歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~

なつきいろ

第129歩目 融通の効かない女神!女神ニケ②


前回までのあらすじ

1年ぶりに愛しい女神ニケに再会できた主人公。

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□□□□ ~規定!規定!規定!part.1~ □□□□

神界に来て10分程が経った。

ニケさんを始め、バットやテディ、そしてな"ーとの再会は思った以上に楽しいひとときだった。
まだ10分程しか経っていないとはいえ、それでももっと長く感じる程に.....。

(このまま時が止まってしまえば、どんなにいいことか.....)

などと思っていたら、

「歩様、お楽しみのところ大変申し訳ありません」

ニケさんが非常に申し訳なさそうにお辞儀をしてきた。

「どうしました?」
「歩様ならばいつまでもここに居て頂きたいとは思うのですが.....」

「はい」
「神界規定により、人間が神界に滞在していい時間は30分までとなっております」

「ええ!?そうなんですか!?」
「はい。大変申し訳ありません」

そして、再び申し訳なさそうにお辞儀をするニケさん。

神界規定とやらで決まっているのであれば仕方がない。ルールは守ってこそなんぼだ。
そもそも、ニケさんのせいではないのだから謝らなくともいいと思う。

・・・。

そこまで考えて、ふと思う。

(.....あれ?アルテミス様やアレス様の時は明らかに30分越えていたような.....?気のせいだったか?)

「ちなみにですが、30分過ぎてしまうとどうなるのですか?」
「どうにもなりません」

どうやら努力義務らしい。

所謂「できるだけ守ってね?てへぺろ~♡」というやつだ。
ルールは守ってこそなんぼだが、努力義務程度なら破っても問題はないだろう。

「なら別に気にする必要はないですね」
「ですが、規定ですので」
「.....え?」

ニケさんからの思った以上に有無を言わさぬ拒絶反応に思わず息を飲んだ。
俺の目の前にはいま、規定を守る絶対的な法の番人が控えているのである。

「.....そ、そうですよね。規定は守らないといけませんよね」
「仰る通りです。ですので、歩様であろうとも30分が経ちましたら、ご退室させて頂きます」

え?
強制退室なの!?

「あ、あの.....。ね、念のため聞きますが、仮に30分以内に報酬が決まらなかったらどうなるんですか?」
「当然失効となります。報酬はあくまで権利です。
 権利とはその範囲内で得られるものであり、絶対に得られるものではありませんから」

な、なんだってえええええ!?

バット達と旧交を温めている場合ではなかった。
この後の一番肝心なダーツが、どのように行われるのかが現時点では全く不明だ。
今までの経験上、どうやら神様毎によって、マイルールの元で行われているらしいので尚更見当がつかない。

(の、残り20分.....。マジか.....。ま、まぁ最悪、ニケさんに投げて貰えばいいかな?)

「い、急ぎましょうか」
「では、早速ご用意致します」

そして慌ただしい中、ダーツに挑戦することとなった。


この時の俺はまだまだ心に余裕があったが、それがすぐに地獄へと変わるのにさほど時間はかからなかった。


□□□□ ~規定!規定!規定!part.2~ □□□□

神界における人間の滞在時間は30分という規定がある為、急遽ダーツに挑戦することとなった。

仮にこの30分以内に報酬が決まらなければ権利の失効。つまり、たわしすらも貰えないという訳だ。
とは言っても、最悪エリス様の時のように、ニケさんに投げて貰えば解決だろうから俺には余裕があった。

さて、用意されたダーツなのだが、

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当然、神界で規定とされているやつだった。

これはある程度、予想の範囲内だ。
あの(俺にとっては)悪神エリス様でもこれを使用していたので、(俺にとっては)善神とも言えるニケさんが規定のダーツを逸脱するはずがない。

問題は俺が『自由』の的に当てられるかどうかだ。
もしダメそうならニケさんに.....。

「お待たせしました。それでは早速お願いします、と言いたいところなのですが.....」
「どうしました?」

ニケさんの様子がおかしい。
明らかに不安そうな表情をしている。

「そ、その.....。あ、歩様は何をご希望されるのかを伺ってもよろしいですか?」
「.....え?当然『自由』ですが?」

「と、と言うことは.....」
「.....?」

「わ、わわわわ私とデ、デートして頂けるということですか?」
「!」

改めて言われると恥ずかしいものがある。

(そ、そうなんだよな.....。俺の年齢=彼女なしの人生における初デートなんだよな.....)

この際、ラズリさんの強引なデートやサキのアッシー君デートは無かったものとする。
俺の年齢=彼女なしの人生における初デートの相手はニケさんだ。

恥ずかしいが、ここはしっかりと男らしく返事をしておくべきだろう。
ニケさんから誘われるのではなく、男の俺から誘うように。

「宜しければ、俺とデートして頂けませんか?」
「!!!.....よ、喜んで!」

俺の言葉を聞き、ニケさんは先程の不安そうな表情から一転して、一気に花開いたような笑顔に彩られた。
しかも、まるで朝露のようなはかなくも眩しい雫を両の灼眼に添えて.....。う、美しい.....。

───ドキドキ

心がときめく。

ここまで純粋な好意をぶつけられたのは実にラズリさん以来だ。
それも理想の女性であるニケさんからとなると、申し訳ないが、ラズリさんの比ではない。

(.....こ、これはなにがなんでも俺の力で『自由』を当ててやる!)

俺のやる気はMAXだった。
ニケさんの想いに応えるための気力に満ち溢れていた。

(.....今なら何でもできる気がする!
 邪神だろうが、魔王だろうが、なんでも構わねえ!全員かかってこいやあああああ!)


・・・。


そして、気合い十分にダーツに挑むことになった。

「それでは、歩様。頑張ってください」
「お任せください!ニケさんの愛に必ず応えてみせます!」

スーパー歩さんに恥ずかしさなどない。
激しいやる気によって目覚めた1000年に1人のなんたらかんたら。

「まぁ♡歩様ったらお上手なんですから///」

恥ずかしがるニケさんによって回されるダーツボード。

───ゴオオオオオ!

「.....え?」

───ゴオオオオオ!

恥ずかしがるニケさんによって回された.....ダーツボード?

───ゴオオオオオ!

「.....」

どう見てもダーツボードの回転とは思えない轟音を立てて回っている。

普通なら某テレビのようなゆったりとした回転をイメージするのだろうが.....。
いま目の前にあるダーツは、これだけでも電気が生み出せそうな勢いで回っている。触れたら指がピチョンしそうだ。

勢いづいていたスーパー歩さんも、これにはさすがに驚きで口をあんぐりと開けざるを得なかった。

「あ、あの?ニケさん?」
「はい。なんでしょうか?」
「えっと.....。さすがに早すぎませんか?あれでは『自由』以前に矢が刺さるかも怪しいのですが.....」
「申し訳ありません。これが規定ですので」

な、なるほど。

規定では仕方がないだろう。
何もニケさんが悪いのではない。悪いのは規定なのだから。.....くそ規定がっ!

しかし.....。

こうなってしまうと『自由』に当てられる自信が全くない。
最悪、エリス様の時のように的が止まっているのなら、スーパー歩さんの今の俺なら当てられた。.....はず。

でも.....

───ゴオオオオオ!

う~ん、この.....。

先程ニケさんにも言った通り、『自由』どころか矢を的に刺すことすら困難に思えてくる。
と言うか、規定って神基準で考えられているのではないだろうか。明らかに人間では不可能なレベルな気がする。

(.....時間も限られていることだし、失敗は尚更許されない。
 .....ニケさんにカッコつけた手前、恥ずかしいがここは.....)

情けない話だが、背に腹は変えられない。
頼むは一時の恥だが、頼まぬは一生の後悔だ。

「す、すいません。全く自信がないので代わりに.....」
「申し訳ありません。お引き受けかねます」
「ふぁ!?なんで!?.....い、いや、もしかして.....き、規定だからですか?」
「仰る通りです」

OH、MY GOD!

俺は基本的にルールは守るべきだという考えだ。
集団で社会生活を営むにはルールは守らなくてはならないものだから。

しかし、いま少しだけ後悔している。
行きすぎたルールの弊害というやつに.....。

こうなったらここは、

「い、いいんですか?このままだと最悪失効、良くて『たわし』になってしまいますが.....」

古来より成功の例をあまり見ない泣き落としに賭けることにした。

「それもまた仕方がないことですね。規定に則った結果となりますので」
「ええ.....」

確かにニケさんの言葉は正論だ。
正論なのだが.....。

こうもう少し融通を効かせて欲しい。
実際、他の神々は俺の代わりに投げてくれたのだから。

ルールは厳しくあるべきだが、かと言って、血が全く通っていないのも問題だと思う。

(.....いや、さすがはニケさんと言うべきか。頼りになるなぁ.....)


俺が白い目で何もない部屋を見つめていたら、

「歩様、ご心配には及びません。歩様にはアテナ様のご加護が付いておりますので」
「.....そこはかとなく不安なんですが?」

「ふふ。大丈夫ですよ。私にカッコいいところを見せてください」
「わ、わかりました。頑張ってみます。でも.....外れたらすいません」

「その心配はしておりませんので大丈夫です」
「は、はぁ.....」

励ましと応援と絶対の信頼を置かれてしまった。
アテナもそうだが、このニケさんも、俺に対するその信頼はどこからくるのだろうか。

とりあえず、愛しいニケさんから「カッコいいところが見たい!」と言われた以上は頑張ってみるしかないだろう。

考えてみれば俺は主人公だ。
ここで『たわし』になるような未来はないだろう。
謎の大きな力が働いて、案外簡単に『自由』となるかもしれない。

(な~んだ。悩む必要なんてなかったんや。HAHAHA.....)

そう思うと心が軽くなった。

そう思いたかった。
そう思い込みたかった。
そう思わせて欲しかった。

だから、ここで俺の主人公としてのご都合主義展開に賭けることにした。


そして、決心がついた俺は、

「神様。仏様。アテナ様!お願いします!!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「よんだー(。´・ω・)?」
「呼んでない!」
「ふえええええ(´;ω;`)」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

轟音を立てて回っているダーツボード目掛けて矢を投げた。

───ヒュッ!

ぐんぐんと吸い込まれるようにダーツボード目掛けて飛んでいく矢。
このコースなら『自由』かどうかは別として、的には間違いなく当たるだろう。後は運次第だ。

そして結果は、






























───パシッ!

「.....え?」

結果は、矢は的には当たらなかった。

と言うよりも.....

「な、なにやってるんですか?」
「.....」

的に当たる当たらない以前の話だった。
どういうことか言うと、俺が投げた矢をニケさんがキャッチしてしまったからだ。

そして、

「歩様?もう一度です」

ニケさんは美しいにっこりスマイルで再び矢を渡してきた。
特に恐怖感などは感じなかったので、これは正真正銘俺に向けられた純粋な笑顔だろう。

───ゴオオオオオ!

意味がわからないまま矢を受け取り、再度ダーツボードと対峙する。
勢いが一向に弱まらないところからも、相当な早さで回っていることが容易に想像できるだろう。

そして再び、

「神様。仏様。アテナ様!お願いします!!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「やっぱりよんだよねー( ´∀` )」
「呼んでません!お帰りください!」
「むきーヽ(`Д´#)ノ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

心の中のアテナにお別れを告げて、意を決して再び矢を投げた。

───ヒュッ!

矢はダーツボード目掛けて飛んでいく.....が、今回は微妙にズレているような気がする。
このままでは報酬獲得ならずになってしまう。

(.....くっ!こ、ここまでか.....。すいません、ニケさん)





























そう思っていたら、

───パシッ!

「.....え?」

再びニケさんが俺の矢をキャッチしてしまった。

「.....?さ、さっきから何をしているんですか?」
「.....」

俺のその質問だけには、ひたすら無言を貫き通すニケさん。

そして先程と同じように、

「歩様?もう一度です」

ニケさんは美しいにっこりスマイルで三度矢を渡してきた。

(.....もしや?そういうことなのか?)


・・・。


その後は幾度か同じことが繰り返された。

───ヒュッ!
───パシッ!

「歩様?もう一度です」

───ヒュッ!
───パシッ!

「歩様?もう一度です」

───ヒュッ!
───パシッ!

「歩様?もう一度です」

───ヒュッ!
───パシッ!

「歩様?もう一度です」

───ヒュッ!
───パシッ!

「歩様?もう一度です」

「.....」

どうやらこれが、ニケさんなりの規定に対する抵抗らしい。
恐らくは、俺が『自由』を当てるまではひたすら繰り返すつもりなのだろう。

しかし、それならば.....

「あ、あの?ニケさん?」
「なんでしょうか?」

「これを繰り返すぐらいなら、ニケさんが俺の代わりに投げてしまったほうが早くないですか?」
「できません。規定に違反します」

「.....いや、恐らくですが、今のこれも規定に違反していますよね?」
「いえ、規定には違反しておりませんのでご安心ください」

いやいやいや。

どう考えても違反しているようにしか思えない。
何度も繰り返すのがOKで、代わりに投げてもらうのがNGな理由が全くわからない。

「規定におきましては、『対象者が挑戦すること』が原則となっております」
「でも原則なんですよね?.....と言うことは、例外もある訳じゃないですか?だったら.....」
「それが歩様ですね」
「.....あ~。そういうことなんですね」

以前アルテミス様により教わったのは、このダーツも本来は神々が行い、そして報酬内容も神々が決めるというものだ。
ただ俺の場合は、アテナのおかげ?で俺自身でダーツを行い、そして俺が獲得した報酬の中から内容も自由に選べるらしい。つまり、これがその例外にあたるという訳だ。

とりあえず不満が全くない訳ではないが、ニケさんが俺の代わりに投げてはいけない理由はわかった。
では、今のこのやり直し行為はどうなるのだろうか。

「ダーツとは『対象者が矢を投げ、それによってもたらされた結果 (矢が的に刺さるか外れること)に依存する』というのが原則です」

「なるほど。.....となると、この場合の例外とは.....。
 『結果が出る前ならばいくらやり直そうと違反にはならない』。そういうことですね?」

「仰る通りです」

どうやら正解みたいだ。
やっててよかった!アテナ式!

でも、

「.....屁理屈ですよね?」
「屁理屈です。.....ですが、これが私にできる最大限の妥協となります」

ニケさんはそう言うと、唇を噛み締めながらワンピースの裾をギュッと握り締めた。
その表情は耐え難きを耐え、懸命に何かを我慢している姿そのものだ。

そんなニケさんの姿を見て、俺はある意味納得してしまった。

以前アルテミス様はこうも言っていた。
「ニケちゃんは非常に生真面目な上に、規定にうるさくて苦手なんだよ」と。
そして、その言葉通りの規定に則ったニケさんの今までの数々の行い。

つまり、ニケさんは超がつくほどの規定バカなのだろう。

そう結論付けると、今のニケさんの姿もある程度は理解できる。
『規定を守らなければならない』という義務感と『俺の期待に応えたい』という想いの板挟み状態なんだと思う。

(そうか.....。ニケさんは自らの『規定バカ』を破ってまで、俺のために.....)


・・・。


その後はひたすら何度も同じことの繰り返しだった。

何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。

「ぜえ.....。ぜえ.....。はぁ.....。はぁ.....」

もう何度目かわからないぐらいに無心に投げまくった。
ただひたすら投げまくった。

ニケさんが自らの制約規定バカを犯してまで、俺に尽くさんとしてくれたその想いに応えるため.....。

ちなみに、一矢一矢全力で投げているので疲労感が半端ない。
例えるなら、球速160kmの選手がいた場合、常に158~160kmを出しているような感覚だ。
つまり、それぐらいはしないと的に矢が刺さらないということになる。

付け加えるなら、肩が壊れるようなことはほぼない。
そこは加護の恩恵による強靭な肉体あってのもの。まさに『歩くだけでレベルアップ』様様だ。

「ぜえ.....。ぜえ.....。はぁ.....。はぁ.....」
「歩様.....」

ニケさんが心配そうに見つめているが諦める訳にはいかない。
『諦めること』と『結果を出さないこと』が、ニケさんの想いに対しての一番の裏切り行為になると自分を戒めて.....。

しかし、現実は非情だ。

「歩様.....。頑張っているところ大変申し上げにくいのですが.....、残り5分です」
「マ、マジか.....。ぜえ.....。ぜえ.....。はぁ.....。はぁ.....」

もはや万事休す。
時間もそうだが、あまりの疲労感に目が霞んできた。.....いや、悔しさ故の涙か?

(.....もう時間も体力もあまりない。.....これで、この一矢にて、俺の想いの全てを賭ける!)

決意を新たに、いま俺は、

「神様。仏様。アテナ様!お願いします!!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「手伝ってあげようかー(。´・ω・)?」
「なんでもいいからお願いします!」
「はーい!まっかせなさーい(*´∀`*)」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

心の中のアテナも巻き込んで、全身全霊の一矢を投げ放った。

───ヒュッ!

目の前が徐々に暗くなりつつあるので、矢が的に向かっているかどうかはわからない。
ただ俺の全身全霊の一矢なので、的に向かっているとすれば刺さらないという結果にはならないはずだ。

(.....どうだ!?どうなんだ!?俺のこの想いはニケさんに、ダーツに伝わるのか!?)

そして結果は.....





























───トスッ!

もう目の前は深淵の闇で、情けないことだが結果を確認することすらできない。
頼りは音だけだ。

(あ、あぁ.....。これは刺さったんだよな.....?刺さってくれたんだよな.....?
 そう、、じゃ、、なかっ、、たら、ご、、めん、、な、、さ、、い、、ニ、、ケ、、さん)

ただ、今までに一度も聞いたことがない音が聞こえた俺は、安心感からか、はたまた疲労感からか、ずっと張り詰めていた緊張感がプツッと途切れてしまった。


そして、俺はそのまま気を失ってしまった。


□□□□ ~規定!規定!規定!part.3~ □□□□

(.....柔らかい)

柔らかい感触が伝わる。

(.....気持ちいい)

気持ちいい感触が伝わってくる。


どうやら何かが俺を優しく包み込んでくれているようだ。
以前にも、これに似た経験をしたことがあった気がする。そうなると今回も.....。

(.....あぁ、そうか。俺は気を失ったんだっけかな?
 となると、時間的にもそのまま下界に戻されてしまったのか.....)

結果もわからず、場合によってはニケさんとも会えないかもしれない。
更に言うなら、気を失ったままでのお別れ。

いろいろと残念に思いながらも目を開けると.....。

「.....!」

そこには女神がいた。
いや、ダメな子のほうじゃない。

「お目覚めになりましたか?歩様」

優しい微笑みをたたえながら膝枕をしてくれ、しかも俺の頭をなでてくれている心の女神ニケさんその人だ。

「.....俺はどれぐらい気を失ってましたか?」
「1分程です。歩様が倒れられてすぐ、神薬を使いましたので」

なるほど。

道理で体が快調な訳だ。
いや、俺の体なんて今はいい!

「け、結果は!?結果はどうなったんですか!?」
「あれをご覧ください」

焦る俺に対して、ニケさんは微笑を携えながらダーツを指差す。.....その笑顔、プライスレス!

その指差す先には.....
















『自由』

「いいいいいよおおおおおしゃああああああ!」

思わず、全力のガッツポーズ。

もしこの場にアテナがいたら、きっと俺の真似をしていただろう。
それぐらい感無量だった。嬉しかった。

ただ、あまりにも嬉しすぎたせいで、

「ニケさん!やりましたよ!俺はやりました!やればできる子なんです、俺は!」
「あっ.....」

隣で静かに控えていたニケさんを無意識の内に抱き寄せてしまっていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おい!俺もお前も合格してるぞ!やったな!」
「.....」
「ははははは!マジで嬉しいな!」
「.....お、おい。舞日、いい加減にしとけ?」
「なんだよ!お前ももっと喜べよ!俺達のようなボンクラが合格できたんだぞ!」
「ボンクラで悪かったわね!」

───ばちんっ!

「へぶっ!?」
「.....てか、なにこいつー?いきなり抱きついてきたんですけどー」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(くっ.....。嫌なことを思い出してしまった.....)

あれは大学受験の合格発表を見に行った時のことだ。
ダメ元で受けた大学がまさかの合格。しかも、友達と一緒にだ。
あまりの嬉しさにハイテンションになった俺は、友達と抱き合って喜びを分かち合ったつもりが.....。


今の俺はまさにそんな状況におかれている。
勢い余った結果とはいえ、まさかニケさんを無理矢理抱き締めてしまうとは.....。

「す、すいません!わざとじゃないんです!!」

嫌われたくないので急いで離れて謝罪する。
離れる間際、ニケさんのいい匂いが俺の鼻孔をくすぐった。.....いいと思います!

「あっ.....」

しかし、当のニケさんは明らかに残念そう。
もの足りないといった表情までしている。.....おや?

(こ、これはOKと受け取っていいのだろうか?.....いやいや!調子に乗るな!俺!!)

ニケさんが俺に好意を持ってくれているのはわかるが、だからと言って調子に乗るべきではない。
両思いだからこそ、ゆっくりと愛を育んでいきたい。

とりあえず逸る心を落ち着けて.....

「.....歩様のバカ」
「ん?なにか言いました?」
「なんでもありません」
「.....?」

とりあえず逸る心を落ち着けて、今後の打ち合わせを手短に行うことにした。

俺が神界に来たのはまだ8時前だ。
そこから30分経ったと言っても、まだ9時前。今からすぐにでもデートはできる。

そう思っていたのだが、

「それはできません」

あっさりと断られてしまった。.....なんで!?
いや、一つ思い当たることがある。

それは、

「ま、まさかとは思いますが.....。そ、それも規定だからですか?」
「仰る通りです。降臨には降臨にふさわしい準備が必要となります。
 ですので明日、下界にお伺いさせて頂きますね?よろしくお願いします」

ニケさんはそう言うと、異論は認めないといったにこやかな笑顔で微笑んできた。

「HAHAHA.....」

もう渇いた笑いしか出ない。

別にニケさんが悪いのではない。
悪いのはガッチガチの規定なのだから。

(うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
 規定うぜえええええええええええええええええええええええええ!)


こうして俺は、明日ニケさんとのデートを無事取り付けることに成功した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『アテナ』 レベル:3 危険度:極小

種族:女神
年齢:ーーー
性別:♀

職業:女神
称号:智慧の女神

体力:50
魔力:50
筋力:50
耐久:50
敏捷:50

装備:殺戮の斧

女神ポイント:352740【↑1500】

【一言】ほらー!私のおかげだったでしょー( ´∀` )
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アユムの所持金:3356202200ルクア【↓50000】
冒険者のランク:SS(クリア回数:14回)

このお話の歩数:約24000歩
ここまでの歩数:約45655200歩
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『アユム・マイニチ』 レベル:9555【↑3】

種族:人間
年齢:26
性別:♂

職業:凡人
称号:女神の付き人/竜殺しドラゴンスレイヤー
所有:ヘリオドール

体力:9565(+9555)【↑3】
魔力:9555(+9555)【↑3】
筋力:9560(+9555)【↑3】
耐久:9560(+9555)【↑3】
敏捷:12015(+11955)【↑3】

装備:竜墜の剣ドラゴンキラー(敏捷+2400)

所持:おらおら棒(※筋力+1000)
※所持しているだけなのでステータスには反映されません。

技能:言語理解/ステータス/詠唱省略

Lv.1:初級光魔法/初級闇魔法

Lv.2:浄化魔法

Lv.3:鑑定/剣術/体術/索敵/感知/隠密
   偽造/捜索/吸収/治癒魔法/共有
   初級火魔法/初級水魔法/初級風魔法
   初級土魔法/ 物理耐性/魔法耐性
   状態異常耐性

Lv.4:初級風魔法 (※『竜墜の剣』装備時のみ)

共有:アイテムボックスLv.3
   パーティー編成Lv.1
   ダンジョンマップLv.3
   検査Lv.3
   造形魔法Lv.3
   奴隷契約Lv.2

加護:『ウォーキング』Lv.9555 1405/9556
   『NTR』   Lv.2304 135/2305
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後書き

次回、クッキング!

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今日のひとこま

~更なる高みへ!~

「バット、歩様の反応はどうでしたか?」
「バッチリですな。出迎えているニケ様を見て、心を動かされたことでしょう」
「そうですか。練習した甲斐があります」
「ニケ様。ここで更なる追撃の一手を具申します」

「追撃の一手.....。どういうことですか?」
「明日デートをされるということですから、ここはお弁当を作っていくのがいいかと」
「お弁当ですか.....」
「古来より、『胃袋を制した者が男を制す』と言われております」

「!!!」
「所作だけではなく、料理もできるところを見せれば、
 未来永劫お二人の仲は睦まじいものとなりましょう」
「思い当たる節があります。だから泥棒猫は.....(ぶつぶつ)」
「どうされました?」

「なんでもありません。
 .....ですが、私は料理というものをしたことがありません。大丈夫でしょうか?」
「『料理は科学』とも言います。
 冒険はせず、雑誌のレシピ通りに忠実に作ればうまくいくことでしょう」

「なるほど.....。わかりました。
 これから早速お弁当作りに取り掛かります。後のことは任せましたよ?」
「お任せください。不肖バット、見事ニケ様のお役に立って見せましょう」


こうしてニケのお弁当作りが始まることとなった。

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