天使に紛れた悲哀の悪魔
第2章 悪夢の後には注意
目が覚めると酷い頭痛に襲われた。
そういえば、あの男が消えてから記憶がない。でもちゃんとベットで寝ていたようだ。
「おはよう、目が覚めたか?」
ふと声のした方を見ると、椅子に座って本を読んでいるイオがいた。
「あ、おはよう。どうかしたの?」
「何も覚えていないのか? 昨夜悲鳴が聞こえて、急いで向かうとそこには君がいてな。気を失って倒れていたんだ」
「そう、だったんだ。心配かけてごめんなさい」
あの後、倒れたんだ。
よりによって昨日は……。
満月は嫌いだ。綺麗な月に似合わず、残っているのは嫌な記憶だけ。満月の夜、父は国民を呼び集めて何か儀式をしていたみたいで。
それがわたしには恐怖でしかなかった。
殺されてしまうんじゃないかって。今回は無事でも次はどうなるんだろう。そんなことを考えては震えていた。
やっとあんな所から抜け出せて忘れられると思っていたのに……。
あんな事知りたくなかった。
「何かあったのか?」
「イオ、わたし以外にあの場に誰かいた?」
「そのケースも考えて監視役に聞いたり痕跡を調べさせたのだが、誰かが出入りした形跡は無かった」
「あれは……夢だったのかな」
「何があった?」
「ううん、悪夢を見ただけ、大丈夫」
イオは少し心配そうな表情を見せたが、それ以上は何も聞いてこなかった。
「今日は少し休むといい」
「魔法の練習……したい」
「無理は体に毒だ」
「少しだけ。……お願い!」
「少しでも具合が悪くなったらやめるんだぞ?」
イオはため息をついて呟いた。
わたし達は昨日の中庭にいた。
「まずは自分の今あるだけの魔力を解放してみてくれ」
「どうやって……」
「集中して一点だけに魔力を寄せ集める感じだ。無駄なことは頭から排除して心を無にするんだ」
今考えていることを全部消し去って、魔力集中させて一点に寄せ集める。
「…………」
すると周りの空気が震え、沢山の音が聞こえてきた。
――風の音、草木が揺れる音。近くにある噴水の音……。
不思議と人の声は聞こえてこない。まるで大自然の中に一人立っているみたいに。
自然とひとつになってるみたいだ。
「……!! サリー!!!」
肩を掴まれた反動で我に返った。
目の前にはひどく焦っているイオ。
「俺の声、聞こえていなかったのか?」
「ごめんなさい、集中してたみたいで……」
「異常なほどの集中力、それに……昨日とは比べ物にならないほどの魔力」
一日でそんなに魔力は上がるの? それなら今日はもっと……
「やはり昨夜誰かと会ったのか?」
時々イオは痛いほど図星をついてくる。
そうだった。魔力は沢山魔力をもっている人の近くにいるだけで上がるんだった。
となるとやっぱりあの男と会ったのは夢じゃなかった?
どっちにしろこれ以上はイオを騙せない。きっとばれてしまうに違いない。
「実は、あの時の男がわたしを追って入ってきたみたいで……」
「ネビアルと名乗っていた男か。にしてもどうやって、何が目的でサリーを……」
「わたしには……ううん、何でもない」
わたしが負の感情を持っているなんて知られたらきっとここには居られなくなる。
「そんな短時間一緒に居ただけでこうも魔力が上がるとは……一体何者なんだ」
「そんなに魔力上がったの?」
「ああ、もう安易に魔法を操れるほどの魔力を持っているはずなのだが」
やっぱりわたしには暗黒魔法しか……そんなの信じたくない。
たとえそれ以外の魔法が使えなくても、わたしは暗黒魔法なんかに手を染めない。
――絶対に。
そういえば、あの男が消えてから記憶がない。でもちゃんとベットで寝ていたようだ。
「おはよう、目が覚めたか?」
ふと声のした方を見ると、椅子に座って本を読んでいるイオがいた。
「あ、おはよう。どうかしたの?」
「何も覚えていないのか? 昨夜悲鳴が聞こえて、急いで向かうとそこには君がいてな。気を失って倒れていたんだ」
「そう、だったんだ。心配かけてごめんなさい」
あの後、倒れたんだ。
よりによって昨日は……。
満月は嫌いだ。綺麗な月に似合わず、残っているのは嫌な記憶だけ。満月の夜、父は国民を呼び集めて何か儀式をしていたみたいで。
それがわたしには恐怖でしかなかった。
殺されてしまうんじゃないかって。今回は無事でも次はどうなるんだろう。そんなことを考えては震えていた。
やっとあんな所から抜け出せて忘れられると思っていたのに……。
あんな事知りたくなかった。
「何かあったのか?」
「イオ、わたし以外にあの場に誰かいた?」
「そのケースも考えて監視役に聞いたり痕跡を調べさせたのだが、誰かが出入りした形跡は無かった」
「あれは……夢だったのかな」
「何があった?」
「ううん、悪夢を見ただけ、大丈夫」
イオは少し心配そうな表情を見せたが、それ以上は何も聞いてこなかった。
「今日は少し休むといい」
「魔法の練習……したい」
「無理は体に毒だ」
「少しだけ。……お願い!」
「少しでも具合が悪くなったらやめるんだぞ?」
イオはため息をついて呟いた。
わたし達は昨日の中庭にいた。
「まずは自分の今あるだけの魔力を解放してみてくれ」
「どうやって……」
「集中して一点だけに魔力を寄せ集める感じだ。無駄なことは頭から排除して心を無にするんだ」
今考えていることを全部消し去って、魔力集中させて一点に寄せ集める。
「…………」
すると周りの空気が震え、沢山の音が聞こえてきた。
――風の音、草木が揺れる音。近くにある噴水の音……。
不思議と人の声は聞こえてこない。まるで大自然の中に一人立っているみたいに。
自然とひとつになってるみたいだ。
「……!! サリー!!!」
肩を掴まれた反動で我に返った。
目の前にはひどく焦っているイオ。
「俺の声、聞こえていなかったのか?」
「ごめんなさい、集中してたみたいで……」
「異常なほどの集中力、それに……昨日とは比べ物にならないほどの魔力」
一日でそんなに魔力は上がるの? それなら今日はもっと……
「やはり昨夜誰かと会ったのか?」
時々イオは痛いほど図星をついてくる。
そうだった。魔力は沢山魔力をもっている人の近くにいるだけで上がるんだった。
となるとやっぱりあの男と会ったのは夢じゃなかった?
どっちにしろこれ以上はイオを騙せない。きっとばれてしまうに違いない。
「実は、あの時の男がわたしを追って入ってきたみたいで……」
「ネビアルと名乗っていた男か。にしてもどうやって、何が目的でサリーを……」
「わたしには……ううん、何でもない」
わたしが負の感情を持っているなんて知られたらきっとここには居られなくなる。
「そんな短時間一緒に居ただけでこうも魔力が上がるとは……一体何者なんだ」
「そんなに魔力上がったの?」
「ああ、もう安易に魔法を操れるほどの魔力を持っているはずなのだが」
やっぱりわたしには暗黒魔法しか……そんなの信じたくない。
たとえそれ以外の魔法が使えなくても、わたしは暗黒魔法なんかに手を染めない。
――絶対に。
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