天使に紛れた悲哀の悪魔
第1章 偵察と影
暫く歩くと、裏庭のような所に着いた。
「まず、サリーはどんな魔法を使いたい?」
「どんな魔法……?」
「剣、弓、炎、氷、斧、回復魔法だけでなく無限と言っていいほどこの世には沢山の魔法がある。選べる代わりに一つ目の魔法を習得してしまったら、その派生の魔法しか使えなくなってしまう。だから慎重に選ばなくては……人生を決めるのと同じことなのだ」
「そうなんだ……因みにイオはどんな魔法を使うの?」
「俺は主に補助魔法を使う。俺の体は補助魔法向きみたいでな」
「補助魔法向き? 意外だわ……」
「魔法適正というものがあって、それぞれどの派生の魔法が得意か不得意か生まれつき決まっているんだ。だから、この魔法を使いたいと思っても体がついて行かなかったり、魔法を覚えられない事もある」
「わたし、どんな魔法を使えばいいんだろう」
「魔法を使えるようになったら、何がしたい? 何のために魔法を覚えたい? まずはそれを考えてみるんだ」
何のために魔法を?
あの使用人が教えてくれた、たくさんの魔法を使いたい。一つになんて絞れない。
「沢山の魔法が使いたいわ」
「それなら沢山の魔法と触れ合える魔法を選ぶといいさ。敵の能力をコピーする魔法、妖精や精霊を召喚して色んな属性を操る魔法。剣に色んな属性を付与して戦う魔法など、沢山ある」
「精霊……! それって、詠唱して召喚していろんな精霊に出会える魔法……?」
あの使用人が処刑される最後の日に話してくれた魔法。
今でもしっかり覚えている。
「ああ、契約できる精霊は百をも超えると言われている。沢山の魔法に触れ合うことができるさ」
「――使いたい……! 練習したい!」
「だが決して簡単な道ではないぞ、精霊と言えども心はある。君が精霊に認められる様な一人前にならなくては精霊は契約してくれまい」
「魔力を高める……?」
「あぁ、魔力を高める方法は沢山ある。ただ魔力が高い人間のそばにいるだけで少しずつ貯まっていく。瞑想をしたり、集中して魔法を使うイメージをする、それだけでもかなり魔力が高まるだろう」
「イオの隣にいれば魔力はあがる?」
「いや、俺は大して魔力は高くない。そうだな……」
イオが目を泳がせたその直後、
――大気を震わせるような爆発音が響く。
「キャーッ!」
「狂騎士よーー!」
狂騎士って何?
そう口にする前にイオは声がした方に走り出した。わたしも続いて走り出す。
噴水前にたくさんの人が群がっていた。
イオを見失わないように人混みを掻き分けると、そこには二人の男。
「何だ? その目付き、俺はここの領主だぞ? 逆らったらどうなるか分かってんのか?」
小太りでいかにも甘やかされて育ってきたような男と……
「……ほざけ」
黒髪に深紅の瞳、禍々しいオーラを放つ男。
「ほう、狂騎士では無さそうだな」
イオは興味深そうに見つめている彼の顔を見上げた。
――たった一瞬だった。
男達に目線を戻すと、そこには血を吐いて倒れた小太りの男。
時が止まっているようだった、昨夜わたしの目の前で死んだ三人の弓兵を見ているようだ。
イオもこの男も、時を止めているの?
深紅の瞳の男は何事も無かったかのように立ち去ろうとしていた。が、イオはそれを遮る。
「待て、男」
「……何だ貴様」
「一瞬で相手を斬り倒すとはお見事。一体何者だ?」
「貴様から名乗れ」
「――俺は通りすがりの者だ。名は、イオ・アルマロス」
「……ネビアル=ナベリウス。お前も殺されたいのか?」
「フッ、争いは好まない性分でね。なんせ攻撃魔法も使えなければナイフさえ持ってないのだ。ただ、一瞬で人を殺せる魔法があるのかと興味が出てしまった」
……よく言うわ。自分だって昨日一瞬のうちに三人も殺したじゃない。
イオの事だから何か探ろうとしてるに違いない。
――だが、男は口を閉じたまま。
「あまり俺と話す気になれない、って訳か。すまない、足止めしてしまって」
そう言い残してイオはその場を離れた。
「まず、サリーはどんな魔法を使いたい?」
「どんな魔法……?」
「剣、弓、炎、氷、斧、回復魔法だけでなく無限と言っていいほどこの世には沢山の魔法がある。選べる代わりに一つ目の魔法を習得してしまったら、その派生の魔法しか使えなくなってしまう。だから慎重に選ばなくては……人生を決めるのと同じことなのだ」
「そうなんだ……因みにイオはどんな魔法を使うの?」
「俺は主に補助魔法を使う。俺の体は補助魔法向きみたいでな」
「補助魔法向き? 意外だわ……」
「魔法適正というものがあって、それぞれどの派生の魔法が得意か不得意か生まれつき決まっているんだ。だから、この魔法を使いたいと思っても体がついて行かなかったり、魔法を覚えられない事もある」
「わたし、どんな魔法を使えばいいんだろう」
「魔法を使えるようになったら、何がしたい? 何のために魔法を覚えたい? まずはそれを考えてみるんだ」
何のために魔法を?
あの使用人が教えてくれた、たくさんの魔法を使いたい。一つになんて絞れない。
「沢山の魔法が使いたいわ」
「それなら沢山の魔法と触れ合える魔法を選ぶといいさ。敵の能力をコピーする魔法、妖精や精霊を召喚して色んな属性を操る魔法。剣に色んな属性を付与して戦う魔法など、沢山ある」
「精霊……! それって、詠唱して召喚していろんな精霊に出会える魔法……?」
あの使用人が処刑される最後の日に話してくれた魔法。
今でもしっかり覚えている。
「ああ、契約できる精霊は百をも超えると言われている。沢山の魔法に触れ合うことができるさ」
「――使いたい……! 練習したい!」
「だが決して簡単な道ではないぞ、精霊と言えども心はある。君が精霊に認められる様な一人前にならなくては精霊は契約してくれまい」
「魔力を高める……?」
「あぁ、魔力を高める方法は沢山ある。ただ魔力が高い人間のそばにいるだけで少しずつ貯まっていく。瞑想をしたり、集中して魔法を使うイメージをする、それだけでもかなり魔力が高まるだろう」
「イオの隣にいれば魔力はあがる?」
「いや、俺は大して魔力は高くない。そうだな……」
イオが目を泳がせたその直後、
――大気を震わせるような爆発音が響く。
「キャーッ!」
「狂騎士よーー!」
狂騎士って何?
そう口にする前にイオは声がした方に走り出した。わたしも続いて走り出す。
噴水前にたくさんの人が群がっていた。
イオを見失わないように人混みを掻き分けると、そこには二人の男。
「何だ? その目付き、俺はここの領主だぞ? 逆らったらどうなるか分かってんのか?」
小太りでいかにも甘やかされて育ってきたような男と……
「……ほざけ」
黒髪に深紅の瞳、禍々しいオーラを放つ男。
「ほう、狂騎士では無さそうだな」
イオは興味深そうに見つめている彼の顔を見上げた。
――たった一瞬だった。
男達に目線を戻すと、そこには血を吐いて倒れた小太りの男。
時が止まっているようだった、昨夜わたしの目の前で死んだ三人の弓兵を見ているようだ。
イオもこの男も、時を止めているの?
深紅の瞳の男は何事も無かったかのように立ち去ろうとしていた。が、イオはそれを遮る。
「待て、男」
「……何だ貴様」
「一瞬で相手を斬り倒すとはお見事。一体何者だ?」
「貴様から名乗れ」
「――俺は通りすがりの者だ。名は、イオ・アルマロス」
「……ネビアル=ナベリウス。お前も殺されたいのか?」
「フッ、争いは好まない性分でね。なんせ攻撃魔法も使えなければナイフさえ持ってないのだ。ただ、一瞬で人を殺せる魔法があるのかと興味が出てしまった」
……よく言うわ。自分だって昨日一瞬のうちに三人も殺したじゃない。
イオの事だから何か探ろうとしてるに違いない。
――だが、男は口を閉じたまま。
「あまり俺と話す気になれない、って訳か。すまない、足止めしてしまって」
そう言い残してイオはその場を離れた。
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