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天使に紛れた悲哀の悪魔

堕天使ラビッツ

第4章 徒桜の少女と慨嘆の少年

 その隙を見計らってか、白露は国王陛下の手を目掛けて弓を放つ。それは見事に命中し、反動で小刀は地面へと落ちた。

「サリー!!!」

 俺はサリーに駆け寄り軽いバリアを張った。国王陛下は魔法を使えない、それに、核兵器を使われるとなるとこれからもっと魔力を消費するだろう。
 サリーはぐったりとしていて意識は無かった。予想以上に魔力を大量消耗したのだろう。

「白露、助かった」
「きっと近くにいる。そんな気がしたのじゃ」
 ゼルは数十の剣を召喚する。一つ剣を召喚するだけでもかなりの魔力を消耗するというのに、さらに炎を付与させていた。

「おい、山猿!!! サリーや白露だけじゃなく……俺の父まで……!!!」

 そうか、ゼルはまだ父が自分を殺そうとしてるなんて微塵も気付いてないのだ。だが、そんな事を今言ってしまうと追い討ちで更に怒り狂うに違いない。
 だが……

「ゼル、それが……「ダメ……ッ!!!!」

 突然目を覚まし叫んだサリー。ゼルの父と国王陛下の企みに気付いているからだろうか、ひどく焦っている。

「サリー! 大丈夫なのか?! 俺のせいで……本当にすまねぇ……」
「違うの……今すぐ離れて! お願い……」
 サリーはフラフラになりながらも立ち上がり、ゼルの元に行こうとする。魔力の大量消耗で起き上がる事する困難な筈なのに。
「サリー、分かった……。もういい、俺がゼルを守るから今は休むんだ」
 俺は子供をあやすかのようにサリーの頭を撫でた。それで安心したのか、力尽きたのか、俺の胸に倒れこんでしまった。そんなサリーを抱き寄せ、静かに口を開く。

「ゼル、父は国王陛下と結託してお前を殺そうとしてる。兵器もその為の物だろう……。」

 俺の放った言葉と同時に、辺りは静まり返る。ゼルも白露も信じられないと言わんばかりに目を見開いた。
 白露は父までゼルを殺そうとしていた事には、やはり気付いていなかったようだ。

「父さん、何で……俺が……?」

 ゼルは底知れぬ絶望と悲しみで声が震えていた。こちらから表情は見えないがきっと……

「泣くな! 今は此奴を殺すのじゃ! 今は……」

 白露も涙を堪えながら必死に訴えた。実の父を殺すのに何の躊躇いも無くなったのだろう。

「くっ……! 殺してやる……」
「我を殺すなら、この兵器でアンジュを潰す。と言ってもか」

 その言葉に全員の思考が停止する。兵器でアンジュも? 誰がそんな事予想出来ただろうか。

「……んな事させてたまるか!!! お前を倒してアンジュも白露も守る」
 ゼルは白露の方を向いて優しく微笑んだ。その瞳にはうっすらと涙が浮かんでいる。

「あの時は一人にしてごめんな? お前を守れる自信がなかったんだ。だからずっと強い魔法を探して……こうやって戻ってきた。本当はもっと強くなって迎えに行くつもりだったんだけどな。――今度こそ一緒に逃げよう、俺がお前を守るから……!」

 嘘偽りのない真剣な表情。いつもの冗談交じりな言葉なんかじゃないのは目に見えて分かる。やっぱりゼルの奴……今までずっと白露の事を考えていたんだな。
 こんな事、相棒の俺も、王子さえも知らなかっただろう。これほどにも大きな悩みを一人で抱え込んで、解決しようと努力して……こいつには到底敵わない。

「ゼル……お主は本当に馬鹿じゃ……ッ!」
「わりぃな。さ、早くこいつをぶちのめそうぜ!!」


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