事故死したので異世界行ってきます
第44話目 躍進④
朝8時、体を優しく包み込むような心地よい風が吹く中、広大な校庭に校長を含め全ての教員が集っていた。そう、今日は学校が本格的に始まる日なのである。
「皆さん今日からついに学校の教員として働くとになります気を引き締めていきましょう!!」
『オォォォ!!!』
皆んなの気合がヒシヒシと伝わってくる。特に教員採用の面接に来ていた6人は格段に声が大きかった。
「では、早速開門お願いします」
厚く高さは5メートルほどはあろうかと言う鉄製の観音開きの校門の右扉にはリリシューラ 、ドーラン、そして左門にはオーディアとアヴェンタ合計4人で、重々しい扉を大地を削る音共に、ゆっくりと押し開けた。
安全面を考慮して校門までは木造と言うわけにはいかなかったようでここと一部の施設は鉄をふんだんに使っている。
門の向こうには、まるで人気テーマパークの出入り口の様に人で埋め尽くされていた。
「中へお入りください」
大臣の声が魔法を通して校庭中に広がると共に2000の人々がゆっくりとこちらへ近づいてくる。
俺たちとの距離が15m程になったところで再び大臣が口を開く
「そこで一度止まり、誰とでも良いのでジャンケンをしてください」
数瞬場が膠着したものの直ぐに生徒たちはジャンケンを始めた。
「では勝った方は皆様から見て左手側に、負けた方は右側に移動してください」
ぞろぞろと2000の人集りが1000と1000に分かれる
「それでは勝った方同士でもう一度ジャンケンをしでください。負けた方も同じようにジャンケンをしてください」
再び生徒達はジャンケンを始め、それが終わるタイミングを見計らってまた大臣が口を開く。
「勝った方は前方へ5歩ほど進んで下さい。負けた方は後方へ5歩程後退してください」
1000の人集りが500と500に分かれる。これと同じこともう一度だけ行い250人の集団を8つ作った。
「最後まで勝ち抜いた方は私の所まで移動してください」
250人の集団が大臣の所へと駆け寄る。
「残りの方々はお帰り下さい」
大臣の発言に生徒はもちろん俺たち教員も動揺を隠せなかった。
騒つく校庭、俺が口を開こうとする前に大臣が口を開いた。
「冗談です。皆さま緊張し過ぎですよもう少し気楽にいきましょう。残りの方々は勝利した順に皆様から見て左手側に居る教員のところに移動してください」
何度もジャンケン等を繰り返したにも関わらず緊張感に支配されていた生徒たちへの配慮だったようだ。
大臣のおかげで生徒たちの顔は笑顔が溢れておりいつしか隣同士が話し合うほど打ち解けあっていた。
本当、デキる男だな……
そしてこのジャンケンはクラス決めの為に行った行為である。
最も勝利を積み上げた集団から1組と呼ばれ8組までのクラスが出来上がった。
1組担任:ミルコ・レーシア
2組担任:リベリアル
3組担任:リリシューラ 
4組担任:ドーラン
5組担任:ミゼラ
6組担任:オーディア 
7組担任:ラリフィア 
8組担任:アヴェンタ 
それぞれの集団が指定位置に移動したのを見計らって大臣が口を開く。
「それでは只今より試験を行います。魔法が一切使えないと言う方はその場に座って下さい」
試験という言葉に動揺する生徒。校庭が一気にザワつく。しかし、そんなの御構い無しに大臣は説明を始める。
「今から小魔晶石を1つずつお渡ししますので貰った順に担任のいる場所まで移動し、来た順番から一列に並んで下さい」
その言葉が生徒たちに伝わったのと同時に校舎から鎧を纏った大量の戦士たちが小魔晶石を片手に同じ歩幅で同じ速度を保ちながら綺麗に整列した状態で生徒近くまで歩み寄り立っている生徒一人一人に手渡しし再び綺麗に整列した状態で校舎の中へと帰っていった。
小魔晶石を渡された生徒たちから順に担任の下まで移動した。全ての生徒が一列に並び終えたのを確認し大臣がまた口を開く。
「それでは、先頭の方から順に小魔晶石に一度に出来るだけ多くの魔力を流し込んで下さい」
生徒たちは大臣の言葉通り、小魔晶石に魔力を注ぎ込んだ。大抵の生徒は、小魔晶石をほんのりと光らせる程度だったが各クラスに数人程度、全体で見て十数人の生徒は小魔晶石を燦々と輝かさせた。しかし、そのほとんどの生徒が冒険者を生業としている者達だった。だがそのような結界なるのも当然の事なのだ。何故なら、小魔晶石にほんのりと光を灯す事でさえ10MPの魔力を一度に放出しなければならない。
10MPを一度に放出できるという事は第1位階魔法であれば十分に扱えるという事なのだ。
そして、眩いまでの光を放とうとするならば更に多くの魔力を放出しなければならないのは言うまでも無い。その魔力量は100MPだ。100MPを一度に放出できれば理論上、第2位階までの魔法は駆使することが可能である。そして第2位階までの魔法を使う事が出来る者は2000人居ても数える程しか居らず更に完全に素質だけでこの成績を叩き出したのは僅かに3名。単純計算で言えば700人に1人は魔法の才能がある子供が産まれてくると言う計算だがその3人の子供はいずれも名の通った貴族の子のようで幼い頃から魔法に触れる機会が多くあったそうだ。つまり、魔法に触れている期間が長ければ長いほど魔力は増強され、一度に放出できる魔力量も多くなると言う事だ。逆に、全く魔法に触れる機会の無い者はいつまでたっても魔法を使えないまま一生を終えるという事でもある。これらのメカニズムを理解できただけでも今回のこのテストには意味があったのだと思う。
そして何よりの成果は、1人異彩を放つ生徒を見つけ出す事が出来たという事だ。その生徒は1組に在籍していた。
「それでは次の方どうぞ」
大臣が次の試験生徒を呼ぶと少し間をおいて、大臣に近づく女の子がいた。
「では、お願いします」
「……はぃ」
彼女の声は今にでも消えそうなほど弱々しい声だった。それが緊張のせいなのかそれともそういう気質なのかはわからないがとにかく暗かった。
そんな彼女とは裏腹に小魔晶石は太陽の如く輝き更にその光の量は多くなって行く。完全に周囲の視界を眩い光で奪いとった瞬間、パリィンという甲高い音が響き渡る。
「これは……」
「ご、ごめんなさい……」
彼女が片手に持っていた小魔晶石は僅かな破片を残し消え去っていたのだ。つまり彼女は放出した魔力量に小魔晶石が耐えられずに破損したという事である。更に驚く事にこの小魔晶石を破壊するには500〜700MPが必要とされているのである。わかりやすく例えるのであれば小学1年生が100㎏まで測れる握力測定器を握り、針を振り切り破損させたのと同じくらいの異常事態なのである。
「あの……これ弁償ですよね……?」
少女は不安そうに大臣に尋ねる。大臣はニッコリと微笑みこう言った。
「大丈夫ですよ、何も心配する事はありません。それよりも全員の試験が一通り終えたあともう一度私の所に来てくれませんか?」
「え、あ、はい……」
次回更新は3/25です。
4/1から新生活が待っている方頑張ってくださいね!
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