心装人機使いのあべこべ世界旅行
24.突然の報せ
戦闘を終えた途端、体から力が抜けていく。倒れないように力が抜け切る前に自分から座り込む。
「坊ちゃん、大丈夫ですか?」
そこに、レストと魔力中毒者を脇に抱えたクローリーが歩いてくる。
「ああ、ちょっと力が抜けてしまってな……どうせ周りは蛇の胴体に囲まれてるから休んじゃおうかと思って」
「なるほど、それでは私も隣に失礼させて頂きます」
そう言うと脇に抱えた二人を優しく下ろし、俺の隣に座ってきた。
「中々厳しい戦いでしたね」
「そうだな、正直クローリーもレストもいなかったら殺されてたと思う……ところで────」
「私の正体……ですか?」
やはり俺の考えは読まれやすいんだろうか……
「あれだけの力を持ってて、蛇の魔物に齧り付く人間は見たことないからな」
「ふふっ……それを言うなら、心装人機を纏いながらあれだけの力を使い、挙句の果てには蛇の頭を貫くほどの氷槍を発動する人の方が見ないと思いますけどね」
この世界的には俺の方がおかしいのだろうか……
「た……確かに俺には話していないことがある。だけど、隠すほどの事じゃないからレストが起きた後に教えるよ」
「ふむ……私は自分のことについてまだ話すわけにはいきませんが、二つだけ言えることがあります」
二つ……か。できればこのまま仲間としてやっていきたいから、悪い事じゃなければいいんだけど。
「一つ目は私が坊ちゃんたちに助けて欲しいことがあったからです」
早速俺の心配はなくなったな。
俺を頼ってきていたなんて予想外だ……クローリー一人でも大体の事は出来てしまうだろうからな。
「この内容に関しては後から話します。そして二つ目は、坊ちゃんの持つその棍棒……それの行く末を見届けたいのです」
俺の……棍棒ッッッ!?
なんだこいつ、いきなり下ネタ入れてきやがってどういうつもりだ?!
「坊ちゃん……思考が腐っておいでですね」
「なんだとぉぉ!! いきなり俺の棍棒を見届けたいとか言ってきたのはお前だろうが!」
そう言い返すと、クローリーは「やれやれ」とでも言いたげな顔をして、俺を地面に押し倒してきた。。
突然のことに反応が遅れ、手足が動かせない状態にされてしまう。
「私が本気を出せば、坊ちゃんの体についている貧相な小枝など……すぐにイく末を見届けることができるんですよ」
そう言うと、耳を優しく舐りながら服の間から手を入れ、体のあちこちを触れるか触れないかくらいの力で撫で回してくる。
「うおっ!! ちょ……待てって! わかった、分かったから! 離してくれぇぇ!!」
「ふふっ、分かってもらえたのなら別に構いませんが……それと、先ほどの小枝という発言は失礼致しました」
そう言うと体を離していく。
まあ、小枝に関しては結構傷ついたがそれをわざわざ謝られるのもな……
「坊ちゃんのは小枝などではなく大樹の「ちょっと待てぇぇぇい!!」」
もういいから!! これ以上俺を辱めないで……レストが聞いてなくて本当によかったよ。
「さて、棍棒の話でしたね。坊ちゃんの持ってるソレは呪具系統のものかと思います」
ソレと言いながら指を指したのは、俺の背中に背負われている武器の方の棍棒だった。
言われてみれば、普通はこっちの方だよな……
これを貸してくれたお婆さんも呪具の分類って言ってたと思うし間違いないだろう。
「呪具は持ち主の魔力を使い、姿形を変形させ続けていきます。そして、最後の変形を見届けたものは幸せになったと記されております……しかし、これの具体的な内容がどの書物にも記されておらずずっと気になっていたのです。そしてつい先日呪具を持ち歩く────」
変形させ続けるものが「最後の変形」ってことは、持ち主が手放した時とかの事だろう。
……死んだとかじゃないよな? いつでも手放せるし。
「────ということなので…………坊ちゃん聞いていましたか?」
「お、おう! 聞いてた聞いてた。要はコイツの成長を止めた時に周りに何が起こるのかが知りたいってことだろ」
「……まあ、聞いてたということにしましょうか。要点は捉えてますし」
どうやら聞いてなかった所はどうでもいい事だったらしい。
「坊ちゃん……今までの話とは関係なく一つだけ聞かせて下さい」
「なんだよ?」
「人間と他種族が手を取り合うことは、出来ると思いますか?」
うわぁぁ……これ絶対重要な質問だよぉ。
アニメとかゲームとかやってて、この質問が出る度に思うんだけど、他種族だろうとなんだろうと仲良くすることはできるとは思ってるんだよな……
前提として、他の種族が餌にならないことが必須だと思うんだけどね。
「他種族の中に人間を食う種族はあるのか?」
「学がないことはこの短い間に理解しておりましたが……学がないのではなく、常識がなかったのですね」
コイツは心の中で俺を馬鹿にしていたようだ。だが、本当のことだから怒るに怒れない。
「まあ、そこら辺に関しては後でレストも交えて話をしよう」
「なるほど、常識がないのには理由があるようですね」
分かってもらえたようで何よりだ。
「それで、人を食べる種族ですか……ふむぅ、肉体を食べるような種族は存在しなかったはずですが、魔力を食料としている種族はいますね」
魔力……どうせサキュバスとかインキュバスだろ。
どうせ異世界に来たんなら一度は会ってみたいよな……ムチムチボディ、堪能してみたいな。
「……? その顔から察するに、坊ちゃんは色魔族をご存知なのですか?」
「あ、ああ……女がムチムチだってくらいしか知らないけどな」
「坊ちゃん、本当にご存知なのですか? ムチムチの基準がわからないですが、おそらくその言葉では足りないんじゃないかと思うのですが……」
……ッッ??!! あぁ……そうか、この世界は基準が違うのか……この世界基準でサキュバスとなると……いや、考えるのはやめておこう。
「ただ、色魔族の女性はほぼ全滅したということも皆知っていることです。書物には何人かの生き残りがいる可能性も記されていましたが……あくまで可能性の話です」
「そ……そうなのか。それは残念だ……」
「坊ちゃんは……もしサキュバスが魔力をくれと訪ねてきたらどうしますか?」
魔力の供給……か。
戦う前に魔力中毒者に供給した方法でいいんならいくらでもやるけど。
「方法とかその時の状況にもよるけど、多分あげるんじゃないかな」
俺の発言に、出会ってから初めてクローリーの顔が驚愕のものへと変わっていた。
そんなに意外だったのだろうか。
「やはり坊ちゃんは変わってらっしゃいますね」
「やっぱりそうなのかな」
「でも、だからこそついてきて良かったです」
そう言ったクローリーは笑っていた。
(なんだよ、普通普通って言ってたけどそんな顔も出来るんじゃないかよ)
そんな心から笑っているクローリーは、とても美しく見えた。
「それじゃあ、休憩も終わったのでそろそろ行きましょうか」
「あ、あれ? クローリーの目的については話してくれないの?」
「ふふっ、レスト様も起きてしまう頃ですし、何より誰かが近づいてきてますから」
全方位蛇の体に囲まれているのにどうやって把握しているのだろうか。
とりあえず、誰かが来たなら獲物を取られないように、収納空間に入れておいた方が良さそうだな。
「クローリーは二人を頼む、俺は蛇を片づける」
「承知致しました」
とりあえず収納空間を開いて、ゴブリンと同じく魔法で頭から突っ込んでいこうかな。
「リリース!」
額にどでかい穴を空けた蛇がスルスルと収納空間に入っていくのを見ると、巣穴に帰っているようにも見えるから少し怖い。
もうこいつみたいなのとは戦いたくないからな……
「坊ちゃん、準備が出来ました。どうなさいますか?」
「とりあえず、向かってきている人と合流して敵か味方か判断してから依頼の物を調達しに行こう」
こちらに近づく者が誰なのかはわからないが、敵ではないことを祈りたい。
しばらく蛇が空間に入っていくのを見守り続けていると、こちらに手を振りながら走ってくる男性が見えてくる。
「あれは……確か組合の」
「ああっ!! いたいた。良かったぁ、やっと見つけたわ……ってエェェェ!!!! い……今のってここら辺に出てた蛇ィ?!」
空間にしまうところをぎりぎり見られてしまったらしい。
クオンにはあまり人前でやらない方がいいって言われてたんだけどな。
「一応そうです、それよりどうしてここへ?」
「ああッ!! そうだったわ、あなた達の中に『イレーンの街』に知り合いとか家族がいる人はいないかしら」
イレーンの街? なんか聞き覚えが……ああっ!! クオンと一緒に入った街だ。何かあったんだろうか?
「俺の大切な人がそこにいます」
「だとしたら……とても辛い報告になるかもしれないわ……」
かなり深刻そうな顔をしていることからも、事がどれだけ大きいかが分かる。
「落ち着いて聞いてね……さっき来た報告では、二日前にイレーンの街は滅んだわ。生き残りもかなり少ないらしくて……街人の八割は……死んだことが確認されているわ」
はっ? いやっ……何を言ってるんだ。そんな冗談言うためにここまで走ってきたのかよ……ご苦労さまだな。
「滅ぼしたのは……たった一人の負魂機です。現在どこに向かっているのかは分からないけど、方角的には私達の街に向かっているらしいわ」
待て待て待てッ!! そんなことは聞いていない……質の悪い冗談とかじゃないのかよ……
だってあの街にはクオンがいたんだぞ……ヘレナも、エイトもサーシャさんも、武器を貸してくれたお婆さんだって……
「今街の組合に戦える人を集めているの、だから今の依頼は後にして集合して「……ですか」えっ、何か言った?」
「冗談じゃ……ないんですか?」
「坊ちゃん……?」
「こんな状況で嘘なんか言ってられるわけな「お前の喋り方のせいで冗談にしか聞こえないんだよ!!」」
八つ当たりだ。
「デブはキレイで、美人は不細工? ハハハッ!! 何言ってんだッ!!」
この世界に対する。
「レストォ? 男の癖にあざとい妹みたいなことしてんじゃねぇよッッ!!」
一つうまくいかないだけでコレだ。
「クロォリィ……テメェが何隠してるか知らねぇけど、近寄んじゃねぇよ!! いつ裏切られるか分かったもんじゃない……」
何も変わってない。
「坊ちゃん、私は「ウルセェッッッ!!」」
変わってないカわってないカワッテナイ
前世と何も変わってない
また、嫌なことからニゲルンダ
でも、その前に……ヤることがある
気づけば走ってた。
街の方角もわからないくせに、ただ何かを感じる方に、ただ何かを訴えかけてくる方に。
前かもわからない方に前へ……前へ。
「坊ちゃん、大丈夫ですか?」
そこに、レストと魔力中毒者を脇に抱えたクローリーが歩いてくる。
「ああ、ちょっと力が抜けてしまってな……どうせ周りは蛇の胴体に囲まれてるから休んじゃおうかと思って」
「なるほど、それでは私も隣に失礼させて頂きます」
そう言うと脇に抱えた二人を優しく下ろし、俺の隣に座ってきた。
「中々厳しい戦いでしたね」
「そうだな、正直クローリーもレストもいなかったら殺されてたと思う……ところで────」
「私の正体……ですか?」
やはり俺の考えは読まれやすいんだろうか……
「あれだけの力を持ってて、蛇の魔物に齧り付く人間は見たことないからな」
「ふふっ……それを言うなら、心装人機を纏いながらあれだけの力を使い、挙句の果てには蛇の頭を貫くほどの氷槍を発動する人の方が見ないと思いますけどね」
この世界的には俺の方がおかしいのだろうか……
「た……確かに俺には話していないことがある。だけど、隠すほどの事じゃないからレストが起きた後に教えるよ」
「ふむ……私は自分のことについてまだ話すわけにはいきませんが、二つだけ言えることがあります」
二つ……か。できればこのまま仲間としてやっていきたいから、悪い事じゃなければいいんだけど。
「一つ目は私が坊ちゃんたちに助けて欲しいことがあったからです」
早速俺の心配はなくなったな。
俺を頼ってきていたなんて予想外だ……クローリー一人でも大体の事は出来てしまうだろうからな。
「この内容に関しては後から話します。そして二つ目は、坊ちゃんの持つその棍棒……それの行く末を見届けたいのです」
俺の……棍棒ッッッ!?
なんだこいつ、いきなり下ネタ入れてきやがってどういうつもりだ?!
「坊ちゃん……思考が腐っておいでですね」
「なんだとぉぉ!! いきなり俺の棍棒を見届けたいとか言ってきたのはお前だろうが!」
そう言い返すと、クローリーは「やれやれ」とでも言いたげな顔をして、俺を地面に押し倒してきた。。
突然のことに反応が遅れ、手足が動かせない状態にされてしまう。
「私が本気を出せば、坊ちゃんの体についている貧相な小枝など……すぐにイく末を見届けることができるんですよ」
そう言うと、耳を優しく舐りながら服の間から手を入れ、体のあちこちを触れるか触れないかくらいの力で撫で回してくる。
「うおっ!! ちょ……待てって! わかった、分かったから! 離してくれぇぇ!!」
「ふふっ、分かってもらえたのなら別に構いませんが……それと、先ほどの小枝という発言は失礼致しました」
そう言うと体を離していく。
まあ、小枝に関しては結構傷ついたがそれをわざわざ謝られるのもな……
「坊ちゃんのは小枝などではなく大樹の「ちょっと待てぇぇぇい!!」」
もういいから!! これ以上俺を辱めないで……レストが聞いてなくて本当によかったよ。
「さて、棍棒の話でしたね。坊ちゃんの持ってるソレは呪具系統のものかと思います」
ソレと言いながら指を指したのは、俺の背中に背負われている武器の方の棍棒だった。
言われてみれば、普通はこっちの方だよな……
これを貸してくれたお婆さんも呪具の分類って言ってたと思うし間違いないだろう。
「呪具は持ち主の魔力を使い、姿形を変形させ続けていきます。そして、最後の変形を見届けたものは幸せになったと記されております……しかし、これの具体的な内容がどの書物にも記されておらずずっと気になっていたのです。そしてつい先日呪具を持ち歩く────」
変形させ続けるものが「最後の変形」ってことは、持ち主が手放した時とかの事だろう。
……死んだとかじゃないよな? いつでも手放せるし。
「────ということなので…………坊ちゃん聞いていましたか?」
「お、おう! 聞いてた聞いてた。要はコイツの成長を止めた時に周りに何が起こるのかが知りたいってことだろ」
「……まあ、聞いてたということにしましょうか。要点は捉えてますし」
どうやら聞いてなかった所はどうでもいい事だったらしい。
「坊ちゃん……今までの話とは関係なく一つだけ聞かせて下さい」
「なんだよ?」
「人間と他種族が手を取り合うことは、出来ると思いますか?」
うわぁぁ……これ絶対重要な質問だよぉ。
アニメとかゲームとかやってて、この質問が出る度に思うんだけど、他種族だろうとなんだろうと仲良くすることはできるとは思ってるんだよな……
前提として、他の種族が餌にならないことが必須だと思うんだけどね。
「他種族の中に人間を食う種族はあるのか?」
「学がないことはこの短い間に理解しておりましたが……学がないのではなく、常識がなかったのですね」
コイツは心の中で俺を馬鹿にしていたようだ。だが、本当のことだから怒るに怒れない。
「まあ、そこら辺に関しては後でレストも交えて話をしよう」
「なるほど、常識がないのには理由があるようですね」
分かってもらえたようで何よりだ。
「それで、人を食べる種族ですか……ふむぅ、肉体を食べるような種族は存在しなかったはずですが、魔力を食料としている種族はいますね」
魔力……どうせサキュバスとかインキュバスだろ。
どうせ異世界に来たんなら一度は会ってみたいよな……ムチムチボディ、堪能してみたいな。
「……? その顔から察するに、坊ちゃんは色魔族をご存知なのですか?」
「あ、ああ……女がムチムチだってくらいしか知らないけどな」
「坊ちゃん、本当にご存知なのですか? ムチムチの基準がわからないですが、おそらくその言葉では足りないんじゃないかと思うのですが……」
……ッッ??!! あぁ……そうか、この世界は基準が違うのか……この世界基準でサキュバスとなると……いや、考えるのはやめておこう。
「ただ、色魔族の女性はほぼ全滅したということも皆知っていることです。書物には何人かの生き残りがいる可能性も記されていましたが……あくまで可能性の話です」
「そ……そうなのか。それは残念だ……」
「坊ちゃんは……もしサキュバスが魔力をくれと訪ねてきたらどうしますか?」
魔力の供給……か。
戦う前に魔力中毒者に供給した方法でいいんならいくらでもやるけど。
「方法とかその時の状況にもよるけど、多分あげるんじゃないかな」
俺の発言に、出会ってから初めてクローリーの顔が驚愕のものへと変わっていた。
そんなに意外だったのだろうか。
「やはり坊ちゃんは変わってらっしゃいますね」
「やっぱりそうなのかな」
「でも、だからこそついてきて良かったです」
そう言ったクローリーは笑っていた。
(なんだよ、普通普通って言ってたけどそんな顔も出来るんじゃないかよ)
そんな心から笑っているクローリーは、とても美しく見えた。
「それじゃあ、休憩も終わったのでそろそろ行きましょうか」
「あ、あれ? クローリーの目的については話してくれないの?」
「ふふっ、レスト様も起きてしまう頃ですし、何より誰かが近づいてきてますから」
全方位蛇の体に囲まれているのにどうやって把握しているのだろうか。
とりあえず、誰かが来たなら獲物を取られないように、収納空間に入れておいた方が良さそうだな。
「クローリーは二人を頼む、俺は蛇を片づける」
「承知致しました」
とりあえず収納空間を開いて、ゴブリンと同じく魔法で頭から突っ込んでいこうかな。
「リリース!」
額にどでかい穴を空けた蛇がスルスルと収納空間に入っていくのを見ると、巣穴に帰っているようにも見えるから少し怖い。
もうこいつみたいなのとは戦いたくないからな……
「坊ちゃん、準備が出来ました。どうなさいますか?」
「とりあえず、向かってきている人と合流して敵か味方か判断してから依頼の物を調達しに行こう」
こちらに近づく者が誰なのかはわからないが、敵ではないことを祈りたい。
しばらく蛇が空間に入っていくのを見守り続けていると、こちらに手を振りながら走ってくる男性が見えてくる。
「あれは……確か組合の」
「ああっ!! いたいた。良かったぁ、やっと見つけたわ……ってエェェェ!!!! い……今のってここら辺に出てた蛇ィ?!」
空間にしまうところをぎりぎり見られてしまったらしい。
クオンにはあまり人前でやらない方がいいって言われてたんだけどな。
「一応そうです、それよりどうしてここへ?」
「ああッ!! そうだったわ、あなた達の中に『イレーンの街』に知り合いとか家族がいる人はいないかしら」
イレーンの街? なんか聞き覚えが……ああっ!! クオンと一緒に入った街だ。何かあったんだろうか?
「俺の大切な人がそこにいます」
「だとしたら……とても辛い報告になるかもしれないわ……」
かなり深刻そうな顔をしていることからも、事がどれだけ大きいかが分かる。
「落ち着いて聞いてね……さっき来た報告では、二日前にイレーンの街は滅んだわ。生き残りもかなり少ないらしくて……街人の八割は……死んだことが確認されているわ」
はっ? いやっ……何を言ってるんだ。そんな冗談言うためにここまで走ってきたのかよ……ご苦労さまだな。
「滅ぼしたのは……たった一人の負魂機です。現在どこに向かっているのかは分からないけど、方角的には私達の街に向かっているらしいわ」
待て待て待てッ!! そんなことは聞いていない……質の悪い冗談とかじゃないのかよ……
だってあの街にはクオンがいたんだぞ……ヘレナも、エイトもサーシャさんも、武器を貸してくれたお婆さんだって……
「今街の組合に戦える人を集めているの、だから今の依頼は後にして集合して「……ですか」えっ、何か言った?」
「冗談じゃ……ないんですか?」
「坊ちゃん……?」
「こんな状況で嘘なんか言ってられるわけな「お前の喋り方のせいで冗談にしか聞こえないんだよ!!」」
八つ当たりだ。
「デブはキレイで、美人は不細工? ハハハッ!! 何言ってんだッ!!」
この世界に対する。
「レストォ? 男の癖にあざとい妹みたいなことしてんじゃねぇよッッ!!」
一つうまくいかないだけでコレだ。
「クロォリィ……テメェが何隠してるか知らねぇけど、近寄んじゃねぇよ!! いつ裏切られるか分かったもんじゃない……」
何も変わってない。
「坊ちゃん、私は「ウルセェッッッ!!」」
変わってないカわってないカワッテナイ
前世と何も変わってない
また、嫌なことからニゲルンダ
でも、その前に……ヤることがある
気づけば走ってた。
街の方角もわからないくせに、ただ何かを感じる方に、ただ何かを訴えかけてくる方に。
前かもわからない方に前へ……前へ。
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