事故死したので異世界行ってきます

暇人001

第23話 新たな出会い


 体を貫いた光の槍それに伴う大量の流血により、意識は段々と遠のいていく、そして突然激しい頭痛と耳鳴りに襲われる。
 その瞬間、目の前が真っ暗になり、鮮血を噴き出していた傷口から脳に伝わってきていた激痛も、エリフィスの心配する声も、何も聞こえず何も感じない。
 
 だがこの感覚はどこか懐かしい。
 転生する前に訪れたアノ感覚にとてもよく似ている。
 どうやら死んでしまったようだ。









 おわり。













「勝手に終わらせないでください!」

 その声が聞こえるとともに、段々と意識が鮮明になり、気付いた時には、あのポツンと置かれた椅子に座っていた。
 例の如く、向かいの椅子には机を挟んでイスラフィールが座っていた

「イスラフィールさん?」

「そうですよ! もー、どうするですか」

「俺、死んだんですか…?」

「はい、貴方は死にましたよ……」

「ぅぇっ…」

 現実を突きつける女神のその言葉に思わず涙と嗚咽が混じり合った声にならない声が出る。

「だ、大丈夫ですかっ?!」

「大…丈夫です……」

 死んだことに対するショックで、どもりながらそう伝える。

「今なら蘇らせることが出来ます、どうしますか?」

 イスラフィールは唐突に、そして真剣な眼差しで蘇生ができることを俺に伝えた。
 俺は自分の耳を疑った、しかし今話している相手は女神なのだから人1人蘇生させるくらい容易いことなのだろうか?


「お願いします」

 迷わず蘇生を願った。

「わかりました、但し蘇生後は死ぬ前までと違いペナルティが課せられます」

「と、言いますと…?」

「詳しい話は手紙に書いてポケットにでも入れておきますので後で確認してください」

 どうやら本当に時間が無いようだ、今は蘇生が重要だそちらを優先しよう。

「わ、わかりました」






 早朝急にハッと目が醒めるように、異世界に戻ってきた。
 胸に刺さっていた槍は無くなり傷は治っている。
 イスラフィールが俺を蘇生してくれたようだ。
 鉛のように重かった体も随分と軽くなっている、どうやら一度死んだ事で俺にかけられた魔法は効力を失ったようだ。

「な、何をしたッ!」

 先程まで悠然としていた男の顔色が変わる。

「うるせぇよ 【ゲート】」

 俺はすぐさま安全を確保するべく、ゲートを開き勢いよく飛び込んだ、俺は頭の中で家をイメージする。







 俺が家に着くなりゲートは直ぐに閉じられた。

「ふぅ…」

(ふぅ… じゃ無いわよ!本当に死んじゃったかと思ったじゃ無いっ!)

 エリフィスの話し方が女の子らしくなった、本気で俺の事を心配してくれていたようだ。

「俺あの時どうなってた?」

(どうって…白い光に包まれてその光が消えた頃には傷が治ってた 何かしたの?)

「あぁ… 昔からの親友に助けてもらったんだ」

 女神のことを説明するとややこしくなるので俺は少し嘘をついた、自分で思い返して見るとなんとずさんな嘘だろうか。

(そうなの…あなたが無事でよかった)

 でも、エリフィスはそんな嘘を信じてしまう、と言うかエリフィスにしたら俺がどのような方法で生き返ったかなんてどうでもよかったのかもしれない。

「心配かけてごめんな」

(し、心配なんて!妾はしておらぬ!)

 口調がいつも通りに戻ったどうやらもう大丈夫のようだ。
 ポケットの中を漁ると折りたたまれた紙が出てきた。


 ー  鈴木祐介様

 この手紙を読まれていると言う事は無事危機を乗り越えた事かと思います。
 今から祐介様に課せられたペナルティを記しますのでよく読み理解してください。

 一つ、 【神の恩恵】の返還

 全て無くなったわけではありませんか何個かは蘇生の代価として天界の方に献上しなければなりません。
 無くなった恩恵に関しては、後ほどステータスで確認をされて下さい。


 二つ、 レベルの下降

 これも蘇生の代価ですかレベルを上げればステータスは元に戻りますのでご安心くたさい。

 三つ、蘇生の再利用不可

 もし、次死んだ場合は私達神の力によって、蘇生される事はありません。


 これが祐介様に課せられたペナルティです。
 今後は安全に配慮してから行動するようにしてください。


      死者受付窓口担当イスラフィール  ー

 
「ステータス」

 自分の失ったスキルが何かを調べるべくステータスを開く。





鈴木祐介 
種族:人間  職業:剣士  ランク:S

Level :148
HP  89070/89070
MP 167900/167900
攻   8790
守   4760
知   4530
速   4600
運   4607


スキル

無限の力
レベルとステータスの上限がなくなる
獲得経験値が5倍になる

神の加護 
全てのステータスを大幅にあげる

大魔導士の祝福 
元属性7属性を使用可能になり
常時MPを2倍

心眼 
マッピング、脳内に移し出された地図に目的のものがある場所に赤点をつける
対話中の相手が嘘をついているかどうかがわかる

黄昏 
毎分消費MP500
全ステータスを2倍する

魔法

全て使用可能







 ステータスとスキルがかなり減っているのが見てわかる。
 スキルに関しては


時読み    

神の裁き 

神化  

ディメンション

王族 

覇気


 が無くなっている、この中で1番痛いのはやはり【神化エボルブ】だろう。
 俺の持っていたスキルの中で1番強いといっても過言ではないスキルが無くなってしまった、だが魔法は使える。
 これからは魔法とエリフィスを使っての剣技が主な戦闘方法となってくるだろうな。


「エリフィス、負荷魔法を受けなくする方法ってあるか?」

(うーむ… 基本的には術者の視界から消えることができれば魔法は解除させるが奴らが先程使ったのは恐らく、範囲負荷魔法だと思う)

「範囲負荷魔法?」

(一定の範囲に入ったものをその範囲の中であればその範囲から出ない、又は死なない限り永久的にステータスを下げられる、その範囲が狭ければ狭いほど効果は高くなる)

「なるほどな、でもスキルも使えなくなっていたのはなんでだ?」

(それは 技封魔法を使われていたのだろう 恐らくそれも範囲負荷魔法と共にかけられていたのだと思う、技封魔法は1人に対してしか発動できない、だけどその威力は強力 その範囲に入っている者の如何なるスキルも封じてしまう)

 なるほどな、向こうは俺の事を完全に対策した上で待っていたと言うわけか…… 俺の無謀な作戦が敵の勝利へと繋がっと言うわけだな。

「そうか… でも、男は俺の近くにいても魔法を使っていたぞ?同じ負荷を受けたら魔法は使えないんじゃ無いのか?」

(範囲負荷魔法は術をかける人数を絞れば絞るほど効果を増す)

 だから、あんなにもステータスが下がって、さらに向こうは魔法が使えたという訳か。

「具体的な対策方法はあるか?」

(負荷魔法範囲外からの攻撃か負荷魔法を無効にする装備をつけるか、それか大勢で乗り込むかの三択では無いだろうか)

 こいつが大賢人になれば良い、俺は心の底からそう思う。

「魔法で遠距離攻撃か、ちなみにその無効化できる装備はどこにあるんだ?」

(大勢で攻めると言う考え無しか…ふふそなたらしいな
負荷魔法を無効化する装備は数多くあるぞ、今から街へでて防具屋を見てこれば3つ位は売っているだろうな)

「俺にあそこまでした奴らを許すほど俺は大人じゃないんでね、今から買ってくるよ」

 俺は家を出ようと玄関のあるリビングの方へと向かった、そしてリビングについた俺はあるものを見つけてしまう。

 二通の手紙がリビングの机の上には置かれていた。
 一通はリリカが今日アレクたちとクエストに出かける事 そしてもう一通は、朝10時にコロッセオまでいき優勝賞品と売上金を受け取りに行く事。


 朝からのドタバタで、俺はすっかり忘れていた、手紙を見てようやく思い出した。

今の時間はすでに13時を過ぎていた、3時間以上の遅刻だ、サラリーマンならクビになってもおかしくないレベルだ。
 俺は慌てて家を出て防具屋に向かうよりも先にコロッセオに向かった。






 全速力でコロッセオに向かい中に入ると換金するときにお世話になった女性のに話しかけた。

「す、すいません!」

「あ!ユウスケさんですか?」

「そうです!」

「応接室でお待ち下さい!」

 俺は誰もいない応接室に入り管理人を待った、待つ事5分程度

ガチャー

 ドアが開く、そこには管理人さんの姿があった

「お待たせしました」

 管理人は深々とお辞儀をする。
 いやいや、お待たせしたのは俺の方だ……

「と、とんでもない… すっかり忘れてしまいこんな時間になってしまいしました…… 申し訳ない」

「いえいえ、 どちらからお先に渡せば良いですか?」

「えーっと……まずは売上金の方からお願いできますか?」

「かしこまりました」

 管理人がそう言った瞬間、応接室のドアが開き中に複数名の女性がそれぞれ、札束が山のように積まれた台車を押しながら入ってきた。

「1,750,000,000 リンです」

 約17億リンもの大金が俺の元へと運ばれる。

「ありがとうございます」

「いえ、ユウスケ様の当然の権利でございすので 馬車をご用意させていただいたのでお運びになる際にはそちらをご利用ください」

 正直、アイテムボックスと言う名の無限倉庫があるから別にいらないのだが、向こうのご厚意でしてくれた事だろうしありがたく使わせていただこう。

「あちらが、優勝賞品です」

 管理人がドアを指をさしてそう言うと、禍々しくそして今にも動き出しそうな、黒を基調とし所々に赤い亀裂のような模様が入った鎧がガラスケースに入って出てきた。


(なに⁈)

(ど、どうした)

(いや…まさかな…)

(なんだよ)

 エリフィスは急に声を出したかと思うと、何もなかったように黙り込む。


「そしてこちらが優勝賞金の3億リンです」

 売上金17億5千万リンと合わせて、20億5千万リンを受け取った。

「たしかに受け取りました」

「ガンガンチュアも現金と同様にご自宅までお運び致しますがそれでよろしいですか?」



(なにっー!!???)

「うわっ!」

「どうかなされましたか?」

「いえ、なんでもありません、失礼しました…」



(急に大きな声出すなよ!)

(ガルガンチュア…… まさかここで相見えるとはな……)

(は?)

(魔法に対して絶対耐性を持つ防具…… ヤツの前では負荷魔法も何もかも、魔法は全て無に還る……)


「なんだって?!」

「だ、大丈夫ですか…?」

「すいません最近疲れがたまってまして…」

「そ、そうですか…」


(ってことはこいつをつければアイツらを思う存分叩きのめすことができるってことだな?)

(えぇ……そう言うことになるわ なんて巡り合わせなのかしら……)


「管理人さん、ガルガンチュアをこの場で着けさせてもらって良いですか?」

「え、今なんと?」

 管理人は自分の耳を疑うようにブルブルブルと頭を左右に振り問いかけてきた。

「いや、ですからこの場で着けても良いですか?」

「お言葉ですがこのガルガンチュアは本物ですよ……?最悪の場合命を落とすことも覚悟の上でおっしゃられているのでしょうか?」

 なんだこの感じ、なんだろうエリフィスに似た匂いがプンプンと感じる。

「大丈夫です、今の俺にはそいつが必要なんです」

「わかりました…」

 管理人は俺にガラスケースを、開ける鍵を渡した。
 どうやらガルガンチュアには指一本触れたくないようだ、そんなに危険なものなのだろうか?確かにぱっと見禍々しい雰囲気は出ているが、どこか誠実さと靭さを感じさせる。
 俺は管理人から渡された鍵でガラスケースを開けおもむろに左籠手を取ろうと触った瞬間、ビリビリと赤黒い雷が走ったのが見えた

(なんだ今のは…)

(魔装ガルガンチュア、魔剣に似た類のものだ、そやつも妾のように主人を選ぶ 妾より強力かもしれんぞ?お主に耐えられるかのぅ?)

 脳内にエリフィスの嘲笑う声が聞こえる。
 俺は覚悟を決めて、今度はしっかりと掴んだその瞬間
鎧から赤黒い雷が走り俺の腕へと伝わり脳へと到達した。
 その瞬間脳内に男性の声が響く。

(我を欲するのは貴様か…… 貴様の実力を……ってエリフィス?!)

 なにこの展開…… 聞いてないなぁ…?

(ふふふ、久しいのぉ、ガンドラよ)

(なんだよガンドラって)

(こやつの本当の名前じゃよ)

(エリフィスの主人はこいつなのか?)

(あぁ、そうじゃとも 妾を遥かに凌ぐ力をもつ者だ)

(なるほどな… エリフィスが認めた男なら我も認めざるを得んか……)

(決まりだな)

 エリフィスの声が脳内に響き渡る。
 こうして俺は難なくガルガンチュア もとい、ガンドラの主人となった。
 エリフィスは初めからこうなることがわかっていたようだったが。


「だ、大丈夫なのですか?」

「えぇ、大丈夫ですよ」


 俺はガンドラを全て身につけた状態で管理人と会話をする。

「そんなバカな… 私は確かに本物を購入したはず… いったいどこですり替えられた言うのだ…」

 本物をつける=死
 その固定概念から抜け出せない管理人。

「いえ、紛れもなく本物ですよ」

 俺は軽く闇魔力を全身に流す。
 すると、ガンドラからは黒い雷がビリビリと発生した。


「なんと… ガルガンチュアを使いこなすとは… 恐れ入りました」

「いえいえ、俺はこれで失礼します
現金の方は後日受け取りに来ることにします
今から急ぎの用事がありますので」

「わかりました」


 こうして俺は最強の鎧を手に入れてコロッセオを出た。
 コロッセオを出るや否や周りの目線が痛い、これはあのヤクザ風のド派手な服を買った時よりも凄まじい。

「え、何あの人頭おかしいんじゃない?」
「だよね、あれってレプリカでしょ?しかもあれって観賞用らしくて実用性が全くないみたいよ」

「おい、あそこにヤバい奴がいるぞ」
「なぁあいつの携えてる剣ってエリフィスじゃねぇか?」
「馬鹿野郎 エリフィスのレプリカじゃねぇーか?
の間違いだろ?ははは!」

「なんだよあれ、古臭いったらありゃしねぇな! そんな骨董品つけてどこに行くんですかー?」
「やめとけって!」


 誰もコイツらのことを信じていない、俺は俺のことを殺してきたヨルダン法国よりも、コイツらを全く信じない上に侮辱までした視線を向けている国民の方が許せなかった。
 俺は全身に火と闇の魔力を巡らせ、腰に携えたエリフィスに左手を添えて闇属性の魔力を流した。


 瞬間、エリフィスからは凄まじい黒いオーラが溢れ出し、ガンドラからは禍々しい赤黒い稲妻が走った。
 それを見た国民は、一同口を大きく開け呆然としている。


「フン…」

(妾たちを侮辱した罪じゃな)
(だな)

 脳内で仲良く2人が会話している。
 おっと、さっさとアイツらを叩きのめしにいかなくてはいけないな。
 まぁ……依頼という名目ではあるが9割方、個人的な恨みを晴らしに行くだけなんだけどな。





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ありがとうございます!

小説を書くのは初めてなので至らない点があるかもしれませんが大目に見てやってくださいm(_ _)m

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