異世界宿屋の住み込み従業員
122話 「チョコ=未知の食べ物」
黒っぽい何かが色々とのった皿がテーブルの上にことりと置かれる。
 「ご飯までもう少し掛かるからそれまでこれ食べててー」
その見慣れぬ物体に自然とみんなの視線が集まる。
 加賀の言葉とその甘い匂いからおそらく食べ物である事は分かるが、見た目は黒っぽい謎の物質である。
 皆興味は示すが中々手を出す様子はない、お菓子であればすぐ食いつくシェイラでも手を出しあぐねているようだ。
 「加賀っちこれってお菓子だよね……」
 「そですよ、見た目は慣れるまであれかもですが」
 「へー……」
うっ(うまうま)
が、うーちゃんに躊躇いはない。チョコを両手に持ちモリモリと食べて行く。
その様子を見て他の者たちも手を付けだす。大体皆に行き渡った所で加賀はある事に気が付いた。
 「あっれ、八木いない?」
 「あー、八木ならギルドに報告してからくるってよ」
 「あ、そかそか」
そう言えばギルドの依頼でリッカルドに向かっていたのだと思い出す加賀。
 「リッカルドの方は特に問題起きなかったです?」
 「ふむ……じゃあ、俺が教えてやるよ。あっちで何があったのか」
そう言うと何時になく真剣な表情を浮かべるヒューゴ。
 加賀の対面の椅子に腰かけ、実はな……と語りだす。
 「八木様お帰りなさいませ」
 「どうもエルザさん、ただいま戻りました」
ギルドの受付にて八木をエルザが出迎える。
ちょうどヒューゴがリッカルドの話を始めたのと時を同じくして、八木もまたリッカルドの出来事をエルザへと報告するのであった。
 「なるほど、交渉は上手くいったとの事でそれは何よりです……黒鉄の流通量も増えるでしょうし非常に助かります」
まずは交渉がうまく言った事、そして黒鉄の流通量が増える事に対し例を言いそして頭を下げるエルザ。
 「男色の件は申し訳ありません……貴族の事ですので少しぼかして伝えるしかなかったのですが、まさかそう解釈されるとは」
 「ははは……まぁ、無事だったんでその話はもうお終いと言う事で」
 「そう、ですか……分かりました、次に褒賞の──」
 八木がギルドから受け取った褒賞はかなりの額であった。
それこそ一年は何もせずそれなりに遊んで暮らせる程度には。
もっとも八木にはそのつもりも無いし、周りも八木にやってもらいたい仕事はまだ山ほどある。自堕落な生活をすることにはまずならないだろう。
 「……なんかすっごい甘い匂いってか、これチョコか。加賀の奴もう戻ってんだな」
ギルドを出て歩く事しばし、八木は宿の前へと到着していた。
ふわりと風にのってチョコの甘い匂いが八木の元へと届く、それは扉を開けるとより鮮明となり八木の嗅覚を刺激する。
 「久しぶりにチョコ食いてえなあ……うっす、今戻ったよ」
 匂いの元は食堂だ、中からはわずかに人の話し声が聞こえる。
 八木は扉を開け手を上げると皆へと声をかけた。
 「え、何この雰囲気……」
 扉を開けた八木であるが、どうも雰囲気がおかしい。
 扉を外から聞こえていた話し声から中にいるのは少人数だろうとあたりをつけていた。だが実際には宿のメンバーのほぼ全員が食堂に揃っていたのである。
さらに八木が扉をあけた瞬間、先ほどまでわずかに聞こえていた話声も止み今はうーちゃんのチョコを食べる音しかしていない。
さらには皆の様子も見ると何時もと違う。バクスは苦り切った顔をしていて、咲耶は何故か笑みが浮かんでおり、探索者は新規追加メンバーとせっかく打ち解けてきたのに今は壁を感じる。そして加賀とアイネは無表情である。
 「えぇ……あ、加賀じゃん戻ってたの──」
 人口密度の高い食堂の中、八木は加賀を見つけたのでとりあえず声をかける。
が、アイネがすっと加賀をかばうように腕をひき自分の影に隠してしまう。
 「え、あのアイネさん……?」
 「八木、悪いけどボクにその趣味はないんだ」
 「何の話です!?」
 八木が一体何の話かと聞いてみれば例の城でのお手伝いさんがあれだった件をヒューゴが誤解を招くように若干脚色を加えつつ語っていた事が判明する。
 尚、語った本人はとうに逃げていた模様。
 「確かに嘘ではないけど、ひどい誤解招く言い方を……あれは貴族のお嬢様がだめってのを城の人が曲解したからであった、ちゃんと説明してお引き取り願ったからね!」
 「私は信じてたよ」
 「アイネさん思いっきり加賀庇ってたじゃないすか……」
 信じたと言いつつも八木の恨みがましい視線を受けそっと八木から視線を外すアイネ。
 他の人も似たようなものである。
 「まあ何にせよ無事? でよかったよ。ほいココアね」
 「お、ありがと。そっちも目当てのもの手に入ったようで何より」
 「うんありがと。探索者の皆さんも用事は無事すんだんですか? ここに全員揃ってるって事はそうでしょうけど」
 加賀の言葉に一斉に反応しだす探索者達。
かろうじて加賀が聞き取れたのはオークションが終わった事、今日からここにやっかいになる事。
そして加賀や八木、それにアイネに対する質問がいくつか。
 「えぇっと……とりあえずオークションは無事終わったのと今日からこの宿に泊まる事は分かりました……質問については、えっとではそちらの方」
 質問について言及したところで一人はいはいと言いつつ手をあげる人物が加賀の目に留まる。
 「ご飯までもう少し掛かるからそれまでこれ食べててー」
その見慣れぬ物体に自然とみんなの視線が集まる。
 加賀の言葉とその甘い匂いからおそらく食べ物である事は分かるが、見た目は黒っぽい謎の物質である。
 皆興味は示すが中々手を出す様子はない、お菓子であればすぐ食いつくシェイラでも手を出しあぐねているようだ。
 「加賀っちこれってお菓子だよね……」
 「そですよ、見た目は慣れるまであれかもですが」
 「へー……」
うっ(うまうま)
が、うーちゃんに躊躇いはない。チョコを両手に持ちモリモリと食べて行く。
その様子を見て他の者たちも手を付けだす。大体皆に行き渡った所で加賀はある事に気が付いた。
 「あっれ、八木いない?」
 「あー、八木ならギルドに報告してからくるってよ」
 「あ、そかそか」
そう言えばギルドの依頼でリッカルドに向かっていたのだと思い出す加賀。
 「リッカルドの方は特に問題起きなかったです?」
 「ふむ……じゃあ、俺が教えてやるよ。あっちで何があったのか」
そう言うと何時になく真剣な表情を浮かべるヒューゴ。
 加賀の対面の椅子に腰かけ、実はな……と語りだす。
 「八木様お帰りなさいませ」
 「どうもエルザさん、ただいま戻りました」
ギルドの受付にて八木をエルザが出迎える。
ちょうどヒューゴがリッカルドの話を始めたのと時を同じくして、八木もまたリッカルドの出来事をエルザへと報告するのであった。
 「なるほど、交渉は上手くいったとの事でそれは何よりです……黒鉄の流通量も増えるでしょうし非常に助かります」
まずは交渉がうまく言った事、そして黒鉄の流通量が増える事に対し例を言いそして頭を下げるエルザ。
 「男色の件は申し訳ありません……貴族の事ですので少しぼかして伝えるしかなかったのですが、まさかそう解釈されるとは」
 「ははは……まぁ、無事だったんでその話はもうお終いと言う事で」
 「そう、ですか……分かりました、次に褒賞の──」
 八木がギルドから受け取った褒賞はかなりの額であった。
それこそ一年は何もせずそれなりに遊んで暮らせる程度には。
もっとも八木にはそのつもりも無いし、周りも八木にやってもらいたい仕事はまだ山ほどある。自堕落な生活をすることにはまずならないだろう。
 「……なんかすっごい甘い匂いってか、これチョコか。加賀の奴もう戻ってんだな」
ギルドを出て歩く事しばし、八木は宿の前へと到着していた。
ふわりと風にのってチョコの甘い匂いが八木の元へと届く、それは扉を開けるとより鮮明となり八木の嗅覚を刺激する。
 「久しぶりにチョコ食いてえなあ……うっす、今戻ったよ」
 匂いの元は食堂だ、中からはわずかに人の話し声が聞こえる。
 八木は扉を開け手を上げると皆へと声をかけた。
 「え、何この雰囲気……」
 扉を開けた八木であるが、どうも雰囲気がおかしい。
 扉を外から聞こえていた話し声から中にいるのは少人数だろうとあたりをつけていた。だが実際には宿のメンバーのほぼ全員が食堂に揃っていたのである。
さらに八木が扉をあけた瞬間、先ほどまでわずかに聞こえていた話声も止み今はうーちゃんのチョコを食べる音しかしていない。
さらには皆の様子も見ると何時もと違う。バクスは苦り切った顔をしていて、咲耶は何故か笑みが浮かんでおり、探索者は新規追加メンバーとせっかく打ち解けてきたのに今は壁を感じる。そして加賀とアイネは無表情である。
 「えぇ……あ、加賀じゃん戻ってたの──」
 人口密度の高い食堂の中、八木は加賀を見つけたのでとりあえず声をかける。
が、アイネがすっと加賀をかばうように腕をひき自分の影に隠してしまう。
 「え、あのアイネさん……?」
 「八木、悪いけどボクにその趣味はないんだ」
 「何の話です!?」
 八木が一体何の話かと聞いてみれば例の城でのお手伝いさんがあれだった件をヒューゴが誤解を招くように若干脚色を加えつつ語っていた事が判明する。
 尚、語った本人はとうに逃げていた模様。
 「確かに嘘ではないけど、ひどい誤解招く言い方を……あれは貴族のお嬢様がだめってのを城の人が曲解したからであった、ちゃんと説明してお引き取り願ったからね!」
 「私は信じてたよ」
 「アイネさん思いっきり加賀庇ってたじゃないすか……」
 信じたと言いつつも八木の恨みがましい視線を受けそっと八木から視線を外すアイネ。
 他の人も似たようなものである。
 「まあ何にせよ無事? でよかったよ。ほいココアね」
 「お、ありがと。そっちも目当てのもの手に入ったようで何より」
 「うんありがと。探索者の皆さんも用事は無事すんだんですか? ここに全員揃ってるって事はそうでしょうけど」
 加賀の言葉に一斉に反応しだす探索者達。
かろうじて加賀が聞き取れたのはオークションが終わった事、今日からここにやっかいになる事。
そして加賀や八木、それにアイネに対する質問がいくつか。
 「えぇっと……とりあえずオークションは無事終わったのと今日からこの宿に泊まる事は分かりました……質問については、えっとではそちらの方」
 質問について言及したところで一人はいはいと言いつつ手をあげる人物が加賀の目に留まる。
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