Smile again ~また逢えるなら、その笑顔をもう一度~

たいちょー

4.

一方 美帆と別れた裕人達

香苗のカフェを出た俺達は、特に行く当てもなく、近くをぶらぶらと歩いていた。
特に用事もなく、行きたい場所もない。そんな訳で二人でのんびりとぶらぶらしていると、並木が続く大きな道が見えた。
「んあ?この辺にこんなとこあったっけ?」
俺はぶっきらぼうに言った。
「私も知らなかったなぁ。でも、こういう道、ドラマとかでしか見たことないから、ちょっと新鮮。行ってみよう?」
「おう」
俺達は、並木道に足を踏み入れた。
駅の周囲と違って、あまり雑音もなく過ごしやすい場所だ。ギターの練習をしている人もいたり、風景画を描いていたりする人もいた。この場所は、好きになりそうだ。
「そういえばお腹空いたなぁ。お昼食べないでこっちに来たからさ」
西村がぼやいた。
「んー?近くに店でも探して、どこか寄るか?」
「うん・・・あっ?ヒロ君、あれ!」
「んあ?」
あれ、と彼女が指差した先を見ると、そこには中型の緑色した車が止まっていた。どうやら、移動販売店のようだ。
「あそこで何か買おうかなぁ。ちょっと、寄ってもいい?」
「ああ、いいよ」
そんな彼女の空腹を満たすために、俺達は謎の緑色の車へと向かった。
どうやらこのお店は、ケバブの販売店らしい。ケバブと言えば、超巨大な肉の塊をスライスしている様子を、テレビで見たことがある。
「へぇ、ケバブだって。ヒロ君、食べたことある?」
「いや?美味そうだし、買ってくか?」
「うん!」
車内に立つ、本場のトルコ人らしきお兄さんに迎えられた俺達は、二人で一緒にドネルケバブと呼ばれるものを注文した。すると、意外と日本語ペラペラのお兄さんが、隣にそびえ立つ肉の塊を、どんどんスライスしていく。なんだか、見ていてとても楽しい。
「ハイ、二つね」
「ありがとうございまーす」
ニコニコと笑顔を浮かべるお兄さんに別れを告げると、俺達は近くのベンチに座って、ケバブを堪能した。
「美味しい!ちょっと辛いけど、意外と味は濃すぎてないんだね」
西村が感動の声をあげた。どうやら、よっぽど気に入ったらしい。
そんなこんなで、すっかり昼食となってしまったケバブを俺達は食べ終わると、そのままベンチに座って、雑談にふけっていた。
「そういえばヒロ君」
「なんだ?」
「中学生の時、心奈と色々あった後って、どうなったの?」
「ああ?知りたいのか?あんまり面白い話でもないぞ?」
「うん。一応、聞いてみたいかなぁって」
「そうか、じゃあ・・・」
西村に促されるまま、俺は彼女との騒動のその後を話し始めた。

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