心装人機使いのあべこべ世界旅行
14.いざ、獣人界!
「ねぇ……まだぁ? 早くイってよぉ」
上半身に伝わる体温と重みが俺の頭の中をグチャグチャにしていく。
耳元から聞こえる甘美な囁きに、本来なら思考が蕩けて流されてしまいそうなのだが────
(全然興奮しない……ってか、どうしてこうなった)
頭の中は混乱の真っ只中だった……
「ちょっ、アレクターっ、あれ見てよっ! ククッ……主が精霊に押し倒されてるしっ、片方は発情してるしっ、クククッ……わ……笑わせすぎて殺す気何じゃないかな……」
「ふんっ……またお前がいらん世話をやいたのだろう……俺の主があの程度の色気に惑わされるわけが無い。お前のその変な笑いも止まる程の解決をするだろう……黙って見ておけ」
そんな会話が聞こえてくる。
(お前ら助ける気ないのかよ!! あのガキの方は覚えておけよ! ミハクがこうなったのほぼお前のせいだろうがッ!!)
そうこう考えているうちに、ミハクは俺の胸のあたりに頬ずりを始める。
「焦らされるのは……あんまり好きじゃないよぉ。は・や・く……」
(ダメだ! ミハクは精神が崩壊している……おそらく話を聞かないに違いない。そして、俺の性欲が湧かない感覚は、アレクターに怒りを食われた感覚にとても似ている。つまりっ!!)
俺はミハクの頭を両腕でホールドし、動けないようにしたあと、周囲を見渡す。
(見つけたッ!!)
逆さになった視点のまま、アレクターの足とガキの足を見つけ、その奥の壁に不自然な穴があった。
まるで、こちらの様子をのぞき見するかのように空けられた穴に、妖しく光る猫のような目が浮かんでいた。
「そこで覗いてるやつ、大人しく出てこいッ!」
「覗きだなんて失礼ねぇ……ずっと、すぐ隣で見てましたわぁ」
へっ?
俺の耳元で囁かれた言葉に、全身がぶるりと震える。
(いつから俺に添い寝をしていたんだ……コイツ……)
横を確認すると、泣き黒子が特徴的な、美熟女が添い寝をしていた。
「フフッ、まぁた……性欲を出しましたわねぇ。そろそろ食べきれなさそうなので、食事は切りあげましょうか」
「ちょっ、ちょっと待って! 今食われなくなったら俺の理性がァァァ!!」
「大丈夫よぉ……アナタ、もう目が覚めますもの」
そう言われた瞬間、体の感覚が消失していく。
(こっちに転生してから、意識がなくなったり、感覚がなくなったり、感情がなくなったりとか、色々無くなってばかりだな)
そんなどうでもいいことを考えていると。
「セスゥ……行っちゃうの? また……今度呼んだ時は、アタシの名前、ちゃんと呼んでねっ! 約束……だよ」
「この子はわたくしに任せて下さい。次回話す時までにはいつも通りにしておきますから」
「クククッ、久しぶりにお腹が痛くなるほど笑わせてもらったよ……次回も楽しみにしているよ」
「おうッ! 戦闘になったらすぐに呼べよッ! 俺はいつでも不完全燃焼だからなッ!!」
(皆一斉に言われても……何となくしか聞き取れなかったよ……)
ラティスの時とは違い騒がしいけど、なんかこういうのも悪くないと思いながら、俺の意識は消えていった。
────────
「んぐぅ……んおっ!?」
体の感覚が戻り目を開ける。
辺りには少々腐りかけの魔物達の死骸しか無いのを確認し、ゆっくりと起き上がる。
(無事に起きることができたのはいいとして、どこに向かえばいいんだろうか)
「セスッ! 起きたの?」
おおっ! ついさっきまで聞いてた声と同じだが、おそらく声の雰囲気からして────
「ラティス? ラティスなのか?」
「そうだよ! 当たり前でしょ、他に誰がいるの?」
懐かしい気がする。
魔界に転移されてから、ずっと喋ってなかったしな…
「いや、気にしないでくれ……それよりここがどこなのか分かるか?」
「フフンッ! アタシを舐めないでよねっ。後ろの馬鹿みたいに大きな亀裂を見ればすぐ分かるよ〜」
おぉ、流石は妖精の中でも呪いとまで言われた好奇心……魔界のことまでわかるとは。
「なんか今、変な事考えてる時の顔してたよ……」
「い……いやぁ、そんな顔してないけどなぁ……ってラティスって俺の顔見れるの?」
「見れるというより、感覚を共有してるから……わかるって言った方が正しいかなぁ」
うわぁ……感覚共有って……なんか想像膨らむなぁ。イロイロできそうだなぁ。
「言っとくけど、共有はいつでも切れるから変なことには使えないよ」
お見通しという訳だ……残念……
「まあ、この話は置いといて。真面目な話、クオンがいる街に行くにはどれ位時間がかかるんだ?」
「んん〜大雑把に言ってしまえば、百日は超えるねっ」
「へぇーひゃくに……ち……百日ッ!!」
「だってここ、人界から一番遠い方の魔界の端っこだよ? ちなみに後ろの亀裂を超えると獣人界があるよっ」
えぇ……なんのためにここに転移させたんだろう……ていうか誰が転移させたんだろう……
まあ、考えていても仕方が無いし、とりあえず皮、爪、牙が売れそうな魔物だけ拾って、獣人界に行くとするか。
「セス、魔界はあんまりいてもいいことは無いから、人界に一番近いからって横断しない方がいいよっ。獣人界から遠回りしよっ?」
「あぁ、俺もそのつもりだった。この亀裂は別に魔法無効化空間とかではないんだよな?」
「うんっ、この亀裂は特に危なくないから大丈夫! 風魔法でビュビュンって行っても大丈夫だよ〜!!」
ラティスは元気がいいなぁ、負の奴らにも見習って欲し……くもないか。
とても元気なアレクターを想像して、寒気が走る。
「行かないの?」
「あぁ、まって今想像するから」
俺は自分の体が投石機に投げられるような想像をする。
「そんじゃいくぞぉ! ────リリース!!」
久しぶりにリリースって言った気がする……もうちょっと魔法使う機会増やさないと、いざという時に自力で魔法が使えなくなりそうだ。
と、呑気なことを考えていると、いきなり体を風に突き飛ばされる……
(思ったよりも衝撃がでかすぎる!! もうちょっと優しい放物線を想像すれば良かったかな……)
あまりにも早すぎて息ができない。
そんな中でなんとか目を開けると、亀裂を飛び越え、向かい側の地面までもう少しだった。
────あ、着陸どうしよう……
こういう時にパラシュートとかあれば最高なんですけどねぇ。
「ん? パラシュート……そうか! アレがあったぜ!」的ないい感じの発想がほしい……
アホなことを考えている間に地面は近づく。
(コレはもうミンチ確定ですわ……)
と、獣人界と亀裂の境目に到達したあたりから、何やら体を包み込むような感覚を得る。
(コレは……魔法っぽいな)
「アハハッ! 楽しい〜!! ビュビュン! ビュビュン!!」
(おいおい、何でそんなに余裕そうなんだお前は!)
「セスゥ! そろそろ止まるから、着地の準備ねっ」
(止まる……? もしかしてラティスが何かしらの魔法で……なるほどそれなら納得だ。)
どんどんスピードが落ちていくのが、感覚でわかる。
そして、しばらくすると完全に停止し、真っ直ぐに落ちていく。
(水……風? どっちのクッションがいいんだろうか……)
「セスッ! 何してるの!? そろそろ出さなきゃっ!! 」
「水! 水でいいや!! ────リリースッッッ!!」
唱えた瞬間、真下に水の立方体ができる。規模を間違えてしまったのか、俺の体の10倍はありそうだ。
────バシャァァァァッッッ!!
(痛ッッテェェェッッッ!!)
思いっきり背中全部を水面に打ち付け、凄まじい痛みを受けるが、何とかして口だけは開かないようにした。
落下の速度が消えたので、痛みと戦いながら地面に向かって泳ぐ。
(水の中だと、喋れないから解除できないじゃないか!!)
そしてようやく、立方体から顔を出すことが出来た。
「プハァァァ……死ぬかと……思った……」
「アハハっ! 楽しかったぁ。また魔界に行く時はコレやろうねっ」
ラティスさん……死んでしまいますよ……
復帰して早々また倒れそうになるが、ここは耐える。
とりあえずなんでもいいから、人が住んでいるところに行こう……考えるのはそこからでいいだろう。
こうして、セスと妖精達の冒険が始まる。
上半身に伝わる体温と重みが俺の頭の中をグチャグチャにしていく。
耳元から聞こえる甘美な囁きに、本来なら思考が蕩けて流されてしまいそうなのだが────
(全然興奮しない……ってか、どうしてこうなった)
頭の中は混乱の真っ只中だった……
「ちょっ、アレクターっ、あれ見てよっ! ククッ……主が精霊に押し倒されてるしっ、片方は発情してるしっ、クククッ……わ……笑わせすぎて殺す気何じゃないかな……」
「ふんっ……またお前がいらん世話をやいたのだろう……俺の主があの程度の色気に惑わされるわけが無い。お前のその変な笑いも止まる程の解決をするだろう……黙って見ておけ」
そんな会話が聞こえてくる。
(お前ら助ける気ないのかよ!! あのガキの方は覚えておけよ! ミハクがこうなったのほぼお前のせいだろうがッ!!)
そうこう考えているうちに、ミハクは俺の胸のあたりに頬ずりを始める。
「焦らされるのは……あんまり好きじゃないよぉ。は・や・く……」
(ダメだ! ミハクは精神が崩壊している……おそらく話を聞かないに違いない。そして、俺の性欲が湧かない感覚は、アレクターに怒りを食われた感覚にとても似ている。つまりっ!!)
俺はミハクの頭を両腕でホールドし、動けないようにしたあと、周囲を見渡す。
(見つけたッ!!)
逆さになった視点のまま、アレクターの足とガキの足を見つけ、その奥の壁に不自然な穴があった。
まるで、こちらの様子をのぞき見するかのように空けられた穴に、妖しく光る猫のような目が浮かんでいた。
「そこで覗いてるやつ、大人しく出てこいッ!」
「覗きだなんて失礼ねぇ……ずっと、すぐ隣で見てましたわぁ」
へっ?
俺の耳元で囁かれた言葉に、全身がぶるりと震える。
(いつから俺に添い寝をしていたんだ……コイツ……)
横を確認すると、泣き黒子が特徴的な、美熟女が添い寝をしていた。
「フフッ、まぁた……性欲を出しましたわねぇ。そろそろ食べきれなさそうなので、食事は切りあげましょうか」
「ちょっ、ちょっと待って! 今食われなくなったら俺の理性がァァァ!!」
「大丈夫よぉ……アナタ、もう目が覚めますもの」
そう言われた瞬間、体の感覚が消失していく。
(こっちに転生してから、意識がなくなったり、感覚がなくなったり、感情がなくなったりとか、色々無くなってばかりだな)
そんなどうでもいいことを考えていると。
「セスゥ……行っちゃうの? また……今度呼んだ時は、アタシの名前、ちゃんと呼んでねっ! 約束……だよ」
「この子はわたくしに任せて下さい。次回話す時までにはいつも通りにしておきますから」
「クククッ、久しぶりにお腹が痛くなるほど笑わせてもらったよ……次回も楽しみにしているよ」
「おうッ! 戦闘になったらすぐに呼べよッ! 俺はいつでも不完全燃焼だからなッ!!」
(皆一斉に言われても……何となくしか聞き取れなかったよ……)
ラティスの時とは違い騒がしいけど、なんかこういうのも悪くないと思いながら、俺の意識は消えていった。
────────
「んぐぅ……んおっ!?」
体の感覚が戻り目を開ける。
辺りには少々腐りかけの魔物達の死骸しか無いのを確認し、ゆっくりと起き上がる。
(無事に起きることができたのはいいとして、どこに向かえばいいんだろうか)
「セスッ! 起きたの?」
おおっ! ついさっきまで聞いてた声と同じだが、おそらく声の雰囲気からして────
「ラティス? ラティスなのか?」
「そうだよ! 当たり前でしょ、他に誰がいるの?」
懐かしい気がする。
魔界に転移されてから、ずっと喋ってなかったしな…
「いや、気にしないでくれ……それよりここがどこなのか分かるか?」
「フフンッ! アタシを舐めないでよねっ。後ろの馬鹿みたいに大きな亀裂を見ればすぐ分かるよ〜」
おぉ、流石は妖精の中でも呪いとまで言われた好奇心……魔界のことまでわかるとは。
「なんか今、変な事考えてる時の顔してたよ……」
「い……いやぁ、そんな顔してないけどなぁ……ってラティスって俺の顔見れるの?」
「見れるというより、感覚を共有してるから……わかるって言った方が正しいかなぁ」
うわぁ……感覚共有って……なんか想像膨らむなぁ。イロイロできそうだなぁ。
「言っとくけど、共有はいつでも切れるから変なことには使えないよ」
お見通しという訳だ……残念……
「まあ、この話は置いといて。真面目な話、クオンがいる街に行くにはどれ位時間がかかるんだ?」
「んん〜大雑把に言ってしまえば、百日は超えるねっ」
「へぇーひゃくに……ち……百日ッ!!」
「だってここ、人界から一番遠い方の魔界の端っこだよ? ちなみに後ろの亀裂を超えると獣人界があるよっ」
えぇ……なんのためにここに転移させたんだろう……ていうか誰が転移させたんだろう……
まあ、考えていても仕方が無いし、とりあえず皮、爪、牙が売れそうな魔物だけ拾って、獣人界に行くとするか。
「セス、魔界はあんまりいてもいいことは無いから、人界に一番近いからって横断しない方がいいよっ。獣人界から遠回りしよっ?」
「あぁ、俺もそのつもりだった。この亀裂は別に魔法無効化空間とかではないんだよな?」
「うんっ、この亀裂は特に危なくないから大丈夫! 風魔法でビュビュンって行っても大丈夫だよ〜!!」
ラティスは元気がいいなぁ、負の奴らにも見習って欲し……くもないか。
とても元気なアレクターを想像して、寒気が走る。
「行かないの?」
「あぁ、まって今想像するから」
俺は自分の体が投石機に投げられるような想像をする。
「そんじゃいくぞぉ! ────リリース!!」
久しぶりにリリースって言った気がする……もうちょっと魔法使う機会増やさないと、いざという時に自力で魔法が使えなくなりそうだ。
と、呑気なことを考えていると、いきなり体を風に突き飛ばされる……
(思ったよりも衝撃がでかすぎる!! もうちょっと優しい放物線を想像すれば良かったかな……)
あまりにも早すぎて息ができない。
そんな中でなんとか目を開けると、亀裂を飛び越え、向かい側の地面までもう少しだった。
────あ、着陸どうしよう……
こういう時にパラシュートとかあれば最高なんですけどねぇ。
「ん? パラシュート……そうか! アレがあったぜ!」的ないい感じの発想がほしい……
アホなことを考えている間に地面は近づく。
(コレはもうミンチ確定ですわ……)
と、獣人界と亀裂の境目に到達したあたりから、何やら体を包み込むような感覚を得る。
(コレは……魔法っぽいな)
「アハハッ! 楽しい〜!! ビュビュン! ビュビュン!!」
(おいおい、何でそんなに余裕そうなんだお前は!)
「セスゥ! そろそろ止まるから、着地の準備ねっ」
(止まる……? もしかしてラティスが何かしらの魔法で……なるほどそれなら納得だ。)
どんどんスピードが落ちていくのが、感覚でわかる。
そして、しばらくすると完全に停止し、真っ直ぐに落ちていく。
(水……風? どっちのクッションがいいんだろうか……)
「セスッ! 何してるの!? そろそろ出さなきゃっ!! 」
「水! 水でいいや!! ────リリースッッッ!!」
唱えた瞬間、真下に水の立方体ができる。規模を間違えてしまったのか、俺の体の10倍はありそうだ。
────バシャァァァァッッッ!!
(痛ッッテェェェッッッ!!)
思いっきり背中全部を水面に打ち付け、凄まじい痛みを受けるが、何とかして口だけは開かないようにした。
落下の速度が消えたので、痛みと戦いながら地面に向かって泳ぐ。
(水の中だと、喋れないから解除できないじゃないか!!)
そしてようやく、立方体から顔を出すことが出来た。
「プハァァァ……死ぬかと……思った……」
「アハハっ! 楽しかったぁ。また魔界に行く時はコレやろうねっ」
ラティスさん……死んでしまいますよ……
復帰して早々また倒れそうになるが、ここは耐える。
とりあえずなんでもいいから、人が住んでいるところに行こう……考えるのはそこからでいいだろう。
こうして、セスと妖精達の冒険が始まる。
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