジルダだった。

 よかった。間違ってたら危うく恥ずかしすぎて自殺するレベルだった。

 「そうだけど、どうしてここに?」

 俺はそう言わずにはいられない。

 なんせずっと出しているクエストでも情報提供は出てこなかったのにだ。その人物が今目の前にいるのだ。

 「まあ。言いたいことがあるのはお互い様だろ。これから何処かで話さないか?」

 「話したいけど、ちょっと今は」

 俺がそう言い終わる前にライドさん達が来た。

 「よう、レイ。早いな。ん?その人は?」

 ライドさんは、俺と親父を見ながら言う。

 「お父さんです」

 俺の言葉にライドさんは驚いた。

 「それって、お前がずっと探していた人じゃねえか!」

 「そうなんですよ。今再会したばかりなんです」

 俺達が話している時に親父が前に出た。

 「レイの親父のジルダです。どうやら息子が世話になっているようで」

 親父はそう言ってお辞儀した。

 「とんでもない。年上の俺達が世話になってばかりですよ」

 ライドさんは俺を見ながら言った。

 「それじゃあ、お父さん。今からライドさん達と話があるから、ちょっと待ってて」

 「お前何言ってんだよ。折角親父さんと会えたんじゃないか。話してこいよ」

 俺がギルドに入ろうとした所で、ライドさんにそう言われる。

 「けど、話があるんじゃ」

 「何言ってんだよ。俺の話より、親父さんの方を優先しろよ」

 ライドさんがそう言い、ガトーさん達も頷く。

 「なら、また話を聞くので」

 俺はそう言い、親父と酒場に行った。

 その後ろでは、

 「いいのか、ライド?」

 「別に構わねえさ。明日でも話す事は出来る。それに関わらない方がいいかもしれないしな」

 ライドと仲間の二人は真剣な表情で話しているのをレイは知らないのだった。


 この世界では、お酒は特に年齢制限はないが飲もうと思えないのでジュースを頼み親父と話す。

 ていうか息子と来るのが酒場とはどうなんだろうか。

 「レイは本当大きくなったな。初め見たときは誰か一瞬分からなかったぞ」

 俺はこの二年で相当大きくなった。

 身長は百三十センチにいきそうだ。

 初めにこんなに伸びたら後で伸びなくなりそうで怖い。

 「まあ、二年もあってないしね。それよりもどうやって俺の場所が分かったの?」

 「俺達はもう一つ離れた場所にある国にいたんだがお前の噂を聞いて俺がここに来たんだ」

 「噂?」

 もしかして、ハーレム気取り野郎の事だろうか。

 「ああ。Aランク冒険者の『無詠唱のレイ』という名前が俺達がいる国でも噂になっていたんだ」

 いつからそんなかっこいい噂になったのだろうか。ちょっと嬉しい。

 「なるほどね。けど母さん達は?」

 「母さん達には待ってもらってる。初めは母さんは行くってずっと言っていたけど娘たちの事を出して何とか説得したよ」

 親父は疲れた表情で言う。

 相当、説得に苦労したのかもしれない。しかもその時の情景が思い浮かぶ。

 「アネットや、双子の妹は?」

 「アネットは相変わらずメイドとして働いてるよ。娘達はお前が会ってからの楽しみにしてるといい」

 「そうか。皆元気ならいいよ」

 「ずっと気になってたんだがレイの隣にいる猫はどうしたんだ?」

 親父は気になってしょうがないらしい。

 俺と話している時もちらちら見てたし。

 「この猫は俺のペットのタマなんだ」

 タマはやっと出番かと待ちきれない様子で前に出た。

 「初めましてニャー。ペットのタマニャ!」

 「ニャー?」

 「気にしないで」

 これを説明するのは、ちょっと恥ずかしい。

 「そうか」

 親父は納得しているのか、してないのか分からない顔だが気にしないでいてくれるようだ。

 「そういえば、お前は強くなったな。まさかその歳でAクラス冒険者とはな。信じられないぞ」

 親父は自分の事のように嬉しそうに言う。

 「皆のおかげだよ」

 謙遜なんかじゃなくて本当にそう思う。

 リリア、セシリアさん、タマ、皆がいたからこそ、今の俺がいると思う。

 俺はふと思い出してた事を聞いた。

 「そういえば、村の村長さんはどうなったの?」

 俺はもう殆ど分かっているが一応聞く。

 親父は悲しそうな顔をした。

 「すまん。守り切れなかった。俺が駆け付けた時には、もう村長は死んでいた」

 そこで何故か気まずい雰囲気が流れてしまった。

 俺は何とかこの雰囲気を変える。

 「これまでどんな旅をしたの?」

 親父はその言葉に気を取り直して話してくれた。

 俺も昔ならこんな雰囲気を変える話術なんてなかったのにな。

 違う方向で成長を感じてしまった。

 それからはこれまでの事をお互いに話し合った。

 リリアとセシリアさんと付き合っている事に関しては、親父は別に気にしないと言われた。

 それから、親父は改めて聞いた。

 「レイはこれからどうするんだ?俺と一緒に来るか?」

 それはどうするか前まで迷っていた。

 だけどもう答えは決まっている。

 「いや。このまま残って、学校に行こうと思う」

 親父は不思議そうな顔をした。

 「お前、そんなに金があるのか?」

 俺は頷いた。

 「そうか。本当に成長したな」

 親父は温かい目で見てくる。

 何か恥かしいからやめて欲しい。

 「ご主人様が照れてるニャー」

 タマはニヤニヤしながら言ってくる。

 親父の前でなければ風魔法で吹き飛ばすところだ。

 それが出来ないので俺はこいつの晩飯をくさやにする事を決めた。

 「まあ、学校に行くのでも構わないが、俺から提案があるんだが」

 親父がそんな事を言ってきた。

 「提案?」

 「ああ。お前、妹達と一緒に過ごさないか?」

 「妹達と?妹達はまだ二歳だよね?」

 俺は確認の為に聞く。

 「娘は最近三歳になったぞ。それに家族なのにレイの事もよく知らないだろうし」

 一応分かるが、

 「俺、学校通うのに?」

 「昼間はアネットに世話をしてもらえばいいさ。母さんが多分こっちの国に来たいって言うと思うからこっちに住むと思うし、ちゃんと娘の所にも何回も行くさ」

 なんか引っかかるな。まだ娘が三歳なのに、七歳の息子に預けるのか?

 いや。けどアネットがいるのか。それに親父は今まで俺が生活出来ていた事で提案しているのか?

 まあ、取り敢えず在りきたりな質問だな。

 「妹達はまだ三歳なのに俺の所に来て生活出来ると思ってるの?」

 「お前だって、三歳で独り立ち出来そうだったじゃないか」

 それを言われてしまうと何も言えないが、俺の場合は前世の記憶があったからだと思うんだけど。

 「俺もそろそろ家を買おうかなって思ってたし、そこに住めばいいか」

 「家を買えるほどの金まで持っているのか。お前は俺の想像を遥かに超えてるな」

 親父はもうあんまり驚いてない様子だ。

 多分驚いたら、きりがないと思ったのかもしれない。

 ただ、親父はどうしてここまでして妹達を俺に預けようとしているのだろうか。アネットまで俺の所に行かしてまで?

 .......もしかして。

 「俺に預けるのって、母さんと二人っきりになる為?」

 その言葉に親父は汗を垂らしながら否定する。

 「違うに決まってるだろ」

 嘘下手かよ。

 まあしょうがないか。

 親父も妹達などがいて、母さんとイチャイチャ出来てないのかもしれない。

 「俺はいいけど、妹達が許可しないとダメだから」

 俺は一応言っておく。

 「分かってるよ」

 「それもそうだが、学校の入試は半年後だがどうするんだ?」

 入試があるのか。そこまで把握してなかったな。

 「明日から冒険者を辞めることをライドさん達に言っておくよ」

 ライドさんなら許してくれると思う。

 「そうか。俺達も準備が整い次第こっちに来るからその時にまた会おう」

 「分かった。また今度ね」

 そうして俺達は別れた。

 これから、入試に向けて勉強しなければならない。

 カンニングはこの世界でも駄目なのだろうか?

 あまりに勉強がめんどくさいのでそう思うわずにはいられなかった。

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