歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~

なつきいろ

第115歩目 はじめての悪神!双子神②


前回までのあらすじ

出会った神様は初の男神だったが、いきなり殺されかけた。

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□□□□ ~待望の変化?~ □□□□

男神様の姿が見えなくなってからしばらく経った。
いまだにアテナが戻ってくる様子はない。

俺は一人寂しく、.....いや、頂いた『たわし』とともに現状を変えてくれる変化をひたすら待ち望んだ。

(アテナは戻ってきてくれるよな?まさか.....先に帰ったりしないよな!?大丈夫だよね!?)

アテナには前科 (アルテミスに初めて会った時)があるだけに非常に不安だ。
男神様もいずれは戻ってこられるだろうが、いつ戻ってくるのか不明だし、そもそも戻ってこられたとしても俺を帰してくれるかどうかは甚だ疑問だ。.....まさかの放置プレイ!?

そんな現状に不安を抱いていたら、

「.....あら?どちら様?」

どこからともかく女性の声らしきものが聞こえてきた。
その声色がとても穏やかだったのでホッとする。

待望の変化到来というやつだろう。

と、思っていたのだが.....

穏やかな声色とは違って、見た目にインパクトがありすぎる。
人を、神様を見た目だけで判断するのは失礼だとわかってはいるが.....それでもちょっと怖い。

「人間ね。どうして人間がここに?」
「は、はじめまして。俺は歩と言います。ここに来たのはアテナの付き人として.....」
「アテナ?アテナって、知慧の女神(笑)とか言われているあのアテナ様のことかしら?」
「は、はい。それで間違いないです」

なんだろう。
表情は実に穏やかなんだとは思うが、アテナを軽んじているような印象を言葉の節々から感じる。

確かアテナはオリンポス12神の1柱、つまり最高神の1人だと聞いたことがある。
そんな存在を、まるで意にも介さず軽んじていることに少なからず驚きを禁じ得ない。

と言うことは、目の前にいる女神様もオリンポス12神の1柱か?、なんて思っていたら、

「わたくしは違うわよ。わたくしはエリス。
 オリンポス12神の1柱であり、軍神でもあるアレスお兄様の付き神をしている双子の妹よ」

当然のように心を読まれてしまった。
先程の男神様、もといアレス様で完全に油断しきっていた。反省、反省。

「それで?なんでここにいるの?」
「攻略の証を捧げたら、ここに導かれました。なんか俺は特別な存在らしく神界に来れるみたいです」
「ふーん。そう。まぁどうでもいいわ」
「は、はぁ.....」

どうでもいいなら聞くなよ!とツッコミたいが、ここはにっこり営業スマイル。

それにしてもエリス様の対応は実に素っ気ない。
穏やかそうな神様だが、やはり俺には、と言うか人間には興味がないのだろうか。

そして、その原因はすぐにわかることになる.....。

「人間の用件は理解したわ。.....それで愛しのお兄様はどちらに?」
「.....愛し?アレス様でしたら、なんでもアフロディ.....」

俺がそこまで言いかけたと同時に、

───ブワッ!

エリス様から放たれる凄まじいまでの憎悪。負のオーラ。

さらに、

「キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!
 あのあばずれ売女がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
 わたくしのお兄様をいつもいつも!妬ましい!妬ましい!妬ましい!妬ましい!妬ましい!」

それはもうハンカチを噛みちぎる勢いで地団駄を踏んで激昂しだした。
全然穏やかそうな神様じゃなかった!.....てか、神界にもハンカチあったんだ。

それに、エリス様が怒れば怒るほど、

怒り。激怒。憤怒。不満。顰蹙。怨み。嫉妬。蔑視。反感。激情。嫌悪。
敵意。反発。恨み。妬み。悪意。偏見。憎悪。迷妄。暗然。鬱然。不快。

様々な負のオーラがアレス様の部屋を侵食していく。
そこにいるだけでエリス様と負のオーラを共有してしまいそうになるほど.....。

それでも、俺が意識をしっかりと保つことができたのは、何よりもエリス様の容貌に恐怖を抱いたからだ。

エリス様は身長170cmぐらいでとても女性らしい体つき。出るところはしっかりと魅惑的に出ている。
常に微笑を浮かべた美しい顔立ちで、腰の中程にまで伸びた長い黒髪のストレートロングヘアー。
ニケさんのぱっつんとは異なり、前髪も長く伸びていて、髪の色も黒というよりかは漆黒色に近い。
そして特徴的なのは黄金色の眼と堕天使を連想させる漆黒の翼だ。

ここまで見れば、魅惑的な美女と言っても差し支えは全くない。
差し支えはないのだが.....。

今、俺の目の前にいるエリス様は、

艶やかに流れていた漆黒の髪を振り乱し、常に微笑を浮かべた美しい顔立ちが憎悪にまみれている。
更に髪の間から覗く黄金眼がとても不気味な色を放ち、どこかアルテミス様を連想させる縦に割れた瞳孔となっている。

髪型、白いワンピース、憎悪.....。
それはまるで貞子みたいで非常に怖い。

・・・。

そして、貞子ことエリス様はひとしきり悔しがった後.....

「きゃははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」

突如、奇声を上げて笑い出した。.....本当に怖い。

なにがなんだかさっぱりわからない。
アレス様とはまた違った意味で一緒にいたくないタイプだ。


その後も奇声を上げて笑うエリス様に怯えながら、白馬の王子様アテナが早く助けに来ないかと、今か今かと待ち続けた。


□□□□ ~エリスの真意~ □□□□

「人間、あなたに力を与えてあげるわ」

それは突然だった。

奇声を上げて高笑いしていたエリス様が、ピタッとそれをやめたかと思ったらぶつぶつ何か言い出し、終いには素晴らしい笑顔 (悪い意味で)とともに俺にそんなことを宣ってきた。

当然、俺はその素晴らしい笑顔に身震いしながらも身構えた。

「ど、どういうことでしょうか?」
「言葉の通りよ。人間、あなたに今よりも更なる力を与えてあげるわ」
「そ、それはつまり、加護を頂けると解釈しても?」
「そうね。そう受け取ってもらっていいわ」

あまりの意外な展開に、加護だぜ!ひゃっほ~い!、と素直に喜んでいいのかどうかよくわからない。
と言うか、エリス様の突然の豹変.....。何かあるのか?と疑うのが普通だろう。

「人間の用件は『報酬権利』をもらいにきたのでしょう?」
「そ、そうです」
「だけど、お兄様には相手をしてもらず困り果てていた、とこんな感じかしら?」
「そ、そうです!まさにその通りです!」

エリス様は無思慮と言われるアレス様とは違って現状を理解するのが早い。
非常に助かる。助かるのだが.....、やはり疑いが晴れることはなかった。

「だったら、わたくしがお兄様の代わりに人間に報酬を与えてあげるわ」
「そ、それは大変ありがたいのですが.....。よろしいのですか?そ、その規則的なこととか.....」
「そこは問題ないわ。わたくしはお兄様に愛されているので、ここでの全権を委ねられているの」
「な、なるほど.....。アレス様はシスコンでしたか」

エリス様もブラコンなようなので、アレス様も同様にシスコンなのだろう。双子は似ると言うし。
ちなみに、兄妹愛についてどうこう言うつもりはない。神様の世界とはそういうものらしいので。

美しきかな兄妹愛、と無理矢理納得していたら、

「それは違うわ!」
「な、なにが!?」

エリス様から全否定されてしまった。
別にお互いブラ・シスコンでいいと思うのだが.....。

「お兄様は『妹』を愛しているんじゃないわ。『わたくし』を愛しているの!
 『妹』と『わたくし』では大きな隔たりがあるわ。そこは勘違いしないように!」
「も、申し訳ありません.....」

そうらしい。.....わっかんねえ!
エリス様は『妹』なのだから、同じ意味だと思うのだが、何がどう違うというのか.....。

そもそも、アレス様は本当にエリス様を愛しているのかどうかすら怪しい。
兄妹という家族的な愛ならあるのかもしれないが、エリス様の言う愛とは間違いなく男女愛を指している。
しかし、現にアレス様はアフロディーテ様のところに赴いている。
愛しているというのなら、それこそアフロディーテ様を愛しているのではないだろうか。

これはもしかしたら、エリス様の勝手な思い込みなのでは.....。
どうやらこの三人?三神?は、恋愛偏差値0の俺には難しい複雑な関係となっているようだ。

実はエリス様はストーカー気質?、との疑念が止まない中、俺はエリス様の真意を訊ねることにした。

「そ、それにしても、どうして急に俺に力を与えようと思われたのですか?」

ずっと不思議に思っていた。
エリス様の態度が豹変したことと何か関係があるように思えてならない。

「その力を使って、神界にどんどん訪ねてきなさい」
「はぁ.....?」

「一番望ましいのは、ここかあばずれ売女のところに行くことね。それで二人の逢瀬を邪魔しなさい」
「邪魔をする.....?どういうことですか?」

「ここ神界では報酬を授ける場合、自分の部屋でしかそれを行うことができないの。
 その為、ランダムで選ばれた際には強制的に部屋に戻されるシステムとなっているわ。
 仮にランダムの対象となったその部屋に、誰か訪ねてきている神がいたら、その神も同様にね」

そう言えば、思い当たる節がある。

アルテミス様は以前、アテナの部屋でニケさんと一緒に俺達の旅行を鑑賞していると言っていた。
でも、俺がアルテミス様を訪ねていく時は決まって一人でいる。つまりはそういうことだったのか。

「な、なるほど。それで俺がアレス様とアフロディーテ様の恋路をじゃ.....」
「恋路じゃないわ!!!あばずれ売女の陰謀よ!!気を付けなさい!!」
「ひぃぃ!も、申し訳ありません!」

まるで鬼の.....、いや、貞子の形相で怒られた。怖いぃ.....!

「で、ですが.....。俺がいくら訪ねてこようと、アレス様はすぐアフロディーテ.....」
「・・・」

「(ごくっ。).....じゃ、じゃなくて、あばずれ売女.....?」
「そうそう、それでいいの。よくわかっているじゃない」
 
「あ、ありがとうございます?.....そのあばずれ売女のところに戻られてしまうのでは?」
「そこは安心していいわ!お兄様はわたくしを愛しているから、
 わたくしがお兄様と一緒にいれば、あんな薄汚い穢れた売女のところへなんて行くはずがないわ!」

どうでもいいわ!
エリス様の、いや、この三人の恋愛事情なんて全く興味がない。

それに、エリス様の狂気にも似た妄執には寒気すら覚える。
兄を愛していると言っている癖に、その兄の恋路を応援するどころか邪魔をしようと目論み、あまつさえ自分では手を下さずに、俺を利用しようとしている始末。

「これで、あの薄汚い穢れたあばずれ売女の悔しがる顔が見れるわ!
 お兄様はわたくしのものよ!きゃはははははははははははははは!」
「・・・」

絶対に関わり合いたくないタイプだ。
同様のタイプとして、アルテミス様の場合は身の危険からだが、このエリス様は生理的に無理だ。

しかし、そこは俺も大人だ。

貰えるものはしっかりと貰う。
加護を貰えるチャンスなんてそうそうないからな!

それに、エリス様の目論見通りにいくとは到底思えない。
仮に力を得たとしても、俺には様々な問題がある上に、そもそも神様はランダムだ。
アレス様とアフロディーテ様の二人に当たる可能性なんて6分の1でしか有り得ない。たったの16%だ。


エリス様が勝ち誇ったような不気味な笑いをしている中、俺はどんな加護をもらおうかわくわくしていた。


□□□□ ~ダーツに挑戦!(投げるとは言っていない)~ □□□□

エリス様の不気味な笑いが止むのを待った後、早速ダーツに挑むことになった。

用意されたのは、神界では規定とされているそれだった。
規定とされている以上仕方がないのだろうが、これではまた『たわし』に.....。

加護をくれるんじゃないの?と残念に思っていたら、

「それじゃ、『加護』を当てなさい」
「.....あれ?回さないんですか?」

「こんなもの、やった、という記録が残ればいいのよ。
 規定なんかにバカ正直に従っている神なんているわけ.....いや、一人いるわね」
「そ、そうですか.....」

一人いるらしい。
多分ニケさんだな。さすがニケさんだ!

ただ.....、

止まっている的に矢を投げると言うチャンスを貰えたのはいいのだが、如何せん『加護』の枠が狭すぎる。
情けない話だが、当てられる自信も保証もない。

「.....え?こんなこともできないの?」
「も、申し訳ありません。下手したら『たわし』になってしまうかと.....」
「嘘.....。信じられない.....。お兄様ならこれしき、目を瞑っててもできるのに.....」
「・・・」

ヤバい。泣きたくなってきた。

エリス様はそれはもう驚きの表情をしている。
いや、驚きなら別にいい。どこか軽蔑、侮蔑の様相が漂っている。.....俺はお兄様とは違うんです!

結局、エリス様に投げてもらうことになった。
矢を渡した瞬間に狙いも定めず投げるエリス様。

───ヒュ!

そして結果は、





『加護』





ですよねー。

アレス様が目を瞑っててもできるのなら、双子の妹であるエリス様にだってできて当然だろう。
いわんや目を開けてをや、と言うやつだ。

と言うか、投げる必要あるのだろうか。そもそもダーツである意味もないような.....。


どうにも釈然としないが、俺は無事『加護』を手に入れることができる権利を得た。


□□□□ ~エリスの加護~ □□□□

俺の代わりにエリス様に投げてもらうというインチキをした上で『加護』をもらえることになった。

どんな『加護』を貰えるのかわくわくする。
そう言えばアルテミス様が言うには、俺は自分で自由に選べるんだったかな?

「それで?どんな加護が欲しいの?」

きたきたきたあああああ!答えは既に決まっている。

「はい!それなんですが、俺の『付き人』のランクを上げて.....」
「無理ね」
「は、、い?.....き、聞き間違いですかね?今、無理と聞こえたんですが.....」
「そうね。無理だわ」

why?

「.....あれ?『付き人』のランクを上げられると聞いたんですが.....」
「上げられるわよ」
「な、なら、どうして.....」
「わたくしには無理ってこと。そういうのは主神クラスじゃないとできないのよ。
 わたくしのような付き神では力が足りなくてできないわ。.....いや、一人だけできるわね」

一人だけいるらしい。
多分ニケさんだな。さすがニケさんだ!

「主神クラスはそれこそ万能なんだけど、わたくし達付き神はその役割内での力しか与えられないのよ」
「そ、そうなんですか.....」

と言うことは、『付き人』のランクを上げてもらうのはまた別の機会ということか。
そもそも、エリス様はなんの神様なのだろうか。

「わたくし?わたくしは『不和』と『争い』の女神よ」
「不和!?争い!?」
「そうよ。大概の揉め事はわたくしが担当していると言っていいわ」
「・・・」

なるほど。

だから、アレス様とアフロディーテ様の仲を引き裂くことに嬉々としているのか。
どうやらアレス様への愛情だけではなく、エリス様という女神様の本質自体がこういうものらしい。

しかし、そうなると.....

「で、では、どんな加護を頂けるんでしょうか?
 『不和』と『争い』の範疇で頂けるんですよね?全く想像できないんですが.....」
「それもそうね。わたくしもどちらかと言うと、与える側より壊す側だしね」

おいおいおいおい.....。

この女神様、とんでもないことを言い出したぞ。
確かに『不和』と『争い』の内容から考えれば、与えるというよりも壊す、という印象を受けるが.....。

一体どんな加護を貰えるやら、と困惑していたら、

「ちょっといいかしら?」
「.....え?」

エリス様は一応、俺に確認を取った(OKしたとは言っていない)かと思ったら、

───ガシッ!

いきなり俺の頭を鷲掴んできた。

エリス様とは比較的身長が近いせいか目と目が合う。
こんな不気味な女神様なのに、目が合ってしまうとついつい心が弾んでしまうのは俺が童貞だからだろうか。

「あ、あの。なにしてるんですか?」
「人間の記憶を覗かせてもらっているわ。安心して。わたくしの力では覗くことしかできないから」

安心できるか!

なに人の記憶を勝手に覗いちゃってんの!とは反論できずに、にっこりと営業スマイル。
この不気味な女神様には関わらない。逆らわない。これが一番。


特に痛いということもないので、しばらく成り行きを見守る。

それにしても.....、この女神様。
前髪を切るだけでもかなり印象変わるのになぁ.....。もったいない。今のままじゃ、ただの貞子だぞ?

なんて大それたことを考えていたら、

「なんだ。わたくしにピッタリなのがあるじゃない」

と、素晴らしい笑顔 (悪い意味で)とともに何かを発見したようだ。.....嫌な感じしかしない。

「な、なんでしょうか?」
「人間の近くに狼がいるわよね?」

「狼??」
「白狼の娘よ」

「あぁ、ゼオライトさんですね。彼女がどうしました?」
「寝取りなさい」

「.................................................は?」
「聞こえなかったかしら?寝取りなさい」

う~んと?

このエリス様は何を言っているのだろうか.....。
まさか神様、いや、女神様からNTRを推奨されるとは夢にも思わなかった。

「人間がいろいろと問題を抱えているのはわかったわ。
 そして狼を人間のものにしてしまえば、全ての問題が解決する。簡単なことじゃない」
「いやいやいやいやいや!ゼオライトさんには旦那さんいますし!」

「だから寝取りなさいと言っているのよ」
「いやいやいやいやいや!あの二人は心の底から愛し合ってますから無理ですって!」

「そんなのは大した問題じゃないわ。
 わたくしは『不和』と『争い』の女神。そういうのを壊すことに特化している神なのよ?」
「なのよ?じゃないですよ!俺がトキオさんに殺されちゃいますから!」

「なに言っているのよ。人間は彼の天敵じゃない。殺せるはずがないわ」
「・・・」

おおぅ.....。ダメだ。
この神様は頭のネジが何本かなくなっているらしい。考え方がおかしい。

根本的に考え方が違うから、説得はもはや不可能だ。

いや、下手に逆らうと身の危険性すらあり得る。
なんたってエリス様には、アフロディーテ様の邪魔をする、という下らない大義名分があるのだから.....。

「もう言いたいことはないのかしら?」
「あ、あの.....。権利の辞退は可能でしょうか?」

「.....死にたいのかしら?」
「・・・」

「なら、これで決定!人間も下界に帰れて、おまけに様々な問題も解決できる力を得た。
 そしてわたくしもあばずれ売女に一泡吹かせられる。お互いにwin-winの素晴らしい取引だったわね!」
「・・・」

エリス様は、人と人の愛情をいとも容易く壊してしまうことになんの罪悪感も感じていないらしい。
いや、態度からして喜んでいるようにも思える。『不和』と『争い』の女神、ここに極まれりということか.....。

神。
アルテミス様やアレス様とはまた違った『神』の存在。

アルテミス様は神として思うがままに振る舞い、好き勝手に自由を謳歌している神らしい存在。
アレス様は神として絶対の自信を持ち、他者を見下し、己を絶対強者としている神らしい存在。

どちらも他者に迷惑をかける存在ではあるが、そこに『善』『悪』の感情はない。
神として神の振る舞いをしているに他ならないからだ。

だが、エリス様は二人とは全く違う。

神として思うがままに振る舞ってはいるが、そこには己の愉悦と悪意がハッキリと混ざりあっている。
己の欲望の為に『不和』を望み、己の欲望の為に『争い』を起こす、神らしい存在だ。

アルテミス様とアレス様を敢えて『中立』の神様と表現するならば、このエリス様は『悪』の神様だと言える。
ちなみに『善』の神様はニケさんだ。.....アテナ?アテナは俺の『かわいい駄女神』一択。

「これで用件は済んだでしょ?なら早く戻りなさい。
 そして一刻も早く、あのあばずれ売女の邪魔をすることね。
 ざまぁないわ!あのあばずれ売女!わたくしのお兄様に手を出すからよ!きゃはははははははははは!」
「・・・」

エリス様の勝ち誇ったような奇声を暗澹たる思いで聞きながら、俺は神界を後にした。


新たな『加護』と『たわし』を手にして.....。


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『アテナ』 レベル:3 危険度:極小

種族:女神
年齢:ーーー
性別:♀

職業:女神
称号:智慧の女神

体力:50
魔力:50
筋力:50
耐久:50
敏捷:50

装備:殺戮の斧

女神ポイント:192540【↑45000】(20日分)

【一言】パパがねー、歩に「面貸さんかい!」だってー(・ω・´*)
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アユムの所持金:3358052200ルクア【↑2000000】(20日分)
冒険者のランク:SS(クリア回数:14回)

このお話の歩数:約450000歩(20日分)
ここまでの歩数:約42997200歩
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『アユム・マイニチ』 レベル:9272【↑48】

種族:人間
年齢:26
性別:♂

職業:凡人
称号:女神の付き人/竜殺しドラゴンスレイヤー
所有:ヘリオドール

体力:9282(+9272)【↑48】
魔力:9272(+9272)【↑48】
筋力:9277(+9272)【↑48】
耐久:9277(+9272)【↑48】
敏捷:9532(+9472)【↑48】

装備:旋風の剣(敏捷+200)

技能:言語理解/ステータス/詠唱省略

Lv.1:初級光魔法/初級闇魔法

Lv.2:浄化魔法

Lv.3:鑑定/剣術/体術/索敵/感知/隠密
   偽造/捜索/吸収/治癒魔法/共有
   初級火魔法/初級水魔法/初級風魔法
   初級土魔法/ 物理耐性/魔法耐性
   状態異常耐性

共有:アイテムボックスLv.3
   パーティー編成Lv.1
   ダンジョンマップLv.3
   検査Lv.3
   造形魔法Lv.3
   奴隷契約Lv.2

固有加護:ウォーキングLv.9272 7567/9273
   NTRLv.1         1/2
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後書き

次回、獣人の習性!

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いかがでしたでしょうか?

アレスとエリス、ともに神の間では嫌われている存在だと聞き及びます。
そんな二人を登場させてみました。上手く嫌われ役になってもらえるといいのですが.....。


さて、エリスの計画ですが、

①主人公が頻繁に神界に訪れる
      ↓
②アレスまたはアフロディーテの逢瀬が一旦途切れる。
      ↓
③ ①と②が繰り返し行われる。
      ↓
④アレスとアフロディーテ、両者に不満が募る。
     アレス・・・主人公にイライラ。結果、そのイライラがアフロディーテにも伝わる。不快。
 アフロディーテ・・・何度も逢瀬を中途半端に邪魔されるのでイライラ。アレスに愚痴を言う。不快。
      ↓
⑤ ④が数回繰り返されることで、無思慮で短気なアレスが激怒。
 アフロディーテと激しく口論、終いには喧嘩、上手くいけば喧嘩別れ。
      ↓
⑥イライラしているアレスを、そっとエリスが支える。
 「どんなお兄様も、わたくしは愛していますわ」
      ↓
⑦ ⑤と⑥が繰り返し行われることで、エリスの存在をアレスに強烈に植え付ける。
      ↓
⑧アフロディーテを見限ったアレスと晴れてゴールイン!

そして二人は伝説へ.....

こんな感じの事を目論んでいます。

何をそんな悠長な、と思われる方もいるかもしれませんが、神様は悠久の時を生きているので、時間の感覚が全く違います。

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