異世界宿屋の住み込み従業員

熊ごろう

プロローグ

うっそうと生い茂る森の中、いくつか点在する開けた場所にぽつんと佇む人影が一つ…やや離れた所にもう一つ、不意に現れる。

一人はかなり小柄で一見すると子供に見えなくもない、自分の手足をまじまじと見つめていたかと思うと、あたりをキョロキョロと見渡し近場の岩へと向かい腰かける。

もう一人は先ほどの人物よりもかなり大柄である。
こちらも自分の手足をまじまじと見つめていたかと思うと、サイドチェストポーズをとった後何処かへと歩きだした。

不意に現れた二人は一体何者なのか、時刻は二人が現れる前…半日ほど遡る。


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時刻はちょうどお昼過ぎ、夏の日差しが照りつける中二人の男性が道を歩いていた。

一人の名は『八木隆志』身長180前後のがっしりした体格で日に焼けた肌が目立つ30前後の男性だ。
職業は建築デザイナー、その見た目からはどちらかと言うとデザイナーと言うよりは大工と言った方がしっくり来るが、建築デザイナーである。

もう一人の名は『加賀命』身長は165前後とやや低め、体格はやや痩せ目で八木よりは若く見えるがこちらも30前後の男性だ。
職業は料理人、近くの洋食店で働いている。

二人が信号で立ち止まり、ふと太陽の方に顔を向け……そこで彼らの意識は途絶える事となる。

二人が気が付いたとき、辺りは先ほどいた歩道ではなく、明るくそしてぼんやりと霧ががかったような空間の中であった。
二人は驚きの表情を浮かべ声を上げる。
二人が驚くのも無理はない、つい先ほどまで彼らは昼食をとるべく二人で歩道を歩いていた…それが気づいた瞬間この異様な空間の中にいたのだから。

突然の出来事に驚き固まる二人へとふいに声がかけられる。
二人が声のした方向へ振り替えるとそこにいたのは一組の男女であった。

驚き固まる二人にイリアと名乗る女神はここが何のか、そして二人がなぜここに来てしまったのかその理由を語りだす。
内容についてはわりと単純であり、彼女の話が終わるまで10分も掛からなかった。
だが単純ではあったがその内容は二人にショックを与えるに十分な内容であった。

「君達はもう死んでいる」

ショックを受ける二人にイリアはある取引を持ち出す。

「二人は建築家と料理人なんだってね。神の落とし子として私の管理する世界に行き、技術を広めてほしいんだ……報酬は異世界とは言えもう一度人生をやり直せる。これが報酬って事でどうだい?」

突然の提案に悩む二人だが、やはり未練があると言う事で彼女の提案を受ける事に。

二人は転生するにあたりいくつか加護を貰く事になる、ただ強力な加護を持たせたが為に結果として技術を広めることが出来なかった過去があったため、肉体は普通に人間とほぼ変わらず、違うところと言えば体のどこかに模様があるぐらいだ。
その模様は他人がその模様を意識して書こうとすると消えると言う仕様となっているそうで、神の落し子と普通の人間を見分けれる様になっているとの事。

また貰える加護はかなり大人しめのものとなる。
加護の内容は八木が身体能力の向上、加賀が魔力の小向上と種族特有の食中毒をさけるための謎能力をそれぞれ貰った。
また、転生先の肉体を用意するのにある程度要望を聞くとの事でそれを聞いた二人は

「20歳前後でイケメンで!!」

実に自分の欲望に忠実な八木であった。

「10代でイケメ……外見は良いほうが良いです…八木とかぶらないのでお願いします。」

なんだかんだで加賀も欲望に忠実であった。

その後加護とこれから向かう世界の概要について説明を聞き二人は転生する事となる。

転生先はかなり治安もよく、景気も良いので普通に暮らすのであれば特に問題はないだろうとの事だ。
初期位置は街から程よい距離で且つ、危険な生物もいないと言う事から森の中となった。尚、混ざると不味いとの理由から二人は2~300mほど離れた位置に飛ばされる模様。

「それじゃあ、そろそろ飛ばすね? さっきのお願いは後で対応しとくから安心して」

他に何か必要?と聞かれたので二人はそれぞれお願いごとをしていた。

加賀は唯一心残りだった、地球へと残すことになる肉親へ伝言を。
イリアは少し考えた後、加賀が肉親への手紙を書くことを条件に加賀の願いを承諾した。

八木に関しては両親はもう他界しているのでそちらについては願いはないが、ネット見れるようにして欲しいと願っていた。
自分たちの記憶は完璧ではない、いずれ忘れることもあるだろうそういったときにネットがあればある程度保管できるはずだ、と。

こちらについてはあっさりとOKが出る、どういった原理なのかは分からないがさほど難しい事ではないようだ。



「あ、そうそう言い忘れてたけど、君達って寿命ないから。転生したまま年取ることもないよー」

最後にしれっと追加された発言。
八木と加賀が驚きの声をあげる間もなく、二人の意識は暗転した。

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