事故死したので異世界行ってきます
第39話 覇王と呼ばれた勇者
今回から主人公視点へと戻ります!
読んでくださっている方はもう既にお気付きかと思いますが、全て行き当たりばったりで書いており構成など一切考えていない作品のため、話数を重ねると矛盾点などが出てくるかと思われます。
そのような不明な点が有ればコメントにて教えて下さると嬉しいです!
では、本編の始まりですm(__)m
俺は勇者とも呼ばれまた、覇者とも呼ばれたリベリアルと言う男の壮絶な人生をエンドラから事細かく説明された。
「わかったかな?」
「まぁ……大体は分かったよ」
「大体って…わからなかったところがあったらちゃんと言ってよ!」
こんな事言うのも何だが、人の身の上話なんてどうでも良い。確かに、勇者と呼ばれていた男がルシファーに唆されて結果覇王と言う異名をつけられ、またその異名がスキルになっている所に関しては若干興味を引くところがあったが、エンドラが何故リベリアルの事をそこまで理解させようとしてくるのかが、わからない。
「エンドラよ辞めなさい。主人がお困りだろう?」
漆黒の鎧をまとった覇王がエンドラに対して注意をした。
「え?あぁ……でも本来の主人は貴方なんだし其奴らはお返ししますよ」
俺はこの時とんでもない勘違いをしていた。
「そうか、そうしてくれるとありがたい。その方がより活躍出来ると思うのでな。ところで主人よ、今から何をするつもりなのだ?」
「いえいえ。今から三魔……ん?今なんて言った?」
「主人がこれから何をするのかを聞いているのだよ」
「え?」
この時初めて気付く、先程からリベリアルが言っている主人とは俺の事をだったのだと。そんな、突拍子もないその発言に混乱し慌てふためいている所にエンドラの声が耳に入ってきた。
「まぁ、そう言う事だから宜しくね♪」
「いやいや!どう言う事だよ!」
「何言ってんのよ、もう分かってるくせに!リベリアルは今日から貴方に仕える事に決めたのよ」
「いや、そんなの勝手に決められても……」
「はッ!すまない、多少剣の腕に自信があったので役に立てるかと思ったが……迷惑だっただろうか?もしそうならばエンドラとガンドラはここにおいて直ぐに立ち去る事を約束しよう」
何かに気付いたかのような大きな声を上げてリベリアルが話し始めた。
え、何この断りにくい雰囲気。やめてほしんだけど!!
「て、言ってるけどどうするのよ?」
「わ、わかったよ……」
これから仲間に覇王が加わった事でより面倒な事に巻き込まれるんですね、わかります。
でも!こう言うしかないでしょ!?ココでもし『すみません、仲間にすることは出来ません』とか言ったらリベリアルめっちゃかわいそうじゃん。それに、エンドラとガンドラも主人と居られなく訳だから、かわいそうじゃん?
「仲間にしてくれるって!良かったね!」
「おぉ!本当に良いのか?迷惑では無いか?」
そんな事を言いながらもリベリアルは、じわりじわりとこちらの方へ目を輝かせながら近づいて来る。
「あ、う、うん……よ、よろしく……」
なんだ、この圧力……これが覇王という異名を持つ男が放つオーラなのだろうか……
俺は右手の平を開いてリベリアルに向かって突き出した。
「戦闘であれば何でも任せてくれ!」
リベリアルはそう言って俺の突き出した右手をガッチリと掴み力強く握手をした。
と言うか力強過ぎた。硬い木の枝が複数本折れるような甲高い音をあげながら、俺の手首から先のありとあらゆる骨は様々な音を立てて砕け散った。
俺は必死に悲鳴を堪えながら、帝宮へと向かうべく一歩踏み出す、その瞬間歩いた振動により再び手に激痛が走る。
「ちょっと用を足して来る、みんなここで待ってて」
堪らず治癒魔法を使おうとしたが、それをみたリベリアルは責任を感じるのではないかと思った俺は、少し離れた場所で手の治療をすることに決めた。
「ならば私もお伴しよう」
「いいや、大丈夫だ」
「そうか……」
なんで若干落ち込んでんだよっ!?排泄時の護衛とかおかしいだろ普通に考えて!
「ここなら、見られないかな。
聖なる祖霊よ天空の息吹を吹きかけよ
全ての汚れは息吹の前に消え去り
全ての傷は息吹の前に還らん
古代魔法【完全治癒】」
真っ青に腫れ上がった右手を神々しい光が包んで行く。
光は数秒間俺の右手を照らした後皮膚の中に浸透していくように消えて行った。
そして、光が完全になくなった頃には俺の右手は完治していた。
「主人よ、早かったではないか。本当に用をたしてきたのか?」
「心配しなくて大丈夫だ。そんなことより一つ気になっていたことがあるのだが聞いてもいいかな?」
「私に答えられる範囲であればなんでも聞いてくれ」
「リベリアルって初代勇者と言われていたんだよな?」
「初代勇者とは言われていないが、人類史上初めて勇者と呼ばれたのは私だったようだ」
じゃあ、初代じゃねぇかよ。コイツもしかして頭固いのかな?
「そ、そうか。初代勇者ってことはかなり前の人だと思うんだけど、今の年齢はいくつくらいなんだ?」
「魔族になったあの時から人としての時は止まっている。人としての年齢で言うのであれば33歳くらいでは無いだろうか」
なるほどな、魔族になっていた間は年齢は止まり。幸か不幸かその期間が長ったため今こうして生きているということか。
「33歳か…意外とオッさ……いや、なんでもない。これから残りの三魔将とアスモデウスを退治しに行くつもりなんだけど、リベリアルはどうする?先に帰っていても良いけど、その場合はガンドラとエンドラだけは貸してくれないかな?」
「もちろん同行させてもらう。元より、敵が誰であろうと主人が戦うと言うのであれば私は迷う事なく剣を抜くつもりだったが、その敵が憎きルシファーの仲間というのであれば思い切って剣を振るうことができる」
その強者を恐れぬ心意気をカルダド王国の戦士たちに叩き込んでもらいたいものだ……
「ありがとう。早速行こうか」
「うむ、エンドラ我が刃となれ」
リベリアルがそう言うと人型だったエンドラは一瞬にして大剣へと姿を変えた。
「【心眼】」
俺はスキルを発動して、残りの三魔将とアスモデウスの場所を確認する。
脳内に映し出されたマップからは、2つの赤点が帝宮からもの凄い速さでこちらに急接近して来ているのが見て取れた。
「主人よ、それはなんの魔法だ?」
「いや、これは魔法じゃなくてスキルだよ。そんなことよりも、三魔将の残りの2体がもうすぐココにくる。気を引き締めてくれ」
「承知した」
何故、向かって来ているのが三魔将だと分かったのかと言うと、帝宮に一つだけ赤点がありその赤点にだけアスモデウスと名前が表示されていたからである。
「左右から1体ずつ回り込むように来ているな…… リベリアル、右からくる敵を頼む」
「主人よ、一つ提案なんだがいいか?」
こんな時に提案ってマイペースかよっ!
「う、うん……手短に済ませてくれよ?」
「うむ。私が全ての敵を引き受けよう」
「わかっ…… え?」
「というか主人よ、そなたはなんの装備も無くして三魔将と闘うつもりだったのか?」
そういえばそうだった、俺の装備は全部リベリアルが身につけているんだった……
今素のステータスでも十分闘えるとは思うが、最悪差し違いするかも知れない……ここはリベリアルに任せたほうが安全なのか?
「それもそうだな…… 魔法で援護をする、リベリアルは悪いが2体を相手にしてくれ……」
「承知した」
リベリアルの返答が終わる寸前、2つの陰が俺たちを襲う。
「【天迦霧双】」
事はリベリアルが放ったその一声を最後に終止符を迎えた。
俺を除いて、敵2体とリベリアルを黒い霧が包み込んだ見た目は【霧幻雷斬】とさほど変わりは無いが、雰囲気がどことなく違うのは感じ取れる。
【天迦霧双】は【霧幻雷斬】に比べて刺々しいと言うのが正しいのかわからないがとにかく、威圧感があった。
そんな、威圧感を漂わせる霧に包まれた3人は直ぐに霧から解放されることとなる。
霧はリベリアルの体に吸い込まれるように消えていった。
「だいじょ…… えっ!?どう言うこと!?」
俺の目の前には、二体の翼を持ち二本の角を生やした悪魔が翼を断たれ、角を折られた状態で地面にへばりつている。
「主人よ、もう終わったので危険はないと思う」
「ちょ、ちょちょっとまって……」
え?どう言うこと?さっき霧が出てきて直ぐに晴れたと思ったらよくわからない悪魔みたいなやつが倒れてて……
「どうかしたか?」
「今のはなんなんだ?」
頭の中がパニックになり俺の脳内から語彙力と言うものがそぎ落とされたらしい。率直で感じたことをそのまま言葉にしてリベリアルに伝えた。
「【天迦霧双】の事か?」
「そうそれの事」
「武技みたいなものだな」
「…」
俺は、リベリアルの話に耳を傾けて言葉を飲む。
「ところで、もう一体はどこにいるのだ?」
えっ説明終わりっ!?嘘でしょ?
「ちょっとまて、【天迦霧双】について詳しく教えてほしい」
「そう言う事ならコイツから聞いてくれ」
リベリアルは右手に持っていたエンドラを手放して地面にそっと置いた。
すると瞬く間に黒い体験は誰もが羨む美女へと変貌した。
「話は聞いていただろ?主人に説明してくれ」
「もぉー、人使いが荒いんだからー!」
エンドラはそう言いながらも嫌がる事なくそして詳しく説明してくれた。
【天迦霧双】は超攻撃特化の技らしく、その効果も絶大なものだった。
その効果は以下のような物だ。
・霧に入った全てのモノを斬り刻む。
・霧に入った全てのモノのステータス(守)を半分にする。
・霧に入った全てのモノのステータス(攻)の合計の半分だけ発動者のステータス(攻)を上昇させる。
・霧に入っている間、発動者の受けるダメージは2倍になる
まさに自分の命を顧みない攻撃特化の技である。そんな技をリベリアルは何のためらいもなく使いそして勝った。
やはり彼は勇者として天命を授かったのだろう、そんな彼が俺なんかに仕えていていいのだろうか……
「ありがとうエンドラよくわかったよ」
「いえいえ!じゃあ戻るね!」
「その前に1つ聞いてもいいか?」
「なに?」
「どうしてリベリアルが持つときは大剣になって俺が持つときは太刀のような形になるんだ?」
「んー、それはねぇ…教えてあげなーい!」
そう言うとエンドラは一瞬にして大剣へと戻ってしまった。
「ちょっっ!! はぁ……まぁ、教えたくなさそうだったし別にそこまでして聞く必要は無いか…」
「主人よ、エンドラの説明で納得しただろうか?」
「あぁ、うん。わかりやすかったよ」
「それは良かった して、もう一体はどうするのだ?」
「今から倒しに行くよ【心眼】」
脳内に映し出されたドドルベルン帝国のマップにはあるはずの赤点が無く、瞬時にマップが切り替わったが、それと同時に映し出されたマップは砂嵐状になり見えなくなってしまった。
「主人よ、急に黙り込んでどうされたのだ?」
「居ない、さっきまで帝宮の帝座に座っていたはずなのに……」
「別の場所に転移したと言う事か?」
「わからない、とりあえず行って確かめて来よう」
「承知した」
そう言って帝宮へと向かって内部を隅々まで見回ったがそれらしき存在は無かった。と言うよりも魔族らしき魔力を全く感じない。
不審に思い【心眼】を使い魔族を探したが全て消えていた、外に出払っていた戦士の様なものたちの反応も全くなかった。
俺たちは帝国を全土を見て回り生存者か魔族が居ないかを探したが魔族は一匹たりとも出てこなかった。
だが、代わりに生存者は複数名存在していた。【心眼】で人族を探したところ、帝宮の地下に1人と門の外に複数名確認できた。
門の外にいたのは魔族の魔力を垂れ流していた戦士達だった。アスモデウスのスキルなのか何か分からないが彼らは洗脳状態のような状態になっていた。そして帝宮の地下に1人いたのはドドルベルン帝国帝王の娘、ベニアーナ・トルニーデだった。
「助けていただき誠にありがとうございます……」
彼女は黄色のドレスを身にまとい上品さを感じさせはしたが裾などは汚れており、目にはクマができていた。
彼女もアスモデウス関連における被害者であることは言うまでもないだろう。
「いえいえ、お怪我はありませんか?」
「大丈夫です…それよりあなたの名前はなんと言うのですか?」
「俺の前は、鈴木祐介と申します。貴女の名前は?」
「私の名前はベニアーナ・トルニーデ、バルダリアン・トルニーデの娘でございます。スズキ様に救っていただいた御恩は決して忘れません」
帝王の娘という事か……
「お気遣いなく。それから名前は祐介と呼んでください、鈴木は名字なので」
「わかりました、ユウスケ様」
「様いりませんよ……」
「命の恩人……いや、私の愛する国を救ってくれた救国者なのですから様付けするのは当然かと」
この子、自分の国がどうなったか知っているのか……
「帝国を救うことは出来なかった。救えたのは君の命と僅かな戦士達の命だけだよ」
「戦士達はまだ生きているのですか!?」
突然火が灯ったかのように彼女の目はイキイキとし始めた。
「あぁ、生きているよ。とりあえずここを出ようか?」
「本当ですか! 早速戦士達の元へ行きたいのですが良いですか……?」
「勿論。だけど護衛がてら俺たちも同行させてもらうけどね」
「それは心強いです。是非お願い致します」
俺、リベリアル、ベニアーナは地下から早々にでてベニアーナは軽い足取りで戦士達の元へと向かった。
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次回更新は3/1を予定しております。
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俺は勇者とも呼ばれまた、覇者とも呼ばれたリベリアルと言う男の壮絶な人生をエンドラから事細かく説明された。
「わかったかな?」
「まぁ……大体は分かったよ」
「大体って…わからなかったところがあったらちゃんと言ってよ!」
こんな事言うのも何だが、人の身の上話なんてどうでも良い。確かに、勇者と呼ばれていた男がルシファーに唆されて結果覇王と言う異名をつけられ、またその異名がスキルになっている所に関しては若干興味を引くところがあったが、エンドラが何故リベリアルの事をそこまで理解させようとしてくるのかが、わからない。
「エンドラよ辞めなさい。主人がお困りだろう?」
漆黒の鎧をまとった覇王がエンドラに対して注意をした。
「え?あぁ……でも本来の主人は貴方なんだし其奴らはお返ししますよ」
俺はこの時とんでもない勘違いをしていた。
「そうか、そうしてくれるとありがたい。その方がより活躍出来ると思うのでな。ところで主人よ、今から何をするつもりなのだ?」
「いえいえ。今から三魔……ん?今なんて言った?」
「主人がこれから何をするのかを聞いているのだよ」
「え?」
この時初めて気付く、先程からリベリアルが言っている主人とは俺の事をだったのだと。そんな、突拍子もないその発言に混乱し慌てふためいている所にエンドラの声が耳に入ってきた。
「まぁ、そう言う事だから宜しくね♪」
「いやいや!どう言う事だよ!」
「何言ってんのよ、もう分かってるくせに!リベリアルは今日から貴方に仕える事に決めたのよ」
「いや、そんなの勝手に決められても……」
「はッ!すまない、多少剣の腕に自信があったので役に立てるかと思ったが……迷惑だっただろうか?もしそうならばエンドラとガンドラはここにおいて直ぐに立ち去る事を約束しよう」
何かに気付いたかのような大きな声を上げてリベリアルが話し始めた。
え、何この断りにくい雰囲気。やめてほしんだけど!!
「て、言ってるけどどうするのよ?」
「わ、わかったよ……」
これから仲間に覇王が加わった事でより面倒な事に巻き込まれるんですね、わかります。
でも!こう言うしかないでしょ!?ココでもし『すみません、仲間にすることは出来ません』とか言ったらリベリアルめっちゃかわいそうじゃん。それに、エンドラとガンドラも主人と居られなく訳だから、かわいそうじゃん?
「仲間にしてくれるって!良かったね!」
「おぉ!本当に良いのか?迷惑では無いか?」
そんな事を言いながらもリベリアルは、じわりじわりとこちらの方へ目を輝かせながら近づいて来る。
「あ、う、うん……よ、よろしく……」
なんだ、この圧力……これが覇王という異名を持つ男が放つオーラなのだろうか……
俺は右手の平を開いてリベリアルに向かって突き出した。
「戦闘であれば何でも任せてくれ!」
リベリアルはそう言って俺の突き出した右手をガッチリと掴み力強く握手をした。
と言うか力強過ぎた。硬い木の枝が複数本折れるような甲高い音をあげながら、俺の手首から先のありとあらゆる骨は様々な音を立てて砕け散った。
俺は必死に悲鳴を堪えながら、帝宮へと向かうべく一歩踏み出す、その瞬間歩いた振動により再び手に激痛が走る。
「ちょっと用を足して来る、みんなここで待ってて」
堪らず治癒魔法を使おうとしたが、それをみたリベリアルは責任を感じるのではないかと思った俺は、少し離れた場所で手の治療をすることに決めた。
「ならば私もお伴しよう」
「いいや、大丈夫だ」
「そうか……」
なんで若干落ち込んでんだよっ!?排泄時の護衛とかおかしいだろ普通に考えて!
「ここなら、見られないかな。
聖なる祖霊よ天空の息吹を吹きかけよ
全ての汚れは息吹の前に消え去り
全ての傷は息吹の前に還らん
古代魔法【完全治癒】」
真っ青に腫れ上がった右手を神々しい光が包んで行く。
光は数秒間俺の右手を照らした後皮膚の中に浸透していくように消えて行った。
そして、光が完全になくなった頃には俺の右手は完治していた。
「主人よ、早かったではないか。本当に用をたしてきたのか?」
「心配しなくて大丈夫だ。そんなことより一つ気になっていたことがあるのだが聞いてもいいかな?」
「私に答えられる範囲であればなんでも聞いてくれ」
「リベリアルって初代勇者と言われていたんだよな?」
「初代勇者とは言われていないが、人類史上初めて勇者と呼ばれたのは私だったようだ」
じゃあ、初代じゃねぇかよ。コイツもしかして頭固いのかな?
「そ、そうか。初代勇者ってことはかなり前の人だと思うんだけど、今の年齢はいくつくらいなんだ?」
「魔族になったあの時から人としての時は止まっている。人としての年齢で言うのであれば33歳くらいでは無いだろうか」
なるほどな、魔族になっていた間は年齢は止まり。幸か不幸かその期間が長ったため今こうして生きているということか。
「33歳か…意外とオッさ……いや、なんでもない。これから残りの三魔将とアスモデウスを退治しに行くつもりなんだけど、リベリアルはどうする?先に帰っていても良いけど、その場合はガンドラとエンドラだけは貸してくれないかな?」
「もちろん同行させてもらう。元より、敵が誰であろうと主人が戦うと言うのであれば私は迷う事なく剣を抜くつもりだったが、その敵が憎きルシファーの仲間というのであれば思い切って剣を振るうことができる」
その強者を恐れぬ心意気をカルダド王国の戦士たちに叩き込んでもらいたいものだ……
「ありがとう。早速行こうか」
「うむ、エンドラ我が刃となれ」
リベリアルがそう言うと人型だったエンドラは一瞬にして大剣へと姿を変えた。
「【心眼】」
俺はスキルを発動して、残りの三魔将とアスモデウスの場所を確認する。
脳内に映し出されたマップからは、2つの赤点が帝宮からもの凄い速さでこちらに急接近して来ているのが見て取れた。
「主人よ、それはなんの魔法だ?」
「いや、これは魔法じゃなくてスキルだよ。そんなことよりも、三魔将の残りの2体がもうすぐココにくる。気を引き締めてくれ」
「承知した」
何故、向かって来ているのが三魔将だと分かったのかと言うと、帝宮に一つだけ赤点がありその赤点にだけアスモデウスと名前が表示されていたからである。
「左右から1体ずつ回り込むように来ているな…… リベリアル、右からくる敵を頼む」
「主人よ、一つ提案なんだがいいか?」
こんな時に提案ってマイペースかよっ!
「う、うん……手短に済ませてくれよ?」
「うむ。私が全ての敵を引き受けよう」
「わかっ…… え?」
「というか主人よ、そなたはなんの装備も無くして三魔将と闘うつもりだったのか?」
そういえばそうだった、俺の装備は全部リベリアルが身につけているんだった……
今素のステータスでも十分闘えるとは思うが、最悪差し違いするかも知れない……ここはリベリアルに任せたほうが安全なのか?
「それもそうだな…… 魔法で援護をする、リベリアルは悪いが2体を相手にしてくれ……」
「承知した」
リベリアルの返答が終わる寸前、2つの陰が俺たちを襲う。
「【天迦霧双】」
事はリベリアルが放ったその一声を最後に終止符を迎えた。
俺を除いて、敵2体とリベリアルを黒い霧が包み込んだ見た目は【霧幻雷斬】とさほど変わりは無いが、雰囲気がどことなく違うのは感じ取れる。
【天迦霧双】は【霧幻雷斬】に比べて刺々しいと言うのが正しいのかわからないがとにかく、威圧感があった。
そんな、威圧感を漂わせる霧に包まれた3人は直ぐに霧から解放されることとなる。
霧はリベリアルの体に吸い込まれるように消えていった。
「だいじょ…… えっ!?どう言うこと!?」
俺の目の前には、二体の翼を持ち二本の角を生やした悪魔が翼を断たれ、角を折られた状態で地面にへばりつている。
「主人よ、もう終わったので危険はないと思う」
「ちょ、ちょちょっとまって……」
え?どう言うこと?さっき霧が出てきて直ぐに晴れたと思ったらよくわからない悪魔みたいなやつが倒れてて……
「どうかしたか?」
「今のはなんなんだ?」
頭の中がパニックになり俺の脳内から語彙力と言うものがそぎ落とされたらしい。率直で感じたことをそのまま言葉にしてリベリアルに伝えた。
「【天迦霧双】の事か?」
「そうそれの事」
「武技みたいなものだな」
「…」
俺は、リベリアルの話に耳を傾けて言葉を飲む。
「ところで、もう一体はどこにいるのだ?」
えっ説明終わりっ!?嘘でしょ?
「ちょっとまて、【天迦霧双】について詳しく教えてほしい」
「そう言う事ならコイツから聞いてくれ」
リベリアルは右手に持っていたエンドラを手放して地面にそっと置いた。
すると瞬く間に黒い体験は誰もが羨む美女へと変貌した。
「話は聞いていただろ?主人に説明してくれ」
「もぉー、人使いが荒いんだからー!」
エンドラはそう言いながらも嫌がる事なくそして詳しく説明してくれた。
【天迦霧双】は超攻撃特化の技らしく、その効果も絶大なものだった。
その効果は以下のような物だ。
・霧に入った全てのモノを斬り刻む。
・霧に入った全てのモノのステータス(守)を半分にする。
・霧に入った全てのモノのステータス(攻)の合計の半分だけ発動者のステータス(攻)を上昇させる。
・霧に入っている間、発動者の受けるダメージは2倍になる
まさに自分の命を顧みない攻撃特化の技である。そんな技をリベリアルは何のためらいもなく使いそして勝った。
やはり彼は勇者として天命を授かったのだろう、そんな彼が俺なんかに仕えていていいのだろうか……
「ありがとうエンドラよくわかったよ」
「いえいえ!じゃあ戻るね!」
「その前に1つ聞いてもいいか?」
「なに?」
「どうしてリベリアルが持つときは大剣になって俺が持つときは太刀のような形になるんだ?」
「んー、それはねぇ…教えてあげなーい!」
そう言うとエンドラは一瞬にして大剣へと戻ってしまった。
「ちょっっ!! はぁ……まぁ、教えたくなさそうだったし別にそこまでして聞く必要は無いか…」
「主人よ、エンドラの説明で納得しただろうか?」
「あぁ、うん。わかりやすかったよ」
「それは良かった して、もう一体はどうするのだ?」
「今から倒しに行くよ【心眼】」
脳内に映し出されたドドルベルン帝国のマップにはあるはずの赤点が無く、瞬時にマップが切り替わったが、それと同時に映し出されたマップは砂嵐状になり見えなくなってしまった。
「主人よ、急に黙り込んでどうされたのだ?」
「居ない、さっきまで帝宮の帝座に座っていたはずなのに……」
「別の場所に転移したと言う事か?」
「わからない、とりあえず行って確かめて来よう」
「承知した」
そう言って帝宮へと向かって内部を隅々まで見回ったがそれらしき存在は無かった。と言うよりも魔族らしき魔力を全く感じない。
不審に思い【心眼】を使い魔族を探したが全て消えていた、外に出払っていた戦士の様なものたちの反応も全くなかった。
俺たちは帝国を全土を見て回り生存者か魔族が居ないかを探したが魔族は一匹たりとも出てこなかった。
だが、代わりに生存者は複数名存在していた。【心眼】で人族を探したところ、帝宮の地下に1人と門の外に複数名確認できた。
門の外にいたのは魔族の魔力を垂れ流していた戦士達だった。アスモデウスのスキルなのか何か分からないが彼らは洗脳状態のような状態になっていた。そして帝宮の地下に1人いたのはドドルベルン帝国帝王の娘、ベニアーナ・トルニーデだった。
「助けていただき誠にありがとうございます……」
彼女は黄色のドレスを身にまとい上品さを感じさせはしたが裾などは汚れており、目にはクマができていた。
彼女もアスモデウス関連における被害者であることは言うまでもないだろう。
「いえいえ、お怪我はありませんか?」
「大丈夫です…それよりあなたの名前はなんと言うのですか?」
「俺の前は、鈴木祐介と申します。貴女の名前は?」
「私の名前はベニアーナ・トルニーデ、バルダリアン・トルニーデの娘でございます。スズキ様に救っていただいた御恩は決して忘れません」
帝王の娘という事か……
「お気遣いなく。それから名前は祐介と呼んでください、鈴木は名字なので」
「わかりました、ユウスケ様」
「様いりませんよ……」
「命の恩人……いや、私の愛する国を救ってくれた救国者なのですから様付けするのは当然かと」
この子、自分の国がどうなったか知っているのか……
「帝国を救うことは出来なかった。救えたのは君の命と僅かな戦士達の命だけだよ」
「戦士達はまだ生きているのですか!?」
突然火が灯ったかのように彼女の目はイキイキとし始めた。
「あぁ、生きているよ。とりあえずここを出ようか?」
「本当ですか! 早速戦士達の元へ行きたいのですが良いですか……?」
「勿論。だけど護衛がてら俺たちも同行させてもらうけどね」
「それは心強いです。是非お願い致します」
俺、リベリアル、ベニアーナは地下から早々にでてベニアーナは軽い足取りで戦士達の元へと向かった。
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