異世界宿屋の住み込み従業員
23話 「設計には時間がかかるらしい」
「ふひーさっぱりした~」
濡れそぼった髪を軽くかき上げながら加賀が立て板の横から出てくる。
洗い立ての髪は太陽の光を受けその紅色をいっそう鮮やかに輝かせている。
そんな加賀の髪、そして嬉しそうな顔をみた八木は視線を手元にある石鹸へと戻し口を開いた。
「そりゃよかった。肌がひりつくとか髪がギシギシするとかはあるか?」
「肌はだいじょぶそーだよ、ギシギシ感はすこしあるかなー」
「おう、なら石鹸は大丈夫そうだな……そういやさっきの悲鳴なんだったん?けっこう響いてたが…」
「あーあれねー、予想外の場所に例の模様ついててさ…一瞬なにか変なものでもついてるのかと思って…」
思わず声をあげしまったと言う加賀に対し八木は納得したように相槌を打つが、ふと何か疑問が浮かんだのか何か考えるような仕草をしながら口を開く。
「俺の場合は背中だったけど……裸になって気付いたって事は…?」
「そういやシャンプーも作るって言ってたけど、あれって簡単に作れるもんなのー?」
「ん、ああ。手間もそんなかからないし材料も蜂蜜やらハーブやら使うぐらいだしな…今日は昼からギルド行くしちょっと時間が微妙だから…明日か明後日には作っておくよ。この後どうする? 俺はバクスさん戻るまでは作業再開するつもりだけど加賀は?」
「んー、とりあえずお昼の準備しとくよーせっかく小麦粉もらったしね!」
「あいよ」
それじゃ部屋戻ろうか、そう言って二人は扉をくぐり部屋へと戻っていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
八木に割り当てられた部屋の中、何やら線を引く音が聞こえてくる。
部屋の中では水浴びを終え部屋へと戻った八木が机と向かいあい忙しなく手を動かしていた。
机の上には数枚の紙が置かれており、既に紙には宿の外観図だろうか洋風の建物が描かれている。
今八木が描いてる図もどうやら別角度…もしくは先ほどのとは違う建物の外観図のようだ。
八木はかなり集中しているようでただひたすらに絵を描き続けている、そこへ不意に扉をノックする音が響き扉の外から八木へと声がかけられる。
「へいへい、八木~そろそろご飯よー」
声は昼食の準備が終わり八木を呼びにきた加賀のものだ。
だが扉の向こうから八木が反応が返ってくる事はなく、加賀は少しためらったのち一声かけてから扉をあけた。
「八木、はいるよー?…ってなんだ普通に居るじゃん」
「んお?……加賀か、どした?」
「ごはんもうすぐ出来るよ。バクスさんも帰ってきてるし八木も来なよー」
「あれ…もうそんな時間か」
加賀の言葉に八木はことりとペンを置く。
その音につられたのか加賀はちらりと八木の肩越しに手元をのぞき込む。
「おー、もうだいぶ進んでるんだねー。それ宿の絵だよね?」
「おうよ。中はまだ話聞いてからじゃないと描けないから先にイメージつけてもらうのにな。夕方には見せれそうだ」
「ほうほう…そういや図面完成までってどれぐらいかかるもんなの?」
「んー…ものによるんだけどな、宿みたいなでかい建物でバクスさんと相談しつつとなると…数か月から半年は欲しいかな……ストレージに入れてある趣味で作ったやつ流用っつー手もあるが」
「ずるっ」
「まあ、流用してもかなりかかるんだけどなー、ほとんど設計しなおしだし」
「ありゃ、そうなんだ。んまー流用できるといいね?」
女神からもらったパソコンにより八木は個人的に使用していたストレージへとアクセス出来る様になっていた。
そのため過去に趣味で作成していた設計データを見ることができる…がそのまま使用するのは難しいのだろう、仮に流用できたとしてもかなり部分再設計する必要がありそれなりに時間が必要となる。
八木はそれがわかっている故まずは大まかな構想をささっと決めてしまおうと、昨日はほぼ徹夜で作業をしていたようだ。
だがさすがに疲れが出ただろう、軽く目頭を押さえぐりぐりと揉んでいる様子だ。
揉んだ事ですっきりしたのか八木は一息つくと口を開いた。
「そうだな……さてと、バクスさん待たすのもあれだしそろそろ行こっかね、今日の昼は何だっけ?」
「今日のお昼はトマトパスタだよー」
「トマト……」
「トマトソースつい作りすぎちゃって」
ここ最近トマトソースを使った飯が続いてたこともあり、なんとも言えない表情をする八木。
トマトソース自体は八木の好みとするものであったが、さすがにずっと続くとちょっと……と言ったとこであろうか。
とは言え打ち立ての生パスタにおいしいトマトソース、それに街特産のチーズが合わさったそれは相当美味しかったようで、食べるときには終始笑顔の八木であった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「美味いな、このパスタ…いつもパンだったけどパスタもいいもんだなあ」
そう言ってバクスはコップにはいった水を一気に飲み干すと満足げに息を吐く。
よほど気に行ったのか彼の前に置かれた皿はパンで綺麗に脱ぐられている。
「ここらじゃあまり食べないんで?」
「そうだなあ…この街はパンが多い…というかパスタ売ってるとこは無かったと思うぞ」
「ほへー」
「なんでだろ、やっぱ手間かかるんかね?」
「んー、確かに結構手間かかるかも。パスタマシーンとかあれば別だけどねー」
「ここらじゃ売ってるの見ないな。王都…いや港街に行けばあるかもしれん……今度探しておく」
どうやらバクスはかなりパスタを気に入ったようだ、まだ見ぬパスタに思いを馳せてるのか頬が緩みがちである。
濡れそぼった髪を軽くかき上げながら加賀が立て板の横から出てくる。
洗い立ての髪は太陽の光を受けその紅色をいっそう鮮やかに輝かせている。
そんな加賀の髪、そして嬉しそうな顔をみた八木は視線を手元にある石鹸へと戻し口を開いた。
「そりゃよかった。肌がひりつくとか髪がギシギシするとかはあるか?」
「肌はだいじょぶそーだよ、ギシギシ感はすこしあるかなー」
「おう、なら石鹸は大丈夫そうだな……そういやさっきの悲鳴なんだったん?けっこう響いてたが…」
「あーあれねー、予想外の場所に例の模様ついててさ…一瞬なにか変なものでもついてるのかと思って…」
思わず声をあげしまったと言う加賀に対し八木は納得したように相槌を打つが、ふと何か疑問が浮かんだのか何か考えるような仕草をしながら口を開く。
「俺の場合は背中だったけど……裸になって気付いたって事は…?」
「そういやシャンプーも作るって言ってたけど、あれって簡単に作れるもんなのー?」
「ん、ああ。手間もそんなかからないし材料も蜂蜜やらハーブやら使うぐらいだしな…今日は昼からギルド行くしちょっと時間が微妙だから…明日か明後日には作っておくよ。この後どうする? 俺はバクスさん戻るまでは作業再開するつもりだけど加賀は?」
「んー、とりあえずお昼の準備しとくよーせっかく小麦粉もらったしね!」
「あいよ」
それじゃ部屋戻ろうか、そう言って二人は扉をくぐり部屋へと戻っていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
八木に割り当てられた部屋の中、何やら線を引く音が聞こえてくる。
部屋の中では水浴びを終え部屋へと戻った八木が机と向かいあい忙しなく手を動かしていた。
机の上には数枚の紙が置かれており、既に紙には宿の外観図だろうか洋風の建物が描かれている。
今八木が描いてる図もどうやら別角度…もしくは先ほどのとは違う建物の外観図のようだ。
八木はかなり集中しているようでただひたすらに絵を描き続けている、そこへ不意に扉をノックする音が響き扉の外から八木へと声がかけられる。
「へいへい、八木~そろそろご飯よー」
声は昼食の準備が終わり八木を呼びにきた加賀のものだ。
だが扉の向こうから八木が反応が返ってくる事はなく、加賀は少しためらったのち一声かけてから扉をあけた。
「八木、はいるよー?…ってなんだ普通に居るじゃん」
「んお?……加賀か、どした?」
「ごはんもうすぐ出来るよ。バクスさんも帰ってきてるし八木も来なよー」
「あれ…もうそんな時間か」
加賀の言葉に八木はことりとペンを置く。
その音につられたのか加賀はちらりと八木の肩越しに手元をのぞき込む。
「おー、もうだいぶ進んでるんだねー。それ宿の絵だよね?」
「おうよ。中はまだ話聞いてからじゃないと描けないから先にイメージつけてもらうのにな。夕方には見せれそうだ」
「ほうほう…そういや図面完成までってどれぐらいかかるもんなの?」
「んー…ものによるんだけどな、宿みたいなでかい建物でバクスさんと相談しつつとなると…数か月から半年は欲しいかな……ストレージに入れてある趣味で作ったやつ流用っつー手もあるが」
「ずるっ」
「まあ、流用してもかなりかかるんだけどなー、ほとんど設計しなおしだし」
「ありゃ、そうなんだ。んまー流用できるといいね?」
女神からもらったパソコンにより八木は個人的に使用していたストレージへとアクセス出来る様になっていた。
そのため過去に趣味で作成していた設計データを見ることができる…がそのまま使用するのは難しいのだろう、仮に流用できたとしてもかなり部分再設計する必要がありそれなりに時間が必要となる。
八木はそれがわかっている故まずは大まかな構想をささっと決めてしまおうと、昨日はほぼ徹夜で作業をしていたようだ。
だがさすがに疲れが出ただろう、軽く目頭を押さえぐりぐりと揉んでいる様子だ。
揉んだ事ですっきりしたのか八木は一息つくと口を開いた。
「そうだな……さてと、バクスさん待たすのもあれだしそろそろ行こっかね、今日の昼は何だっけ?」
「今日のお昼はトマトパスタだよー」
「トマト……」
「トマトソースつい作りすぎちゃって」
ここ最近トマトソースを使った飯が続いてたこともあり、なんとも言えない表情をする八木。
トマトソース自体は八木の好みとするものであったが、さすがにずっと続くとちょっと……と言ったとこであろうか。
とは言え打ち立ての生パスタにおいしいトマトソース、それに街特産のチーズが合わさったそれは相当美味しかったようで、食べるときには終始笑顔の八木であった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「美味いな、このパスタ…いつもパンだったけどパスタもいいもんだなあ」
そう言ってバクスはコップにはいった水を一気に飲み干すと満足げに息を吐く。
よほど気に行ったのか彼の前に置かれた皿はパンで綺麗に脱ぐられている。
「ここらじゃあまり食べないんで?」
「そうだなあ…この街はパンが多い…というかパスタ売ってるとこは無かったと思うぞ」
「ほへー」
「なんでだろ、やっぱ手間かかるんかね?」
「んー、確かに結構手間かかるかも。パスタマシーンとかあれば別だけどねー」
「ここらじゃ売ってるの見ないな。王都…いや港街に行けばあるかもしれん……今度探しておく」
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