田中と山田

かなや

「田中」と『山田』その33

「田中」と『山田』その33

前回のあらすじ

求めよ、さらば与えられん。



「必ずしもそうとは限らないけどな。」

『なんの話ー?』

「そんなことより飯食べたい。」

『あれ、もうそんな時間か。おし、ちょっと冷蔵庫の中身確認してくるな。』

山田はいつもように台所に向かい冷蔵庫の中を見る。

『人参と大根とー。あと、豚肉があるのか。よし、煮物にしよう。』

山田の家族は共働きだ。幼い頃は祖父母の家で育てられた。家計が苦しいわけではなく、2人とも仕事熱心な人間というだけの話だ。子どもはたまたまできて、産んで欲しいという両親の願いもあってか産んだ。
そうして産まれたのが山田少年だ。

山田は知っていた。
実の両親は自分よりも仕事を優先したいということを。
彼はそれを良いとも悪いとも思わなかった。
両親が彼に興味を持たなかったように、彼もまた両親に興味を持たなかった。

山田は知っている。
田中が自分に好意を持っている事を。
そうして彼がその好意をどうするのかを待っている。
特には期待しないで。


『田中、喜ぶだろな。あいつ人参好きだし。』

その好意は友情なのか、あるいは思慕なのか。
彼はどちらでも構わないようだった。






ー急なシリアスー

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