歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~

なつきいろ

第145歩目 はじめてのドラゴン!モリオン③

前回までのあらすじ

船旅は思ったよりも退屈だった!

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ドワーフの種族を『半小人族』から『小人族』に訂正しました。
それに伴い、セラフィナイトの種族を『半小人族』から『小人族』に訂正しました。

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1/27 世界観の世界編!に一部追記をしました。
    追記箇所は、『遺伝子相関図』・『世界の倫理観』の⑩となります。

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□□□□ ~船旅の1日~ □□□□

 異世界の夜は長い。
 これは何度も言ってきたことだから、既に耳にタコができている人も多いことだろう。

 事実、この豪華客船においても、ディナー後は『寝る』か『カジノ』または『酒場』のいずれかしか選択肢はない。
 割合的には客の大多数が『寝る』ことを選び、残りの少数が『カジノ』か『酒場』に分かれることになる。

 カジノや酒場は夜からが本番なのでは?、と思う方も多いだろうが、それは地球だからこその考え方だ。

 このパルテールという世界では『夜は寝るもの』という共通認識が、人だけではなく魔物にも適用されている。つまり、夜に活動している人々の方が異端ということになる。
 実際、夜のカジノや酒場は昼と比べると本当に閑古鳥が鳴くぐらいガラッガラである。

 ただその代わりに、日本では朝から酒などを呑もうものなら「朝から酒?」とあまりいい顔をされないが、ここパルテールでは逆に朝からどんちゃん騒ぎをしようが全く咎められることはない。

 所謂、文化の違いというやつだ。

「ふわぁ.....」
「眠いのか?」
「うーん.....。コンちゃん帰っちゃったしー、もー寝るー.....(^-ω-^)」

 そして、当然俺達にも夜の洗礼はやってくる。

 アテナはしきりに目をゴシゴシとこすり眠たそうだ。既にまぶたが半分閉じかけている。
 このままだと俺にしがみついたまま寝てしまいそうな勢いである。

 この世界を管理している女神様がこれなのだから、きっとこの世界は『夜は寝るもの』となっているのだろう。

 アテナは楽しさの中心に自分がいないと気が済まない性格だ。
 ゆえに自分が寝ている間に楽しいことがあると我慢ならないのだろう。

 だから「私が寝ている間はみんなも寝ろーヽ(`Д´#)ノ」と言わんばかりに神様特有のわがままを発揮した結果が、『夜は寝るもの』という文化を根付かせていったに違いない。


 アテナ、モリオンとともにベッドに移り、横になる。

「お.....やす.....みー.....。歩.....モー.....ちゃん.....(^-ω-^)Zzz」
「おやすみ」
「おや.....す.....み.....なのだ.....。お姉.....ちゃん.....」

 どうやらモリオンも限界みたいだ。
 とは言え、いつもより2時間も遅く起きているのだから仕方がない。

 時は22時。
 こうして俺達の1日は終わりを迎えることになった。


□□□□ ~自分、男ですから~ □□□□

 おはようございます。

 当たり前のことだが、俺はそれほど眠くはない。
 普段から23~24時あたりに日課であるウォーキングを始める生活をしているので、夜の22時とかはまだまだ活動時間内だ。

「.....(すやすや).....(^-ω-^)Zzz」
「.....くー.....くー.....」

 そんな俺をよそに気持ち良さそうに寝ているアテナとモリオン。
 二人とも違った魅力のあるかわいい子達だ。ロリだけど。

「.....(ごくっ)」

 心臓が破裂しそうなほどバクバクと脈打っている。
 緊張感が全身を強張らせる。

 俺は聖人君子でもなんでもない。一人の男だ。
 だから『YES!ロリータNO!タッチ』などと今更紳士ぶるつもりは一切ない。

(こ、これは.....健全で良好な仲間関係を維持する為に必要なことだ.....。
 うん、俺は悪くない!悪いのは男の本能であって、俺自身に罪はない!!)

 自分にそう言い聞かせて覚悟を決める。
 アテナやラズリさん、ドールの場合なら慣れたというのも手伝って、最早罪悪感などは感じないのだが.....。

「.....くー.....くー.....」

 そこに新たにモリオンが加わったことで、また一から覚悟を決める必要性が生まれてきた。
 自分、小心者ですから.....。よしっ!!


 まずは慣れているアテナからお邪魔する。

「.....(すやすや).....(^-ω-^)Zzz」
「全てのおっぱいに感謝して.....いただきます」

 合掌後、その豊満な部位へと手を忍ばせる。

───むにゅ

 沈む。沈む。

 なんとも柔らかい感触が手に伝わってくる。
 生きている幸せってこういうことを言うのだろう。.....全く、おっぱいってやつは最高だぜっ!

 しばらく、アテナの様子を窺いながら軽いタッチ。
 その後、問題ないと判断したら、あとは揉み放題に突入する。

 顔と体だけは女神級のアテナだ。
 今まで散々お世話になってきたが、いまだに飽きることは微塵もない。
 
 そう考えると、黙っていればものすごくかわいいだけに本当にもったいない。
 いや、今のままでも結構かわいいかな。俺は嫌いじゃない。本人には絶対言わないけどね。

 それはそうと、アテナは一度寝たら朝まで絶対起きないものなのだが.....。

「.....んっ!」
「!?」
「.....に.....へへー.....おかわ.....りー.....(^-ω-^)」
「ふぅ.....。危ない、危ない」

 まだまだ強めにいけそうかな?

 意外にも快楽には敏感なようで、たびたび危うい場面に遭遇したりもする。
 ただ、その瀬戸際をギリギリ見極めるのが楽しいので、最近のトレンドだったりもする。

 ちなみに、この行為はニケさんも知っている。
 別にお墨付きをもらっている訳ではないのだが、それでも咎められることはなかった。
 この行為について尋ねてみた時に、ニケさんは何も言わずにただニコニコとしていたので、きっと男の生理現象を分かってもらえたのだと俺はそう理解している。なんたってニケさんはデキる女性だしなっ!

 だから俺は止まらない。止められない。止めさせない。
 ニケさんが認めてくれた以上、俺は少しも我慢はしない。

 別にやましい気持ちは一切ない。
 心が常にニケさんのもとにあるのなら、堂々としていればいいのだ。


 だからアテナに引き続いて、今度はモリオンにお邪魔しようと思う。

「.....くー.....くー.....」
「起きるなよー、起きるなよー」

 緊張で手が震える。
 喉がカラカラに乾燥していく。.....梅林でも想像してみるか?

 竜族という種族について詳しくはわからないが、仮にドールと同じように気配に敏感な体質だったとしたら一巻の終わりだ。
 とは言え、今まで勘づかれたことなど一度たりともないので無用な心配なのかもしれない。それでも緊張するものは緊張する。

 そしてついに.....。

───スベスベ

 はぁ~。なめらか~。

 触ってもよし、抱いてもよしとはまさにこのことだろう。
 モリオンの最大の魅力は、なんと言ってもこの大きな尻尾にあると思う。
 抱き枕を想像してもらえるとわかりやすいが、モリオンの尻尾に抱き着くとあれに近い感じで妙に落ち着く。

 さてと.....。

 もしかしたら、いま俺がモリオンに対してHなことをするのでは?、と思った人も少なからずいるのではないだろうか?

 そんなことする訳ないじゃん。
 こんなことを言うとかわいそうだが敢えて言おう。

 モリオンのような幼児に性的興奮を覚えることは一切ない!

 それはモリオンが無乳だからとかそういう理由ではない。
 俺は巨乳だろうと無乳だろうとすべからくおっぱいが好きだ。真のおっぱい平等主義者だと自認している。
 第一、同じ無乳仲間であるドールにはたびたび悩まされているので、それは絶対にないと断言できる。

 では、モリオンとドールの差は一体何かというと.....。
 単純に『女性としてのフェロモン』が出ているかどうかに尽きると思う。

 例えるなら、小中学生をモリオン、高校大学生をドールとしよう。
 この辺りは人にもよるのだろうが、『高校大学生を大人の女性として見ることはできても、小中学生を大人の女性として見ることは難しい』に近いのかもしれない。


 話が大きく逸れたが、とりあえずモリオンの魅力は大きな尻尾なのである。
 ドールのもふもふな尻尾もいいものだが、モリオンのスベスベな尻尾もそれに劣らずいいものだ。

 だが、モリオンの尻尾には一つの問題があって.....。

───ブンッ!

(きたな!!)

 俺は体をよじって、かろうじてベッドから飛び退いた。
 すると、俺の目の前を大きな黒い影が軽やかに通過していくのが見える。

───バシーン!

 ベッドがギシギシッと悲鳴をあげる。
 もし当たったら顔ごと持っていかれそうな威力は十分にありそうだ。

(.....ふぅ。そう毎回毎回はたかれてたまるかっ!)

 どうやら今回は俺の勝ちのようだ。
 さすがに毎日毎日はたかれていれば、俺だって少しは学習する。.....うぅ。こ、腰が痛い。

 モリオンの尻尾の大きな問題.....それは尻尾ビンタに他ならない。

 恐らくだが、無意識に俺のスキンシップを鬱陶しいと感じているのだろう。
 だから原因を排除しようと強烈な一撃をかましてくる。

 (もう何度それを喰らったことか.....。HAHAHA)

 俺としては、もっとじっくりと尻尾を堪能したいだけに残念で他ならない。
 かと言って、尻尾ビンタを喰らい続ける訳にもいかないのでどうするかというと.....。

「.....おな.....か.....空いた.....のだ.....くー.....くー.....」
「これでも食べてなさい!」

───ガブッ!

 モリオンがそれにかぶりついた瞬間、体がピクッと跳ねた。かわいい。

 尻尾について悩んでいるのであれば尻尾で解決すればいい。
 と言うことで、『目には目を。尾には尾を』。邪魔くさい尻尾ビンタを封じる為に、モリオンには自分の尻尾をかぶりついてもらうことにした。

「.....はむ.....はむ.....う.....まい.....のだ.....くー.....くー.....」
「ほどほどにしとけよ~」

 これで心置きなく、俺はモリオンの尻尾を堪能できる訳だ。
 手で触ってもよし。顔で頬ずってもよし。体で抱き着いてもよし。まさに最高の抱き枕だ。

 アテナの柔らかいむにゅむにゅとモリオンのなめらかなスベスベ。
 ここにドールのふさふさなもふもふをぜひ追加したいところではあるが.....。

 それでも───。

(.....ふぅ。やはりロリータは最高だぜ、全く!)


 こうして、俺の『不真面目な夜の日課』はまだまだ続いていくのだった。


□□□□ ~へ~んしん!~ □□□□

 不真面目な日課が終わると、今度は正真正銘『真面目な日課』の番となる。
 日中のウォーキングは人の目もあるので断念してしまったが、夜となると話は別だ。

 ほとんどの客が寝ているので、騒がなければウォーキングをすること自体は可能だ。
 但し、それでも船内・甲板を2周するぐらいが限度ではあるが.....。そもそも船員の中には夜勤の者もいるしな。

 ただ、この豪華客船は結構な大きさとなっている。
 ざっとだが、船内・甲板を1周するだけでも約1時間はかかるので、実は文句はそれほどなかったりもする。

 さて、いつものようにウォーキングの支度をしていると───。

───ゴソゴソゴソ。

 背後のベッドから誰かが起き出してきた。
 アテナは一度寝たら朝まで起きないので、当然起き出してきたのは.....。

「.....くわぁ.....アユムは.....どこにいくのだ?」
「いつもの散歩。.....と言うか、よくわかるよな?」

 ドールもそうなのだが、実はモリオンも俺が夜のウォーキングに行こうとすると、いつも絶妙なタイミングで起き出してくる。
 ドールは気配で察するらしいが、モリオンにはそういったものは感じられない。

「匂い.....なのだ.....」
「う~ん.....。それはそれでなんか嫌だな.....。俺ってどういう匂いなんだ?」
「あったかい.....匂い.....なのだ。父様.....みた.....い.....なのだ」

 う~ん.....。それでも微妙!

 これを聞いて素直に喜べないのは俺だけだろうか。
 好きだと言う父親と同じ匂いがするということは、本来なら高評価だと受け取っても間違いはないだろう。

 しかし、考えてみて欲しい。

 モリオンの父親がいくつなのかは知らないが、それでも父親と青年だ。
 父親と匂いが一緒だということは、逆に捉えると、親父臭いと言われているのに等しいのではないだろうか。

(考えすぎか?.....それとも俺がひねくれている?)

 とりあえず俺が親父臭いかどうかは置いといて、いまだ眠そうなモリオンにどうするのかを尋ねる。

「.....もちろん.....いく.....のだ」
「わかった。じゃあ、暖かい格好をしてこい」
「.....なのだ!」

 こうして、なのだー!とかわいく万歳しているモリオンとともにウォーキングに勤しむことになった。


 ・・・。


 日課であるウォーキングは人に出会うこともなく至って順調だ。
 だから俺は黙々とひたすら歩き続けた。気を遣う相手がいないのはいいことだ。

 一方、モリオンは俺の肩で絶賛食事中だ。
 寝起き後なのによくそんなに食べられるな、と感心する程にもぐもぐもぐもぐと。

 さて、船内は暖かいので着込んだせいか若干汗ばむも、それもここまで。
 一旦、甲板に出てしまうと.....。

「うぅ.....さむっ.....。モリオンは大丈夫か?」
「(ガチガチガチガチガチ).....だ、だだだだだいじょうぶなのだ」

 大丈夫じゃないだろ、全く.....。

 予備に持ってきていた俺用の大きめな服をモリオンに羽織う。
 いつも「暖かい格好をしろ」と言っているのに、モリオンもアテナ同様なぜか服を嫌がるので、こうして俺があらかじめ用意しておく必要がある。

(どんだけ服嫌いが多いんだって話だよ。アテナに、モリオン、ねこみにねここと.....)

 ただ、この寒さは本当に冗談にならないぐらいに寒い。
 季節は冬か!?と思わずツッコミたくなるものの、この世界には四季というものは存在しないらしい。
 寒いか暑いか、ただそれだけだ。日本のように四季折々の自然美などは存在しない。

 でも、どんなに寒い気候でも食物は実るし、育ちもする。
 そこが地球とは全く異なる独自の発展を遂げているみたいだ。

 どういうことかと言うと.....。

 つまりは土地にも才能があるらしい。
 実る条件としては気温や気候などの外的要因は影響しないのだとか。当然、育ちのほうには影響が出るが。


 閑話休題。


・・・。


 何はともあれ、すごく寒い。
 先程まで若干汗ばんでいた俺の体温も一気に下がったようだ。

 しかし、そんな寒い日だからこそ見える風景もあるようで───。

「おー」
「どうした?」

 モリオンから何やら間の抜けた声がした。
 ずっと上を見ているようなので俺もそれに倣うと.....。

「.....おぉ!これはすごいな!」
「きれいなのだ.....」

 そこに広がるは満天の星。
 まるで宝石を散りばめたかのようにきらきらと美しい夜空が広がっていた。

 空気が澄んでいるからこそ見られるこの光景に、俺とモリオンはしばし時の流れを忘れて見とれていた。
 すると、そんな満天の星の中に一条の雫が滴り落ちる。

「アユム!アユム!あれはなんなのだ!?」

 俗に言う流れ星なのだが、初めて見るモリオンは大はしゃぎ。
 寒いのやら、眠いのやらはどこかに吹っ飛んでしまったようだ。

「それはなんなのだ?空が泣いてるのだ?」
「.....空が泣いてる?」

 やばい。めっちゃかわいい。
 流れ星をそう表現してくるとは露にも思っていなかった。モリオンは詩人だなぁ.....。

 とりあえず流れ星と言ったら、あれを教えない訳にはいかないだろう。

「いいか?流れ星が流れている間に3回お願い事を言えたら、それが叶うと言われているんだ」
「おー!すごいのだ!すごいのだ!我もやってみるのだ!」

───10分後。

「.....いつ流れるのだ?」
「う~ん。こればっかりはなぁ.....」

 そもそも、俺だって流れ星そのものを見たのは随分久しぶりだ。
 そうそう滅多に見られるものでもないので正直なところ難しいだろう。

「そうなのだ.....」
「.....」

 落ち込むモリオンを見ていると心が痛む。
 しかし、こればっかりはどうしようもない。

 そう諦めかけていたら.....。

「お願いすれば流れるのだ?」
「.....お願い?それはどういう.....え?」

───ぐんぐんぐんぐん
───ぐんぐんぐんぐん

 俺の肩からすかさず降り、目の前に回り込んだモリオンがどんどんどんどん巨大化していく。

 嘘みたいだろ?
 あの小さかったモリオンが、既に俺を遥かに越える大きさになっているんだぜ?.....HAHAHA。

「.....」

 いや、巨大化では語弊がある。

「.....」

 モリオンが人の形からどんどんドラゴンの姿になっている?戻っている?と言ったほうが正しいか.....。

 まぁ、とりあえず俺は口をぽか~んと開けて、ただただそれを見ていることしかできなかった。
 モリオンは竜族とは言え、人の姿をしていたので、てっきりハーフな存在なのかと思っていただけに驚きが隠せない。


 そして、俺が混乱することしばらく───。

『GAAAAAAAAAAAAAAA!』
「.....」

 どうやらモリオンの変身が終わったようだが、ちょっと待って欲しい。
 色々と聞きたいことはあるものの、まずは一言だけ物申したい。


(えぇ.....。話せなくなるのかよ.....)


□□□□ ~星に願いを!~ □□□□

 人の人生とは不思議なものだ。
 俺は1度死に、2度目の死を1ヶ月前に危うく経験するところだった。
 本来ならそうそう経験することのない臨死体験を、わずか1ヶ月の間で2度も経験することになろうとは誰が予測できただろうか.....。

「.....ゼェ.....ハァ.....ゼェ.....ハァ.....し、死ぬかと思った.....」
『これで話せるのだ?』
「.....あ、あぁ。バッチリだ」

 俺が死ぬ思いをしたのだから話せないようでは正直困る。
 実は数分前まで、俺は再び2度目の死を迎えようとしていた。

 それと言うのも.....。

 なんというか、ドラゴン形態になったモリオンは人語を話せないようだった。
 覚えている人もいるだろうが、ドールの小きつね状態とまんま一緒の現象だ。(※第66歩目参照)

 と言うことはつまり.....。

 話せるようになる為には、ちゅーちゅーされなければいけない訳で当然吸われた。
 そして当たり前のことだが、小きつねモードで吸われた時よりも遥かに痛かった。

(.....く、くそっ!一刻も早く付き人のレベルを上げなければ!!)

 新たに固くそう誓ったところで、改めてドラゴン形態のモリオンを眺めてみる。

 姿はファンタジーなどでよく見掛ける、所謂西洋風のドラゴンとほぼ同じだ。
 周りを睥睨へいげいするかのような鋭い眼光に、今まであんな恐ろしいものに噛まれていたのかとゾッとするようなギザギザな鋭い牙。
 人間形態の時はそれほど目立つことはなかったのに、今では立派にそびえ立ち、ドラゴンとしての威風を漂わせる2本の大きな角。
 羽ばたくだけで人間など塵芥ちりあくたのように吹き飛ばせそうな巨大な翼を有し、俺が愛した大きな尻尾は一振りするだけで、町の1つなどいとも簡単になぎ払えそうなほどの強靭さを誇っている。

 そして、極めつけは.....。

「え、えっと.....。今更なんだが、モリオン.....なんだよな?」
『そうなのだ!』

 俺も目の前で見ていたので、当たり前といえば当たり前なのだが.....。
 それでも確認せずにはいられなかった。

 漂う雰囲気が、身に纏うオーラがあまりにも重すぎる。あまりにも禍々まがまがし過ぎる。

 きっと俺以外の人も、今のモリオンを見たら俺と同じ行動をしたに違いない。
 それぐらい人間形態の時のモリオンとドラゴン形態の時のモリオンは全く別物で違和感が凄い。

(こ、これが竜族.....。昔の勇者はよくこんなのを撃退できたな.....。無理だろ、こんなん.....)

 体がデカいのもそうだが、何もされていないのに圧倒的な威圧感で押し潰されそうになる。
 ニケさん程ではないせよ、これはこれで結構怖い。足なんて既にガクブルものだ。

 そう緊迫した状況に見えるのだが.....。

『星にお願いすれば流れ星は流れるのだ?』
「.....」

 尋ねてきている内容はなんともかわいらしい。
 これも一種のギャップだと捉えればいいのだろうか。バイオレンスと無垢の共存ってやつ?

『どうなのだ?』
「う~ん。星さん次第かな」
『ならお願いするのだ!』
「よし、頑張れ!」

 多分無理だろうが、モリオンの夢を壊したくはない。
 俺にできることは、ただただモリオンの大きな背中を押してあげることだけだ。ドラゴンだけに!


 そうこうしている内にモリオンが今まさに飛び出そうとしている。
 巨大な体が徐々に浮かび始めた。

 一方、俺は吹き飛ばせれないように懸命に堪える。
 懸命に堪える.....。懸命に堪え.....。

 ───ガシッ!

『アユムも一緒にいくのだ!』
「ちょっ!?」

 モリオンの右手にガッシリと拘束される俺。
 気分は鷹に捕獲された魚そのものだ。

『じゃー、いくのだー!』

 その合図とともに夜空に力強く舞い上がるモリオン。
 その光景は「満天の星の中をまるでダンスでも踊るかのように優雅で華麗に舞うものだった」と後に俺が語っている。

「おわああああああああああ!
 せ、せめて背中に乗せてくれえええええええええええええええ!!」


 俺とモリオンの流れ星ランデブーはいま始まったばかりだ。










 ・・・。










───30分後。

『ご飯食べたいのだ!ご飯食べたいのだ!ご飯食べたいのだ!』
「.....」

 そんなに慌てなくてもいいのに.....。

 今、俺とモリオンは流れ星を前にお願い事をしている最中だ。
 モリオンは流れ星が流れる前に、と一生懸命お願いしているようだが、慌てる必要など全くない。

 モリオンの一途なお願いが功を奏したのか。
 それとも、自然として必然な運命だったのか。
 はたまた、モリオンの為にアテナが用意したプレゼントなのか。

 どれが正解なのかは正直わからないし、今は全く関係ないことだ。
 だって、今まさに無数の流れ星流星群が夜空の大海原を色鮮やかに彩っている最中なのだから.....。

 一体、どれほどの人がこの素晴らしい光景を目の当たりにしているのかはわからない。
 ただ、それでもハッキリとわかることが一つだけある。

 それは.....。

 今この瞬間において、この満天の星は、俺とモリオンだけの特別な思い出宝物になったことは間違いないだろう。

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後書き

次回、本編『海都』!

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今日のひとこま

~お願い事~

「3回願ったのだ。これでいいのだ?」
「あぁ、それでいいぞ」
「アユムは何をお願いしたのだ?」
「モリオンがもっといい子になりますように、とお願いした」

「おー!我はもっといい子になるのだ!」
「そうだな。頑張らないとな」
「あと我はお姉ちゃんの分もお願いしたのだ!」
「ん?アテナ達の分も?」

「そうなのだ。お姉ちゃんは今いないから我が代わりにお願いしたのだ!」
「へ~。どんなお願いをしたんだ?」
「我といっしょなのだ。お姉ちゃんも我といっしょにたくさん食べるのだ!」
「そうか。アテナは喜びそうだな」

「お姉ちゃん(※)は喜ばないのだ?」 (※)ドールのこと
「いや、きっと喜んでくれるだろうな。モリオンはお姉ちゃん想いのいい子だな」
「我はいい子なのだー!.....じゃー、アユムのお願いは叶ったのだ?」
「そうだな。もうお願い事が叶ったみたいだ」

「流れ星すごいのだ!我もたのしみなのだ!」
「そうか。そうか。実はモリオンがお利口さんになったからご褒美を用意しておいたぞ」
「!!」
「今日はもう遅いから、明日アテナと一緒に食べるようにな?ドールの分は今度来た時に渡そう」

「やったのだー!我のお願いも叶ったのだー!」
「これからももっともっとお利口さんになれば、流れ星さんがお願いを叶えてくれるかもしれないぞ?」
「わかったのだ!我はもっといい子になるのだ!」
「よし。それじゃあ、部屋に戻るか」
「なのだ!」

本当にこの純真無垢な姿には癒されるものがある。
いつまでも穢れなききれいなモリオンのままでいてほしいものだ。

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