歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~

なつきいろ

閑話 困惑する勇者達!④


 前回までのあらすじ

 姫華の弟が乱入してきた!

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□□□□ ~姫華が守りますの!~ □□□□

 十傑には『不惜身命』という鉄の掟が存在します。

『己の信じる正義の為には命を惜しまないこと』

 それが高じて、『互いの信じる正義については一切の口出しをしないこと』という暗黙のルールが、必然的に出来上がりました。

 それは国のトップであり、十傑の頂点に君臨する姫華であっても例外ではありません。
 いくら当時は不本意だったとは言え、姫華が黙認という形でそれを認めた以上は、姫華であっても守らざるを得ないのです。

「うるせェんだよ! 俺は俺の正義の名のもとに勝手にやらァ! 話は以上だ!」
「真人!」

 結局、暗黙のルールのもと、姫華は真人様の言い分を認めざるを得ないんですよね。
 姫華もそれを分かっているからこそ、その表情には焦りと困惑の色が滲み出ています。

 そして、眉間には小さな皺も......。

 せっかくのかわいらしい顔が台無しです。
 真人様さえいらっしゃらなければ、眉間をツンツンして注意を促すところです。

 そんな真人様は姫華との言い争いを終えると、颯爽とお帰りに───。

───ドカッ!

「ふゥ。......文乃、茶ァくれや」
「......」

 真人様はお帰りにはならずに、ソファーにもたれ掛かるようにして腰掛けられました。

 真人様がお帰りになられない意図は分かります。
 少しでも、私との時間を共有したいのでしょう。

 私が真人様を避けているのは、真人様も分かっておられることです。
 屋敷内で偶然出会った時など、私は露骨に避けるようにしていますし。

 しかし、ここ政務室ではそれができません。
 ダンマリすることはできても、どこにも逃げ場はないのです。

 真人様もそれを分かっておられるからこそ、こうして居座っておられるのでしょう。

「......」
「......」

 逃げ場が無い以上、言われた通りにする他ありません。
 無駄に逆らって、あの猛獣のような視線で睨まれるよりかはずっとマシです。

 ですが・・・。

「オドオドしてねェでよォ、俺の隣に座れやァ!」

───グイッ!

「!?」
「真人!」

 袖を引っ張られた私は、無理矢理に真人様の隣に座らせられてしまいました。

「......」
「......」

 真人様からの視線を感じます。
 いやらしくは無いのですが、私をじっくりと観察するようなねっとりとした視線です。

「......」
「!?」
「......へ、へへ」
「......(お、お止めてください)」

 声にもならない程のか細い声で抵抗するも、それは止まりせんでした。

 真人様の手が、私を徐々に侵食していきます。
 一歩、また一歩と、確実に這い寄ってきています。

 それはまるで町を呑み込む大津波のように明確な悪意を孕んで......。

「......(ま、真人様、お止めください。私には既に婚約者たくまさまがいるのです)」
「......へ、へへ」
「......(こ、これ以上は婚約者たくまさまに申し訳ありません。本当に止めてください!)」
「......おッとォ。逃がしはしないぜェ? 手を繋ぐぐらいはいいだろォ?」

 ダメに決まっているじゃないですかッ!
 家同士で勝手に決められたこととは言え、私の婚約者は『麒麟崎  拓馬』様です。

 であるならば、私の体は拓馬様のもの。
 いくら鳳凰寺家の真人様であっても、みだりに触れて良いものではありません。

「いいかァ? 大人しくしてろよ」
「......」

 しかし、悪意は思ったよりも強大で、このままではそれに呑み込まれてしまいます。
 それなのに、私の体は恐怖に縛られて抵抗という抵抗らしいものは何一つできないまま......。

 私はグッと目を瞑り、自分の不甲斐なさを呪いました。

(......拓馬様、本当に申し訳ございません!)

 ・・・。

 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・・。

 ですが、私と真人様の手が今まさに絡み合おうという時になって、それは聞こえたのです。
 
「......【瞬身】ですの」

───ドサッ!

 その声が聞こえた同時に、私と真人様の間に割り込むように座している姫華。

 当然、真人様による悪意ある侵食は物理的に強制解除されることとなりました。
 いいえ。それどころか、姫華がちゃっかりと私の手を繋いでくれてさえいます。

「姫華......」
「チッ! 邪魔すんじャすんじャねェよ、姉貴!」
「真人。無理矢理は良くないですの。文乃にもっと嫌われますの」
「あァ? 嫌われる程の好感度がまだ残ッてるッてェ言うのかァ? どうなんだよ、文乃!」
「......」

(......そう、吼えないでくださいよ。すごく怖いです......)

 私は再び真人様から隠れるように、ソッと姫華に寄り添いました。
 そんな私を見て、にへらッと微笑む姫華。なんだかとても嬉しそうです。

「まァた、ダンマリかよ! 面白くねェ!!」
「......」

 真人様は不機嫌を露にされていますが、とりあえず危機は去りました。
 ふぅ。姫華、いつも本当にありがとうございます!......大好きッ!!

「それで、真人はまだ何か用があるんですの?」
「あァ? 用がなきャ居ちャいけねェのかよ?」
「ダメですの。姫華も文乃も仕事で忙しいですの。真人は邪魔ですの」
「......」

 いや、本当、こういうことをハッキリと言える姫華はすごいと思います。
 姉弟だから言えた訳ではなく、誰に対してもしっかりと意見できるところは見習っていきたいものです。

「あァ、そうかよ。じャあ聞くけどよォ、竜殺しの件はどうなッたんだァ? 勧誘してたよなァ?」
「なッ!?」
「!?」

(ま、まさか、ここで竜殺し様について尋ねてこられようとは......)

 なんだかとても嫌な予感がします。
 なぜ、このタイミングで竜殺し様のお話を持ち出されたのでしょうか?

 そして、それは姫華も同じ考えだったようで、梅干しを食べた時のような渋い顔をしています。

「それは......継続中ですの」
「んなことは聞いてねェんだよ。接触できたかどうかを言えや」
「......まだですの」
「フラれ続けてるッてェ訳かァ? あの『勇者姫』の姫華様が? ぎャははははは! ざまァねェなァ、姉貴!」
「......」

 唇をキュッと噛み締め、真人様の嘲笑を懸命に受け流している姫華。

 それにしても、痛いところを突かれてしまいました。

 真人様はその『正義』上、竜殺し様に対して強い興味を持たれております。
 だからこそ、竜殺し様関連には一切携わらないよう気を付けていたのですが......。
 
「チンタラやッてんじャねェよ、姉貴。どうせ手紙だけで折り合いでもつけようとしてたんだろォ?」 
「なッ!? ど、どうして分かるんですの!?」
「文乃がいかにもやりそうなことだろ。......(チラッ)。俺はよォ、文乃のことなら何でも分かるんだぜェ?」
「......」

 まるで悪役が舌嘗めずりしているかのようなワンシーンを思い起こさせる真人様。

(真人様、申し訳ありません。それは本当に気持ち悪いです......)

 不思議なのですが、真人様は私がそういうことを言われる度に心底嫌がっていることには気付いておられないのでしょうか?
 それとも、真人様にとっては愛(?)でも囁いているおつもりなのでしょうか?


 正直、ここまで激しく求められると女としては嬉しいと思う反面、理解に苦しみます......。


□□□□ ~姫華の代償~ □□□□

 さて、私が真人様の発言で背筋を凍らせている間にも、姫華と真人様のお話は進んでいきました。

「姉貴よォ、んな面倒くせェことしてねェで、こッちから竜殺しに会いに行きャいいだろ」
「そ、そんなことは真人に言われなくても分かっていますの!」
「あァ、そうかよ。んで? 誰を派遣すんだァ?」
「それは......まだ人選中ですの」
「あァ? 人選中だァ?......そうかい。そうかい。人選中かよ」
「......?」

 見間違いでしょうか? 
 いまチラッと見えた真人様の口角が、悪魔的に吊り上がっていたような気も......。

 それにしても、結果を求める真人様に対して、姫華は若干押され気味です。

 ですが、こればっかりは仕方がありません。
 竜殺し様に関しては竜殺し様側にも問題があるのですから。

(竜殺し様もこう、もう少し寛大なお心を持って招待状をお受けさえして頂けたら、今頃はきっと......)

 ともかく、今の会話の流れは非常にマズいような気がしてなりません。
 真人様の思惑が分からない以上、早々に話題を変えるべきだと思います。でないと───。

「候補がいねェんならよォ、俺が行ッてやるよ。ちょうど今は暇だしなァ」
「「!?」」

 そういうこと......ですか。
 ニチャァと笑った真人様のその表情を見て、私は全てを悟りました。

「文乃は応竜淵あのくそやろう達に狙われていて動けねェ。姉貴は姉貴でやらなきャいけねェことが山積みだよなァ? かと言ッて、五席や七席あいつらじャあ、応竜淵あのくそやろう達に殺されちまう可能性が高けェ。となるとよォ! ここは俺しかいねェだろ!!」

 真人様の真の狙いはこれだったんですね。
 真人様は全てを分かった上で、この展開に話を持っていきたかったと。

(......となりますと、先程のお話は姫華に有無を言わせない為の単なる仕込みだったということでしょうか?)

 しかし、これは非常にマズい展開です。
 真人様の『正義』上、絶対にロクなことにはなりません。

 そして、そのことは姫華も十分に理解しているはずです。

「真人は! 真人だけは絶対にダメですの!!」

 ソファーの前にあるテーブルをバンッ!と叩いて、そう激しく主張する姫華。

 デスクの時同様、姫華の手は赤く腫れ上がっていますが、今はそれどころではありません。
 トレードマークであるポニーテールも、今はクワッ!と臨戦態勢に入っています。

「あァ? 「俺だけは」ッてェのはどういう意味だよ、姉貴?」
「真人では竜殺しさんに失礼を働きますの!」
「おィおィおィ。俺はよォ、もう子供じャねェんだがなァ?」
「今は大事な時期ですの! 大人しくしていて欲しいですの!!」

 なおも、バンッ!バンッ!とテーブルを叩いて激しく主張する姫華。

 あー。あー。姫華の女性らしい美しい御手が見るも無惨な状態に......。
 うーん。これはさすがに見るに堪えません。見ていてとても痛々しいです。

「......姫華。【ヒール】を掛けますから、少し大人しくしていてくださいね?」
「文乃......。ありがとうですの」
「どういたしまして」

 そんな私達のやりとりを知ってか知らずか、真人様はすくっと立ち上がると、そのままドアに向かって歩いていってしまうではありませんか。

(......え? 本当に竜殺し様のところへ行かれるおつもりですか!?)

「真人! まだ話は終わっていないですの!」
「安心しろよォ、姉貴。竜殺しとはちャァんとはなし合ッてきてやるからよォ」
「真人! 待ちなさいですの! 真人!!」

「んじャなァ!......あァ、そうだ。文乃よォ、今度俺が戻ッてきた時には笑顔で出迎えられるようになッとけよォ? そしたら、ちッたァ姉貴の言うことを聞くようにもなるかもなァ? ぎャははははは!」

「......」

 真人様はそう言い残すと、右手をひらひらと振り、姫華の制止を無視したまま政務室から出ていかれてしまいました。

「......」
「......」

 政務室にポツーンと取り残された私と姫華。

 いま政務室はまるで嵐が過ぎ去った後のように静まり返っています。
 私と姫華の息遣いだけがハッキリと聞こえてきます。

 ・・・。

 しかし、そんな静寂も長くは続きませんでした。

「もう! なんなんですの! なんなんですの!! なんなんですの!!!」
「姫華......」
「なんで波瑠も真人も! 姫華の言うことを聞いてくれないんですのッ!!」

 顔を真っ赤にして、バンッ!バンッ!とテーブルを激しく叩く姫華。

 姫華が怒る気持ちも分からなくはありません。
 波瑠様だけではなく、真人様も勝手な行動を取られたら怒りたくもなりますよね。

 ですが、姫華がデスクやテーブルなどを叩く度に(姫華の手とデスクやテーブルなどに)【ヒール】を掛け続けなければならない私の気持ちも少しは分かって欲しいところです。

 レベル4の治癒魔法ですからね。魔力を結構使うんですよ。
 あっ......。ほら、そろそろガス欠みたいで、体が少しふらふらと......。

 と、その時、姫華の手が私の太股を優しくさすってきました。

「ちょっと!? 姫華!?」
「......癒しですの。これは癒しが必要ですの。何だか癒されたいですの」

 その妖しい手つきは太股からお尻へ。
 そして、お尻からお腹へと続いて、私の胸に。

「......んっ! ま、待って、姫華。まだ仕事が───」
「ハァ......ハァ......ハァ......。も、もう我慢できないですの」

 ズイッと寄せられた姫華の小さい口からは甘い吐息が漏れ出しています。もの欲しそうな切ない表情は愛おしく、うるうると潤んだ瞳には私の顔が───いいえ、私の唇が鮮明に映し出されています。

 一方、姫華の空いている方の手は私の太股を経由して、私の大事な部分へと......。

「!? ど、どこ触ってるの!」
「ハァ......ハァ......ハァ......。体が......体が疼きますの」

 私の声が届いていないのか、熱にうなされたようにぶつぶつと独り言を言っている姫華。

 ハァ......。これはもう完全にスイッチが入ってしまっているようです。
 姫華の加護である『勇者姫』の代償が......。

 これは勇者ならば誰でも知っていることですが、強大な加護を有する勇者にはそれ相応の代償が付き物となっています。

 例えば、『真の勇者』の加護を有する波瑠様の場合。

 波瑠様は多くの血を見ると───特に自分で手を掛けた場合、『英雄、色を好む』の例え通り、無性に女性を抱きたくなる衝動に駆られるらしいです。

 しかも、征服欲が増大されるらしく、乱暴気味になったりするとか(※波瑠様親衛隊談)


 例えば、『大賢者』の加護を有する拓馬様の場合。

 拓馬様は新たな知識に触れると───特に自分で謎を解明した場合、『賢者タイム(?)』の例え通り、あらゆることに寛容的となり悟りを開いた気分になれるらしいです。

 しかも、その後は更に知識欲が増大されるらしく、病気がちになったりするとか(※拓馬様談)


 例えば、『聖女』の加護を有する私の場合。

 恋をすること自体は自由ですが、神に仕えるシスター的な役割を担っておりますので、その......なんと言いますか、殿方との行為は禁忌とされています。......と言うか、言わせないでください! 恥ずかしい!

 しかも、私の場合はそれを冒してしまうと『聖女』そのものの加護を失ってしまうそうです(※女神様談)

 
 と、まぁ、勇者にはそれぞれ相応の代償が付きまとっています。
 勇者ならば誰一人の例外なく、この業からは抗えない運命となっているのです。

 そして、それは姫華にも当然あります。

 姫華の加護である『勇者姫』の代償。
 それは微妙に波瑠様の代償と似通っているのです。

 姫華は多くの善行を行うと───特に自分がそれを善行だと思っている場合、『勇者姫、盟友を好む』の例え通り、無性に盟友を抱きたくなる衝動に駆られるらしいです。

 しかも、姫華の場合、盟友とは親友である私のことを指すのだとか(※姫華談)


 そんな訳で、勇者業を果たして戻ってきた姫華は、いつ暴走してもおかしくない状態だったのです。

 ですが、そこはできる子、姫華。
 今までは懸命に衝動を抑えて仕事に励んでいました。

 とは言え、仕事が一段落すれば、姫華の相手をさせられていた事実は変わりませんが......。

 ただ、今回は真人様の件もあって、姫華のブレーキが効かなくなってしまったようです。
 いいえ。ブレーキが効かないだけならまだしも、変に刺激されている可能性も......。

「ハァ......ハァ......ハァ......。熱い......。熱い......ですの。とっても熱い......ですの」
「姫華、大丈夫?」

 こうなってしまった以上は、一旦姫華の衝動を満足おさえさせる他はありません。

 そうなると、問題はただ一つです、それは・・・。

「......ぁん! ちょっ、ちょっと待って、姫華。そこは───!」

 そうこうしている間に、姫華の手が優しく、それでも激しく私の体を蹂躙してきています。
 ジッと見つめてくる姫華の瞳は切なく、それでも官能的に私の心を蕩けさせてきています。

「お、お願い、姫華。せめて......せめて、ベッドに行きましょう? ここはマズいと思うの。いつ誰が来るとも分からないし、ね?」
「ハァ......ハァ......ハァ......。文、乃......」
「わ、分かってくれた? ありが───」
「ハァ......ハァ......ハァ......。無、理......ですの。ごめん、なさい......ですの。衝動が......欲求が......抑え......られ......ない......ですのォォォオオオお"お"お"オ"オ"オ"!!」
「こ、これは『勇者姫の加護ちから』!? ちょっと、まって......ひめ............か..................」

『勇者姫の加護ちから』を発動し、まるで獣の咆哮かのような雄叫びを上げ、私に覆いかぶさってくる姫華。

『勇者姫の加護ちから

 それは盟友として、勇者姫を支える力。
 それは盟友として、勇者姫と共にある力。
 それは盟友として、勇者姫と想いを共有する力。

 つまり、『勇者姫 = 盟友』であるとも言える力。

「ハァ......ハァ......ハァ......。文、乃......。まだ......まだ......昼......は、長いで......すの......。たっ......ぷり......と、楽しみ......ますの......」

 
 その後、私と姫華はお互いの体力が尽きるまで、めくるめく甘美な世界で共に過ごすことになりました。


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後書き

 次回、閑話『変わりゆく人々達』!

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 今日のひとこま

 ~結局どうするんですか?~

「ハァ......ハァ......ハァ......。姫華、少しは落ち着きました?」
「ハァ......ハァ......ハァ......。大変満足しましたの。文乃、ありがとうですの」
「ふぅ......。姫華のその代償はもう少し何とかなりませんか? スイッチが入ると見境無さ過ぎです」
「うーん。難しいですの。気分が高まるとどうしても抑えられないですの」

「そう......ですか。まぁ、代償ですし、仕方がないですね」
「もしかして......文乃は姫華とするのは嫌ですの?」
「べ、別に嫌ではないですよ? むしろ、姫華となら構わないと言いますか......」
「文乃......。大好きですのッ!」

「......ぁん! ちょっ!? こらッ! 抱き着く振りしてどこ触ってるんですか!!」
「......ふへへー。文乃は全身柔らかくて気持ち良いですのー」
「ひーめーかー!! ハァ......。せめて夜まで我慢してください。今は仕事が溜まっているんですから」
「はーいですの! 早速仕事に取り掛かるんですの」

「早急に決めなければいけないことは『竜殺し様について』ですね。......真人様をこのままにしておいてもよろしいのですか?」
「ダメに決まっていますの。止めますの。大変なことになりますの!」
「具体的にはどうされますか? 相手が真人様となると......」
「それについては文乃も分かっているはずですの。答えはもう決まっていますの」

「......そうですね。真人様相手では正統勇者はおろか、五席や七席でも力不足ですからね」
「姫華が行くしかないですの! 真人は姫華が止めますの!」
「ハァ......。こればっかりは仕方がないですね。姫華よろしくお願いします」
「任されましたの! それでですの......」

「どうされました?」
「文乃も一緒に来て欲しいですの!」
「......はい?」
「文乃も一緒に来て欲しいですの!」

「......いえ。聞こえなかった訳ではありませんから。......一体、どういうことですか?」
「一応、保険ですの」
「保険......ですか?」
「真人が姫華の言うことを聞かない可能性がありますの」

「先程の一件のことですね。それは分かりましたが、そこでなぜ私が?」
「姫華の言うことは聞かなくても、文乃の言うことなら耳を貸す可能性がありますの」
「なるほど。だから私も一緒に、と。ですが、私は......」
「分かっていますの。でも、安心して欲しいですの。文乃は姫華が守りますの。......真人からも波瑠からも!」

「姫華......。えぇ、私は姫華を信じています」
「それにですの......」
「まだ何か、他の理由があるんですか?」
「最近、文乃とデートをしていないですの。仕事ばっかりでしたの」

「......はい? 姫華が何を言っているのか分からないのですが?」
「姫華は文乃とデートしたいんですのッ! 文乃と一緒に旅行デートに行きたいんですのッ!」
「そっちのほうが本音っぽく聞こえるんですが!?」
「真人を止めて、竜殺しさんにも会って、文乃とデートをする。まさに一石三鳥のナイス案ですの!」

「いえ。まぁ、確かに素晴らしい案だとは思いますが......」
「じゃー、決まりですの! ふんふんふーん♪ 久々のデート楽しみですの!」
「デートはあくまでついでですからね? 分かっています?」
「分かっていますの。分かっていますの。あぁ、本当に楽しみですの!」

 全然分かっていないですよね!? 
 もうッ! 姫華ったら!! 

 それにしても、姫華と久々のデートですか......。


 ちょっと楽しみな私でした。

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