異世界宿屋の住み込み従業員
58話 「原因が分かったらしい」
「ずるいっす! 俺にもくださいっ!」
「おう、ずいぶん美味そうに食ってるなおい」
「ええ、美味しいですよ?」
風呂を上がり食堂に来てみれば、アルヴィンは先ほどの風呂場での出来事など何もなかったかのように一人デザートを堪能していた。
胡乱げな視線を向けつつ対面に座るヒューゴ、それを見計らったかのようにコトリとテーブルの上にデザートのプリンが置かれる。
ただし、置いたのは加賀ではなく咲耶であった。
「お、ありがとさん……どちらさまでしょう」
「咲耶と申します。皆さんの分もこちらに置いておきますね」
見知らぬ人物の登場に思わず敬語になってしまうヒューゴ。
それを見て咲耶は軽く微笑みつつ残りのプリンをテーブルに並べていく。
「かたじけない、有り難く頂きます」
「やあ、こいつは美味そうだ……カスタードプディングというやつかな? ここでも食べられるとは思わなかったなあ」
プリンを見てありがたそうに受け取るイクセル。チェスターは過去に食べたことがあるのだろう、懐かしむようにプリンを眺めている。
ただアントンだけはプリンをみて微妙な表情を浮かべていた。それを見た咲耶が心配げに声を掛ける。
「あの……もしかして甘いものは苦手でしたか?」
「ぬ? ……すまんな、甘いものはあまり得意ではなくてのお」
「そうでしたか……では、お酒を用意しましょうか? つまみになるものも一緒に」
提案を受け嬉しそうに承諾するアントン。
咲耶は余ったプリンを手に厨房へと戻っていく。
なお、余ったプリンはうーちゃんのお腹に収まることになる。うーちゃんの中で少しだけアントンの株が上がるのであった。
厨房へと向かう咲耶を見送るヒューゴ、姿が見えなくなったところでプリンを手に取り口へと運ぶ。
「お、いけるじゃん……さっきのがもう一人の神の落とし子ねえ……そういや加賀ちゃんはどうしたんよ、話は聞けたのか?」
「ええ、聞けましたよ……先ほどの話、他の者にも伝えて問題ないですか?加賀」
アルヴィンが話しかけた方向、そちらにヒューゴが視線を向ける。そこには少しだるそうに椅子に腰掛ける加賀の姿があった。
「んあ……どーぞどーぞ」
「ありがとうございます、加賀」
加賀に礼を述べ、改めてヒューゴと向かい合うアルヴィン。まわりではガイを除いた残りの3人もいつの間にかそばに集まっていた。
「まず、異常な精霊の力ですが原因は彼女の加護にありました……加護の内容は彼女が作った料理は誰でも人と同じように食べれるといったものです」
「んんん? それと精霊の力の何が関係すんだ?」
「単純な話です。単に食事目当てで精霊が集まっていたのです」
ここで一度ちらりと加賀をみて、再びヒューゴのほうへ顔を向ける。
食事目当てときいて怪訝な顔をする皆をみて、少し苦笑しながら口を開く。
「元々は種族特有の食中毒対策だったそうです。試しに精霊に上げて見たところ食べれたそうで……」
「なるほどのお。そうやって精霊を集めれるってことはあの子はかなり精霊魔法を扱えると言うことかのお」
「いえ、そうではないようです。ただ単に精霊を集める事が出来ると言うだけで……精霊に何かをして貰うには魔力を渡すしかありません、実際試しに魔力が尽きる直前までという条件で精霊魔法を使ってみてもらいましたがすぐに打ち止めになりました、一般的な魔法使いと比べて魔力が多いと言ったこともないです」
だるそうにしている加賀をみてなるほどねと納得する一同。
「つまりは勘違いだったと言うことですか」
「勘違い……ええ、まあそうですね。あそこまで精霊が集まってると勘違いする人はでるでしょう……加賀には精霊石がついたアクセサリーを買うことを進めておきました」
チェスターの言葉に頷くアルヴィン。
加賀に進めたという精霊石つきのアクセサリーは、中に精霊を入れておく事が出来る魔道具の一種であり。
ダンジョンの宝箱からまれに産出する。
中にいる間は精霊の力が漏れることもない、食事の間だけは精霊石から出る必要があるが……それでも今の状態よりずっとましとの事である。
「ま、何にせよ懸念が消えてよかったじゃねーか」
「うむ、そうであるな……ところでさっきから良い匂いが……む?」
「お待たせしました、お酒とおつまみセットになります」
「おお! きたか待っておったぞい」
お酒がなみなみ注がれたジョッキとバクス特性の燻製セット、さらには加賀が昼間作っておいたコンビーフを使ったパテに焼き立てガーリックトーストとおつまみにしてはかなり豪勢な料理が盛られた皿がテーブルに置かれる。
「うむ、美味い。かなり上等な腸詰だの……」
「あの…食中毒対策ということでしたが、もしかしたら彼にも効果があるのでしょうか」
「ぬん? ……ああ、そうかもしれんの」
食べ終わった容器をテーブルに置き、期待のこもった眼差しで加賀を見つめるイクセル。
アントンもつられたように加賀へちらりと視線を向ける。
「? な、なんでしょー……」
「加賀殿、少々お聞きしたい事があります」
「は、はいどうぞー」
その視線に気づいた加賀は慌てた様子でもたれ掛っていた体制を整える。
「実は我々のPTメンバーの一人がですね、卵を食べると嘔吐したり呼吸が苦しくなったりと様々な症状がでるようなのです。彼曰く昔は平気だったそうなのですが……食中毒とは違うかと思います。でも効果が少しでもあるのなら試してみたいのです。彼自身卵が大好物だったようで、ほかの人が食べてるのを辛そうに眺めているのを目撃すると……」
「あ、はい……たぶんアレルギーですね。それならボクが作った料理であれば平気だと思います。確証はないですけど……」
「おお! そうでしたか、おそらくあと一月もすれば彼もこちらに来ると思います。その時にはぜひとも頼みます」
可能性があるとわかり一気にテンショを上げるイクセル。
その勢いに若干引きつつも笑顔で応じる加賀。本来の目的で加護を使う機会がようやく訪れるようである。
「おう、ずいぶん美味そうに食ってるなおい」
「ええ、美味しいですよ?」
風呂を上がり食堂に来てみれば、アルヴィンは先ほどの風呂場での出来事など何もなかったかのように一人デザートを堪能していた。
胡乱げな視線を向けつつ対面に座るヒューゴ、それを見計らったかのようにコトリとテーブルの上にデザートのプリンが置かれる。
ただし、置いたのは加賀ではなく咲耶であった。
「お、ありがとさん……どちらさまでしょう」
「咲耶と申します。皆さんの分もこちらに置いておきますね」
見知らぬ人物の登場に思わず敬語になってしまうヒューゴ。
それを見て咲耶は軽く微笑みつつ残りのプリンをテーブルに並べていく。
「かたじけない、有り難く頂きます」
「やあ、こいつは美味そうだ……カスタードプディングというやつかな? ここでも食べられるとは思わなかったなあ」
プリンを見てありがたそうに受け取るイクセル。チェスターは過去に食べたことがあるのだろう、懐かしむようにプリンを眺めている。
ただアントンだけはプリンをみて微妙な表情を浮かべていた。それを見た咲耶が心配げに声を掛ける。
「あの……もしかして甘いものは苦手でしたか?」
「ぬ? ……すまんな、甘いものはあまり得意ではなくてのお」
「そうでしたか……では、お酒を用意しましょうか? つまみになるものも一緒に」
提案を受け嬉しそうに承諾するアントン。
咲耶は余ったプリンを手に厨房へと戻っていく。
なお、余ったプリンはうーちゃんのお腹に収まることになる。うーちゃんの中で少しだけアントンの株が上がるのであった。
厨房へと向かう咲耶を見送るヒューゴ、姿が見えなくなったところでプリンを手に取り口へと運ぶ。
「お、いけるじゃん……さっきのがもう一人の神の落とし子ねえ……そういや加賀ちゃんはどうしたんよ、話は聞けたのか?」
「ええ、聞けましたよ……先ほどの話、他の者にも伝えて問題ないですか?加賀」
アルヴィンが話しかけた方向、そちらにヒューゴが視線を向ける。そこには少しだるそうに椅子に腰掛ける加賀の姿があった。
「んあ……どーぞどーぞ」
「ありがとうございます、加賀」
加賀に礼を述べ、改めてヒューゴと向かい合うアルヴィン。まわりではガイを除いた残りの3人もいつの間にかそばに集まっていた。
「まず、異常な精霊の力ですが原因は彼女の加護にありました……加護の内容は彼女が作った料理は誰でも人と同じように食べれるといったものです」
「んんん? それと精霊の力の何が関係すんだ?」
「単純な話です。単に食事目当てで精霊が集まっていたのです」
ここで一度ちらりと加賀をみて、再びヒューゴのほうへ顔を向ける。
食事目当てときいて怪訝な顔をする皆をみて、少し苦笑しながら口を開く。
「元々は種族特有の食中毒対策だったそうです。試しに精霊に上げて見たところ食べれたそうで……」
「なるほどのお。そうやって精霊を集めれるってことはあの子はかなり精霊魔法を扱えると言うことかのお」
「いえ、そうではないようです。ただ単に精霊を集める事が出来ると言うだけで……精霊に何かをして貰うには魔力を渡すしかありません、実際試しに魔力が尽きる直前までという条件で精霊魔法を使ってみてもらいましたがすぐに打ち止めになりました、一般的な魔法使いと比べて魔力が多いと言ったこともないです」
だるそうにしている加賀をみてなるほどねと納得する一同。
「つまりは勘違いだったと言うことですか」
「勘違い……ええ、まあそうですね。あそこまで精霊が集まってると勘違いする人はでるでしょう……加賀には精霊石がついたアクセサリーを買うことを進めておきました」
チェスターの言葉に頷くアルヴィン。
加賀に進めたという精霊石つきのアクセサリーは、中に精霊を入れておく事が出来る魔道具の一種であり。
ダンジョンの宝箱からまれに産出する。
中にいる間は精霊の力が漏れることもない、食事の間だけは精霊石から出る必要があるが……それでも今の状態よりずっとましとの事である。
「ま、何にせよ懸念が消えてよかったじゃねーか」
「うむ、そうであるな……ところでさっきから良い匂いが……む?」
「お待たせしました、お酒とおつまみセットになります」
「おお! きたか待っておったぞい」
お酒がなみなみ注がれたジョッキとバクス特性の燻製セット、さらには加賀が昼間作っておいたコンビーフを使ったパテに焼き立てガーリックトーストとおつまみにしてはかなり豪勢な料理が盛られた皿がテーブルに置かれる。
「うむ、美味い。かなり上等な腸詰だの……」
「あの…食中毒対策ということでしたが、もしかしたら彼にも効果があるのでしょうか」
「ぬん? ……ああ、そうかもしれんの」
食べ終わった容器をテーブルに置き、期待のこもった眼差しで加賀を見つめるイクセル。
アントンもつられたように加賀へちらりと視線を向ける。
「? な、なんでしょー……」
「加賀殿、少々お聞きしたい事があります」
「は、はいどうぞー」
その視線に気づいた加賀は慌てた様子でもたれ掛っていた体制を整える。
「実は我々のPTメンバーの一人がですね、卵を食べると嘔吐したり呼吸が苦しくなったりと様々な症状がでるようなのです。彼曰く昔は平気だったそうなのですが……食中毒とは違うかと思います。でも効果が少しでもあるのなら試してみたいのです。彼自身卵が大好物だったようで、ほかの人が食べてるのを辛そうに眺めているのを目撃すると……」
「あ、はい……たぶんアレルギーですね。それならボクが作った料理であれば平気だと思います。確証はないですけど……」
「おお! そうでしたか、おそらくあと一月もすれば彼もこちらに来ると思います。その時にはぜひとも頼みます」
可能性があるとわかり一気にテンショを上げるイクセル。
その勢いに若干引きつつも笑顔で応じる加賀。本来の目的で加護を使う機会がようやく訪れるようである。
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