心装人機使いのあべこべ世界旅行
21.依頼
魔物の爪や皮などは、売ることもできれば素材として加工屋に持っていき、普通よりも安く装備品を購入することも出来るらしい。
現在俺とレストは、加工屋に来ている。
レストの装備品をしっかりさせるために、どれくらいの資金が必要なのかを聞きに行くためだ。
「すいませーん、素材持ち込みでの防具の値段を聞きたいんですけど〜」
「はいよッ! 兄ちゃんとちびっ子二人分かい?」
「いやっ、レストの分だけでお願いします」
そう言いながらレストの頭をぽんぽんと撫でる。
ちびっ子と言われてムスっとしていた顔がニコニコスマイルに大変身だ。
「んっ、分かった。それで素材はどこだい?」
「ああっ、この袋に詰まっているのを好きに使って下さい」
収納空間内の素材にできそうなもの、その全てを袋に詰めておいたものを渡す。
店員が袋を開けて中を見ていると、目が輝き始めた。
「おいっ兄ちゃん!! 本当にこれ使ってもいいのか!?」
「えっ? ああ、はいどうぞっ」
逆に使ってもらわないとお金が足りなすぎて買えないのだ。
一般的に売り物に出されている物は大銀貨50枚ほどらしい。
現在の所持金である銀貨二枚と大銅貨四枚では、逆立ちしても手が届かないのだ。
ラティスに教えてもらったこの世界でのお金の仕組みでは。
銅貨十枚で大銅貨、大銅貨十枚で銀貨……という具合に、十枚ごとにランクが上がる仕組みのようだ。
銅、銀、金、白金。それぞれに「大」もつくから、合計八種類の硬貨があるようだ。
「こいつはスゲェ! 魔界産の素材なんか久しぶりに見たぜッ! 親方も喜ぶなぁ!」
どうやら魔界にいる魔物の素材は喜ばれるようだ。
アレクターの出力が高すぎるせいで、使い物にならなくなったやつも持ってきておけばよかっただろうか……
「それで、値段はどれ位になりそうですか?」
「そうだなぁ。これだけの素材を持ってきてくれたんだから大分サービスして大銀貨十枚ッ! 素材を余分に貰えるならタダにしても構わないぜ!」
「タダにしてもらえるなら、余分に渡す方にします」
組合に持っていけばそれなりの金にはなるかもしれないが、結局防具を買うなら素材持ち込みで作った方が安心感は上がるだろう。
「おぉ! 話が早くて助かるぜ兄ちゃん。最近狩場の周辺に馬鹿でかい蛇が住みついて、素材が全然来なくなっちまってよ────」
そこからはグダグタと長い愚痴を聞かされ続け、レストの目がトロトロと眠そうになってきた頃。
「オイッッ!! 何グダグダ喋ってやがんだ! 依頼が来たならさっさと素材をよこせッ!」
店員の後ろにある通路から、顔中煤だらけの背の低い女の子が出てきた。
「ヒイィィッ! お、親方ァ! すいません、すぐに持っていきますので怒らないでくださいぃぃ!」
「こっちまで来ちまったんだから俺が持ってく! この袋の中のヤツでいいのかッ!」
「そ、そうですッ! それで、そこにいるちびっ子の防具を作って欲しいそうですッ!」
(凄くうるさい……ていうか、どさくさに紛れてまたレストのこと、ちびって言ったなぁ)
眠そうにしていたレストを見てみると、やはりちびの発言は嫌だったのか、目をしっかり開けて睨めつけていた。
ガッッッ!!!!
煤だらけの女の子が、店員の太ももより少し上の辺りを思いっきり殴っていた。
店員はそのまま崩れ落ちてしまったが、しっかりと意識はあるようだ。
「今ッ……チビって言ったか……?」
「ち……ちが、あっちの……あっちの子供に言ったんですぅ……決して親方のことをチビだなんて言って……言って……ヒィィィッ!!」
────────
その後、何があったのかは語らないが、レストの表情が、スッキリを通り越して心配そうにしていたということだけは言っておこう。
「ふぅぅ……スッキリしたぁ。それで、その子の防具だっけ? なにか要望はあるか?」
「えぇっと……動きやすさを重点において、矢とかから身を守れるような作りにしてほしいんですけど……できそうですか?」
「素材にもよるが、それくらいなら楽勝だな! 袋の中見てもいいか?」
「どうぞどうぞっ」
先ほどの光景を見たからなのか、自然と腰が引けていく。
レストも俺の手をかなり強く握っていた。
「なんだこの素材ィィッ!」
「「ヒィィィィッ!!」」
親方が突然叫びだしたので、ついついさっきの店員のような声をレストと一緒にあげてしまう。
「こんなの持ってきてるんなら、そんなショボイ注文してんじゃ……ねぇぇぇッッッ!!!!」
めっちゃキレてるじゃん!! ヤベェよ親方ァ……この世界の親方、皆こんなんだったら次から普通のお店に買いに行くわ!
「ふぅ……ふぅ……すまん、最近物が作れなくてイライラしていたんだ」
さっきの「素材が取りに行けない」話のことか。
もし、防具ができるのに時間がかかるようだったら見に行ってみてもいいかもしれない。
「んじゃあ、この素材で作らせてもらうけど、構わないんだな?」
「はいっお願いします! それで、どのくらい時間がかかりますか?」
「んん……今は注文も何も無いし、一日で仕上げてみせる!」
「分かりました、それじゃあお願いします!」
「お願いしまぁす!」
レストと一緒に挨拶をして、店から出る。
素材を入れた袋ごと置いてきてしまったが、まあタダにしてくれるんだし別にいいか。
とりあえず、大蛇を見てみたいので組合で情報を仕入れようと思う。
「レスト、組合の場所ってわかるか?」
「んーとね、大丈夫! ついてきて〜」
いつも通り手を繋いだまま、大通りを歩いていく。
舞踏会が終わってからも街の活気はそこまで変化しておらず、変わったことといえば出店が無くなったことくらいだ。
……野菜串、もう少し買っておけば良かったかなぁ。
────────
人混みの中を進んでいくと、西部劇で見たことがあるような酒場で足を止めた。
「ここだよ、お兄ちゃん」
「ありがとうレスト。んじゃ、入ろうか」
中がスケスケな扉を開き、カウンターにいた人族の男性に話しかける。
「こんにちは、依頼を確認したいんですけど今大丈夫ですか?」
「あらっ、男が来るなんて珍しい。少し待っててね」
そういうと、カウンターを出て掲示板を漁りに行ってしまった。
しばらくレストと戯れていると、男性が戻ってきてドサァっと紙の束をカウンターの上に置いた。
「今狩場に大蛇が出てるから、素材採取系の依頼がこんなに溜まっちゃって……もし、大蛇から隠れながら魔物を狩れるなら、できるだけ受けてほしいの」
「皆で協力して大蛇を倒すのは駄目なんですか?」
そう聞くと男性が顔を寄せてきたので、こちらも耳を寄せる。
「ここの連中は四、五人でしか組まないし、それ以上で組んだら間違いなく喧嘩をするわ……血の気が多い単細胞しかいないのよ。だから、無理……」
なるほどなぁ。
男性の顔に疲れが浮き出てしまっているところを見ると、相当なストレスを抱えてそうだ。
「分かりました! それなら大蛇周辺の狩場で魔物を狩ってきます。依頼書はどれですか?」
「ホントに? 助かるわぁ。そこら辺の女達とは大違いよぉ! それじゃあ、あなたの実力がまだちゃんとは分からないから、とりあえずコレとコレ、あとこれもお願いするわぁ」
まるで俺の言葉を待っていたかのように、スムーズに三枚の依頼書を出された。
これはうまく乗せられたかな……まあ、男性が困っていることは本当のようだったので、別にかまわないのだが。
「それじゃあ、組合証を貸して…………はいっこれでいつでも依頼が見れるわっ! 頑張ってねっ」
「キラッ」とかの効果音でも付きそうなほどウィンクを飛ばしてきたが、もちろん俺には吐き気の効果しか出てこない。
レストをナデナデして気分を紛らわせよう。
「わわっ、どうしたのお兄ちゃん!」
「ごめん、少しだけこうさせて……」
「わたしは気持ちいいから別にいいけど、辛くなったら言ってね?」
やっぱ、レストは天使だなぁ。
ナデナデしながら、組合内のテーブルにつき、組合証を確認する。
……依頼書ってどうやって見るんだろうか。
魔力型の組合証とは聞いていたので、魔力を注いで見るが、ただ単に俺の情報が出てくるだけだ。
《ラティス、依頼の見方わかるか?》
《ゴメ〜ン、アタシも知らないんだよねぇ。やり方知りたいから、分かったら教えてね》
なんということだ……物知りラティスさんでも答えられないとは、恐るべし組合証……
「なにかお困りですかな、お坊ちゃん」
なにか、なにか手がかりでもあれば……
「おやっ、声が聞こえていないのですかな? おーい、坊ちゃん?」
「お兄ちゃんっ、話しかけられてるよ?」
「へっ?」
後ろを振り返ると、執事のような服を着た女性(人族)が立っていた。
髪は黒に近い赤で、胸はない、太っているとも痩せているとも取れない体型に、「中の中」の顔……ザ・普通と心の中で叫びたくなるが我慢する。
「あ、あぁ。坊ちゃんって俺のことですか?」
「えぇ、そうです。なにかお困りのようでしたので、お声をかけさせていただきました」
普通にただのいい人だったようだ。
ここまで普通を取り揃えている人もなかなかいないと思うんだけどな……
「ありがとうございます。組合証で登録した依頼を見たい時ってどうすればいいのかなって考えてたんです」
「なるほど、それなら組合証の裏を見ればわかると思いますよ」
言われた通り裏を見ると、「依頼書」と書かれた部分があった。
触れると、俺の情報が書かれていた部分に依頼と思わしき文章と、イラストが表示された。
……裏にメニューつけないだろ、普通。
「あの、教えてくれてありがとうございます」
「いえいえ、これくらいはどうってことありません。ところで依頼をこなすのなら、これから狩りへ行かれるのですかな?」
「そうですね、依頼を確認してから行こうと思ってました。レストとの連携とかも確認しておかないといけませんでしたからね」
そう、今回の目的は資金集め、大蛇偵察、防具出来るまでの暇つぶしなど色々あるが、一番は戦闘での連携の確認だ。
旅をしていれば戦闘は避けられない……その時連携して戦えませんでは話にならないのだ。
なので今のうちに戦闘の空気をレストに覚えさせつつ、俺自身も連携を意識しながら冷静に戦うことをしておこうと考えたわけだ。
「もし良ければ私も同行させてもらえないでしょうか?」
「んー、いや……俺達は明日から長旅に出るから、短期の仲間は組まないことにしてるんだ」
短期で組んだってどうせ報酬とかで揉めるし、面倒事が増えるだけだからな。
「なら、私もその旅……ご一緒してもいいでしょうか?」
……クオンと会った時、なんて言おうかな。
現在俺とレストは、加工屋に来ている。
レストの装備品をしっかりさせるために、どれくらいの資金が必要なのかを聞きに行くためだ。
「すいませーん、素材持ち込みでの防具の値段を聞きたいんですけど〜」
「はいよッ! 兄ちゃんとちびっ子二人分かい?」
「いやっ、レストの分だけでお願いします」
そう言いながらレストの頭をぽんぽんと撫でる。
ちびっ子と言われてムスっとしていた顔がニコニコスマイルに大変身だ。
「んっ、分かった。それで素材はどこだい?」
「ああっ、この袋に詰まっているのを好きに使って下さい」
収納空間内の素材にできそうなもの、その全てを袋に詰めておいたものを渡す。
店員が袋を開けて中を見ていると、目が輝き始めた。
「おいっ兄ちゃん!! 本当にこれ使ってもいいのか!?」
「えっ? ああ、はいどうぞっ」
逆に使ってもらわないとお金が足りなすぎて買えないのだ。
一般的に売り物に出されている物は大銀貨50枚ほどらしい。
現在の所持金である銀貨二枚と大銅貨四枚では、逆立ちしても手が届かないのだ。
ラティスに教えてもらったこの世界でのお金の仕組みでは。
銅貨十枚で大銅貨、大銅貨十枚で銀貨……という具合に、十枚ごとにランクが上がる仕組みのようだ。
銅、銀、金、白金。それぞれに「大」もつくから、合計八種類の硬貨があるようだ。
「こいつはスゲェ! 魔界産の素材なんか久しぶりに見たぜッ! 親方も喜ぶなぁ!」
どうやら魔界にいる魔物の素材は喜ばれるようだ。
アレクターの出力が高すぎるせいで、使い物にならなくなったやつも持ってきておけばよかっただろうか……
「それで、値段はどれ位になりそうですか?」
「そうだなぁ。これだけの素材を持ってきてくれたんだから大分サービスして大銀貨十枚ッ! 素材を余分に貰えるならタダにしても構わないぜ!」
「タダにしてもらえるなら、余分に渡す方にします」
組合に持っていけばそれなりの金にはなるかもしれないが、結局防具を買うなら素材持ち込みで作った方が安心感は上がるだろう。
「おぉ! 話が早くて助かるぜ兄ちゃん。最近狩場の周辺に馬鹿でかい蛇が住みついて、素材が全然来なくなっちまってよ────」
そこからはグダグタと長い愚痴を聞かされ続け、レストの目がトロトロと眠そうになってきた頃。
「オイッッ!! 何グダグダ喋ってやがんだ! 依頼が来たならさっさと素材をよこせッ!」
店員の後ろにある通路から、顔中煤だらけの背の低い女の子が出てきた。
「ヒイィィッ! お、親方ァ! すいません、すぐに持っていきますので怒らないでくださいぃぃ!」
「こっちまで来ちまったんだから俺が持ってく! この袋の中のヤツでいいのかッ!」
「そ、そうですッ! それで、そこにいるちびっ子の防具を作って欲しいそうですッ!」
(凄くうるさい……ていうか、どさくさに紛れてまたレストのこと、ちびって言ったなぁ)
眠そうにしていたレストを見てみると、やはりちびの発言は嫌だったのか、目をしっかり開けて睨めつけていた。
ガッッッ!!!!
煤だらけの女の子が、店員の太ももより少し上の辺りを思いっきり殴っていた。
店員はそのまま崩れ落ちてしまったが、しっかりと意識はあるようだ。
「今ッ……チビって言ったか……?」
「ち……ちが、あっちの……あっちの子供に言ったんですぅ……決して親方のことをチビだなんて言って……言って……ヒィィィッ!!」
────────
その後、何があったのかは語らないが、レストの表情が、スッキリを通り越して心配そうにしていたということだけは言っておこう。
「ふぅぅ……スッキリしたぁ。それで、その子の防具だっけ? なにか要望はあるか?」
「えぇっと……動きやすさを重点において、矢とかから身を守れるような作りにしてほしいんですけど……できそうですか?」
「素材にもよるが、それくらいなら楽勝だな! 袋の中見てもいいか?」
「どうぞどうぞっ」
先ほどの光景を見たからなのか、自然と腰が引けていく。
レストも俺の手をかなり強く握っていた。
「なんだこの素材ィィッ!」
「「ヒィィィィッ!!」」
親方が突然叫びだしたので、ついついさっきの店員のような声をレストと一緒にあげてしまう。
「こんなの持ってきてるんなら、そんなショボイ注文してんじゃ……ねぇぇぇッッッ!!!!」
めっちゃキレてるじゃん!! ヤベェよ親方ァ……この世界の親方、皆こんなんだったら次から普通のお店に買いに行くわ!
「ふぅ……ふぅ……すまん、最近物が作れなくてイライラしていたんだ」
さっきの「素材が取りに行けない」話のことか。
もし、防具ができるのに時間がかかるようだったら見に行ってみてもいいかもしれない。
「んじゃあ、この素材で作らせてもらうけど、構わないんだな?」
「はいっお願いします! それで、どのくらい時間がかかりますか?」
「んん……今は注文も何も無いし、一日で仕上げてみせる!」
「分かりました、それじゃあお願いします!」
「お願いしまぁす!」
レストと一緒に挨拶をして、店から出る。
素材を入れた袋ごと置いてきてしまったが、まあタダにしてくれるんだし別にいいか。
とりあえず、大蛇を見てみたいので組合で情報を仕入れようと思う。
「レスト、組合の場所ってわかるか?」
「んーとね、大丈夫! ついてきて〜」
いつも通り手を繋いだまま、大通りを歩いていく。
舞踏会が終わってからも街の活気はそこまで変化しておらず、変わったことといえば出店が無くなったことくらいだ。
……野菜串、もう少し買っておけば良かったかなぁ。
────────
人混みの中を進んでいくと、西部劇で見たことがあるような酒場で足を止めた。
「ここだよ、お兄ちゃん」
「ありがとうレスト。んじゃ、入ろうか」
中がスケスケな扉を開き、カウンターにいた人族の男性に話しかける。
「こんにちは、依頼を確認したいんですけど今大丈夫ですか?」
「あらっ、男が来るなんて珍しい。少し待っててね」
そういうと、カウンターを出て掲示板を漁りに行ってしまった。
しばらくレストと戯れていると、男性が戻ってきてドサァっと紙の束をカウンターの上に置いた。
「今狩場に大蛇が出てるから、素材採取系の依頼がこんなに溜まっちゃって……もし、大蛇から隠れながら魔物を狩れるなら、できるだけ受けてほしいの」
「皆で協力して大蛇を倒すのは駄目なんですか?」
そう聞くと男性が顔を寄せてきたので、こちらも耳を寄せる。
「ここの連中は四、五人でしか組まないし、それ以上で組んだら間違いなく喧嘩をするわ……血の気が多い単細胞しかいないのよ。だから、無理……」
なるほどなぁ。
男性の顔に疲れが浮き出てしまっているところを見ると、相当なストレスを抱えてそうだ。
「分かりました! それなら大蛇周辺の狩場で魔物を狩ってきます。依頼書はどれですか?」
「ホントに? 助かるわぁ。そこら辺の女達とは大違いよぉ! それじゃあ、あなたの実力がまだちゃんとは分からないから、とりあえずコレとコレ、あとこれもお願いするわぁ」
まるで俺の言葉を待っていたかのように、スムーズに三枚の依頼書を出された。
これはうまく乗せられたかな……まあ、男性が困っていることは本当のようだったので、別にかまわないのだが。
「それじゃあ、組合証を貸して…………はいっこれでいつでも依頼が見れるわっ! 頑張ってねっ」
「キラッ」とかの効果音でも付きそうなほどウィンクを飛ばしてきたが、もちろん俺には吐き気の効果しか出てこない。
レストをナデナデして気分を紛らわせよう。
「わわっ、どうしたのお兄ちゃん!」
「ごめん、少しだけこうさせて……」
「わたしは気持ちいいから別にいいけど、辛くなったら言ってね?」
やっぱ、レストは天使だなぁ。
ナデナデしながら、組合内のテーブルにつき、組合証を確認する。
……依頼書ってどうやって見るんだろうか。
魔力型の組合証とは聞いていたので、魔力を注いで見るが、ただ単に俺の情報が出てくるだけだ。
《ラティス、依頼の見方わかるか?》
《ゴメ〜ン、アタシも知らないんだよねぇ。やり方知りたいから、分かったら教えてね》
なんということだ……物知りラティスさんでも答えられないとは、恐るべし組合証……
「なにかお困りですかな、お坊ちゃん」
なにか、なにか手がかりでもあれば……
「おやっ、声が聞こえていないのですかな? おーい、坊ちゃん?」
「お兄ちゃんっ、話しかけられてるよ?」
「へっ?」
後ろを振り返ると、執事のような服を着た女性(人族)が立っていた。
髪は黒に近い赤で、胸はない、太っているとも痩せているとも取れない体型に、「中の中」の顔……ザ・普通と心の中で叫びたくなるが我慢する。
「あ、あぁ。坊ちゃんって俺のことですか?」
「えぇ、そうです。なにかお困りのようでしたので、お声をかけさせていただきました」
普通にただのいい人だったようだ。
ここまで普通を取り揃えている人もなかなかいないと思うんだけどな……
「ありがとうございます。組合証で登録した依頼を見たい時ってどうすればいいのかなって考えてたんです」
「なるほど、それなら組合証の裏を見ればわかると思いますよ」
言われた通り裏を見ると、「依頼書」と書かれた部分があった。
触れると、俺の情報が書かれていた部分に依頼と思わしき文章と、イラストが表示された。
……裏にメニューつけないだろ、普通。
「あの、教えてくれてありがとうございます」
「いえいえ、これくらいはどうってことありません。ところで依頼をこなすのなら、これから狩りへ行かれるのですかな?」
「そうですね、依頼を確認してから行こうと思ってました。レストとの連携とかも確認しておかないといけませんでしたからね」
そう、今回の目的は資金集め、大蛇偵察、防具出来るまでの暇つぶしなど色々あるが、一番は戦闘での連携の確認だ。
旅をしていれば戦闘は避けられない……その時連携して戦えませんでは話にならないのだ。
なので今のうちに戦闘の空気をレストに覚えさせつつ、俺自身も連携を意識しながら冷静に戦うことをしておこうと考えたわけだ。
「もし良ければ私も同行させてもらえないでしょうか?」
「んー、いや……俺達は明日から長旅に出るから、短期の仲間は組まないことにしてるんだ」
短期で組んだってどうせ報酬とかで揉めるし、面倒事が増えるだけだからな。
「なら、私もその旅……ご一緒してもいいでしょうか?」
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