事故死したので異世界行ってきます

暇人001

第2話 入国






「時間停止、経験値5倍、それに『神の神威』に至っては、実質3つ分の【恩恵】と変わらないんじゃないか…?」


 俺の独り言にコクリと頷くイスラフィール


「では、これで」
 

 そう言って俺は紙切れをイスラフィールに手渡した。


「かしこまりました、どちらとどちらでしょうか?」
「え? 全部ですけど?」
「はい⁈ 確かに能力所有者を排除すると言う条件付きで2つ選んで頂くと約束しましたよね?全部だったら3つじゃないですか ︎」
「なに言っているんですか?元々力を授かる権利がありますよね?それで1つありますよね? そして、追加であなたの条件を飲む代わりに2つ授かる権利を得た。
ですのでこれらを合わせて3つです」
「ふざけたこと言わないでください!元からもらえる権利を合わせて2つです!」


 イスラフィールの、頬はぷぅーっと膨れ上がった。


「そうなんですか、でしたら初めからそう言ってくだされば良かったのに。俺はてっきり追加で2個貰えるのだと思って契約してしまいました」


 俺が深く頭を下げそういうと、イスラフィールも
一礼してからこう言った


「説明不足でした申し訳ありません…
では改めて、どのお2つを選びますか?」


「はい?契約の条件が互いに食い違っている時点でそれは無効でしょう?ですので俺は、お1つだけ選ばせて頂きます、無論能力所有者討伐の件に関しても、一切の協力は致しません」

「ぐぅ…そ、そんなぁぁ…」


 悲しむ表情を見せるイスラフィール
 俺はお構いなく能力を選択してこう告げた
「【神威の力】を授かりたいです」
「い……いい…ですよ…」
「ありがとうございます、では引き続きお仕事頑張ってください」
「そうじゃなくて!3つでいいって事ですよ!」


 イスラフィールは少し取り乱して、そう言った

「ほんとですか、それは嬉しいです、では能力所有者の件、確と承りました」

「よろしくお願いします…」

 イスラフィールは元気なさげな声でそう言うと俺の足元に魔法陣を作り出した。

「祐介様のご活躍、期待しております」

 そして俺は異世界へと転生された。


ファンッー


 目の前が真っ白になり
その後ぼんやりと緑色の大草原と青い空が目に入るようになった。

「…転生できたのか⁇」
「ん?これはなんだ?」

 俺はポケットに違和感を感じ手を突っ込んだ。
 ポケットの中には手紙が入っていた。

ー鈴木祐介様
 この度は無事転生されたこと喜ばしく思います。
 前世の記憶は元よりこの世界の文字の読み書きと聞き取りもできるようになっているかと思います。
 『ステータス』と口に出すか心の中で言って頂くと自分のステータスを確認することができます。
 また、他人向けてステータスと言うとその方のステータスを確認することも可能です。
 他にも、この機能でアイテムを調べることや、人以外にも魔物等のステータスを見ることも可能です。
 『ホール』と心の中で念じて頂ければ、黒い穴が空中にできるかと思います、その穴の中はアイテムボックスになっており様々なものを際限無く入れる事が出来、取り出す際には取り出したい物を想像すればすぐに取り出す事が出来ます、またホールは自分だけしか認識することはできず確認できません。
 それでは、良き異世界ライフを。

           死者受付窓口担当 イスラフィール ー


 なるほど、転生者が暮らしやすいようには整備されてるみたいだ。
 来て早々だが、自分のステータスを確認してみよう……


「ステータス」



目の前には半透明のスクリーンのようなものが浮かび上がりステータスが表示されていた。






鈴木祐介 
種族:人間  職業:無し

L v :1
HP 8/8
MP 5/5
攻  3
守  1
知  1
速  2
運  3

スキル
『時読み』←New !
『無限』    ←New !









 ちゃんとスキルが反映されていることに感心したと同時に、なんだかゲームっぽいなと感じた俺であった。


「さて……どこに行こうか……とりあえず宿を探さないといけないな」

 コンパスを持っているわけでもなく地図があるわけでも無い、そんな中自分の直感だけを信じてひたすら歩くだが…… あるけどあるけど町らしきものが見当たらん!

 むしろ、元いた場所より草木が生い茂って来ている上に、俺の身の丈の倍ほどの高さの木がたくさん生えているまるで森だ、ていうか完全に森だ
 もしかして……進む方向間違えた?


ガザガサガサーー


生い茂った草が左右に揺れる。


「キャッ!キャッ!」


 甲高い鳴き声で草むらから出て来たのは異世界ファンタジーおなじみのスライムだった


「えっ!スライムじゃん!可愛いなぁ」


「キャッ!キャァッ!」

 スライムは鳴き声をあげながら俺に飛びかかって来た。


「フン…いくらレベル1だからといってスライムに負けるほど貧弱ではないわッ!」


 スライムの体が俺に当たる、スライムの体当たりは想像をはるかに超える威力だった。
 俺の視界が揺れる。

「う、うそぉ…スライムってこんなに硬くて強いもんなのかよぉ…
そ、そうだ、『ステータス』」

 スライムのステータスが浮かび上がる






スライム
種族:スライム

L v .1
HP 2/2
MP 0/0
攻   1
守   1
知   1
速   1
運   1

スキル
無し






「よっっっっわッ!」

 俺こんな奴の攻撃で危うく脳震盪起こしそうなったのかよ…
 俺は近くにあった、木の棒を手にしてスライムにフルスイングした。
「おりゃぁ!」


ブンッッー ︎


 俺のフルスイングがスライムに直撃したスライムは少し飛んで木にぶつかり溶けるように形を崩していった、どうやらスライムを倒せたようだ。
 俺はスライムの攻撃を食らっていたため自分のHPがどれくらい減っているのかを確かめるべく、ステータスを表示させた。


「ステータス」







鈴木祐介
種族:人間   職業:無し

L v . 8

HP 3/39
MP 5/32
攻   34
守   28
知   26
速   35
運     7

スキル
『時読み』
『無限』  






「うぉお ︎ スライム1体倒しただけで、めっちゃレベル上がってる……恐るべし、ぶっ壊れスキル……」


 こうして俺は初モンスター討伐をするのであった。


 俺はスライムを倒した後しばらく歩き森を抜けた。
 森を抜けたのは良かったのだが……

 なんだこれ……

 俺の立っていた場所は切り立った崖の先端だった、下を見れば両手ではとても収まら位の緑が広がっている
 その緑の中に1つ人工的に作り上げられてであろう石で出来た壁が円を描くように築かれていた、遠すぎて細かくは確認できなかったが家屋等の建物も沢山建設されていた

「ふぅ……なんとか国らしきものは見つけたけど……仕方ない、頑張って下まで降りよう」

 俺は崖からなんとか、無事平地に降りることができた
 途中何度か死にかけそうになったのは秘密だ。

「よく生きてたな俺……」

 俺は降りて来た崖を下から見上げてそう言った
 そして、俺は国らしき物がある場所まで小走りで向かった。


「よぅ!ニィちゃん!カルダド王国に来るのは初めてかぃ?」


 30代後半の傭兵の様な人が俺に話しかけて来た、おそらく検問の様な物だろう。


「はい、初めてなんです!」


「そうかぃ、そうかぃ! 身分を証明できる物を見せてくれるかな?」


「すいません、その様なものは持っていないんです…」


「そうかぃ… だったら、入国はできねぇなぁ… 悪りぃけど帰ってくれるかぃ?」


 ここまで来て帰るなど俺がそんな努力を無駄にすることを行うわけがない。
 意地でも入る、這ってでも入国してやるッ!


「そこをなんとか、して頂けませんかねぇ⁇」


「なんとかって言われてもなぁ……」
 もう1人の傭兵が初めに声をかけて来た傭兵に声をかける。
 何か声をかけているかはわかるのだがなにを喋っているのかは聞き取れなかった。


「そうかぃ!その手があったかぃ!ニイちゃん入国できるよ!」
「本当ですか!では、入らせてもらいますね!」
「1日3000リンで仮入国できるよ」
「3000リン…⁇」
「なんだぃ?持ってないのかぃ?」


 俺は必死で探した、すると手紙が入っていた方とは別のポケットから紙幣の様なものが10枚ほどあることを確認し取り出した、その際に紙幣ではないただの紙がも一緒に出て来た 。


ー鈴木祐介様

 こちらと同府されていた紙幣は転生後の世界の通貨です。
 念のため1万リンを10枚ご用意しておきました。
 因みに1リンは日本円に直すと1円程度の価値です。
 それでは、良き異世界ライフをお楽しみ下さい。

        死者受付窓口担当 イスラフィール ー



「おぉ!ニイちゃんあるじゃないか!それだよそれ!」

 俺は一万リンを1枚傭兵に手渡して3日間分の滞在費を払い、千リンのお釣りを貰い無事入国することができた


おじさんから聞いた話だが、
正式に入国するか、国民になるときには身分を証明できるものと多少のお金を持ってくる必要があるらしい


 イスラフィール様ありがとうございます……


「さて、まずは宿だな……」


 街の繁華街にはズラリと店が立ち並ぶ
食処、酒屋、宿屋、賭屋、花屋、雑貨屋、防具屋、武器屋、その他諸々、それから、大人の店まで
なんでも揃っているという感じだった
 俺は1番やすそうな宿屋を探し、中に入って値段を聞いた。


「相部屋なら2000リン
個室なら5000リン 前払いだ。」


 店主は厳つい中年男性だった。
俺は今後何かあるかわからないためなるべくお金は温存した方が良いと思ったが相部屋はどうしても嫌だったので個室をとった。


「まいどあり」

 無愛想な挨拶をする店主

 俺は構わず自分の部屋に入り腰を下ろした

「はぁ〜疲れた… 1日目からなかなかハードだったな… …」


 ベッドに横になった瞬間1日の疲れがどっと来てそのまま熟睡してしまった。


「…ふぁぁ… 寝ちまってたのか…」


 部屋の窓から外を眺めるともう繁華街は賑わい始めていた。


「そうだ、異世界と言えばクエストを受けたりしたらお金がもらえるシステムだよな… よし、クエストを受けに行こう!」


俺は早々に宿屋を後にして、クエストを発注してくれる場所を繁華街にいた人たちに聞くことにした


「ありがとう!」
「クエスト頑張りなよ!」


クエストを発注してくれるのはギルドという機関のようだ、そしてその道のりまでを教えてくれたのは宿屋の迎えにある花屋の店主の愛想の良いおばさんだった。


「でっけぇぇなぁ、おぃ…」


 俺の目の前には他の店とはまるでスケールが違う建物が一件立っていた。
 まさしく、ココこそが俺が探し求めていたギルドという場所だ。


「失礼しまーす…」

 俺は少し、ビクビクしながらギルドの中に入った

ガヤガヤガヤガヤー


 中はとても賑わっておりクエストを受け付ける窓口は当然のこと、ギルドの中に酒場が設けられておりそこにも人が群がっていた。


 群がる汗臭い男たちの間を抜いなんとか空いていた受付口までたどり着いた。
 すると窓口からは20代前半の可愛らしい受付嬢らしき人がひょこっと顔を出して俺を手招きしていた。

「あのぉ…クエストの発注をしてもらいたいんですけど…いいですかね?」
「ギルドカードの提示をお願いできますか?」
「すいません…そのようなものは持っていないんですけど」
「そうですか!1万2千リンで発行できますがいかがなさいますか?」
「お願いします…」

俺はポケットから2万リンを取り出し受付嬢に手渡し8千リンのお釣りを受け取った


「では、こちらの紙に手のひらを置いてくれますか?」


受付嬢に言われるがまま俺は出された紙に手を置いた。


「ありがとうございます、もう大丈夫ですよ!」


 ほんの一瞬紙に手を置いただけだった。

 これなんのためにしてんだろ?
 なんか意味でもあるんのかな?

 俺が手を置いた紙に受付嬢は一滴だけ水を垂らす



 すると、何か化学反応が起こったかのやつに何も書かれていなかった白紙の紙に文字が浮かび上がってきた。


「ええっ?!なんですかこれ!」 
「あはは、驚き過ぎですよ ︎
スズキ・ユウスケさんですか?
ええっ!?すっごい!変わった名前ですねぇ ︎」


 あんたの方が驚いてるじゃねぇかよ。
 しかも、人の名前で驚くってなんか失礼だな…


「そ、そうですか… 因みにその紙は名前以外に何がわかるんですか?」
「レベルと、ステータスと、スキル等がわかるんですよー!便利でしょ?」


 その程度なら『ステータス』と言えば見れるじゃないか……
 もしかして、転生者以外の人は見れないのか?


「そうなんですか!便利ですね!」
 俺は話を合わせることにした

「あ、これ、ユウスケさんのギルドカードです!」
「もうできたんですか?早いですね」


受付嬢からはキャッシュカードくらいの大きさと分厚さのカードを1枚手渡された。


「あ、すいません!」
「どうかされましたか?」
「私まだ自己紹介してませんでした、ニーナって言います……すいません……」
「大丈夫ですって!こっちこそ自己紹介してなかったですし!あ、あの紙で俺の名前知ってるのか……」
「すいません……」
「いえ、本当に気にしてないので……」


このまま、沈黙になるのは嫌だったのでクエストを見繕ってもらう事にした


「ニーナさん、俺ができるクエストを見繕ってもらえますか?」
「あ、その前にギルドのルールだけ聞いて貰ってもいいですか?」

 完全に早とちりだった、恥をかいた時特有の汗でひたいを湿らせた
 そんな俺に構わずニーナは説明を始める


「ギルドカードの右上に今Fって書いてあると思うんですが最大はSSSになっていて、上位ランクになればなるほど難易度の高いクエストを受けられるようになります、当然難易度の高いクエストになるほど報酬も豪華になります、それから今は何もしなくてもいいんですが、Eランクまで上がった冒険者は職業を選択してもらわないといけません、これはクエストの効率化を測るためですので面倒だと思いますがお願いします、職業に関してはEランクになられた際にまた詳しくお話ししますね!
私からのお話はそのくらいです!」


 なるほど、俺は今入ったばかりだからFランクということか、まぁ当たり前だな。
 ところで、SSSランカーはどれくらいいるのだろう……


「因みにSSSランクの人は何人くらいいるんですか?」
「いま、正式にSSSランクを所持されている冒険者は4人です ︎  そう簡単になれるものではないですが、もし、目指しているのであれば応援します!」


 いや、そういうつもりは無いんだがな…
 俺は愛想笑いをしてお茶を濁した

「あ!そうだ!クエストを見繕って欲しいんでしたよね?」
「そ、そうです!」

説明やらなんやらがあったせいで、すっかり忘れてしまっていたが本来の目的はクエストを受けに来ることだった。


「うーん… こんなクエストとかどうでしょうか?」
そういうとニーナは俺に1枚の紙を渡してきた。
その紙にはこのように書かれていた






薬草採取

適正ランク F

クエスト達成条件
ミドリソウ×10を入手し届けること

クリア報酬
1500リン







「これでお願いします!」


こうして俺の初クエストが始まるのだった。






コメント

  • 暇人001

    また何か不明な点や誤字脱字を確認された場合はコメントして頂けるとありがたいです!

    1
  • 夜桜葵

    こちらこそお願いしますm(._.)m
    頑張って下さい!

    1
  • 暇人001

    コメントありがとうございます!
    ご指摘頂いた点ですが、私の説明不足が原因だと思います。
    申し訳ありません。

    【神威の力】は設定上、レベルの上昇に従いスキルを追加するという内容です。
    よって、レベル1である現段階では【神威の力】によるスキルの追加は無く、また【神威の力】自体をスキルとして表示することは今後もありませんm(_ _)m

    最後に一言
    読んでくださって本当にありがとうございます!
    デビュー作なので至らない点多々あると思いますがどうぞこれからもよろしくお願いします(>_<)

    1
  • 夜桜葵

    今日読みはじめたのですが2話の神威の力と言うスキルがないのですがわざとなのでしょうか?

    1
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