歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~

なつきいろ

特別編 異世界と愉快な住人達!④



前回までの異世界編のあらすじ

知らぬ間にニケさんと元魔王のお姉さんの戦いが!

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長くなりましたので、決着前・決着・ニケ視点の3分割にします。

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□□□□ ~神魔対決・決着前~ □□□□

───ドン!
───ドン!
───ドン!

 ニケさんと元魔王のお姉さんの戦闘が始まって既に数分が経った。

 戦況は───分かりません!
 だって、全く見えないんだから仕方がない。そう、全くのだ。HAHAHA。

 どういうことかと言うと.....あれだ、あれ。
 アニメの戦闘シーンでよくある「小さはやすぎて見えない!」ってやつだ。決して予算の都合上、作画崩れが心配で手抜きをしている訳ではないと思う。.....そうだよね、アニメ会社さん?

 それと言うのも、ニケさんと元魔王のお姉さんがあまりにも速く動き過ぎていて、ドールは言わずもがな半神状態になっている俺ですらも、その姿を全く捉えることができないでいる。

 但し、おおよその戦況は理解できる。それは.....。

───ドン!

「.....」
「がはっ!?」

「「おぉ.....」」

 稀に、本当に稀にだが、たまに姿を現したかと思ったら、地面に膝を付き、口から血を吐いて元魔王のお姉さんを見掛ける時があるからだ。

 それと同時にある現象も起こる。

───たらりッ。

「「!?」」

 あの『勝利の女神』であるニケさんもまた口から微かに血を流しているのである。
 正直、俺とドールからしてみればとても信じられない光景ないようなのだが、それはニケさんも同様で、俺の前以外では常にお澄まし顔でいるニケさんが今は

「こ、これは驚きました。.....あなた、ただの魔族ではないですね?」
「お、お前は何者だ? 神ごときが、なぜ我にダメージを与えられる?」

 お互い、有り得ないといった表情を浮かべ睨み合っている。
 いや、これは睨み合っているというよりも、警戒し合っているといったほうが正しいのかもしれない。未知の存在との迎合、不気味な存在との遭遇といった感じの.....。

「.....ドール、どういうことか分かるか?」
「.....主にも分からぬものを妾に聞くでない」

 正直、ニケさんと元魔王のお姉さんが何を言っているのかさっぱり分からない。
 そして、二人の戦闘の一部始終を見れていないため、俺とドールにはそれを理解する方法も説明する手段も全くない。ただ状況から判断するに、ニケさんのほうが優勢なことぐらいしか.....。

 とりあえず、このままニケさんが勝利することは時間の問題だろう。
 さすがは『勝利の女神ニケさん』である。『勝利』の神護は伊達じゃないってことだ。


                           めでたし。めでたし。














 と、ここで終わってしまうと物語としては成り立たないので、ここからはニケさんと元魔王のお姉さんの戦闘がバッチリと見えているという現地勇者に解説してもらいながら物語をお送りしていこうと思う。

「実況席の現地勇者さん、お願いします」
「舞日さん! 冗談を言っていないで手伝ってくれ!」
「と言われましても、俺が手伝わなくても大丈夫そうに見えますが?」
「舞日さんとこの女神さんがんだから、せめて責任は取ってくれ!」
「.....それについては申し訳ないです」

 どういうことかは分からないが、この亜空間の結界の維持にてんてこ舞いな現地勇者を尻目にできない理由の大半はニケさんにあるらしい。
 そして、そういう事情なら仕方がないので手伝うことにする。

 せっかく、現地勇者がこちらに構っていられない隙をついて気を失っているお姫様を介抱もふもふしようと思ったのに残念だ。

 え? モリオンはって? 
 モリオンはドールに任せておけば十分だ。

 ドールは姉なんだから、妹であるモリオンの面倒をしっかりと見て欲しい。
 ちなみに、これは何も俺がお姫様を介抱もふもふしたくて面倒くさいからという訳では決してないことをここに明記しておく。

 では、早速現地勇者に解説をお願いしていこう。
 まずは、どういう戦闘が行われていたのか、そこが非常に気になる。

「体術と体術の差し合いがメインだった。.....けど」
「けど?」

「舞日さんとこの女神さんの体術は、俺から言わせると体術ですらない」
「というと?」

「ただ殴っているだけ。ただ蹴り飛ばしているだけ。要は単なる暴力でしかない。あれを体術と表現するのは世の格闘家をバカにしているようなもんかと」
「HAHAHA」

 現地勇者の言いたいことはよく分かる。

 つまり、一生懸命覚えたであろう型を、一生懸命努力して磨いた術を、単なる暴力と一緒にしてしまうのはあまりにも失礼な話だということだ。
 仮にそれが成り立ってしまったのなら、世の格闘技という格闘技全てがスポーツではなく単なる暴力となってしまうのだから。

 でも、運命とは現実とはなんとも皮肉なものだ。

 実際、現地勇者曰く『ニケさんの単なる暴力』が『元魔王のお姉さんの純粋な格闘技たいじゅつ』を凌駕してしまっているらしい。
 言い換えれば、田舎のヤンキーがメイウ○ザー相手に優位に立っているとかいう無茶苦茶な展開なのである。

「だからこそ、俺も驚いているよ。舞日さんとこの女神さんは色々とヤバいね」
「まぁ、女神様ですしね」

「違う。違う。そんな神だからとかという簡単な理由で済む話じゃない」
「え?」

「今のあいつはこの俺でさえダメージを与えるのが難しいんだから、そこらの神なんてダメージを与えるどころか瞬殺されるのがオチなんだよ」

 それと言うのも、元魔王のお姉さんには秘密がある。

「あいつは魔王流体術を使うんだけど、その中でも舞日さんもよく知っている技を得意としているんだよ」
「俺も?.....と言うことは、日本でも割りと知名度のあるやつですか?」
「だろうね。技名だけなら、大抵知っているはずだよ」
「男なら?」

『日本人なら』ではなく『男なら』というところが肝なのかもしれない。
 そうなると、少年マンガ系又はゲームあたりで登場した技だとおおよそ推測できる。

「これだよ、これ」

 そして、現地勇者が俺でも知っているというその技をこの場で再現してくれた。
 それは足を肩幅ぐらいに開き、片手をうえへと掲げ、もう片方の手をしたへと翳す構え。

「こ、これは.....まさか、あれですか!? 元大魔王だから、あれだとでも言うんですか!?」
「妾には特段変わった構えには見えぬがのぅ.....。これがなんだと言うのじゃ?」

「ははは。ドールちゃんには分からないか。これはね、とある大魔王が使っていた究極のカウンター技で、その名も───」
「「【天地魔闘○構え】!」」

「な、なんじゃ!? あ、主も異世界の勇者様も声を揃えおって。そんなに凄い技なのか?」

 そんな何も知らないドールに、今更ながら【天地魔闘○構え】について説明をしていく。
 そもそも【天地魔闘○構え】とは、とある大冒険のラスボスである大魔王が使ってきた攻防一体の究極カウンターのことである。

 つまり、元魔王のお姉さんは元大魔王だったから、更には魔王流体術を使うから、とある大冒険の大魔王と同様の技を使うということらしい。うん。話が単純明快で分かりやすいね!

「いいか、ドール? 【天地魔闘○構え】とは『天』が手刀による物理攻撃を指し、『地』で相手の攻撃をいなす。そして『魔』による強力な魔法攻撃をお見舞いする三位一体の究極技なんだよ」

「ふむ。なるほどのぅ。じゃが、所詮は後の先の技なのじゃろう?」
「浅はかなんだよなぁ、ドールは」
「やっぱり女の子には理解し難いか~」

「ぐぬぬ! なんかイラッとする言い方じゃのぅ!」

 戦闘において敢えてカウンター技を用いてくるということは、カウンター技に頼らなくても問題ない強さが他にもあるという裏返しに他ならない。

 事実、この元魔王のお姉さんの本当の実力は【天地魔闘○構え】程度のものではない。
 だが、それは後程説明しよう。

 まずは、この【天地魔闘○構え】についてだ。

「でもね、舞日さん。俺とあいつが初めて戦った時は確かに【天地魔闘○構え】だったんだ」
「だった?」
「そう、それも今や昔の話だ。今のあいつは、そこからもう一つ付け加えることに成功しているんだよ」
「もう一つ.....。というと、【天地魔闘○構え】の弱点だった硬直が無くなったとかですか?」
「いやいや。そんなもの最初から無かったよ。多分、遺伝の過程で無くなったんじゃないかな?」

 えぇ.....。なに、そのラッキーボーナス。
 こういう時、本当に遺伝技は便利だよなぁ.....。

「じゃあ、何を付け加えたんですか?」
「オートカウンターというかダメージ反射だね。だから、俺は新しく生まれ変わった【天地魔闘○構え】を【天地魔鏡の構え】と呼んでいるよ」
「はぁ!? ダ、ダメージ反射!?」

 これはあんまりじゃないだろうか。
 仮に、その【天地魔鏡の構え】を苦労して突破しても、その先には更なるカウンターが待ち構えているとか、あまりにもエグ過ぎる。所謂、ずっと俺のターンというやつだ。

(だから、ニケさん自身も口から血を.....)

 これで、ようやくニケさんが驚いた顔をしていた理由が判明した。
 仮に、元魔王のお姉さんの攻撃がちっとも効かなかったとしても、さすがのニケさんでも反射された際の自分自身の攻撃ならダメージを負うらしい。

 下手したら、この元魔王のお姉さんは、下界の者では初めてニケさんに手傷を負わせた者の可能性すらあり得る。
 確かアテナに聞いた話だと、ゼオライトさんやドールの先祖であるフェンリルや九十九尾は、ニケさんに一発でのされたみたいだし。

「でもの、主。それではおかしくないかの?」
「何がだ?」
「まずの、ダメージを反射するのなら、なぜあの者もダメージを負うておるのじゃ?」
「なるほど。それは確かに.....」

 どう見ても、元魔王のお姉さんのほうが苦しそうな呻き声を上げているのは事実だ。
 実際、元魔王のお姉さんも「なぜ我にダメージを与えられる?」とか言って驚いているから尚更である。

「ニケさんは女神だから反射は無効.....という訳でも無さそうだよな」
「だったら、ニケ様がダメージを負っている説明がつかぬではないか」
「だよなぁ.....。そうなると一部反射が有力か?」

「その通り。あいつは常に物理無効・魔法無効・スキル無効の障壁を展開しているんだけど、その力にも限度がある。つまり、自分よりも強い攻撃は防げないんだ」

 物理無効・魔法無効・スキル無効と銘打ってはいるが、正確には『元魔王のお姉さんの能力以下の攻撃を無効化という能力』ということらしい。
 そうだよな。何かしらのリスクが無いとあまりにも無敵過ぎるもんな。

 それでも、現地勇者からは「今の舞日さんではかすり傷すらつけられないよ」とのことだった。
 さすがは神殺しの一族ということか。HAHAHA。

「それもそうじゃが、妾が言いたいのは他にもある」
「まだあるのか?」
「なぜ、あの者はニケ様にダメージを与えられたのじゃ?」
「どういうことだ? 【ダメージ反射】のスキルがあるのなら普通じゃないのか?」
「ニケ様は『勝利』の女神様なのじゃぞ? おかしかろう」
「あっ! そうか!」
「舞日さん、どういうこと?」

 先程とはうって変わって、今度は現地勇者に『勝利の女神』であるニケさんの力について説明していく。
 そもそも『勝利』の神護とは、存在や概念といった不確定要素なるものにも勝利することができる究極の加護なのである。

 つまり、この場合も【ダメージ反射】スキルに勝利さえしてしまえば、ダメージそのものを負うことは無かったはずなのだ。
 しかし、実際にはダメージを負ってしまっている.....。

「となると、『勝利』の神護が効かなかったのかのぅ?」
「いや。それはないだろうな。ニケさんが言っていたけど、『勝利』の神護の本質は『絶対に負けない』ことにあるらしい。だから、効かなかったというのは絶対に有り得ない」

「『勝利』とかいう力はそういうことなのか。と言うか、それはそれでヤバいな」

 現地勇者の言いたいことはよく分かる。
 この世の中には様々な猛者がいたりするものだ。

 なんでもかんでも即死させる力や量子力学とか巨大数とかいう訳分からん力、それにスキルなんかが一京数近くあったりする猛者などなど。
 そのいずれもが設定もりもりの強者であったりするのだが、ニケさんの力はそれらを「simple is best!」と嘲笑うぐらいに単純だ。

 それが、『勝利絶対に負けない』の力。
 相手が誰であろうと、どんな技や魔法、スキルであろうと『絶対に負けない力』なのである。

 故に、存在や概念といった不確定要素なるものにも勝利することができるのは、この『絶対に負けない力』の一部に他ならない。

 そして、そこから導き出される答えから、ニケさんと対峙した相手にはあらかじめ三つの選択肢しか与えられていない。

 一つ。神罰の名のもとに、ニケさんに逆らった愚か者として愛獣アルテミス様のペットになる又は消滅たいじされてしまう。
 二つ。神の慈悲の名のもとに、こうべを垂れ白旗を上げてニケさんに許しを乞う。

 そして、最後が.....。

 無様の名のもとに、尻尾を巻いてニケさんの前からほうほうの体で逃げ出すこと。

 これらの中から、選ばなくてはならないのである。
 それが、ニケさんの『勝利』という力の本質そのものだ。

 要約すると、ニケさんが出てきたその時点で、戦闘はこちらの勝利で決まるようなものである。
 そうだな。例えるのなら、某マンガのワレブ。あれの苦戦しない完璧な上位互換版みたいなものだと言えるのかもしれない。

「でものぅ。そう考えると、ますます合点がゆかぬ」
「そうなんだよなぁ」

 いや、正確には『絶対に負けない力』というものは『絶対に勝つ力』とは異なるので、『引き分け』というものが存在し、それが成立することも分かってはいる。
 だから、この場合は、その『引き分け』が当てはまるのだと思うのだが.....。

「妾もそれは考えた。.....考えたのだがのぅ、主はそれが有り得ると思うか?」
「.....ないな。少なくとも、人間にできる所業とは到底思えない」

 それは、どんなに強い元魔王のお姉さんであってもだ。
 それぐらい、ニケさんの『勝利』という力は世の理から逸脱したものなのである。

 そして、それに対抗しうるとなると.....。

 そもそも、『勝利』の神護における『引き分け』というものになる条件が定かではない。
 定かではないが、恐らくは元魔王のお姉さんの物理・魔法・スキルの三点セット無効スキルに近いものだと考えるのが妥当だろう。

 つまりは、ニケさんと同等の力であるならば『勝利』の神護の『絶対に負けない力』の壁を突き抜けることができる可能性が高い。
 そして、そこまでいって、ようやく最終目的地となる『引き分け』に持ち込める訳だ。

 ただ、仮にそうだとしたら、元魔王のお姉さんは条件に一致してはいない。かと言って、俺の推察が間違っているとも到底思えない。
 あのできるお姉さんのニケさんが、己の生命線とも言える『勝利』の神護に自分の能力を下回る設定?を付けるとは決して思えない。

 そうなると、ここはやはり元魔王のお姉さん側に何かしらの秘密があると考えるのが必然だろう。


「その通り。それが、それこそが、あいつの真骨頂なんだよ、舞日さん」

 そう言って、現地勇者はどこか自分のことのように嬉しそうに微笑んだ。
 そう、まるで「俺の嫁は凄いだろ!」とでも自慢するかのようにニコニコと嬉しそうに.....。

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後書き

次回、異世界編『ごめんなさい!異世界さん⑤』!

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今日のひとこま

~異文化から学ぼう!~

「主と異世界の勇者様が言っていた天地.....なんだったかの?」
「天地魔闘〇の構えか?」
「それじゃ。その時に「男なら知っている」と言っておったがどういう意味なのじゃ?」
「あ~。俺達の世界には色々娯楽があるんだけど、その中でも男が好む娯楽があるんだよ」

「ほぅ? 男がのぅ.....」
「いや、別に女性も好きな人は好き.....って、おい。なんだ、その目は?」
「男の娯楽など限られておるではないか。どうせいやらしいことであろう?」
「全然違うからな?」

そもそも、俺はまだ童貞だしな!
と言うか、夜の天地魔闘〇構えとかシャレにならんッ!

「では、どういう娯楽があるというのじゃ?」
「マンガやゲームなんかだな。ちなみに、天地魔闘〇の構えはマンガからだ」
「まんが? げえむ? なんじゃ、それは?」
「そうだな。マンガは書物、ゲームは.....疑似冒険みたいなものか?」

「ほぅ! では、その天地なんとかというやつは書物から得た技なのじゃな!」
「そういうことになるな。(.....まぁ、元魔王のお姉さんは違うだろうけど)」
「ふむ。主達の世界の文化は凄いのぅ。まさか、娯楽からして実践向きとは思わなんだ」
「え? 実践向き?」

「分かっておるから安心せい。いくら娯楽とはいえ、国家機密なのであろう? 未知の技や技術は秘匿しておきたいものだしの」
「国家機密!? お、おい、何かを勘違いしているようだが───」
「分かっておる。分かっておる。じゃが! そこを敢えて尋ねたい!」
「.....な、なんだ?」

「天地なんとかみたいに、主の世界の娯楽でもって、妾の符術に活かせそうなものは何かないかの?」
「どういうことだ?」
「もっと種類を増やしておきたいのじゃ。それが未知の技術とあらば興味もある」
「ふーん。でも、符術かぁ」

「も、もしかして、符術自体が無いとか言わぬであろうな!?」
「う~ん。無くは無いけど.....」
「なんじゃ?」
「いや、別に(.....ドールには悪いが、マイナーというか、あんまり強キャラ感ないんだよなぁ)」

とは言え、符術使い自体は、6巻からが本番の物語だったり、関ケ原の合戦中に転生しちゃった物語だったり、鬼の手を持つ先生の物語だったり、骨の主人公の物語だったりなど、それなりに存在する。

それに、符術使いは大抵.....。

「ちなみに、ドールが現在使える種類は?」
「打撃・斬撃・爆撃・電撃の攻撃系と結界系、それに一時的な能力向上の支援系ぐらいじゃな」
「そうか.....」
「楽しみじゃのぅ! 異世界にはどんな符術が存在するのかわくわくするのじゃ!」

そう、符術使いは大抵、技が似たり寄ったりなことが多い。
特にドールが言った内容のものは、物語中でもよく使われていたりするし。

「で、どうなのじゃ?」
「う、う~ん.....」
「口が固いのぅ。機密ゆえ躊躇う気持ちは分からぬでもないが.....。いや、もしかしたら、躊躇ってしまうほどの技術ということかの!?」
「.....(なんかハードルがどんどん上がっている!?)」

「正直言うと、ほとんどない」
「なん.....じゃと!?」
「俺が知っている範囲だと、後は弱体系か召喚系ぐらいだな」
「召喚系は召喚師がおるではないか。符術でやる意味はないのじゃ」

「じゃあ、後は弱体系ぐらいしかないな」
「弱体のぅ.....。しかしの? 敵をちまちまとどうこうするより、一気に殲滅したほうが良いのではないか?」
「分かってないなぁ。弱体系は最強の攻撃の一種なんだぞ? 俺の世界のゲームだと中~終盤においては必須級だと言われているしな」
「なんと! それほどなのじゃな!.....しかし、弱体系を得るには本格的な研究が必要となるのじゃ」

「そうなのか? なら旅の移動中にでも───」
「そういうことではない。弱体系なのじゃぞ? 研究中での周りへの影響を考えよ」
「あ~。つまり、気兼ねなく研究できる場所が必要なのか」
「そういうことじゃな。だからの、主?.....(ちらっ)」

はいはい。分かっていますよ。魔動駆輪が欲しいんだよな? 
いい加減、そろそろ購入する時期に来ているのかもしれないな。


こうして、俺達は異世界から帰還後、様々な理由から魔動駆輪を購入するに至った。

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