異世界宿屋の住み込み従業員
129話 「あと一日」
「交渉はうまくいったのか?」
「うん、なんとかー」
ドラゴンとリザートマン達との交渉を終え宿へと戻った一行を帰りを待っていたバクスが出迎える。
「そうかそれは良かった。アイネさんはどうした?」
「ん、門番さんに話をしに……えっと、交渉の結果なんだけど──」
門番と聞いてぴくりと方眉を上げるバクスに対し加賀は今までの出来事を掻い摘んで話始めた。
「魚をここまで運んで貰うと……で、代金代わりに買い物付き合うってことか。ま、良いんじゃないか? 買い物に付き合う時はアイネさんとうーちゃんどっちも一緒に行くようにな」
ひとまずドラゴンを蹴っ飛ばした話に関しては一切スルーする事にしたバクス。
加賀一人では行かないようにと伝え、鼻歌交じりに燻製小屋へと向かう。
今から魚介類の燻製を作る下準備でも始めるのだろうか。
「ふぃー、お疲れ様。ラヴィも今日はありがとー」
「いや、良いって事よ。ついて行かないと何が起こるか不安だったからなあ」
「ははは……」
実際不幸な事故でドラゴンが飛んだぐらいで他にトラブルらしきものは無い。
やはりラヴィが付いて来てくれた事で即交渉の場につけた事が大きいだろう。彼がいなければリザートマン達も空を飛んでいたかも知れないのだから。
「ただいま」
「おかえりアイネさん、どでした?」
「ん、問題ないよ。説明して納得してもらった」
椅子に腰かけ休憩していたところアイネがドアを開け入ってくる。
どうやら無事門番との交渉は完了したようであるがどうも様子がおかしい。加賀の姿を見止めると少しためらった様子を見せゆっくりとそばに近寄って行き、そしてぐいと頭を突き出す。
「あ、あのアイネさん……?」
「……私は撫でてくれないの?」
そう言ってじと目で加賀を見つめるアイネ。
一瞬何のことか分からなかった加賀であるが、よくよく思い出すとドラゴンを蹴り飛ばしたうーちゃんの頭をこれでもかと撫で繰り回していた。
「えぇー……こ、こんな感じでどうでしょ」
「ん……ありがと」
髪を乱さない程度におそるおそる頭を撫でる加賀。ある程度撫でまわすと満足したのかアイネは顔を上げ椅子に腰かける。
そして血が通っていないはずの頬を赤らめ俯きかげんでぼそりと呟く。
「……思ってた以上に恥ずかしい」
「えぇー」
「何しとんのだお前らは……そろそろ夕飯の準備をだな」
扉を開けあきれた表情で二人を見るバクス。
燻製小屋の作業はすぐ終わったらしくどうやら一部始終ばっちり見られていたようだ。
「今いきまーす……」
うー(わしもなでい)
アイネの真似をして頭をぐいぐい押し付けてくるうーちゃんを撫でつつ厨房へと向かう4人。
今日の夕食は再び入荷したカウシープのお肉を使った料理。明日からは魚も定期的に届けられる為これで宿では牛豚鶏魚をだせる事になる。よりレパートリーを増やせる事に喜びを感じつつ喜愛いれて料理に取り掛かるのであった。
一方その頃4人がさった汽水湖ではリザートマン達が話し合いの場を設けていた。
議題は誰が魚を街まで運ぶかである。運ぶものはまず立候補により選定する事となったが若いリザートマンを中心に予想以上に立候補者が現れた為、体力テストの結果を見て選定する事となる。
「長、準備が出来ました」
「うむ、良かろう始めるが良い。記録は間違いの無い様にな」
長が許可を出すと巨大な旗を持ったリザートマンが旗を勢いよく振り回す。
すると地鳴りのような音と共に大量のリザートマン達が一斉に駆けだした。
「誰が選ばれますかな」
「さてな、どいつも体力は自信があるだろうからな……こればかりは読めぬよ」
体力テストの内容は魚の代わりに重しを入れた樽を担ぎ、リッカルドの街までと同じ距離をどれだけ早く走るかと行ったものである。
「魚は出来るだけ鮮度が良い物を」
これが長と加賀の共通した認識であった。
運ぶ時間は出来るだけ短い方が良い、それ故に選定するのにこの方法が選ばれたのだ。
長はもし立候補した物が体力に劣るもの達ばかりであれば失格とし、体力自慢の者を指名する腹積もりであった。
「上位3人が決まったか」
だが、その思いは徒労に終わりそうである。
フォルセイリアの街まではおよそ10kmほど、早いものは20分程で駆け抜けてしまう。
厚い日は氷を入れておけば良い、これだけ早ければ早々魚が傷むことも無い。
長はほっと内心胸を撫でおろしつつ、選ばれた者の名を高らかに読み上げて行く。
名を呼ばれたものは大きく声を上げ全身で喜びを表している、一方落ちたものはかなりの落ち込み様である。
これは選定されたものは優先的に自分の欲しいものを買える為である、日曜道具に日々の狩りで使用する道具など欲しいものはたくさんある。選ばれたものはそれらを優先的に誰よりも早く手に入れる事が出来るのだ、それは気合が入るというものだ。
第一弾は明日の昼過ぎに届けられる。以降は3日置き、嵐や雪の日を除いてこれからずっと宿に魚が配達される事となる。
届けられるのは全て取り立ての魚介類、今までも宿の売りとする料理はいくつもあったがこれに魚介類を使った料理が加わる事となる。
魚介類が入手できると聞いた探索者達は喜びに沸き、加賀たちも魚介類を料理に使える事で期待に満ちている。
宿に魚介類が届くまであと少しである。
「うん、なんとかー」
ドラゴンとリザートマン達との交渉を終え宿へと戻った一行を帰りを待っていたバクスが出迎える。
「そうかそれは良かった。アイネさんはどうした?」
「ん、門番さんに話をしに……えっと、交渉の結果なんだけど──」
門番と聞いてぴくりと方眉を上げるバクスに対し加賀は今までの出来事を掻い摘んで話始めた。
「魚をここまで運んで貰うと……で、代金代わりに買い物付き合うってことか。ま、良いんじゃないか? 買い物に付き合う時はアイネさんとうーちゃんどっちも一緒に行くようにな」
ひとまずドラゴンを蹴っ飛ばした話に関しては一切スルーする事にしたバクス。
加賀一人では行かないようにと伝え、鼻歌交じりに燻製小屋へと向かう。
今から魚介類の燻製を作る下準備でも始めるのだろうか。
「ふぃー、お疲れ様。ラヴィも今日はありがとー」
「いや、良いって事よ。ついて行かないと何が起こるか不安だったからなあ」
「ははは……」
実際不幸な事故でドラゴンが飛んだぐらいで他にトラブルらしきものは無い。
やはりラヴィが付いて来てくれた事で即交渉の場につけた事が大きいだろう。彼がいなければリザートマン達も空を飛んでいたかも知れないのだから。
「ただいま」
「おかえりアイネさん、どでした?」
「ん、問題ないよ。説明して納得してもらった」
椅子に腰かけ休憩していたところアイネがドアを開け入ってくる。
どうやら無事門番との交渉は完了したようであるがどうも様子がおかしい。加賀の姿を見止めると少しためらった様子を見せゆっくりとそばに近寄って行き、そしてぐいと頭を突き出す。
「あ、あのアイネさん……?」
「……私は撫でてくれないの?」
そう言ってじと目で加賀を見つめるアイネ。
一瞬何のことか分からなかった加賀であるが、よくよく思い出すとドラゴンを蹴り飛ばしたうーちゃんの頭をこれでもかと撫で繰り回していた。
「えぇー……こ、こんな感じでどうでしょ」
「ん……ありがと」
髪を乱さない程度におそるおそる頭を撫でる加賀。ある程度撫でまわすと満足したのかアイネは顔を上げ椅子に腰かける。
そして血が通っていないはずの頬を赤らめ俯きかげんでぼそりと呟く。
「……思ってた以上に恥ずかしい」
「えぇー」
「何しとんのだお前らは……そろそろ夕飯の準備をだな」
扉を開けあきれた表情で二人を見るバクス。
燻製小屋の作業はすぐ終わったらしくどうやら一部始終ばっちり見られていたようだ。
「今いきまーす……」
うー(わしもなでい)
アイネの真似をして頭をぐいぐい押し付けてくるうーちゃんを撫でつつ厨房へと向かう4人。
今日の夕食は再び入荷したカウシープのお肉を使った料理。明日からは魚も定期的に届けられる為これで宿では牛豚鶏魚をだせる事になる。よりレパートリーを増やせる事に喜びを感じつつ喜愛いれて料理に取り掛かるのであった。
一方その頃4人がさった汽水湖ではリザートマン達が話し合いの場を設けていた。
議題は誰が魚を街まで運ぶかである。運ぶものはまず立候補により選定する事となったが若いリザートマンを中心に予想以上に立候補者が現れた為、体力テストの結果を見て選定する事となる。
「長、準備が出来ました」
「うむ、良かろう始めるが良い。記録は間違いの無い様にな」
長が許可を出すと巨大な旗を持ったリザートマンが旗を勢いよく振り回す。
すると地鳴りのような音と共に大量のリザートマン達が一斉に駆けだした。
「誰が選ばれますかな」
「さてな、どいつも体力は自信があるだろうからな……こればかりは読めぬよ」
体力テストの内容は魚の代わりに重しを入れた樽を担ぎ、リッカルドの街までと同じ距離をどれだけ早く走るかと行ったものである。
「魚は出来るだけ鮮度が良い物を」
これが長と加賀の共通した認識であった。
運ぶ時間は出来るだけ短い方が良い、それ故に選定するのにこの方法が選ばれたのだ。
長はもし立候補した物が体力に劣るもの達ばかりであれば失格とし、体力自慢の者を指名する腹積もりであった。
「上位3人が決まったか」
だが、その思いは徒労に終わりそうである。
フォルセイリアの街まではおよそ10kmほど、早いものは20分程で駆け抜けてしまう。
厚い日は氷を入れておけば良い、これだけ早ければ早々魚が傷むことも無い。
長はほっと内心胸を撫でおろしつつ、選ばれた者の名を高らかに読み上げて行く。
名を呼ばれたものは大きく声を上げ全身で喜びを表している、一方落ちたものはかなりの落ち込み様である。
これは選定されたものは優先的に自分の欲しいものを買える為である、日曜道具に日々の狩りで使用する道具など欲しいものはたくさんある。選ばれたものはそれらを優先的に誰よりも早く手に入れる事が出来るのだ、それは気合が入るというものだ。
第一弾は明日の昼過ぎに届けられる。以降は3日置き、嵐や雪の日を除いてこれからずっと宿に魚が配達される事となる。
届けられるのは全て取り立ての魚介類、今までも宿の売りとする料理はいくつもあったがこれに魚介類を使った料理が加わる事となる。
魚介類が入手できると聞いた探索者達は喜びに沸き、加賀たちも魚介類を料理に使える事で期待に満ちている。
宿に魚介類が届くまであと少しである。
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