Smile again ~また逢えるなら、その笑顔をもう一度~

たいちょー

14.

一方

一時間前―――。
――さて、そろそろいいかな。
「二人とも、一旦休憩していいぞ」
夢中でプレイをしている彼らに呼び掛ける。それを聞いた二人は、だいぶ疲れ果てた様子で、そのままその場にへたり込んだ。
「あー、キツいな結構」
手で顔を扇ぎながら、中田が怠そうに言う。
「何言ってんだバカ。お前こそ現役だろって」
「まぁ、そうなんだけどよ。走り込み三十分と、一対一を三十分やるんじゃ、全然疲れ方が違うって。初心者相手とはいえ、それなりに頭も使うわ」
「ま、それもそうか。で、牛久。お前はどうだ?」
一人、こちらに背を向けて座っている彼に声を掛ける。牛久は一切こちらを振り向く事無く、ただただ一言「別に……」と言い放っただけだった。
「そうか。まぁいいや。じゃあ、少ししたらまた始めるぞ?今度は、俺も出る」
「お、いよいよ昔のエースがお出ましか。楽しみだな」
「何言ってんだ。お前のほうが上手くなきゃ、話にならねぇだろ」
「いやまぁ、そうなんだけどよ」
「……あー、そうか。ベンチだしなぁ」
「うるせぇ、それは言うな!」
舌打ち交じりに、中田が一蹴した。どうやら、気にしてはいるらしい。
「…にしても、お前本当に変わったよな。色々あったからか?」
「ん。まぁ、アレのおかげで、吹っ切れた部分はあるよ。それで良い方向に変わったのか、悪い方向に変わったのかは分からねぇけどな」
アレ、とはアレの事である。確かにあの一件以来、久しく中田とは絡みが無かったこともあり、その間の俺の情報が一切無かった事もあるのだろう。それにしたって、昔からの幼馴染からそう言われるという事は、恐らくきっと、俺は当時と比べてかなり変わったのかもしれない。
「でも、お前の周りって女子多いよな?全然女子と絡みそうな奴じゃないのによ」
「そうか?普通だと思うんだが」
とは言葉で言いつつも、実際に自分でも思う節はある。あまり女付き合いは得意ではないはずなのに、何故か俺の周りには女性が集まってくる。不思議だ。
「いやいや、何言ってんだ。俺と仲が良い奴は、なつ……」
「……なつ?」
「いや、何でもねぇ。マネージャーの一人くらいしかいねぇよ」
何かを言い掛けると、彼は思いつめたように急に表情を曇らせた。
こういう所は、昔から何一つ変わっていない。彼は昔から不器用で、嘘が下手だ。
「ふぅん……。まぁ、いいんじゃねぇの?いるだけマシだろ」
「……まぁ、それもそうか」
「ま、それはもう終わりにしよう。さて、じゃあほら、そろそろ再開するぞ」
俺は、座っている二人の肩を順々に触れて、立ち上がれと言う合図を出した。面倒くさそうに、彼らはゆっくりと立ち上がる。
「じゃ、今度は俺が相手になる。お前らは、二人でチームになれ」
「あぁ?お前と後輩君が組むんじゃねぇのかよ?」
中田が問うた。
「いや、今回は和樹と組んでもらう。二対一で、俺から点を取ったらそっちの点。俺はそれを阻止したら一点。投げてゴールに入らなかったら、お互いポイント無しで。そうだな……じゃあ、三十本やって、点を多く取ったほうが勝ちにしようか」
「はぁ?三十本もやるのかよ?」
「……なんだ、不満か?現役君。現役なんだから、それくらい付いて来いよ」
「うるっせ!わぁったよ、やりゃいいんだろやりゃ」
「そうそう。牛久も、それでいいな?」
「……何でもいいです」
ボソッと彼は一言呟いた。
思えば、先程彼の機嫌を損ねてから、だいぶ口数が減ってしまった。彼らしいと言えば彼らしいが、少し悪い事をしてしまっている気にも陥る。
「よっし、じゃあ始めるぞ?」
「あ、待て。裕人、お前先に体動かさなくていいのか?全然動かしてないだろお前」
「いや、いい。大丈夫だよ」
「はぁ。体壊しても、自業自得だかんな?」
「はいはい、じゃ、行くぞ」
そのまま俺達はお互いに向き合って構えると、俺の合図とともに、一斉に動き出した。
先にボールを持っていた中田が、俺と対面する。彼は俺の動きを読むと、そのまま牛久へとパスを出した。咄嗟に俺は彼の前へと立ちはだかる。
手慣れない手つきで、彼は俺の前でボールを突いている。動きは悪くはない。ただ、それだけだった。
「おい、こっち寄越せ!」
俺の後ろで、中田が呼び掛ける。……だが、牛久は彼にボールを渡す事無く、俺の一瞬の隙をついてボールを投げた。ボールは、リングのサイドに当たって、中に入る事を拒む。
――やっぱりか。
「ドンマイドンマイ、次行こうぜ」
中田が牛久に声を掛ける。だが、彼は素っ気ない返事をしただけだった。
そのまま、次の試合、そのまた次の試合と、数試合を続けていく。試合内容は、大体全部似たような内容だ。
「前も言ったけど、やっぱりお前腕落ちてねぇな」
試合終わりに、中田が俺の背中を軽く叩いて告げた。
「そりゃどうも。でも、お前も前と比べたら、だいぶ上手くなってないか?」
「まぁ、こちとら大会に向けて、ちゃんと特訓してるんでね」
「そうかよ。じゃ、大会も期待してるぜ」
「おう」
そんな会話も交えつつ、その後は何度か中田が投げて入った試合もあったものの、だいたいは牛久からボールを俺が取るか、牛久に投げられて、ゴールに入らなかった試合ばかりだった。ボールを持っている時間も、圧倒的に牛久のほうが多く、中田にボールが回る事は、ほとんど無かった。
「なぁ、少しくらいこっちに頼ってくれてもいいんだぞ?一人じゃ、辛いだろ?」
中田が再び彼に呼び掛けた。
「……出来たら、します」
「出来たらって……まぁ、そっちに任せるけどよ」
牛久は彼の言葉を半ば無視すると、ボールを持って構えてしまう。しぶしぶ中田も、その後に続いた。
残り十一試合。現在六対九で、俺のほうが勝っている。と言っても、全て牛久からボールを奪った点数だ。肝心の中田からは、一本もボールを奪えていない。
「おい、こっち空いてるぞ!」
中田が彼に呼び掛ける。それでもやはり、牛久は彼にパスを出さない。そのまま俺をかわしてボールを投げる。やはり、ボールは嫌われてしまった。
「…なぁ、何でボールを寄越してくれないんだ?さっきチャンスだっただろ?」
飛び跳ねて転げ落ちたボールを拾い、まるで機械化されたかのような無表情でスタート位置に戻る牛久に、再び中田は問う。
「別に……渡さなくてもいいと思っただけです」
「……おい、何イラついてんだよ?」
掛けられた声を無視して、再び構えようとする彼を見て、とうとう中田は、舌打ち交じりに彼に問うた。
「イラついてません」
「はぁ?言っとくけどよ、今お前より俺のほうがイラついてんぞ?」
「……そうですか」
「そうですか、だ?」
彼が牛久へと詰め寄る。その途端、空気が一気にピリピリし始めた。
だが、目の前の今の出来事を俺に止める気は無い。寧ろ、こうなる事を望んでいたのだ。気を悪くするどころか、彼が怒ってくれたことに、ありがたく感じている。
「何だよ、点を自分で入れられないからか?俺ばっかり点を入れて、自分はボールを取られるわ、入らないわでイラついてんの?」
「……」
「はぁ。…俺は、お前がフットサルでどんなプレイをしてるのかなんて知らん。だけど、今一緒にこうしてやっただけで、なんとなく分かる。……お前、孤独なんだな」
言葉を少し溜めて、中田が言い放つ。牛久は眉間をピクリとさせると、少しの間、黙り込んでしまった。
「……孤独で、何か悪いですか?」
「あぁ、悪いさ。お前今、何やってる?」
「何って……バスケですけど」
「じゃあ聞くよ。バスケって、どんなスポーツか知ってるか?」
「は?……点を取るスポーツでしょ」
「そうじゃねぇ、人数だ人数」
「……五対五、ですけど」
「そうだ。五人っていう、少ない人数の中で戦うんだ。逆に人数の多いサッカーとかアメフトだって、一人欠けるだけでもそれなりに不利になるだろうけどよ、でも人数が多い分カバーはできる。だが、バスケはどうだ?四対五で、互角に戦えると思うか?俺は、無理だと思うね。一人欠けたほうのチームが、相当な腕を持ってない限り。……言いたい事、分かるか?」
「……」
「お前みたいな奴がいると、邪魔なんだよ」
「邪魔……?」
「ああ、そうだ。どんなにお前が上手かろうと、点を取ろうと。チームで戦えない奴はクズだ。仲間の事を想えない奴は、ただの邪魔者でしかない。そうやって個人プレイをするなら、テニスでもやっとけばいいんじゃねぇのか?お似合いだと思うぞ」
嘲笑うように、中田は牛久に言い放った。こんな風に怒る彼を見たのは、久々だ。
「……にが」
「あ?」
「何が……あんたに、何が分かるんだよ」
怒りがとうとう限界にまで達したのか、牛久は見たことの無い様相で、中田に牙をむいた。普通の人ならその顔を見ただけで怯んでしまうだろう。だが、それでも彼は牛久に怯むことなく、変わらない表情のまま告げる。
「ああ、分からねぇよ。でも、お前が負けず嫌いな事だけは少なくとも分かる。きっと、裏で一人で練習でもしてたりするんだろ」
「っ……」
「ま、フットサル部の事に関しては、俺は関係ねぇから何も言えねぇ。けど、少なくともフットサルでもそんなプレイをしてるんだったら、ただの邪魔だからやめとけ。俺が言えるのはそれだけだ」
「はいはいはいはい、もうそのくらいにしておけ」
流石に、これ以上のやり取りは何も生まない。流石に彼ももう懲りただろうと判断した俺は、すぐさま間に割って入り、二人を制した。
「ん……あぁ、そうだな。悪い、牛久。言い過ぎた」
「……いえ」
小さく彼は首を振ると、何かを考え込むかのように、ボーっと俯いてしまった。
重苦しい空気が漂う。梅雨時期の湿気の強い、生ぬるい風が、三人の体を包み込んだ。
「さて、ほら!あと十本だし、さっさとやっちゃおうぜ、二人とも」
ふぅっと一つ息を吐くと、俺は手をパンっと叩いて二人に呼び掛けた。
「ん、あぁ。そうだな、やるぞ牛久」
中田が彼に呼び掛ける。彼は特に反応を見せるわけでもないまま、一人構えた。
ふと、ポツリと一粒、肩に何かが落ちた気がする。
俺の合図で、二十一本目の試合がスタートした。

「あーあ、降ってきちまったな」
夕方五時の鐘が、町中に鳴り響くとほぼ同時に、中田が俺の部屋の窓から外を覗いた。
「でも、ただの夕立じゃねぇのか?今日、予報では曇りだし」
「だといいけど」
外から、湿っぽい香りが漂ってくる。彼は窓を閉めると、俺のベッドの上に座り込んだ。
「あいつよかったなぁ、先に帰って」
「そうだな。家もここからそう遠くないし、濡れる前に帰ったろ」
「そうか。…で?薄々気付いてたけどよ。お前、俺を使ったろ?」
「………あ、バレてた?」
「そりゃそうだ。あいつに怒鳴ってから気付いたよ。『あれ、俺利用されてる?』ってね」
中田がベッドの上に横になり、頭を肘に乗せる。その顔は、呆れ顔だ。
「いや、どうしてもお前じゃなきゃダメだったんだ。今まで全く接点の無いお前だからこその、今回だったんだよ」
「はぁ、というと?」
「じゃあ、種明かしでもするとしますか。今回は―――」
彼には簡単に、今回の目的について説明した。牛久が、フットサル部内で浮いている事。個人プレイをしてしまう事。自分一人で、何でも出来てしまうと錯覚を起こしている事。それらを全て話した。
「そこで、第三者のお前に言ってもらえるのが一番効果があると思ったわけです」
「ふぅん、そういう事か」
「きっとお前の事だから、何も言わなくても適当に言ってくれるだろうとも思ってたし、成功だったな」
「うーん、なんかパッとしねぇな」
「でも、お前が言ってくれたおかげで、あいつはちゃんと連携とってくれるようになっただろ?」
あの後は、中田の言葉のおかげか、少し前と同じ人物とは思えないような動きと連携を見せられて、結果十二対十で、逆転負けを許してしまった。
……まぁ、実は彼の自信になってもらおうと、敢えて先に体を慣らさなかったり、最後の十試合は俺も多少手を抜いたのも事実だが。それでもきっと、彼にも連携の良さを教えられることが出来たと思う。
「いや、確かにそれはそうだけどよ。けど、なんかやっぱりなぁ、利用されてた感が否めないっつーか」
「まぁそう言うなって。今度、なんか飯でも奢るよ」
「ん、マジで?じゃあ、ラーメンでよろしく」
「ラーメンね、覚えておくよ」
会話に一区切りがつく。強烈な勢いで屋根に叩きつけられる雨の音が、部屋中に響いていた。
「で、今度は俺から聞きたいことがあるんだ」
机の前の椅子に座っていた俺は、中田のほうにクルッと椅子を向けた。
「んぁ?何だよ?」
「……お前、南口と何があったの?」
「っ……!?」
彼は言葉を耳にした瞬間、横になっていた体をバサッと起き上げ、青ざめた様子でこちらに問うた。
「お前、何で知って…?」
「まぁ、俺の情報源を考えればすぐに分かるだろ。今度は、お前が説明する番だぞ?」
何かを思いつめた様子であったが、彼は少しだけ考え込むと、一つ頷いてこう言った。
「……分かった。でも、今から話す事を、信じてくれとも言わない。それは、お前に任せる」
「オーケー?じゃあ、話してくれ」
中田は、彼女との間に一体何があったのか、詳しく説明してくれた。
にわかには信じがたい話だが、かの有名なプロバスケットボール選手を兄に持つマネージャーがいると。なるほど、それでは最初の前置きの意味も頷ける。
「ふぅん、マネージャーのお兄さんがねぇ。そういえば、こないだトップニュースにもなってたな」
「あぁ、一応一命は取り留めたみたいなんだが、目が醒めるまで分からない状況らしい。強く、頭を打ったみたいでさ」
「それで、今そのマネージャーの子は?」
「月曜日は一回学校来たんだが、やっぱりダメだったんだろうな。二限目の途中で早退して、それっきり今週はずっと来なかった。何回か連絡してみたけど、返事は無しだ」
「そうか……」
「……俺だって、分かんねぇんだよ。夏樹との距離感も分かんねぇし、玲奈ともどう接すればいいか分からない。どうすればいいのか、さっぱりなんだよ」
「和樹……」
こういう時、どんな風に声を掛けてあげればいいかが分からない。俺は、人を励ますという事が苦手だ。大事な場面に限って、言葉が浮かんでこなくなる。このもどかしさに苛立ちが募る。
「悪いな、お前には……関係、ないもんな」
「いや……」
「すまん、俺…もう帰るわ」
俺が言い掛けた言葉に覆いかぶせるように、強引に中田はそう告げた。
「え、あ、そうか…。でも、外大丈夫か?」
「様子を見る限り、ちょうど今雨が弱くなってる。急いで帰れば、あんまり濡れなくて済むだろ」
ベッドから立ち上がると、彼は窓の外を見た。
「そうか。……あ、じゃあそうだ。渡すものがあるんだ」
俺はそう言うと、中田と共に玄関先にまで共に下りた。
中田が靴を履いている最中に、傘立てから一本の傘を手に取ると、それを彼に差し出した。
「これ、南口の傘なんだ。今度会う時、渡しておいてくれよ」
この間、彼女が忘れていった黄緑色の傘だ。あの日は自転車だったこともあり、他人の傘を持ち帰るのに、苦労した事を今でも覚えている。
「え、何でお前が、玲奈の傘なんて持ってるんだ?」
「まぁ、色々あってな。詳しくは、南口から聞けばいい。頼んだ」
「そうか……分かったよ。じゃあ、またな」
「ああ、気を付けろよ」
重い表情で彼は無理やり笑みを浮かべると、そのまま彼は逃げるように玄関を開いた。
彼が玄関から出ていくのを見送ると、俺は一つ、生ぬるいため息を吐いた。

≪そっかぁ。それはまた……≫
スピーカーの向こうで、彼女が声を上げた。
「まぁ、そういう事らしい。それで、この話は南口にするのか?」
≪うーん、いや。私からはしないようにするよ。直接、和樹君から言ってもらったほうがいいと思うし≫
「そうか。まぁ、それもそうだな」
≪それに……≫
「ん?」
≪あの二人、最近自分達の関係について、色々と悩んでるでしょ?その辺りも、二人で解決しないといけないし。別れるなら別れる、付き合い続けるなら続けるって、しっかり二人で話し合わなきゃ。他人の言葉よりも、あの二人は自分達の気持ちのほうが大事だと思うんだ≫
「まぁ確かに、お互いちょっと気の強いところがあるからなぁ。それに、幼馴染って言っちゃえば幼馴染だし、昔からの自分達を知ってるからこそ、そういう事も、し辛いところがあるわな」
≪……ん、じゃあそういう裕人君と心奈は、そういう事まだしてないの?≫
――何故、そうなる。
「いちいちそういう所にツッコんでこなくていいんだよ」
こういう、余計な所に首を突っ込んでくるのは本当にやめてほしい。そういう話は、出来れば話したくはない。
≪えー、じゃあじゃあ、キスは?キスはした?≫
「だから言わねぇって……」
≪むー、そうですかー。まぁいいけど≫
きっぱり断ったはずなのに、何やら彼女はふふっと楽しそうに笑ってみせた。
……俺の予想だが、彼女は多分真実を知っていると思う。その上で、わざと俺の口から言わせようとしたんじゃないか?もしそうだったら、確信犯だ。
≪さて、じゃあ私は、そろそろ部屋に戻ろうかな。そろそろ、向こうも落ち着いたと思うし。和樹君は、まだいるの?≫
「いや、あいつはもう帰ったよ。ほら、さっき少しだけ雨降ってたろ?また降られても困るからって、弱まったのを見て急いで帰ってったよ」
≪そっか。分かった、じゃあそういう事で。ありがとね、裕人君。手伝ってくれて≫
「いや、いいんだよ。俺だって、あの二人には色々と世話になってるし」
≪ふふっ、そう。じゃあ、電話切るね。また今度、二人で話そ≫
「ああ、それじゃあな」
≪うん、また≫
彼女の言葉が聞こえると、俺はその通話を終了させた。
ふと、終わった途端に耳に違和感が残る。はて、この違和感は何だろうか?
「……ま、いっか」
一先ず後始末は、彼女に任せればいい。スマートフォンを机の上に軽く投げ捨てると、俺はノートパソコンの電源を入れた。
窓の外では再び、強くなった雨の音が鈍く響き渡っていた。

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