事故死したので異世界行ってきます
あれから──
世界を救った勇者とその家族は今、国を離れた小さな村でひっそりと暮らしいているのであった。
「父さん、俺と勝負してくれ!」
「まぁ、そう急ぐな。また今度してやるから今日はお父さんを休ませてくれよ……」
ユウスケは国王の激務を全て前代国王であるラギナに任せて国を離れた小さな村へと移住したのである。
激務を任せると言うことは王の座を還したと言うことでもある。
そうやって何とかして使った平凡な日常を息子であるシンに壊されそうに──いや、壊されているのである。
「だったらっ!オラァッ!」
シンは腰に携えた木刀を抜きユウスケの脳天めがけて目一杯の力で振り下ろす。
「あっぶねっ!ちょ、マジでやめてくれよ!」
間一髪躱す、と言うか躱していなければ俺の脳は飛び散っていただろう。
「オラオラオラーッ!」
ただ木刀を振るうだけでもの凄まじい風圧が巻き起こる。その威力は家の骨組みが軋む音をたてグラグラと左右に揺れる程だ。
「落ち着けって!わかったから!勝負するからっ!木刀を収めろ!」
シンはその言葉を聞くなりピタリと木刀を収めて、キラキラとした目で俺を見つめる。
「はぁ……まぁとりあえず外へ行こうか……」
こうして今日も息子の勝負に付き合うことになったわけだが、実のところある程度の武器、すなわち木刀では無く真剣を持たせて戦闘を行えば俺を凌ぐ実力をすでに備えている。
まぁ、剣しか使わないと言うルールで戦闘を行えばの話だが。
「シンよ、お前は俺よりも高度な剣術を既に体得している。俺と剣を交えたところで技術向上には対して役立たないぞ?」
「そんな事分かってるよ!でもそれは父さんが本気を、魔法を使わなかったらの話だろ?」
「お、おう……」
息子に追い越される事が、更にそれを息子が理解している事がどれほど辛い事なのか、俺はこの時初めて痛感した。
しかも、シンはまだ10歳程度だぞ!?どうしてこんなにも早く才能を開花させてしまったんだ……
「だから今日は、魔法を使ってよ」
「はぁ……仕方ないなぁ。 3秒だ」
「は?」
「今日の勝負は3秒で終いだ。それで良いな?」
「何だよそれ!」
シンのその言葉に返事を返したのは俺では無く家から出てきたリリカだった。
「本気で闘うって言うことよ。 そうでしょう?」
俺は、リリカのその言葉に無言でコクリと頷く。
「行くぞ。シン」
俺のその一言でシンの眼の色が変わる。それはまるでかつての戦友、リベリアルのようだった。
「あぁ……良い眼だ。
古代魔法【羅刹鬼鞘」
ユウスケの足元を中心としてシンを取り込む程の赤黒い煙のようなものが噴出された。
「な、何だこれ……」
放たれた煙はユウスケの右手に集中するかのように吸収された。
「今日の修行はこれで終わりだ」
「はっ!?まだ何も──」
シンは気付く、既に勝敗は決している事に、そして自分の命はユウスケの手の内にあると言う事に。
「なんなんだその魔法……」
「ま、そのうち教えてやるよ」
ユウスケはそう言い、【羅刹鬼鞘】を解除する。それと同時に赤黒い煙はシンの胸元辺りに吸い込まれていった。
そう──先の魔法で、ユウスケはシンの心臓を抜き取り右手に握りこんでいたのである。本来であれば心臓を握りつぶして勝敗が決していたであろう。
「あれが父さんの本気なのか……」
「そんなに落ち込むな、いずれは俺を超えれるようになる」
こうして、本日の勝負は終わりを迎え。ユウスケはまたのんびりとした平穏な一時を満喫するのであった。
久しぶりに続編を書かせて頂きました。
後、宣伝をさせて頂きます……
『ノーヘブン』がお陰様で10話目まで投稿する事ができました!
お時間ありましたらそちらの作品も閲覧していただけると幸いです(^^)
「父さん、俺と勝負してくれ!」
「まぁ、そう急ぐな。また今度してやるから今日はお父さんを休ませてくれよ……」
ユウスケは国王の激務を全て前代国王であるラギナに任せて国を離れた小さな村へと移住したのである。
激務を任せると言うことは王の座を還したと言うことでもある。
そうやって何とかして使った平凡な日常を息子であるシンに壊されそうに──いや、壊されているのである。
「だったらっ!オラァッ!」
シンは腰に携えた木刀を抜きユウスケの脳天めがけて目一杯の力で振り下ろす。
「あっぶねっ!ちょ、マジでやめてくれよ!」
間一髪躱す、と言うか躱していなければ俺の脳は飛び散っていただろう。
「オラオラオラーッ!」
ただ木刀を振るうだけでもの凄まじい風圧が巻き起こる。その威力は家の骨組みが軋む音をたてグラグラと左右に揺れる程だ。
「落ち着けって!わかったから!勝負するからっ!木刀を収めろ!」
シンはその言葉を聞くなりピタリと木刀を収めて、キラキラとした目で俺を見つめる。
「はぁ……まぁとりあえず外へ行こうか……」
こうして今日も息子の勝負に付き合うことになったわけだが、実のところある程度の武器、すなわち木刀では無く真剣を持たせて戦闘を行えば俺を凌ぐ実力をすでに備えている。
まぁ、剣しか使わないと言うルールで戦闘を行えばの話だが。
「シンよ、お前は俺よりも高度な剣術を既に体得している。俺と剣を交えたところで技術向上には対して役立たないぞ?」
「そんな事分かってるよ!でもそれは父さんが本気を、魔法を使わなかったらの話だろ?」
「お、おう……」
息子に追い越される事が、更にそれを息子が理解している事がどれほど辛い事なのか、俺はこの時初めて痛感した。
しかも、シンはまだ10歳程度だぞ!?どうしてこんなにも早く才能を開花させてしまったんだ……
「だから今日は、魔法を使ってよ」
「はぁ……仕方ないなぁ。 3秒だ」
「は?」
「今日の勝負は3秒で終いだ。それで良いな?」
「何だよそれ!」
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「本気で闘うって言うことよ。 そうでしょう?」
俺は、リリカのその言葉に無言でコクリと頷く。
「行くぞ。シン」
俺のその一言でシンの眼の色が変わる。それはまるでかつての戦友、リベリアルのようだった。
「あぁ……良い眼だ。
古代魔法【羅刹鬼鞘」
ユウスケの足元を中心としてシンを取り込む程の赤黒い煙のようなものが噴出された。
「な、何だこれ……」
放たれた煙はユウスケの右手に集中するかのように吸収された。
「今日の修行はこれで終わりだ」
「はっ!?まだ何も──」
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「なんなんだその魔法……」
「ま、そのうち教えてやるよ」
ユウスケはそう言い、【羅刹鬼鞘】を解除する。それと同時に赤黒い煙はシンの胸元辺りに吸い込まれていった。
そう──先の魔法で、ユウスケはシンの心臓を抜き取り右手に握りこんでいたのである。本来であれば心臓を握りつぶして勝敗が決していたであろう。
「あれが父さんの本気なのか……」
「そんなに落ち込むな、いずれは俺を超えれるようになる」
こうして、本日の勝負は終わりを迎え。ユウスケはまたのんびりとした平穏な一時を満喫するのであった。
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